第九十四話 「言視の神伐戦 Ⅱ」 三幕 詳細Ⅱ
言視の神伐戦 キャラ等の設定Ⅱ
□ ケルドとフェンリル □
『ケルド・ロキ』
ケルドはこの世界で名乗っている名前であり、主人公の下いた世界での名前はロキ。
相手の心を読み、裏をかけばその裏を必ずついてくる。『神慮思考』という能力を持つ。
同時に変身能力もあり、一度隠れられると見つけるのは困難。
神器『輪廻の鎖』「記憶を失わず、他者の生前へ生まれ変われる力」を所有。
その力の効果で現世では完全に殺す事が出来ない厄介な奴。
性格は、一言で言うと子供。善悪の区別は無く、自分が楽しいと判断すれば、
敵にも味方にもなる。 ただその者に価値を見出せなくなると、
どれたけ親しくなった者でも、躊躇い無く殺す残忍さもある。
現在は主人公達に一度敗れ、過去の何処かへ生まれ変わり所在不明。
『フェンリル』
当初は、主人公の生前と思われていた。その実ロキを待ち構え、
輪廻の淵、奈落で牙を研いでいた。未だに理由の多くが不明である。
奈落の淵に初世代ヒロインのメディが、咎人の鎖に囚われてしまった時。
その秘密の一部を明かす事となった。
『輪廻の鎖の欠片』を二つ所有しており、ロキがコレを盗む時に噛み砕いた物という事。
そして、メディを助ける為に主人公が、現世において一つの地獄を受け入れる。
『輪廻の鎖の欠片』の一つを魂に持つ事で、記憶を持ったまま生まれ変わる事となる。
幾度の転生を繰り返し、現世にいるロキを再び輪廻に追い込む役目をフェンリルより任される。
フェンリルが何故ロキを追っているか、その殆どが未だに不明だが、一部だけ明らかになっている。
『我が名を返せ』『アルテミスを返せ』の二つであり、その意味は不明のままである。
□ メディ=アルト □ 初世代ヒロイン。
大精樹ユグドラシルの種であり、魔人。
ユグドラシルの種とは、植物が風に種を運ばせるのに対し、この樹は生命に種を運ばせる。
命の中に種があり、その命が大地に還った時にユグドラシルが芽吹く。
現在は、既に死去しておりイグリスの街の外れにひっそりと、大精樹ユグドラシルとして生きている。
三幕からの身体設定。精霊時 身長165cm 体重不明。ストレートの金髪を肩まで伸ばす。
蒼色の目に少し細い目。全体的に痩身でB75前後。 あまり色気は無い。
服装は白で統一された古代ギリシャの女神の様な布を纏っている。
まだまだ若木であり、その力は弱く、セアドの失った分の力を補う程度。
性格は少しボケた所があり、大人しい。普通の女の子といえばそうなる。
フェンリルに初対面で啖呵を切ったりと、結構肝が据わっている事が判る。
□ イグリス □
メギアス大陸、南東部に位置する美しい自然と山々に囲まれた国。
星型の城壁ともよべる壁に包まれた巨大な街。
基本的に赤茶色のレンガの様なもので建てられている部分が多く、
スペインの街並みと言えばそれに近い。 温暖で住み易く、空気と水も澄んでいる。
イグリスの空気は少し甘い香りが漂う特徴がある。これは建物に使われている材質の匂い。
その街の中心部に巨大な城に似た建造物があり、学園と呼ばれているリンカー育成機関である。
四年まで学年があり、封印が破られてから250年、
世界各地で起こり出した現象。様々な封印がいきなり解ける。
眠っていた一斉にとはいかなくても、一定周期で魔物が目覚めてくる原因を突き止める為。
あらゆる国に無償で支援を送り続けている。 勿論それは自国の不始末が原因であり、
慈善でやっているという事でもない。 が、世界から見たら義国である。
勿論それを好ましく思わない国も数あり、敵対関係にある所も少なくは無い。
