1:偽りのない契約・危険への誘い
初めまして、作者です。
このカラフルパレットが初めての作品になります。
楽しんでくださったら幸いです。
神と人間の世界、お楽しみください。
まずは希望の始まり..."希望への序曲"としましょう。
──────────────
...西側の窓から、日の光が刺す。
光に照らされた部屋の中には、広さに見合わないキーボードピアノに、数々のトロフィーや賞状などの名誉が、乱雑に転がっている贅沢な床が見られる。
「...ん、うぅん......今何時だ...?」
そんな部屋の中で、布団も被らずにベッドに横たわっていた、一人の少女が目を覚ます。
「スマホ..ん、もう17時か...なんだ?声が..」
その少女は、自分の声に違和感を覚える。
喉が乾燥して声がガサついていたからではない。
自身が普段から骨伝導で聞いている菅田◯暉似の地声が、オルゴールのような優しく柔らかい音色へと変化していたからだ。
「頭痛てぇ...ん..髪ふわふわして...伸びてる?」
頭痛で頭を抱えると、自身の髪がボリュームを増し、肩にかかり背中まで伸びていることが分かった。
自身の、不可解な体の変化に動揺していたその時だった...
『おや、おはよう』
突然、聞き覚えのない声が、耳に入った。
「──ッ!?」
その声に驚き、同時に警戒心が芽生えた少女は辺りを見渡す。
(誰も居ない...)
部屋の中には特に変わった物もなく、何も見つけられなかった。
「なんだ、幻聴か」
『現実だよ』
今度ははっきりと聞こえた、耳元で囁かれたような距離を感じ、少女は咄嗟に自身の右肩を見る!
『やぁ』
すると、肩にかかった髪の中から、小さなぬいぐるみのようななにかが、"ヌッ"と姿を表した。
『はじめまして、私は──』
"パァァァァァァンッ!!!!"(痛いタイプのビンタの音)
・・・謎のぬいぐるみは、台詞の途中で強烈なビンタを喰らい、壁まで吹き飛ばされた。
「ハァ...ハァ...なんだ今の...」
『ちょっと酷いじゃないかい?いきなり叩き飛ばすなんて』
まぁまぁ危険な吹っ飛び方をしていたが、そのぬいぐるみはまるでダメージを受けていない様子だった。
「え?ハ?ナニ?ナンナノ?オマエナンナノ?」
少女の心は、恐怖心で8割埋まっていた。
「...あっ、幻覚か、幻覚はヤバいな、病院だ」
『現実だって、私は確かにここに存在するし、君にだって触れる。ふんっ、ていっ』
そのぬいぐるみが、人の子を小突く。
すると確かに、たんぽぽの綿毛に撫でられるような感覚を、少女の体が感じ取った。
「...幻感覚?」
『そんなに幻にしたいのかい?』
少女は、眉間に皺を寄せて黙り込む。
そして、少し時間をおいた後に、落ち着いた様子で口を開けた。
「すぅ....ハァァ.......ぬいぐるみが浮いてたり、喋ってたり、色々信じられないことはあるけど、100歩譲って今はいい」
『おや、呑み込みが良いね、さっきまであんなに騒いでたのに』
「泣いても騒いでもどうにもならなさそうだし、それなら受け入れる方が楽だ」
少女は面倒くさそうにため息を吐き、謎のぬいぐるみに対して、尋問に近い質問を始める。
「さて、聞きたいことが山ほどある。まず、オマエは何者だ?」
『やっぱり最初は自己紹介からだよね、良いよ、元々教えるつもりだったから』
謎のぬいぐるみは、小さな肩掛けバッグのような物から、どう考えてもサイズの合わない"オカリナ"を取り出す。
『私はね、ぬいぐるみでもなければ化け物でもない、神さまなんだ。もっと言うと、音楽を司る神さま、"音楽の神"なんだよー』
「音楽の...神って..ほんとか?」
『嘘じゃ無いよ、嘘をつく必要もないしね、それともガッカリしてるのかい?神さまがこーんな姿で』
それは思った、神さまがこんなに小さく可愛らしい、もの◯け姫にでてくるこだまのような姿だなんて、だいぶ想像と違って面食らった。
「...分かった、でも仮にお前がものほんの神さまだとして、俺みたいな人間の前に現れる理由はなんだよ」
『良い質問だね、じゃあまず鏡でも見てよ』
※ここから未完成です
鏡は自分に向けられているのだから、自身の顔が映るのは当然...だからこそ疑問を持つ、そこに映ったのはルビーのように輝く赤い瞳と、整った顔立ちを持つ"少女"だったからだ。
「........................ん?」
「この鏡に仕組みはないよ」
首を動かし、左右上下と方向を変えて顔を見て見るが、鏡に映るのは変わらず、見知らぬ少女だった。
「スゥ──────...おい」
どう言うことか説明しろと言わんばかりに音楽の神を少女はじっと見つめる。
「どうやら私との"契約"で体まで変化してしまったようだね、でも大丈夫だよ、日常生活に害はないから」
少女は自身の体を見る。服がブカブカになっているのに胸周りはきつい、理由が分かった、分かりたくなかったけど。
「ははっ、寝て起きたら変なのが居て?そんで男から女になって?ベタすぎだろ展開作り下手かよ」
何故だかこっちに飛び火してきた。
そして少女はふと神に背を向け、更に下を向いて何かを確認する。
「ん?待てよ...待て待て待て待て」
この小説は健全な物語を目指しているのでハッキリは言わないが、16年間命を共にした相棒が、初めて姿を消していた。
「なぁ、俺のち◯こ無いんだけど」
健全と言ったな、あれは嘘だ。
「ち◯こが何かは知らないけど、人間は可愛いものに目がないと聞いたことがあるし、良いんじゃないかな?」
決して煽りではない、音楽の神なりの慰めだった。しかしそれが、少女の怒りに油を撒くことになる!
