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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十六章—さよなら、我が愛しきもの...
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116 「宣告する――死刑だ!」

【*本話には一部、残酷・暴力的な描写が含まれます。苦手な方はご注意ください*】

数時間前――


パシュスはアンドリアの情報をもとに、空羽谷あきはだに中央浮遊島の縁を進んでいた。息を吸うたび、胸の奥が焼けるように痛む。


崖には唸る風しかなく、見渡す限り荒野が広がっている。人影はなく、まこを見つけられる可能性は刻一刻と薄れていく。


罪悪感は黒い穴となって胃の底から魂を飲み込み、足取りは鈍り、ついには膝から崩れ落ちた。


「まこ……返事しろ!! どこにいるんだ!!」天を仰いで叫ぶ。


「きゃあああああああああああああ!!!」前方から引き裂くような悲鳴が響く。まこの声だ。


弾かれたように駆け出す。嫌な予感と確信が同時に胸を締めつける。


ほどなく崖に紛れた不自然な木扉を見つけ、階段を駆け下り、扉を躊躇なく蹴破った――そこにあったのは、壁に拘束され、痛めつけられたまこの姿だった。


頭が真っ白になる。いつも笑っていたまこが、魂を抜かれた人形のようにうなだれている。


アンドリューがゆっくり振り向き何かを言うが、音は耳に届かない。視界が歪み、不吉に脈打つ。


「アンドリュー……お前を殺す!!!」喉を裂く咆哮とともに剣を抜き、突進する。


長机が一瞬で砕け、壁の武器も吹き飛び、ガシャガシャと床へ落ちる。


ゴォン!ゴォン!ゴォン!ゴォン!ゴォン!ゴォン!


豪雨のような斬撃が盾へ叩き込まれる。


その隙に、背後で視界に飛び込む。胸の奥から込み上げた後悔が涙となって溢れた。


「死ね! 死ね! 死ねええええええ!!」


手応えが急に軽くなる。バキンと鈍い音を立て、剣が真っ二つに折れた。


【システムメッセージ: 装備 恩寵の重剣 耐久度0% 修理が必要です】


息を呑む。数回打ち込んだだけで壊れただと?


アンドリューは盾を下ろし、余裕の笑みを浮かべる。既にスキルで受けたダメージを吸収し、瞬時に反射して剣へ返していたのだ。


「はは……失格の守護者だな。まこと一緒に消えろ」アンドリューは盾の金色の炎を剣へ移すと、そのまま突き出した。


辛うじてかわすが、刃は肩当てをかすめる。


ドンッ! 放たれた一撃は壁を爆ぜさせ、大穴を穿った。


肩の小さな裂け目から激痛が流れ込む。あの盾がどれだけの威力を跳ね返すのか、想像もつかない。


荒ぶる思考を押し戻し、勝ち目がないと悟る。ならば――連れて逃げるしかない。


盾で体当たりして間合いを開け、まこのもとへ駆け寄る。


「まこ! 目を覚ませ!」


「パ……シュス……ごめん……」かすれた声が地面へ落ちる。


胸が締めつけられる。予備の片手剣を抜き、手錠へ振り下ろすが、表面すら傷つかない。


アンドリューは武器を下ろし、肩をすくめた。


片手剣を投げ捨て、素手で引きちぎろうとするが、鎖はびくともしない。


「友よ。筋力400もなければ黒魔鋼の鎖は壊せない。リリーが炎で焼き続けても溶けなかった。逃げ場はない。諦めろ」


「まこ……耐えろ……!」涙をこらえ、予備の長剣を高く振り上げる。


カキンッ――


「うあああああああ!!!」手首に走った激痛が、まこの意識を引き戻す。


「おや……覚悟はできているようだな」アンドリューは意外そうに声を上げ、思わず兜を少し持ち上げて、パシュスが自ら愛する少女へ刃を振るう様子を眺めた。


「まこ!!! まこぉぉぉ!!!」パシュスは嗚咽混じりに叫び、どんな手段を使ってでも救い出すと心を鬼にする。


振るうたびに胸を刺されるような痛みが走る。それでも止まれない。早く終わらせなければ、彼女はさらに苦しむ。


激痛に震えていたまこの体が、不意に静かになる。


血の気が引き、慌てて鼻先へ手をかざす。息はある――だが手首は傷ひとつない。


振り返ると、アンドリューは平然と立っていた。胸の前で組んだ両手から血が滴り、淡い青の光がまこと自分を繋いでいる。


「そうだ。犠牲で彼女のダメージを肩代わりしている。彼女は痛みだけを感じ、傷は負わない。続ければいい。俺は耐えられる」


パシュスの心は崩れ落ちる。罪悪感が心臓を握り潰す。


「ダメージが低すぎるな。男としてそれでいいのか?」自分のHPバーを見て、アンドリューは肩をすくめた。


「うおおおおおおおおおおお!!!」突如、理性が弾ける。飛びかかり、アンドリューを押し倒し、拳を振り下ろす。


ドンッ! 一撃が黒い兜を打つ。


ガンッ! 二撃目で兜の端が凹む。


三撃目を振り下ろした瞬間、片手で拳を止められた。


力任せに体勢を入れ替えられ、逆に地へ叩きつけられる。


「ぐああああ!!!」パシュスの腕甲が砕け散り、破片が腕に突き刺さる。歯を食いしばり転がり、再び組み合う。


黒と白の騎士が地面で絡み合い、拳と蹴りを叩き込む。華美な鎧が荒々しい打撃で砕け散る。


だが力では及ばない。徐々に押される。


鼻梁を砕く三連撃を喰らい、意識が飛びかける。朦朧とする中、金色の防壁を展開し、弾き飛ばした。


互いに荒い息を吐き、膠着する。


「俺がタンクだからって、倒せないと思ったか? 甘いな」アンドリューは笑い、黒剣で自らの盾を叩き、音を鳴らし始める。


ゴン……ゴン……ゴン……ゴン……


パシュスは口元の血を拭い、その異様な挙動を凝視した。


盾から金色の炎が噴き上がり、次第に激しさを増す。


「まさか……!」


「BUGを使うのはお前たちだけじゃない。『黒衣』を着れば自分も攻撃対象になる。魔導士が自分を殴って属性を乗せるように、近衛兵もまた、自傷行為によって威力を蓄積できる。この理を知って生き残っているのは……この俺様だけだ」


狂笑とともに炎剣を掲げ、突き出す。


ドォン!!!!!