□ ディエラ □ 初世代から登場している風魔王エヴァリアの片割れ。風を支配下に置く力を持つ。
言動がおっとりしている上に、無駄にエロい。 人間・魔人・精霊と仲良くやっている魔族。
現在はイグリスで先生なぞをやっているが…どう考えても聖職者では無い性職者。
年齢不明 身長175cm前後 体重不明。背に黒い翼があるサキュバス。肌は青白く、
肉付きの良い洗練されたボディラインをしている。B85で形はお椀型。目は黒く真紅の眼。
黒髪のストレートを腰まで伸ばしている。服…というよりも紐ビキニしかつけていない。
性格は何を考えているか判り難い。ただ常時体のラインを気にしている事は言動から判る。
一言で言うと、蛇みたいな女で男を漁るのが趣味。
□ オーマ □初世代から登場している風魔王エヴァリアの片割れ。能力はディエラと同様。
見た目も言動も酷い奴。一言で言うと、色物ネタキャラのインキュバス。
現在登場人型キャラ随一の巨漢&パワーを誇る。
年齢不明 身長220cm 体重不明 典型的ガチマッチョ。輪郭は四角で、潰れた団子っ鼻。
博多明太子の様な分厚く赤い唇。見事に割れたケツアゴ。
それらに似つかわしくない人形の様に円らな瞳と長い睫。目はディエラ同様。
髪はクルクルパーマにクロワッサンの金髪。色男では無く、ブサイク男色インキュバス。
性格は、無駄にテンションが高く可愛いモノ・美しいモノに目が無い。逆は嫌う傾向にある。
服はディエラと同様。
□ 疾風の大精霊クァ □ 風の精霊フィアの子。 風がより強い風を生み疾風となった。
現状唯一の大精霊。風のある所なら全てを見聞き出来るふざけた能力を持ち、
一つの国全体に強力な風の防壁を長期間張れる事から、相当強力な精霊である事は判る。
だが、精霊セアドにお尻を叩かれる事を極度に恐れており、滅多に手伝いはしてこない。
見た目は、青白い羽をしたインコの様な鳥。 目が大きく嘴は黄色でややブサイク。
トサカが無駄に長いわりに、尻尾が短い。 その上良く喋る。
□ 無風活殺 □ 風の精霊フィアが使う防御の力。 それをクァも受け継いでいる。
単純に説明すると、壁に石を強く投げると、
当たった石がその勢いに比例して砕けたり、割れたりする。 そういう力。
壁が使用者であり、石が敵。
三幕でイグナが出てくるまでは、無敵と思われていたが、簡単に弱点を見抜かれてしまう。
質量の重いモノならば返せるが、質量の極端に軽く風に巻き込まれる様なモノ。
例えば火である。使用者に火が巻きついてしまうので対魔法の防御性能は低い事が判った。
□ 風空自在 □ 風魔王エヴァリアの黒き風を操る力。一言で言うと重力操作に近い。
現在使えるキャラはイストラードとディエラ&オーマである。
ただ、ディエラとオーマは力を分けてしまっているので、使えるかは不明。
無風活殺は防御。 風空自在は攻撃。 そして疾風の無形と無限。
この二対が何かしら関係しているのか、血族では無いイストも直系魔精具を保有するに至る。
□ 精霊セアド □ 大精樹ユグドラシルであり、その名は何故か伏せている。
アルセリアの教えの代行者であり、メディの母親。
非常に厳しい性格をしているが、それは優しさの裏返しである。
全精霊の内で最も強い力を持つが、争う事を極度に嫌う。
隠者の森セアド という森に住み、静かに余生を暮らしたい者は、
種族や経緯に関わらず全てを受け入れ、その命が大地に還るまで見守る。
その森は非常に広大で、彼女の怒りに触れる事はその森と戦う事になる。
ちなみに、ユグドラシルとはその森の木全てであり、巨大な一本の木では無く、