「良いわけねぇだろ疫病神がァァァァァ!!」
「まぁ落ち」
そのままの勢いで、少女は強烈な右フックを神の顔面にめり込ませる。
「酷いと言いたいところだが、まぁ無理もないね。これは私が悪かった」
「はぁ..はぁ..ふざけんなよマジで...うっ..」
少女は強張った体の力を抜き、胸に手を当てて深呼吸をする。
「ふぅ...よし、落ち着け..大丈夫..大丈夫..」
「大丈夫かい?体は大切にしないと」
ニヤニヤしながらそう言う音楽の神に対し、少女は怒りを超えて呆れていた。
「神かなんか知らんけど、お前初対面で印象最悪だからな」
「それは困るね、君とは契約がしたいんだ。それがもう一つの用だ」
「...さっきからお前が言ってる"契約"ってなんだ?やっぱお前悪魔なのか?」
契約、神が吐くその言葉には、何か強い力がこもっているように感じた。
「良い質問だ、答えよう。契約とは、人間と神が互いの目的や夢のために利用され合う関係..."神と人間の共依存"その到達地点なんだ」
「神と人間...その理論だと、お前に目的があるみてぇだな。音楽の神だったか?音楽関係でなんか叶えたいことでもあんのか?」
「そんなところだね、"メロディの普及と復活"...目的はこれで良いかな」
その言葉、偽りかどうかは怪しかったが、嘘を吐いている様子は感じられなかった。
「そうか、じゃあ頑張れよ。俺はそんな大層な夢の力になれなさそうだから断る。あと体戻せ」
「いや、力になれるよ。あそこにある大量の賜り物を見れば分かる」
こういうことがあるから、普段からトロフィーや賞状は片付けておくべきなんだなと少女は思った。
「それに...良いお母さんが居るそうじゃないか」
その瞬間、奏は音楽の神を睨み、今までにないほどの殺気を向ける。
「神様ならなんでもやって良いのか?あ?」
「私が何かする訳じゃないよ、でも...これからの未来、この世界は確実に"危険"を呼び起こす。その時、君は大切な者を守る力を求めるだろう」
そんなものはヤツの妄想、確証なんてない妄言...何故だか、そう思えない。少女の脳裏に浮かぶのは、大切な友と、母の顔だった。
「守る力って...戦闘系の話、いつからしてたんだ?」
「私の目的の話だよ、私の願いは、危険への導きだ」
少女は目を瞑り、過去を思い返す。
──────────────
「別に弱くて良いだろ、それで困ったら俺がお前を助ければ解決だしな」
──────────────
(良くないんだよ...俺が守らなきゃ)
かつての友の言葉とは裏腹に、奏は力を求めてしまっていた。自身の細い、貧弱な腕を見ながら。
「はぁ...クソが、俺の願いは高ぇぞ」
「もちろん、全額支払うよ」
少女はたった今、後戻りできない所まで足を踏み入れてしまった。そんな少女を見て、音楽の神はヘラヘラ面を剥がし、悟られぬよう不気味な笑みを浮かべた。
「何が欲しいんだい?夢を叶えようか?」
「自分の夢は自分で叶えるから結構、そうだな...うーん...決めた、"教えない"」
予想外の答えに、音楽の神はただでさえ丸い目をもっと丸くする。
「教えない...これまた珍しいことを言うね」
「お前の目的を追ってるうちに考えてやるよ、度肝を抜いて無理だって言えるようなやつを」
この時少女は、完全に神に対して対抗心を燃やしていた。言いなりになるのはごめんだと。
「良いよ、わかった。そういえば君、名前を聞き忘れてたよ、契約者になるんだから、聞いておかないとね」
思い出したように名前を求める音楽の神に対して、少女は素直に答える。
「俺は"白石奏"、奏で良い」
「そう、よろしくね奏」
音楽の神が奏の名を呼んだ直後...
"ピーンポーン"
一階の玄関からチャイムの音が響く。
「母さん?...じゃないな、まだ帰りの電話が来てないし」
「...あれ?ここまできちゃったかな?」
音楽の神は何か知っているのか、奏の手を引いて一階に誘導する。
「は?ちょっ、なんだよ」
「ごめんね奏、早速だけど"初仕事"だ」
「は?」
奏がそのまま玄関まで行き、目の前に立つと、外から聞こえるのは聞き覚えのある声。
「ただいまー!奏ー?居るー?鍵忘れちゃって入れないのー!」
なんだ母さんか、そう思いたかった。しかし、玄関口の様子を映すモニターに映されたのは、黒いもやだった。
「なんだこれ...故障か?」
「残念だけど違うよ、こいつは私と同じ神様だ」
「はぁ!?神様!?」
さっき音楽の神が話していた通り、別種の神がいた。
しかし、音楽の神の見た目と比べると、悍ましいほどドス黒かった。
「ねぇかなでー?いるー?」
「本体じゃないから擬態が下手くそだね、これなら初めての戦闘も問題ないだろう」
「はじめてのお使いみたいに言うな。てか本体とかあんのか?なんでここに来てんだ?」
「細かいことは後で説明するよ、時間がないから今は...」
"ガチャ"
奏の頬に冷や汗が伝う、鍵がかかっていたはずのドアが開いた。
「なんダ、イるジャナイか」
奏が口を開く前に、黒いモヤの怪物は、鋭い爪の生えた剛腕を、すでに振り下ろしていた。




