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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十五章—暴力の美学
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106 原罪者

「やあ……一人なの?」むぐち やよいが探るように聞く。


紅い剣士はうなずいた。


「どうやってここを見つけたの?」


紅い剣士は首を傾げ、Kanatheonの一行を品定めするように見回した。

「お前ら、ギルドのパーティーか?」


「そう。偶然この深淵に迷い込んだだけ。出口を知ってる?」むぐちは自分が掴んでいる情報を隠した。


「そっちをまっすぐ。地上に戻れる。」紅い剣士は、彼らが入ってきた通路を指さした。その言葉に嘘はなさそうだ。


皆が顔を見合わせ、警戒を少しだけ緩める。


「ここはオープン型のダンジョンだ。突破には聖職者が要る。パーティを組め。嫌なら報酬を払って雇ってもいい。」紅い剣士は骨山の下で言った。口ぶりは、NPCに話しかけるみたいに軽い。


「ダンジョン?報酬は? 金も装備も足りてるし、あんまり興味ない。」むぐちはわざと乗り気じゃない顔をした。


「そうか。なら好きにしろ。」紅い剣士は火竜大剣を置き、その場に腰を下ろした。


「ねえ、あいつ結局なにがしたいの?」かなが苛立つ。


「分からない。でも今のところ嘘はない。……あの竜族の大剣、かな。思い当たるでしょ?」むぐちは渋い顔をした。


「何を?」


「竜族装備を持ってたの、今までアンドリアとアンドリューくらいだよ。」


「……ってことは、四次職?」かながハッとして、声を落とす。


「たぶんね。ギルドのパーティー相手に一人で出てくる時点で、自信がある。しかも金も持ってそうで、PK解放して奪う気もなさそう。」


「おい。……よく考えたら取引、興味出てきた。内容を言え。」かながわざと声を張って、強引に切り込む。


「悪いが無理だ。取引を受けるなら話す。」


「ふざけるな。内容も聞かずに、そんな依頼を受けられるわけないでしょ!」


「提示は1000竜貨。妥当だ。信じるかどうかは好きにしろ。」


むぐちは、アンドリア以上に強引な相手は初めてで、胸の奥がざわついた。


「 1000竜貨とか……簡単に出す額じゃないぞ……」パシュスが目を見開く。


むぐちは迷った末に、提案を受けることにした。

「竜貨はいらない。戦利品を保持できる? 重装と大剣が落ちたらあなた優先で、それ以外の職のドロップは私たちがもらう。」


紅い剣士はしばらく黙る。


「いい。約束は?」


「いいよ、約束する。」むぐちは即答した。


「大丈夫?」ニフェトはまだ警戒している。


「まずは説明を聞かせてもらおう。納得できなければ、この話はなしだ」


「聖職者が要る。……お前、司教だろ?」紅い剣士はゆっくり骨山を登り、ニフェトを指した。


「……そう。何をさせるの?」

神杖を強く握りしめる。内心は怖くて仕方ない。


紅い剣士は、五芒星の中心に沈んだ長方形の穴を見下ろした。

「そこに横になってほしい。死ぬ可能性がある。護心石は持ってるか?」


「リスクは私たちが判断する。護心石の心配は要らない。……どうして死ぬ可能性があるって言うの?」むぐちはニフェトの横に立つ。


「壁画の欠片を三つ集めて、聖骨琴せいこつきんを直したら、この血の星紋が出た。試しに横になった瞬間、読経みたいな騒音に叩かれてHPが一気に削れた。慌てて這い出た。」

「だから、起動は聖職者が前提なんだろうと思った。」


「ほかのギミックを見落としてる可能性は?」ニフェトが問いかける。


「ありえないだろ? 俺はずっと一人で迷宮もダンジョンも攻略してきた。今回は4時間近く探しても新しい手がかりはなかった。だから自分の推測には自信がある。」


「どうやってその話を検証する?」むぐちが追及する。


「はは……お前、この中で一番のベテランか?三枚の壁画を見てから決めればいい。ほかの地下回廊の奥にある。モンスターは全部片付けた。安全だ。ここで返事を待つ。」そう言うと紅い剣士は腰を下ろし、サンドイッチを取り出して豪快にかじり、スタミナゲージを回復させ始めた。