広大な森全ての為、知らない者がユグドラシルを見つける事は困難である。
精霊時の身体設定 身長175cm前後 体重65kg前後 絵画で描かれている様なふくよかな女性。
全体的に白で統一されており、服がやや透けている。 メディ同様にギリシャの女神風の服装。
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「うげあー…何だよの戦術核ブチ込んだ様な砂煙は」
「せん…なんじゃ? それよりもほれ、皆向かいだしたみたいじゃぞ?」
戦術核ブチ込んだ様な空模様というか、地平模様? それが一番しっくりくる有様。
いや、下手すりゃイチロ…いやいや、地殻津波かよと言いたい。
そんな砂の津波が幾重にも重なり波状に広がっている。 まだ何が何だか姿すら判らない。
が、雷の嵐? 何かそれっぽいのも見受けられ…なんか知らんがもう取り合えず行くしかないな。
俺は、イストとリンカーフェイズして、鷹の一部姿を借り、ヴァランを誘導しつつ向かった。
レガは、遠くから見ていたが、意の一番に飛んで行った。
余程嬉しいのか、かなり離れているというのに、俺の体にビリビリくる様な咆哮が聞こえてきた。
他のイグリスの奴等も、それに続くかの様にリンカーフェイズした状態で向かっているが…。
やはり飛ぶ機能の無い奴も当然居る。 それを連れていくのも大変そうだ。
あの距離なら数時間で着くだろうが…。
そんなこんな、考えつつ、俺達も其処へ向かっている。 段々と砂煙が大きくなるが一向に収まる気配が無い。
いくらなんでも、一時間以上少しも晴れる気配が無いってのも…んだありゃ。
「何か、おかしくね?」
「なんじゃろう、とてつもない魔力が…リーシャじゃろうか」
いやまて、霊宮から出れないんだろ。 いくらなんでも…。 互いに顔を見合わせて悩んでいる俺達に、
ヴァランが話しかけてくる。 何か気づいた様だ。
「この感覚…、忘れもしない。スレイワードの魔力だ。 どうやら封印を解いたが、
私達が来るまでは、彼の地に縛り付けておくつもりの様だな」
おいおい。 地中深くからそんなバケモンを縛り付けるってどんだけだよ。
その魔力を頼りに飛べる様になったのか、ヴァランは俺達を背に乗せて一気に速度を上げる。
「うぼぁ!! 早過ぎ!!!」
「…」
イストは余りの高度と速さに俺の背中に羽に潜り込んでしまった。 だが、これなら速攻で着くが…。
他の連中と歩幅が合わんぞこりゃ。 …てお? な な な な な な。
「ヴァかな!!!」
「これは…。 驚いたな」
ヴァランも余りの事で驚いている。 まだ数時間はかかろうと言う距離だったのが、いきなり目と鼻の先になった。
イグリスの連中も驚いているのか、かなり後方にいたのに、俺達の周囲で顔を見合わせている。
そんな驚いている中で、俺達を見つけたのか、
姐御達がこちらに近寄り、連れて来てもらっていたリンカーからヴァランの背へと乗り移る。
そしてワケが判らないのか、俺に急いで駆け寄って尋ねてきた。 いや、俺だって知りたいわ。
「スヴィア君。こりゃ一体なんだい? いきなり目と鼻の先にあの砂嵐が来たんだが」
「いや…俺もさっぱり。多分リーシャじゃないかと…」
ラナさんやイグナもそれに頷いている。 こんな馬鹿げた事が出来るとか、考えると当然彼女に行き着くわな。
そんな混乱にも似たイグリス勢。 それを治める様に、脳内に声が。 やっぱりリーシャか。
<かなり遠かったから、ボクが空間ごと移動させておいたヨ。
流石にこれ以上繋ぎとめるのは無理だから、頑張ってネ>
いや、待て。空間ごとってなんだよ。 こんな奴でも倒せなかったのを倒せってか? 無茶だろ!!!!
