第九十話 「砂塵の霊宮 Ⅷ」
俺達は、取り急ぎ町に戻るが、町の入り口の方に以前に無かったモノが積み上げられている。
近づくにつれソレが段々とハッキリ見えて…。
「なんじゃあの巨大サソリの死体の山積みは。それに何か焦げた巨大ミミズも…」
「レッドシーカーにグランワームじゃな…然し何故、あの様な所に…」
俺達はそれに駆け寄り、周囲を探す。そうすると見慣れた二人がコチラに気づいたのか歩み寄ってきた。
「ニーチャンいつまで潜ってたんだよ! 暇過ぎてこんなになっちまったよ!!」
「…元気過ぎ」
オズがツッコミいれつつ疲れた表情してるな。 まさかあれからずっと狩りしてたのか…。
空を見ると出発した時間帯の、太陽の位置と大して変わらない。 多分丸一日かかったんだろう。
まぁ、それは良い。 つかこれどうすんだ?
「それはいいが…食えるのか? これは」
「うむ。食料になるのじゃ。 余り美味いとは言えぬが」
「成る程…んじゃいいか。 つかミミズ…グランワームとかいうのもアルドが?」
そう言うと、オズが一人の女性を指差した。 何か町の人から礼金だろうか? 貰ってるな。
成る程、アレの退治依頼もされてたってワケか。 …つかこのミミズ40m強ないか? 厚みもすげぇが。
まぁ…あのイグナさんならやっても可笑しくないな。 それよりナイスタイミング。
俺はイスト達に宿に帰る様に言うと、イグナさんの方へと駆け寄った。
「じゃ、これでアタイは」
「ああ。助かったよ…あの大型のクランワームの被害も中々でねぇ」
「はは。 まぁ、金さえ積んでもらえりゃいくらでも頼まれてやるさ」
賞金稼ぎみたいな人なのか。知らんが俺は構わずに片手を振って声をかける。
「イグナさーん。その節はどうもっス!」
それに気づいたイグナさんが、こっちに歩み寄って笑いかけてきた。
「おや? スヴィアだったね。 で、何か用事かい?」
俺は軽く挨拶を済ませると、霊宮での出来事を包み隠さず全て話した。
そうすると、困った顔の様な驚いた様な表情を見せる。
「かーっ…。 あの遺跡の道をやってきたのかい。 やるねぇ。 だが蛇神の話は笑い事じゃないね」
うわ、顔が真剣になった。この人も姐御級の化け物だろうし、マジな顔つきになるってこた…そんな強いんかよ。
「うス。リーシャがもう押さえつけるのが限界に近いらしく。15日後には」
頭をかきつつ答えてくる。
「そうかい。 じゃあアタイはさっさと退散するかね」
ん? 手伝ってくれると思ったが…そうでもないのか? ちょい突付いてみようか。
少し姿勢を低くし、右手を軽く頭にあてて目を細めてにやけた俺。
「そこを手伝って貰えたら助かるな~なんて」
うへ、睨んで俺の両肩掴んで顔を近づけてきた。怒ってる! 怒らしてしまった!!
「アタイは慈善で人助けとかしない主義でね」
金か…メディへの土産にしようとしてたルビーみたいなモンで足りるか? わからんが…。
「まぁ…君が楽しませてくれるってのなら…」
ちょ…抱き寄せられ。ご立派過ぎる胸が顔にっ!! やわらかっ!! …いやまてイストが見てたらまたふて腐れるぞ!!
待て! 股間に右手添えてくるな!! ったく露骨なネーチャンだなおい
…ちょっ耳に息吹きかけて舌いれてくるなっ…やだっ感じちゃうっ…らめぇっ!!
何て遊んでる場合じゃネェだろ!! 慌てて突き放して、懐からルビーらしきものを取り出す。
「冗談やってる場合じゃないスから。 コイツでどうスか?
リーシャの財宝。その中にあったの一つこっそり頂戴してきたんスが」
「冗談言ってる気は無いんだけどねぇ。
アタイも最近ご無沙汰で…おや。 こりゃ…焔の瞳。それも…良し乗った!」
なんだ? 何かまたとんでもないモンだったのか? 少し聞いてみよう。
「そんな大層なモノだったんスか?」
何か嬉しそうにそれを太陽にかざして見てるな。
「大層どころかアンタ…火の魔精具の補助石だ…それも特上のね。
ず…っと探してたんだ、コレほど純度の高い石はそうは無い」
何か良くわからん事が余計に増えたので聞いてみた。 直系魔精具には補助石をはめ込むらしい。
その質と純度で能力が様々である事。 ふむ…ついでに水天月晶石も見せてみた。
そうすると、食いつく様に見てきたな。 かなり驚いている。
「これはアンタ…あんな所にあったのかい。 純度が高いどころじゃないな典文級の一品じゃないか…」
「典文級?」
なんだ…何か語り出した。 イグナさんから得た情報はこれ。
世界に天石と呼ばれる存在すら怪しい補助石が四つあると言う事。
そういう所謂伝説的なモノの在り処。ソレが記されている魔精典文と言うモノがあるらしく
…どうやら聖書みたいなモノらしい。
それの一説を判りやすく訳したモノを教えてくれた。
灼熱の大地の魔術師。 これがリーシャの事だろう。
自然と共に歩む者が護る聖地に眠る …エルフィか?