むぐちは内心驚く。相手は大量の情報を惜しげもなく与えてくる。まるで富豪が小銭を投げるかのような余裕だ。


「名前は?」かなが聞く。


「レ……悪い……レックス。」レックスはハムを一切れ落とし、骨の上から拾ってそのまま口に放り込み、答えた。


その仕草が場の緊張を一瞬で壊し、かなは思わず吹き出す。

「こいつ、ちょっと面白いかも。」


彼らはレックスを中央ホールに残し、言われた通り左・上・右の地下回廊へ向かった。各通路の奥に、確かに一枚ずつ壁画がある。


一枚目。黒い影がパイプオルガン前の五芒星紋に現れる。

二枚目。無数の骸骨獣がホールを埋め、人間たちと交戦している。そのうちの一人がオルガンを見下ろしている。

三枚目。黒い影が白い光に照らされ、人間たちに包囲されている。


「ボス戦のヒントだよね?」ニフェトが考え込む。


「ボスは黒い影。出現位置は五芒星の上。大量の雑魚が湧く。白いギミックで対抗する……フェーズ分けのボス戦っぽい。」むぐちが情報を整理する。


彼らは骨山の五芒星紋へ戻った。


「決まったか?」レックスが立ち上がる。


「うん。」ニフェトは勇気を振り絞り、五芒星の中央へ進む。


「気をつけて。」むぐちはまだ不安げだ。


「ここに立ってる。HPが二割を切ったら、すぐにでも引きずり出してやるからな」パシュスが力強くうなずく。


「うん……信じてる。」


深呼吸し、長方形の窪みに足を踏み入れる。


足元の骨がカリリと乾いた音を立てる。ニフェトは慎重に横たわる。丸みを帯びた頭骨が背を支え、意外にも柔らかい。


まるで墓に横たわる遺体のようだ。骸骨に囲まれ、恐怖を押し殺すように拳を握る。視線はずっとパシュスへ。目が合うと、彼は小さく微笑んだ。


その瞬間、背中に冷気が走る。ニフェトの瞳がゆっくりと虚ろになり、握った拳も緩む。


ホールに突風が巻き起こる。地下回廊から黒い気流が一斉に五芒星の上へ吸い上げられ、巨大な黒煙へと収束する。


皆は骨山に足を食い込ませ、ようやく体勢を保つ。


【システムメッセージ: レックス パーティーに参加】


「来るぞ。」


全員が五芒星の上空を凝視する。


ぶしゅっ――


「ニフェト!!!」パシュスが叫ぶ。


その身体は無数の細い黒い血管に絡め取られ、肉の繭のように包み込まれていく。鼓動する心臓のように脈打っている。


「あぁ……」黒煙がかすかに呻く。散っていた気体がゆっくりと集まり、人型の胴体と四肢を形作っていく


「HPとデバフに注意……」むぐちは低く告げる。もうニフェトの神術支援はない。


かみこは鏡の盾を星型に変形させ、黒影を取り囲む。鋭い角がすべて標的へ向き、最大火力をいつでも放てる構えだ。


黒影は徐々に完成し、最後に頭部が生える。


ドン!


衝撃波が爆ぜ、全員が骨山の下へ吹き飛ばされた。


「この身体……女の子?」澄んだ鈴のような声。どこか聞き覚えのある声だ。


純黒の人型が骨山の頂に立つ。


短髪、整った顔立ち。全身は黒一色で、皮膚から黒い瘴気が立ち上る。はっきり見えるのは、真白な円形の瞳だけ。


「それ……ニフェトなの?!」まこが叫ぶ。


「この身体の主は……ニフェト、か。」黒いそれは自分の胸や腕を軽く摘み、感触を確かめる。


むぐちは即座にパーティー情報を開いた。ニフェトに新たなデバフ――宿主 収集0/5 達成時死亡。


「収集……?」むぐちは混乱する。こんなボスは初めてだ。嫌な予感が胸を満たす。


「昇龍万里!」レックスが骨山の下から跳躍する。黒ニフェトよりも高く舞い上がった。


火竜大剣を掲げ、力を溜めて振り下ろす――空振り?


黒ニフェトは空中で消え、次の瞬間には山の下に現れていた。


「怨嗟の覚醒……」黒ニフェトは横薙ぎに腕を払う。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。


骨山が各所で隆起し、壁と通路が震動する。


百を超える骸骨が死骨の山から静かに立ち上がった。


まつみの頭上に、白い「4」が浮かぶ。


「なにこれ?!」まつみは頭上を見上げ、焦る。


「さあ、始めよう。」黒ニフェトが不気味に笑う。空間に黒い微粒子が漂い始めた。


【システムメッセージ: 原罪者げんざいしゃ 覚醒】

【システムメッセージ:原罪者げんざいしゃ を撃破せよ】

……

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