その声の主が誰なのかわかっていないイグリス勢だが、味方が増えたと勘違いしている…いやまぁ味方だが。
これ以上手伝えないという事を忘れて、士気が高まっている。
こんな事出来る化物でも倒せなかった。ソレに今から挑むと言う事を忘れてないか? とツッコミたい衝動にかられつつも、
目の前の砂嵐が段々と晴れてきて、姿が露になってくるのを生唾を飲んで場の全員が見ていた。
俺は少し、周囲へと視線を移すと、同じくヴァランの背で身を震わせて喜んでいるイグナさん。
何か考えているのか、砂嵐に目はいきつつも別の物を見ているかの様な姐御。
で、…ラナさんは、砂嵐から出てくる蛇神よりも、ヴァランに興味津々である。 余裕過ぎるなこのオバサン。
そんな姐御達を見ていると、周囲から大小様々な声が聞こえたので、視線を砂嵐に…ぶへあ!!!
なんじゃありゃ!!!
デカいとかデカくないとか。そんな次元のモノじゃないだろ。つか物理攻撃通用するのかアレ。
もう長さが判らん推定でも測定不能。 一ついえる事は、頭が雲の上。 確実に富士山より高い。
見たまんま蛇の様な容姿だが、鱗らしい鱗は無い。 どちらかというとウナギみたいなこう…ヌメヌメツヤツヤした。
それに加えてキモい程の多く生えた長い脚。何この浅黒いムカデウナギ。
見た目細長く、ムカデみたいな胴体と脚をしている癖に、ウナギみたいにヌメヌメツヤツヤ。
硬い印象は無く、見た感じブヨンっとしてそうな。 打撃はいかにも通じませんと言った所。
表面を何かヌメヌメした粘膜が覆っているので、恐らくは外面からの雷撃耐性は高いと思われる。
然し、蛇…確かに蛇だが…微妙なラインだなおい。
それを見た姐御が、ヴァランの首元から身を乗り出し、大声で周囲に聞こえる様に叫ぶ。
「良し! じゃあ手筈通りいくよ!!!」
俺達はお留守番なんだよな、ヴァランも有効手段だし。 レガはそういやどこいっ…ぶは!!!
姐御の合図を律儀に待ってたのか、その声と共に更に上空で、サザのアレをやっていた。
翼で空気の渦を作って、一瞬真空状態にしそこに火を吐いて爆炎をつくり、それを吸収して身体能力あげる奴。
やる気満々だなおい。 既に直系100m近い火の塊を作り出してて…熱い。
熱量が結構離れているコッチまで届いている。 その後それが収縮されて、
良く燃え尽きないなと思うが、火竜というか爆炎竜と言った方がいい様な姿になり、
一番にキュグラに飛び込んだ。 キュグラはまだ封印から目を覚まして無いのか? 動かない。
いやまだ動きを止められているんだろうか。
レガが大きくキュグラをぶん殴ると、その周囲のヌメヌメが焦げてなくなり、白い身が露になる。
が、即座にそれは復元されて元に戻る。 それを見たレガが一度間合いを取ると同時に、
イグリスの前衛100人近くだろう、攻撃に移った。 中には魔精具を持っているのもいるのだろう。
武器の様なモノで斬りかかっていたり。…だが一向にダメージ与えてる気配無いな。
数字が飛び出すとしたら1ばっかだろうこりゃ。 そんな中で気づいたのか、いきなり暴れ出したキュグラ。
…。ただの一薙ぎ。 尾の一薙ぎで、前衛に回った奴を纏めて叩き飛ばした。
見る限りでは、既に戦えないのが半数以上。 既に絶命してそうな奴も見受けられる。
骨が飛び出るとか、体が引き千切れるとか。そういったモノじゃなく、多分に全身の骨を砕かれたんだろう。
まともに尾撃を喰らうと即死と考えた方が良い。 って ふと後ろを見るとラナさんとイグナさんがいなくなっている。
姐御も他のリンカーに連れられて、陣形を取り直そうとしているのかアレコレ合図してるが…。
「ふむ…。 スヴィアであったな。 どうするか? このままでは即全滅してしまうかも知れないが」
「じゃのう…。 文献よりも恐ろしい攻撃力をしておるな」
「どうするって…なぁ。 決めた事を破ると姐御怒るしなぁ…」
そう、俺は敵戦力の分析の為に、戦うなと言われている。 が…一撃喰らっただけでこれだろう?
