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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十四章—天国の根
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102 聖骸大殿

巨大な大聖堂の裏手へ回り込んだとき、むぐちは眉をひそめた。


前方の斜面には、同じような大きさの質素な小屋が十数棟並び、それぞれの屋根の上には十字架が立っている。


「どれが聖骸大殿につながる修道院なの!?」

まつみは早くも苛立つ。


「ブチャは“一つ”とは言っていなかった。どうやら一軒ずつ調べるしかないようだ」

ニフェトはため息まじりに言う。


軋む音を立てて薄い木の扉を押し開け、彼らは最初の修道院へ入った。


内部は一目で見渡せる単純な長方形構造。


中央には長い木製テーブル。上には銀の燭台、十二人分の食器とワイングラスが整然と並び、中央には一本のワイン。最奥には十字架を掲げた祈祷台が置かれている。


窓から差し込む陽光は幾筋もの光柱となり、テーブルを照らしていた。光の中を舞う埃が、まるでこの空間だけ時間が止まっているかのような錯覚を与える。


壁や床に空洞がないか探ったが、何も見つからない。


他の修道院も回ったが、隠し通路は発見できなかった。


「もう疲れたよ!」

まつみはがっくりと長テーブルに腰を下ろし、いたずら半分でワインを少しグラスに注いだ。


ボッ――――

祈祷台の左右にあった白い蝋燭が、ひとりでに灯る。


「なるほど……」

むぐちは口元を押さえ、思案した。


……


彼らは手分けして各修道院でワインをグラスに注ぎ、変化を観察する。


「おい、ザコ! こっちだ!」

かなが斜面の上、修道院の入口で手を振って叫ぶ。全員がすぐに駆け寄った。


その修道院は他よりも明らかに清潔で、埃がない。手入れが行き届いており、まるで今も誰かが管理しているかのようだった。


やがて祈祷台がゆっくりと沈み込み、石床が規則正しく移動する――黒い地底へ続く石階段が姿を現す。


暗闇から吹き上げる冷気に、誰もが息をのむ。先に降りようとする者はいない。


「俺が行く」

パシュスは勇気を振り絞り、先頭に立って降りていった。


その身体が通路へ入り込んだ瞬間、前方に緑の炎の松明が一列に灯り、最奥まで続く。


緑の炎は普通の火のような激しさはなく、むしろ幽霊のように弱々しく揺れていた。闇の通路を不気味な緑色に染め上げ、背筋に寒気を走らせる。


一行は次々と地下道へ滑り込み、すでに武器を握りしめている。


聖骸大殿で、いったい何が待ち受けているのか――。


階段を下りるほど、空気が重くなっていく。

やがて円形の地下空洞に出た。


平地に足をつけた瞬間、空洞の緑の松明がひとりでに燃え上がる。


床の石畳はカビで黒ずみ、目地からは黒い小さな植物が生えていた。


円形の空洞の奥には封鎖された鉄扉があり、左右に一本ずつ通路が伸びている。


鉄扉の脇には、枯れ蔓を巻きつけられた骸骨が二体立っていた。


両腕を胸の前で組み、ミイラみたいにまっすぐ硬直している。


左の骸骨は白い杖を、右の骸骨は黒い鎌を持っていた。


「迷宮探索タイプのダンジョンっぽいね」むぐちは骸骨に近づいて調べ、まこは震えながらその背に張りつく。


「二組に分かれて動く?」かなは探索を早めたくて、あえて踏み込む。


「一緒に行動したほうがいいと思う。敵のこと、何も分からないし」ニフェトは反対した。


同時にかみこへ視線が集まり、分析を待つ。


「データ不足。意見なし」


「二組に分かれて地形の把握を目的に進む。十分ごとに密信で情報共有。どう?」むぐちが言い、異議は出なかった。


「もし魔物に遭遇しても、軽率に動かないで。もう一隊が来るまで待って」ニフェトが最後に釘を刺し、皆がうなずく。


まつみ、かみこ、パシュスの三人は一組。


ニフェト、むぐち、かな、まこの四人は一組。


それぞれ左右の通路へ入っていった。


まつみ隊が一歩進むたび、前方に小さな緑光が灯る。

松明がプレイヤーの位置でスイッチを踏む仕組みらしく、陰鬱な地下牢がいっそう不気味になって、ずっと胸がざわついた。


薄暗い通路は意外と広く、四人が横に並んで歩けるほど。


けれど両側が空洞のように抜けているせいで、横や背後から何かが襲ってくる気がして落ち着かない。


突然、左右の壁がえぐれるように凹み、錆びた鉄鎧を着た骸骨が二体、突っ立っていた。


がらんどうの骨の口を開き、頭蓋は生気なく傾いている。


かみこは迷わず鏡の盾を呼び出して隊の後方に構え、通ったルートを記録し始めた。


三人とも神経を張り詰めたまま、気を抜けない。


「まこのこと、どうしたの?」まつみは意識を逸らそうとする。


「別に〜」パシュスは苦い顔で、明らかに本音じゃない。


「嘘……なんでケンカしたの?」


パシュスはため息をついた。

「アンドリューから距離を取れって言ったんだ。なのに、あいつの肩を持つから……カッとなって怒鳴っちまった」


「もっとまこを信じなよ。あの子はそういう性格なんだから、そこを好きでいなきゃ。自分の価値観を押しつけないで」まつみは言い返す。


「でも、あいつも簡単に人を信じちゃダメだろ! いつか悪い奴に傷つけられる!」パシュスは興奮して、前方へソードを突き出した。


「だからこそ、あなたが守ってあげればいいんじゃない?」


「守るからこそ、危ないほうへ行くのを止めてるんだ!」


「それは守ってるんじゃない。支配しようとしてるだけ。混ぜないで」まつみは冷たく笑う。


「お前も、まこと同じで話にならねえ! アンドリューが契約で騙したのに、助けられた回数で“いい人”だって証明しようとするんだぞ。論理が破綻してる!」パシュスの怒りが増す。


「パシュス、緒が不安定」かみこが唐突に口を挟んだ。

「まこのこと、好き?」


「好き? 何の好きだよ? 俺とまつみは、まことは幼なじみなんだ! 心配して当然だろ! 家族だってまこが大好きで、祭りのたびに家に呼ぶんだぞ! わけ分かんねえこと言うな!」パシュスは突然爆発し、支離滅裂に怒鳴り散らした。


「好きな人がいるって……とても幸せなことですね……」かみこは頬を赤く染め、甘く微笑みながらうつむいて呟く。


パシュスが振り返って怒鳴ろうとした、その瞬間、目つきが変わった。

「天護の衝撃!」


かみこは異変を察知し、間一髪で横へ跳ぶ。鋭い骨の槍が耳元をかすめ、あと少しで頭を貫くところだった。


通り過ぎたはずの骸骨兵二体が動き出し、空洞の眼窩に緑の炎を灯している。


まつみは即座に骸骨の背後へ回り込み、三連撃を叩き込む。錆びた鉄鎧に穴が開き、砕けた骨が飛び散った。


だが物理攻撃が通らない。骸骨は骨槍を回転させ、まつみへ突き返す。


「影縛術」


【システムメッセージ: 使用スキル 影縛術 失敗。原因―現在のエリアに影が存在しません】


「な――」


ザシュッ!


骨槍がまつみの身体を貫き、そのまま宙へ持ち上げる!


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