3話
8 初依頼
掲示板の前に立つと、紙に書かれた依頼がずらりと並んでいる。
魔物討伐、薬草採集、荷物の護衛——中には高額報酬だが危険度の高いものもあった。
「……これなら、なんとかなるか?」
蓮が選んだのは、『ゴブリン討伐:報酬1匹につき銅貨3枚』。
討伐数に制限はなく、Fランクでも受けられる初心者向けだ。
だが、説明書きにはこうある。
“単独行動は推奨されない。可能であればパーティを組むこと”
確かに、さっきのスライム戦で蓮は痛感していた。武器も経験も乏しい自分が、単独で魔物に挑むのは無謀だ。
9 仲間候補との出会い
どうやって仲間を探そうか考えていると、背後から声がかかった。
「おい、あんた。ゴブリン討伐に行くつもりか?」
振り向くと、そこには短く刈り込んだ黒髪の青年が立っていた。
革の鎧を着込み、腰には片手剣。
年は二十歳前後で、鋭い目つきが印象的だ。
「はい。一応……」
「一応じゃ死ぬぞ。俺はガイル、Eランク冒険者だ。新人を手伝うのが好きでな」
口調はぶっきらぼうだが、差し出された手は力強かった。
蓮は素直にその手を握る。
「藤崎蓮です。よろしくお願いします」
10 初めてのパーティ戦
翌朝、蓮とガイルは街の北の森へ向かった。
ガイルは道中、ゴブリンの習性や弱点を簡潔に説明してくれる。
「ゴブリンは群れる。だから数を減らすには、見張り役から先に仕留めるんだ」
「なるほど……」
やがて、木陰に小柄な緑色の影が見えた。
蓮は息を潜め、【鑑定眼】を発動する。
【ゴブリン(見張り)】
HP:18/18
攻撃:5 防御:3 素早さ:4
特徴:視力は弱いが聴覚が鋭い。武器は粗末。
弱点は首元の皮膚が薄い部分。
その情報を耳打ちすると、ガイルが感心したように笑った。
「お前……鑑定持ちか。そりゃ便利だ」
合図と同時に、ガイルが剣を振るい、蓮は脇から枝でゴブリンの足を払う。
バランスを崩したところをガイルが一撃で仕留めた。
【ゴブリンを倒した!】
経験値+12
レベルが2から3に上がりました。
短時間での二度目のレベルアップに、ガイルは目を丸くした。
「お前、成長早すぎじゃないか?」
「……ちょっと、特殊な加護があって」
「はは、面白ぇ。こりゃ伸びるぞ」
11 新しい一歩
討伐したゴブリンの耳を証拠として回収し、街へ戻る。
ギルドで報酬を受け取ったとき、蓮の胸に湧き上がったのは——達成感。
自分はもう、ただの高校生じゃない。
この世界で生きる一人の冒険者だ。
ギルドを出ると、ガイルが肩を叩く。
「蓮、しばらく俺と組むか? お前の鑑定は戦いの幅を広げる」
「……ぜひ、お願いします」
握手を交わしたその瞬間、蓮の中で何かが確かに変わった。
異世界での新しい日々が、本格的に動き始めたのだ。