どうするよ。まだ言視術も使ってこない。 つまり使う程の脅威を感じていないと言う所だろうか。
それにおかしいぞ…神族なり魔族なり精霊族なりと戦うと、あの超重力場が出てないとおかしい。
それすら使う必要が無いとみられているのか? …判らん。
ヴァランから視線を再びキュグラに移す。 どうやら後方と陣形が入れ替わった様だ。
波状を取っているので、交代してダメージを回復させる為だろう。…でも即死してる奴は再生能力の意味が無い。
流石に警戒しているのか、結構な距離を置いて、遠隔攻撃の出来る奴が攻撃をしている。
火炎のブレスだったり火玉だったり、雷もあるが…弾かれてるな。やっぱあのヌメヌメどうにかしないとか。
ヴァランも上空からあのバカでかいブレス吐いてるが…、すぐに復元しやがる。
もっと復元に時間がかかる高火力のモノをぶつけないと意味が無い様だが…。
見えてるあのムカデウナギ自体が幻術という線はあるのか?
俺は周囲を見回したが、それらしき何かは見当たらない。 地中にそいつがいたら、
リーシャが真っ先に何かしているだろう。つまり本体という事になる。
しかし、尾撃はもう当たらなくなった様だな。 距離を置いて警戒している所為だろう。
だが、近距離じゃないとダメージが…てうお!?
その瞬間、砂地についているキュグラの腹の一部が、爆炎と共に大きく吹き飛んだ。
爆風が土煙を巻き込んでキュグラの地面に接している前面部を包み隠す。
その直後に今度は左側の中腹ぐらいにある脚が吹き飛ぶ。 なんだ…何が…ひでぇ!!!
さっきの尾撃だろう。それに張り付きでもしていたのか、
キュグラの浅黒い背中付近に、イグナさんが脚から脚を駆け上って頭を目指している。
「どんだけやねん! あの人は!!!!」
「なんじゃ? 何かわかったのかの?」
「どうしたのだ?」
思わず、右手で空気にツッコミを入れて叫んでしまった俺。それを見てくるヴァランとイスト。
「いや、ほれあそこ。 イグナさんが脚から脚をジャンプしたりして、キュグラの頭目掛けて登ってるよ」
「むぅ…遠くて見えぬ」
「鷹の目。という奴であったな。
…成る程。死角である背面と側面を伝って、頭部を吹き飛ばすつもりなのだな」
その通り。と答えると、俺は再び足元へと視線を向ける。
そういえばラナさんだろうな、さっきの馬鹿げた爆発おこしたの。 うぉおっ!!!
アレが精霊術という奴か。 しかも狂気といわざるを得ない。
遠距離だと効果が薄いと見るや否や、尾撃の当たらない超近距離で手の甲を切って血を紋様に流し、
その血の一滴だけが地面に落ちる寸前に、何か火の塊。炎でもなく球体。 それになっている。
そいつをいくつも作り出して、キュグラの腹部に殴り込ませると周囲が溶け、中にめり込む。
復元しようにも、常に溶かされてるので復元出来ない様だ。 持続性ダメージかよ。
それを10数個か。囲む様に埋め込むと、ラナさんが何か印の様なものを手で結ぶと…うげぁ。
一気にそれが爆発して、周辺の肉を纏めて吹き飛ばした。
アレか、ビルを崩す時にダイナマイトを一定間隔で取り付けて爆発させて倒す。
まさにそんな感じだろう。 体の周囲にあの赤い球体埋め込んで、一度に爆発させる。
その効果があったのか、胴体が二つに千切れ、見えにくかった蛇みたいな頭が落ちてきて、
砂煙と爆風を撒き散らして地面に埋まってしまった。
「すごいのう…あれ程の巨体を横真っ二つにしてしまいおった…」
「神族と戦った事のある者と、そうでない者の差が如実にでているだろう」
その通りだわな。イグリス勢どうみてもダメージ1ばっかで、
ラナさんとイグナさんが9999連発してるというイメージ。
て、うお? 何か地面揺れてね? いや揺れて…地割れってなんだよ!!!!!
