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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十七章—目には目を
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117 地獄の共食

【*本話には一部、残酷・暴力的な描写が含まれます。苦手な方はご注意ください*】

「荒道一狼……プラムス襲撃に失敗し、ギルドを潰した狂人。アンドリアが仕留め損ねたのは残念だったな」アンドリューは冷笑した。


二人は小屋の両端に立ち、砕け散った破片を挟んで睨み合う。


まことパシュスの二人は、もはや壊れた人形のように、ただ片隅へと放り出されていた。


「それは視点の問題だ……貴様の知性では真理には届かぬ」荒道一狼は殺気をまとい、一歩ずつ近づく。


「待て。お前と戦う理由はない。出ていけ」アンドリューは黒剣を突きつけだ。


「罪人に預言者と語る資格はない。真理を広める俺の使命に比べれば、貴様はただの下劣な淫虫だ。悔い改めよ」


「ははは。あの夜、プラムスで百人以上がH十字軍に虐殺された。それで正義だと? 笑わせるな。俺はまだお前ほど狂っていない」


荒道一狼の足が止まる。言葉が的を射た。


「くく……くくく……ははははははははは!」腹を抱えて笑い出す。アンドリュー以上の狂気。


アンドリューは顔をしかめ、睨み返した。


「H十字軍の信念は体制の破壊だ。貴様のように女を騙すザコとは次元が違う」


「理屈はいい。気に入らないから殴る、それだけか? そんな幼稚な理由で――」言いかけた瞬間、


「火霊の触手!」


熱風が正面から吹きつけ、巨大な炎の手が迫る。


「魂の盾!」即座に展開し、防ぎ切る。


「価値がないなら黙れ。懺悔の道は長いぞ」荒道一狼が歪んだ笑みを浮かべる。


「狂人め……」黒竜鎧が赤く焼け、怒りに目を光らせる。


「俺の目を見るな……その憎悪の視線が……たまらなく興奮するのだ!!!」全身から金光を噴き上げ、天を仰いで哄笑する。


「魂護衝撃!」距離を詰め、一気に体当たりする。


狭いギルド小屋に暴風が吹き荒れ、散乱した破片が両壁へ叩きつけられる。決戦の道が開ける。


ドンッ!


荒道一狼は腕を交差して受け止め、数歩後退する。互いに踏ん張り、力をぶつけ合う。


「力が足りぬな。弱者しか殴れぬのか?」歯を見せて笑う。


「うおおおおおおお!!!」全身の力を振り絞り、さらに一歩押し込む。


内心で驚きながら、荒道一狼は体を捻って力を流す。勢いを失ったアンドリューの体が門へ滑る。


盾を地面へ突き刺し、煉瓦を削りながら止まる。砂塵が外へ吹き飛び、眼下の大峡谷へと落ちていった。


「祖霊気撃!」荒道一狼が追撃の気波拳を放つが、アンドリューは大盾で受け止めた。


「黙って殴られてるだけか? ドMかよ!」間髪入れずに連打し、ほとんど外へ押し出す。


「憎悪の力!」黒盾から金火が噴き上がる。


「上等だ!」ダメージ吸収を読んで、あえて真正面から打ち込む。


一気に加速し、黄金の流星となって突っ込む。逞しい右腕を引き絞り、浮き出た呪紋が赤く燃え、拳へ収束――顔面へ叩き込む!


「修羅拳!」


「ふん、ザコめ」避けずに嗤う。


「双生霊魂」白い影となってその場から消え、まこのそばへ転移した。


「なっ……!?」勢いのまま大峡谷へ飛び出し、四肢で壁を抉って減速、崖際で止まる。


「天護の衝撃!」


「しまった!」


ドンッ!


