最凶最悪の魔女がやってきた
「もう、ケン、ごめんなさいって言ってるじゃない。ほんの少しリビドーの塊が漏れ出ただけじゃない?」
あれが、ほんの少しか・・・オーラム、恐ろしい子!!
「んふふーー私は恐ろしいのよ?最凶最悪の魔女って呼ばれてるし。」
そこのところ詳しく説明してもらおうか?
「いやあ、大したことはないのよ?ここ三百年ほど、討伐隊を全部返り討ちにしているだけよ?」
それだけでは最凶最悪の魔女ってほどでも・・・
「あんまりしつこい時には首都に少しばかり攻撃を・・・」
多分それだ。
「あうう・・・だからあなたが必要なの・・・ううー、まだ説明中なのに、討伐隊来ちゃった・・・」
彼女に手を引かれて一緒に家の外に出た。ここに来て初めて見たが、ここって鬱蒼とした森の中に佇む一軒家の風情で悪くないな。
・・・僕の目には敵なんてどこにも見えないけど・・・そもそも、明らかに強力な魔法使いであろう、オーラムに僕が必要なのだろうか?撃退ぐらい自分でできるのでは?
「一回見ればわかるわよ?・・・もうすぐ接敵するけど・・・あっちに別動隊がいるわね。ちょうどいいから、ちょっと威嚇するわね。」
相変わらず僕には、どこに何がいるかなんてさっぱりわからないが、別動隊とやらの方向に手をかざした。
すると、まばゆい光線が、見えなくなる位遠いところまで一瞬で薙ぎ払った。後には土壌が露出した荒野が残るばかりだ。
えーと、しまったかな?金属の義手でもつけて、薙ぎ払え!って命令だすところだったのでは?(混乱中)
「ようし、えらい奴をうまく巻き込んだわよ!!よし!!死んでない!!私えらい!!」
評価基準が激甘な様な気がするのはそっとしておこう。
「えっとお、わたしぃ、手加減が苦手でぇ、被害が甚大になっちゃうからぁ、ケンが上手く撃退してくれたら、うれしいなあってぇ・・・」
オーラムは妖艶な美女枠だから、そういうのは、ロリ枠の美少女に任せるべきでは・・・
そんなことより、ごめんなさい。確かに彼女に撃退を好き放題にさせると、人類滅亡の危機だってことが非常に良くわかりました。僕ができる限りのことはやらせていただこうかと思います・・・
「まあ♡わかってくれて嬉しいわ♡・・・ふひひひひ妖艶な美女ですって?じゃあ帰ったらまたすぐ夫婦の営みを・・・」
いや、夫婦の営みは置いといて、先ずは撃退ってどうすればいいのか教えていただきたいのですが?
「あなた、以前は全員殴り倒して、回復して、相手の心が折れて帰るまで、それを延々と繰り返してましたわよ?」
・・・確かに犠牲者はでなさそうだけど、どうなのかな、それ?・・・あと僕、喧嘩とかしたことないんだけど、多分。武術とかも知らないよ、おそらく。
「あーじゃあ、これを参考に・・・」
いや頭の中でカンフー映画とか教本とか、そんな高速で流されても困るんだけど?そんなんで物事を覚えられたら今頃、僕は総理大臣にでもなってるよ!!・・・ああ、八極拳はやっぱりいいなあ・・・(ヤケくそ気味に)
・・・・・・・・
あああ、とうとう接敵しちゃった。どうしよう?何とか無辜の民が巨神兵のビームに塵も残さず焼き尽くされるような事態は避けなくては。そもそも、平和な生活を送ってきた、アイデンティティが日本人の僕に、いきなり戦えと言われても・・・こういう時はアレだ「説得」!!
「あのう、手荒なことはしたくないので、このまま引き上げてもらえると嬉しいんですけど。」
なんか、ざわざわする敵陣。
「お館様!!あの男、まったく聞き覚えのない、得体のしれない言語を話しております!!呪文の類ではないようですが。なんでしょうか?」
「く!!魔女め!!新たな従者をまた異界から引き寄せたか!!油断するな!!相手がなにをするかわからん!!」
あの、オーラムさん?今、聞き捨てならない発言が、敵側からあったんですが?
おい、どうして目線を逸らす?口笛吹いてごまかそうとしてるのは分かるけど、音出てないぞ?