倒れてきたキュグラの上半身といえばいいのか、その一部を食い千切る様に飲み込んでしまった。
一体誰だ! こんな大地の怒りみたいな事しやがるのは!!!
見た事無い…ん? あのミニマム化したとはいえ、特徴的な眼鏡は…セレンさんとロドさんかよ。
金プレートは伊達じゃないという事か。 そのまま引き続き地割れで、下半身部分の尾の部分。
ソレを挟み込んで尾撃を封じてしまった。 やべぇ…イグリス勢も負けてねぇ。
胴体を三等分され、尾撃を封じ込まれたキュグラが復元しているが、流石に時間がかかる様だ。
その隙をついて、更に…ん? イグナさんが砂地から、まるでモグラでも出てきたかの様に這い出てきた。
なんでだ? …ああ。頭狙いにいってたんだったな。
ラナさんの元に物凄い勢いで駆け寄り、めっさ怒ってる怒ってる。 それに対し両手を腰に当てて笑い飛ばし…
「…ってどんだけ余裕やねんアンタ等二人は!!!!」
「なっ…なんじゃさっきからいきなり大声だして主は」
「戦いたくて抑えきれないのだろう。 私も同じだ」
いや、そう言う意味で叫んでるんじゃなくて…ツッコミ所多過ぎるんだよあの二人は!!!!
然しまぁ、思ったより弱いなこいつ。 …いやまだ奥の手も出してないしな。
復元を上回る火力は流石に出ないのか、どんどん傷が治っていく…つか。
「ヴァラン。アイツは血液が無いのか?」
「生物で血液が無いのは在り得ないだろう。 何か隠しているのかも知れん」
「だよな」
復元速度速すぎて血が出ないのかと思ってたが、アレだけ強烈に胴体三等分にされて…んだ?
<< し…しゃ >>
ししゃ? なん…ぶは!! その言葉が出た瞬間に、キュグラの周囲から人間つか裸の女!?
…いやまて、アレはあの時のラミアみたいな奴の下らん欲望の餌食になった奴等の死体じゃないか?
明らかに体の一部の骨が突き出たり、もげてたり。腐ってたり。 そせい…蘇生。
…。
ネクロマンサーかよ!!!!!! つか あのラミアもどきまで沸いて出てきたぞ!!!!
しかもイグナさんに黒こげにされた状態のまま。
だが魅了能力なくなってるのか? 普通に物理攻撃のみでリンカーを襲ってるが。
50人程でソイツ等を制圧しようと一斉に飛び掛り…何かおかしいぞ。
女のゾンビの方も結構な数だが…倒してるのもいれば、無視しているのも。なんじゃこりゃ。
また沸いてきた。 は? 100ぐらいか? 増えたぞおい!
倒れて復元しているキュグラの周囲を取り囲む様に、ゾンビが這い出てくる。
既に8割程復元させてしまっているが、イグナさんとラナさんがそれを必死で食い止めているんだろう。
キュグラの至る所で爆発と爆炎が交互に巻き起こっている。 ゾンビの方も土に返れと言わんばかりに
ロドさん達が地割れを起こして飲み込んでいく。 つか何の前世だよあれ!! タイタンか!?