【システムメッセージ: 装備 銀月の盾 耐久度0% 修理が必要です】


銀月の盾は陶器のように砕け散る。


即座に予備の盾を構える。


ドンッ!


【システムメッセージ: 装備 蟲甲の盾 耐久度0% 修理が必要です】


蟲甲の盾も一撃で粉砕された。


パシュスの手元には、もはや一本の普通の長剣しかない。絶望のまま、アンドリューを睨みつける。


「おやおや~予備の盾はもうないのか?」黒剣を向けて挑発し、ふっと殺気を消して剣を下ろす。


違和感に眉をひそめると、アンドリューの口元に、より不気味な笑みが浮かんだ。


「本当に……来ないのか?」まこのそばへ歩み寄り、髪を掴んで引き上げ、深く吸い込むように匂いを嗅ぐ。


「やめろ……やめてくれ……」全身から力が抜け、まこが遠ざかっていく錯覚に襲われる。どう足掻いても届かない。


「これも……嫌か?」唇をまこの頬へ近づける。


傷だらけのまこは、かすれた目でパシュスを見た。


その瞬間、体がふっと軽くなる。


「俺は絶対に……まこを傷つけさせない!!!」両の瞳から銀色の聖光が溢れ出し、全身の筋肉が軋む。青白い炎の円が足元に広がる。


アンドリューは即座に飛び退き、黒剣を構えた。


「四次転職……守魂衛の覚悟が……過負荷だと……?」唾を呑む。


「必ず守る。そして……お前を殺す」瞳は純白に染まり、銀鎧の隙間から蒼炎が噴き出し、踏み出した足元から銀の聖火が燃え上がる。


「ははは!守魂衛は転職時に強制契約を結ぶが、契約は一人一つだけだ。まこは既に俺のものだ!今のお前は空っぽの守魂衛だぞ!それに、お前の攻撃はまこへ転移する。勝ち目はゼロだ、バカめ!」


「まこ……ごめん……守ることもできない俺が……本当のザコだ……」


「パ……パシュス……?」かすれた声で見上げる。


「ここまでだな……」パシュスは振り返り、自嘲気味に苦く笑った。その瞳からは、一筋の金色の涙がこぼれ落ちる。


アンドリューも異変に気づいた。


「待て……契約なしで四次転職は不可能だ……なぜだ……」


「アンドリュー……護心石があろうがなかろうが、俺はお前を殺す」凄まじい気配が爆ぜる。


状況が理解できず、恐怖が走る。


パシュスは自ら鎧を外し始める。アンドリューは動けない。


「一緒に……死ねええええ!!!」逆手に長剣を構え、自身へ突き立てる。

「運命逆転!」


ブシュウゥゥゥゥゥゥ――


アンドリューは、心臓を貫かれたような激痛に襲われた。視線を上げれば、淡緑の光がパシュスと自分を繋いでいる


「き、貴様……!!」理解し、怒号を上げる。


強制契約――双生魂となったのだ。


「痛いか!?アンドリュー!!守ってみろよ!!ははははは!!」剣を引き抜き、再び突き立てる。


「ぐああああ!!!」床を転げ回る。


「これが……望んだ痛みだろうが!!畜生!!」歯を食いしばり、さらに腹へ刃を押し込む。


【注意: フレンド パシュス HPが20%になりました】


「がはっ……げほっ……」意識が遠のき、視界が暗転する、力が抜ける。手足が震え、思うように動かない。


その隙に、パシュスの手に残る剣がふっと軽くなった。激痛をこらえたアンドリューが肉薄し、最後の銀の長剣を叩き折ったのだ。


目を見開く。最後の希望が砕け散る。


「くそ……いい発想だ」全身を軋ませながら黒剣を構え、まこへ向ける。

「今すぐ契約を解除しろ。さもなければ――まこを殺す」


パシュスはただ睨み返すのみで、何も答えない。


「契約を解けるのは守魂衛だけだ。早くしろ」黒剣の切っ先がまこの眉間に触れる。


視線が重なる。言葉はいらない。


「ごめん……まこ……全部、俺のせいだ……」言い終える前にスタミナが尽き、強烈な眠気に襲われる。そのまま崩れ落ち、意識を失った。


「ふん……結局、誰も守れやしなかったな。二人とも大人しく死ね……役立たずめ」


黒剣を振り上げる。


祖霊気撃スピリット・バースト!」


怒号が外から響く。


ドォンッ!!!!!!!


凄まじい衝撃波がアンドリューを吹き飛ばし、壁へ叩きつけた。


「異端の人格は……異端の人格が裁く」胸をはだけ、全身に金色の経文を浮かべた屈強な男が立つ。


「げほっ……また邪魔者か?」黒剣を握り直し、睨みつける。


「下劣なザコに名乗る必要はない……覚えておけ。狂気に道がなければ、それはただの変態だ。弱者を踏みにじるお前に、荒道一狼が宣告する――死刑だ!」


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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