その1
この世界には、僕が100人いる。
正確には僕はクローン人間で、同じ遺伝子のクローンは100人いる。
僕はこの世界で特別にならないといけないのか?
同じ人間が100人いるのに後天的な差で優劣をつけるのか?
みんな、同じ教科が得意で同じ教科が苦手なのか?
遺伝子が同じだからね。
オリジナル(クローンの元)の僕はどんな人間なんだろう?
たまに考える。
裕福な家庭にいった1人の僕は、貧しい家庭にいった1人の僕をどう思うのかな?
1人の僕は、ケガをして1年間歩けなくなった。出遅れてしまった。ケガをした僕は、健康な僕をどう思うのかな?
僕の1人はリーダーになった。学校の成績も優秀で優しくて頼りになる。みんなのことを考え行動している。
僕の1人は、落ちこぼれになった。たまたま、学校の友達とうまくいかず人間関係の問題で学校に行かなくなった。
何が違ったのだろう?
同じ遺伝子の人間なのに。
ある1人の僕は、ムードメーカーになった。僕たち5人が集まり協力できるように調整役をした。おかげで、うまく人間関係が築けた。僕に子供ができたら、子供が家族のムードメーカーになる場合もあるなと思った。
ある僕は、犠牲者になった。大学にいくために彼は働き、他の仲の良い僕の1人を大学に行かせた。
「君の方が勉強すれば、社会に貢献できる人間になる。」そう言って彼は進学をあきらめ就職した。
同じ人間なのに、なぜか色々な人生が生まれた。
不思議だった。