優勢だったが、ワケのわからない言葉一つでドッコイドッコイに持ってこられてしまった様だぞこりゃ。
と思った瞬間更に砂地から、何か一際デカいのが砂煙と共に出てきたんだが…。
「うーわー…ドラゴンゾンビまで出してきやがった」
「なんじゃ…竜の屍かのう」
ひでぇ!! ドラゴンゾンビかよ!
俺は視線をヴァランの背に移して、考え直してみた。 死者という言葉だけでゾンビとして生き返る。
いやそれ以前にココにいるはずの無い、明らかに幻術だよな。
然し…どうやってだ。 言は判ったが…視はどこだ?
俺は砂地や空に目でもあるのかと思い見回してみるが…だめだ。 そんなものは無い。
砂地の砂にわかりにくく隠しているのか。 いやそれは無いな。 隠したら目の意味が無い。
目…いや視。 視力…。駄目だ何か喉まで来てるが出てこないな。 再び、俺はキュグラの付近へと。
どうやらドラゴンゾンビは、地割れに飲み込んで消した様だが…。
<< よ う が ん >>
…おい。 まて。なんで砂地から溶岩沸いてくんだよ!!! いかにも幻術だろう? これは。
その癖にやたら熱いぞおい!!! 距離相当あるだろ!
「あつっ!! この距離でもあつっ!!」
「どうしたのじゃ? 確かにまだ昼過ぎじゃが…そんな火傷でもするみたいな熱がり方をして」
「む? 何かあったのか? 腹の下が熱いのだが…」
「え? いやだって溶岩が…あれ? なんで」
どういう事だ。幻術を広範囲に一度にかけるんじゃないのか? 俺はその溶岩の中を見てみると、
明らかに溶岩から逃げようとしているのもいれば、全く意に介して無いのもいる。
…てまて。 ヴァランは盲目なのに何で熱いのが判るんだよ。
視…。 そう言う事かよ。またけったいな能力してやがるな。
「判ったわ…なんつークソややこしい力してんだよ」
「言視術が…わかったのじゃろか?」
「流石だな。…して、それはいかなるものなのか? スヴィアよ」
「ちょい頭で整理するっスから待ってくれっス」
溶岩で喉に詰まったモンが上がってきたわ。 要は視。 これはアイツに対して見たらどうとかじゃない。
過去の記憶にその言葉に当てはまるモノがあれば、それを視覚化させるんだろう。
死者。 きっとそれぞれ別のドラゴンゾンビに見えてる筈だな。
ちょいとイストに聞いてみるか。
「イスト。 あのさっきの竜の屍。赤竜だったか?」
「いや…、ワイバーンじゃったよ? 昔にイグリスに襲ってきた事のある」
「どういう事か? 私は目が見えぬ様になったからな…」
「確定。 言視術は、特定の言葉、それが相手の記憶にあるモノならそれを視覚化する。
精神的ダメージというよりも、脳にダイレクトダメージ与えてくるタイプだな」
俺は、慌ててヴァランに姐御の傍に行って貰い、姐御に言視術の正体はある程度わかったと告げる。
そうすると姐御は慌ててヴァランに乗り込んできた。そして再び上空へと。
食いつく様に俺に駆け寄り、息を荒げて尋ねてくる姐御。
「判ったのかい!?」
「うス。 ありゃセオ爺さんの幻影。それはシアンさんも判ってるっスよね?」
それに怒りを必死で抑えている姐御が頷くと、結果を聞いてくる。 相当焦ってるな。
「慌てないでくれっスよ。 つまりスな。
特定の言葉。それに該当するモノが記憶にあったらそれを視覚化させてくる。
厄介なのは、精神というよりも頭の中、脳に直接ダメージがくるので、
現実味のある幻術になってるんスわ」
「何かややこしいねぇ。 対処法はどうなんだい?」
少し頭の中で整頓して答えた。
「タネが判れば簡単なもんスよ。 言を聞いてそれが視覚化された奴は後退。