地形を利用し誘い出したうえでの体当たり。崖外へ弾き飛ばす。


「さらばだ、預言者」崖上から見下ろし、冷笑する。


「怨霊の縛鎖!」背から黒焔の巨腕が噴き出し、アンドリューを掴んだ。


「鬱陶しい職だな!」振り払えない。黒焔は鎧に絡みつき、体も拘束される。


ゆっくりと引き上げられ、全身が漆黒に染まり、瞳に根源的な殺意が宿る。


「ははははは! 最高だ! 殉教しろ!」両腕を広げ、抱き寄せる。


「魂の盾!」身動きが取れぬまま抱き締められる。


バァンッ!!! 二人のHPが同時に橙へ落ちた。


爆風で引き離され、再び崖上で対峙する。


荒道一狼は自然霊力で自己回復。アンドリューは様子を見る。


「どうした? 移動スキルは枯れたか? これからは大きなサンドバッグだぞ」動かないのを見て見抜く。


「ふふ……見ていろ」アンドリューは盾を打ち鳴らし、ダメージを蓄積する。


殉教の反動と長期の過負荷で体は限界だ。早く終わらせねばならない。


「正面から来い。子供みたいに逃げ回るな」


ゴン……ゴン……ゴン……


打撃を止め、剣を振り上げ突撃する。


「避けられないなら……威力で押す! 修羅拳!」


ズバッ! 凄まじい防御で受け切り、反撃の一閃で右腕を斬り落とす。


「ぐっ……畜生!」痛みに耐え、回し蹴りで小屋へ蹴り飛ばす。


「大地の息吹」治癒効果を犠牲に、右腕を再生させた。


「預言者よ……追い詰められているようだな。無駄な抵抗はするなと言ったはずだ。大人しく死ね」アンドリューは盾を打ち鳴らしながら嗤う。


次の一撃で終わる――荒道一狼は悟った。


「すべてを賭けよう……この戦い、最後まで味わうぞ……」静かに笑い、バッグから黄ばんだ古い羊皮紙を取り出し、ゆっくり裂く。


「うっ……」全身から白い蒸気が噴き上がり、背後に紫の幻影が膨張する。周囲の空気と魔力を吸い上げ始めた。


竜膜の黒衣が巻き上がり、室温が急降下する。


「狂信の信条……承認」


ごうっ――


灼熱の旋風が吹き荒れる。肌は赤く染まり、焼き付いた呪紋が浮き上がり、瞳には砂嵐のような白黒のノイズが瞬く。


「それは……」言い終える前に、眼前へ神速で迫る。


「疾風の連撃!!!」影も残さぬ一撃が黒盾を打ち砕く。


衝撃波で視界が砕け、黒い影となって吹き飛ぶ。小屋の奥へ叩きつけられ、まこの横の壁へ深くめり込んだ。


ゴゴゴ……。


山が鳴る、天井に亀裂が走り、岩屑が降る。


まこは、赤く染まった荒道一狼の姿を呆然と見上げる。


荒道は胸を切り裂くような激痛に、過負荷を解除して胡坐をかき、心臓を押さえる。


瓦礫の山から石の崩れる音。


荒道一狼が顔を上げると、洞穴の奥から金光が噴き出した。


「魂護衝撃!!!」髪を乱したアンドリューが金火の剣を握り、突進する。


橙の光輪が膝を包む。呼吸を整え、間合いで身を捌く。


「膝撃の天国転送門!」


ドォンッ!!! 蹴り上げられ、天井へ激突。岩片が雨のように落ちる。


まこの唇がかすかに震え、それを見逃さない。


「カッコいいだろ? 狂信者は過負荷スキルの名を自由に付けられる」得意げに笑い、落石を手で弾く。


だが膝は砕け、動かない。


アンドリューは人形のように落下し、黒竜盾は粉砕。胸甲には拳痕が刻まれていた。


壁にもたれ、黒剣を向けて嗤う。


「はは……まだやるか? 持久戦だ……お前の過負荷がどこまで持つか見てやる……」


荒道一狼のスタミナは残り五%未満。


「教えてやる……チート級とは何かを……三時間待ちの三分診療!」吼えると、足元から緑の聖光が噴き上がり、HPは一気に50%へ。傷が瞬時に塞がる。


アンドリューは言葉を失った。


荒道一狼は無理に笑う。だが意識は霞む。スタミナ残り一%未満――もう過負荷は使えない。


「このバカと俺が双生霊魂で繋がっているのを知っているか? 俺を攻撃すれば、先に死ぬのはあいつだ。その後、溢れたダメージをこの娘に流す。守りたい奴らは全滅だ。何の意味がある?」アンドリューは時間稼ぎに話を逸らす。


荒道一狼は眉を寄せ、考え込む。

「どうやって少女へダメージを移している?」


一瞬、虚を突かれたが、すぐに体を折り曲げて笑う。

「ははは! 知らなかったのか! ここまで戦って無駄足――うぐっ!」


瞬時に間合いを詰め、口へ手を突っ込み舌を掴む。


「もう十分だ……懺悔の覚悟はできたか?」舌を引き、顔を引き寄せ、黄ばんだ歯を覗かせて笑う。

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