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クリスマス

雪園のソエラ

作者: こむぎ
掲載日:2025/12/24

暗い暗い真夜中の真冬の空に輝く、一筋の光。


見た者はただ一人、1人寂しく廃れた地の塔で過ごす少女、

ソエラだけだった。



朝になると真っ白な湯気が口から吐き出る。


空も同じくらい白く霞んでて。


「...寒い」


ぽつり小さな細い声が響く。


そんな時、遠くで爆発音のような音が聞こえた。


塔の中の少女は困惑し、

しかし少しの興味を持ちながら小窓から外を様子見る。


けれど小窓は曇っていて、何も見えない。


そこで少女は石造りの壁の隙間から見ることにした。


先程よりは見える。


そしてはっきりと捉えた。


こちらに向かう同じくらいの背格好の人影を。


村の者では無いと思えた。


何故ならばこの少女が住む塔の地は妬み嫌われているから────



世界には今まで3つの『季』があった。


温かな生命を司る『春』

災難共に子供らはしゃぐ『夏』

彩りと食の『秋』


人々はその3つだけが世界の『季』だと思っていた。


いや、思い込んでいたのだ。


しかしある時、それは間違いだったと気づいた。


そう、世界にはもう1つ『季』がある。

冬だ。



--



「ねぇ!!君の名前は?」


「なんでそこにいるの?閉じ込められてるの?」


塔の外の隙間から少年は言う。


先程近づいてきていた人影はどうやら少年だったようだ。


しかし少女とは服装がどことなく、

いや全くもって違った。


「...ソエラ」


「ここ、私の家」


途切れ途切れに話すソエラ。


「家?こんな汚くて狭い塔が?」


そんな答えに素直に心零す少年。


傍から見れば失礼な奴だと思うはずだ。


しかしソエラは違った。


ソエラはなぜだか心温まった。


「...ね、君の名前は?」


「僕?僕の名前は " スノア " !!」


「ソエラは塔の外に出れないの?」


そうスノアは言う。


けれどソエラは答えるよりも先に眉に皺を寄せた。


「......出れないわけじゃないけど」


「...出る必要ある?」


先程の少し温もり帯びた声とは打って変わって、

低く冷たい声へと変わった。


しかしスノアは全く気にも止めず、


「出て一緒に遊ぼ!!」


なんて言う。


「は...、?」


「遊ぶ?どこで?何で?」


「雪で!」


そう言いながらスノアは地面の真っ白な雪を手で掬って空に放つ。


桜吹雪のようにパラパラと小さな雪の欠片が降ってはスノアを小さく襲う。


その光景をソエラは信じられないような目で見つめていた。


スノアの手には手袋が着いていて。


首にはマフラーが。


服もふわふわであったかそうだ。


ソエラが着ているのは秋物のようなカジュアルな服装で。


冬の景色には全く似合わない、

相応しくない服装だった。


「...それ、何」


「なんであんたが着てんの?貴族なの?」


そう、

スノアが着ているような冬物の服装は貴族しか着られないもの。


この地で、いやこの世界では。


冬は、嫌われているから。


「貴族?」


「貴族ってなに?」


「僕はスノアだよ?」


「名前の話じゃなくて...」


「ほら知ってるでしょ?平民とか貴族とか...」


「まさか...知らないの?」


怪訝そうな瞳でスノアを見つめるソエラ。


けれど相変わらずスノアは気に求めていない。


「知らな〜い!」


「それより早く遊ぼうって!」


そう言いながらスノアは半ば強引に壁の小さな隙間からソエラを引っ張り出そうとする。


が、案の定何も出来ない。


しかしスノアが触れている塔が何やらひび割れていた。


それにソエラが気づいたとほぼ同時に塔は大きな音を出して壊れ、

崩れ始めた。


驚きに目を丸くしてるソエラを他所にスノアはソエラの腕を引き、雪の地に足を着かせた。


「......寒い」


初めて雪に地を着いたソエラの最初の一言はこれだった。


当たり前だろうに。


ソエラはスノアと違って寒さを凌げるような服装ではない。


「じゃあこれ貸してあげる!」


「っ、それじゃあなたのが──」


スノアはソエラに自身のマフラーと手袋と温かな帽子を貸した。


もちろん温かな、ふわふわとした上着も。


「ううん、僕は大丈夫!」


そう言いながらスノアは雪にダイブした。

「なっ...!」


『ありえない』と言うように目を見張るソエラ。


そんなソエラに向かって雪玉を投げるスノア。


「ちょっと!何するのよ!」


その言葉と同時にスノアに向かって魔法で反撃するソエラ。


鋭い風切り音と共にスノアに向かって氷柱のような無数の氷の塊が飛んでいく。

けれど本人、

スノアは無邪気に笑いながら避けている。


「魔法?!」


「ソエラって魔法使えるの?」


「当たり前でしょ!」


そんな質問にソエラは少し偉そうにしながら答える。


気づけば時間はあっという間に経っていた。


2人は雪合戦もし、絵本の読み合いっ子もして。


雪兎をどっちが上手に作れるか競い合ったりもした。


いつの間にか冷たい雰囲気だったソエラは雪解けの春のように柔らかくなっていて。


「そういえばソエラは何頼むの?サンタクロースに」


「さんたくろーす...、?」


スノアの何気ない質問に困惑するようにキョトンと首を傾げるソエラ。


「え?!知らないの?!」


「サンタさんだよ?!」


さっきまではソエラが驚いての繰り返しだったのに、

次はスノアが驚かされる番。


目を白黒させながら何度も驚きの声を上げる。


「え、もしかして...クリスマス知らない...、?」


「なにそれ?」


「そんなぁ......」


「クリスマスっていうのはね家族と一緒にパーティして〜」


「サンタクロースっていう赤と白の帽子と服を着たふわふわモジャモジャの髭を生やしたおじさんに...」


「欲しいものを頼むの!」


「...それ、不審者じゃなくて?」


「違うってば!!」


不審者。


確かに何も知らないソエラからしたら、

情報から見た感じ不審者にしか見えないだろう。


「まぁいいや」


「良くないよ!」


「スノアは何頼むの?その、さんたくろーす?って人に」


「僕?」


「僕はね〜絵本!」


「絵本?随分子供じみてるね」


「酷いよ...」


ソエラの辛辣な言葉がスノアの胸にグサリと刺さる。


しょんぼりしながらスノアは口を尖らせつつ


「それで、ソエラは何頼むの?」


なんて話を振る。


「うーん...」


ソエラは唸り声のような声を漏らすだけで何も言わず、

時間だけが過ぎていく。



「物じゃなくてもいいの?」


「うん!もちろん!」


そして少しして口を開いたソエラ。


「じゃあ私は...」


「冬が四季に加わること」


「がいい」


呟きのような答えを聞いたスノアは一瞬何か分からず、

はてなマークが頭に張り巡らされた。


「今日、スノアと遊んで冬が楽しいことは分かった」


「けど皆...知らないから......」


「この先、みんなが冬を四季の一員として認めて欲しい」


「それが私の願い」


「いいじゃん!」


そう言いながら目を輝かせたスノアはソエラの両手を握る。


「いい願いだと思う!」


満面の笑みを見せながら笑うスノアにソエラは


「そうかな...」


と照れ隠しながらに微笑む。



to be continued...?

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