されていない奴は前衛にまわる。 それの繰り返しで凌げるスな」
「成る程ね。 早速伝えてくるよ」
そういうと、おいおい…この高さから飛び降りたよ。 …うわひでぇ。
飛んでるリンカー蹴飛ばして落下速度殺しつつ降りてった。 味方だぞソイツラ。
ん? なんだ。 イストとヴァランがコッチ見て。
「たった二回で良く判ったの?」
「どこで気づいたのかね?」
「ヴァランで決め手だったスわ。 目が見えないのに溶岩の熱さを訴えておかしいっスわ。
普通の幻術なら目からその情報を…ん。ややこしくなるから割合すると。
これは目で見て初めて痛みや熱さが伝わるモノじゃない。
言葉で記憶にあるモノを思い出させる術とでもいうべきスかね」
イストが大きく首を傾げているな。 まぁ、ややこしいんだよ説明が。
「つまり、目から得たモノでは無く、記憶から得た姿・痛み・熱さを感じるという事かね?」
「うス。 だから全体にまとめて掛かる事が無いので、言葉発した時に応じて陣形交代すればなんとかなると」
俺は再びキュグラに視線を移すと、伝わるの早いな、早速撤退しているのと前進しているのが見て取れた。
これで後は、ロドさん達が尾撃をうまいこと封じてしまえば、随分攻撃力を奪う事になるが…。
問題はその後だ、攻撃力の大半をこのまま奪い続ける事は不可能。 ロドさん達やイグナさん達にも限界がある。
どう考えても今現状の戦力で、あの復元能力を超えるダメージなんてあたえられっこ無いワケだ。
どうする…。じきに劣勢になるのは目に見えているな。 それにまだあの力場も出していない。
そもそも何で出さない。…いや、出せないのか? 血が出ないのも引っかかる。
アイツの体自体が死体なのか。 そう考える事も出来るな。
駄目だ情報足らんつか、攻撃して見ないと全く判らん。
俺はその後 ヴァランの背で夜が更けるまで、答えの出ない答えに悩み続けるハメになった。
------------深夜-------------------
「さぶっ!!」
「さむいのう…」
「月も真上にきたようだな…」
息が真っ白じゃないかクソ。 動けないわ寒いわ答え見つからないわ…。
とどめにイグナさん達も疲れが見えてきたな…。ロドさんが限界きたのか…地割れを使わなくなった。
その瞬間、地割れに挟まれていた尾が暴れ出し、怒り狂う様に身を捩じらせて転がりだしたキュグラ。
砂煙と砂嵐を巻き起こして視界が非常に悪くなる。 その中で出ては消える尾。
その中に居たんだろうリンカーが砂煙を巻き込んで弾き飛ばされて出てくる。 …生きて無いだろうな。
現状の人数見る限りざっと半数が戦闘不能…。 持たないぞありゃ。
イグナさんとラナさんも動きが明らかに鈍っている。
レガも様子みてるな、視界があの状態だからブレスも当てられんのだろう。
全体的に士気が低下して、体力も限界に近い。 それに反してキュグラは余計にパワフリャになっちまってる。
しかも今度は砂嵐つか砂煙で視界奪って攻撃してきてるじゃないか。 こりゃ近接は駄目だ。
かといって…。 くそ…後で怒られそうだが…。
「ヴァラン。ちょいと後でシアンさんにぶん殴られるが、いっちょ暴れてやるか!」
「ぬ…主。それは…」
「待っていたぞ。 …私も戦いたくてそろそろ辛抱の限界が来ていたのだ」
そう言うと、待っていたといわんばかりにヴァランが大きく咆哮し、
俺とイストを乗せて、更に空高くへと上昇していった。
「ほれほれ! イストも巻き添えだ! 低燃費の連携大火力食らわせてやるぞオラ!!!!」
「もう…怒られても知らぬぞワシは」
「どう見てもヤバいからな!! ちょいと形勢立て直せるぐらいの時間稼ぎだよ」
「わ…判ったのじゃ」