失われた大地。吼竜の吼える先。吹き荒れる谷の奥深く。 …判らん。
極寒の地、その最深部に眠る氷極の姫君。 …同じく判らん。
これら四つを集めると相当強力な魔精具になるらしいが…集めた奴は居ないとの事。
所在もそうだが入手が極めて困難という事らしい。 何か全部集めなきゃならん気がしてきたな。
「アンタ…コイツを託された時に何か言われなかったか?」
考えてる俺に、真面目な顔つきで話しかけてきたイグナさん。
「あーと、確か蛇神キュグラのげん…なんたらって術を打ち破る資質があるとかなんとか」
「真偽眼の資質か。 疾風の上に水天…真偽眼。 こいつは面白いね。
焔の瞳の事もある。 蛇神討伐手伝ってやるよ。だが、明らかに戦力不足だ。
イグリスに一度戻るなりして、戦力揃えないと話にならないね」
そこまでかよ…。まぁ、15日。俺とイストでかっ飛ばしていきゃ…なんとかなるか。
「判ったっス。 んじゃその日までの宿代も俺持ちってことで」
うが! また抱きついてきた。つか胸でかっ。なにこのでか…いやいや。
「そうかい! んじゃ遠慮なく」
そういうと、離して宿の方に言ってしまった。 なんつーか、火っていうより嵐みたいな人だなおい。
ともあれ姐御相当の味方一人ゲット。 俺は少し蛇神とやらが楽しみになってきたのか、足取り軽やかに宿に。
部屋に入るなり何か凄い事になってるなおい。
「やっ…やめるのじゃ! 何を致すか!!」
「いいじゃないか…抱きつくぐらい」
何をしているこの人は、男女お構いなしかよ!! …ちょっと期待して損したぞおい。
同じ様にイストを抱きしめて胸に押し付けている。
それに必死で逃げ様として手足をバタつかせているが…完全に顔が胸に埋まっている。
「お!ニーチャンおかえり!!」
「お、ちょいお邪魔しているよ」
というと、イストを開放して、俺の方を見…おいおい。イストが俺の後ろに回って警戒してるぞ。
俺はイストの頭を右手で撫でてなだめる。
「ただのスキンシップだろう。そこまで嫌がるかよイスト」
「…うるさいっ!!」
顔を真っ赤にして怒っている。どうやら相当悔しいんだろうな。まぁ、置いといて。
周囲を見回すと疲れ果てたのか、オズが完全にベッドで寝ている。
取り合えず、俺はテーブルに腰をかけて、今後の行動を場に居る奴等と考えた。
肝心の直系魔精具は本人も一緒にいないと作れないという事がわかり、俺は居残り決定。
その結果アルドがイグリスに伝えにいく事となったが…オズがあの通り。それで悩んでいると。
「じゃあ、そのアルドってボウヤはアタイの相棒とイグリスに行くといい3日もありゃつくだろ」
なんだ? 相棒が誰か判らないので聞いてみると…。
「ああ、ワイバーンさ。以前に悪さしてた奴なんだが…懐かれてしまってな」
どこをどうしてどう懐いた!? ツッコミ所多い姉さんだな。まぁいい。それで移動手段はなんとかなるとして。
ここら一帯を砂漠に変えた元凶だろ。 住人を避難させといた方がいいだろうな。
「じゃあ、後はここの住人の避難スな」
「ああ、結構封印から離れてるが…一応避難させておいた方がいいな」
そういや三日近くかかる距離なんだよな。 …どれだけデカいって話だよ。 俺は椅子から起き上がり、ベッドに寝転ぶ。
「じゃあ、取り合えず行動は明日からで…」
「アンタ、直系魔精具は時間かかるから、今からいってくるんだよ。ホレ」
うげあっ! ベッドからつまみ出された…休みたい!! 精神的に限界なんだがもう。
ダルそうにフラフラとすると、イグナさんに背中をおもっきりはたかれた。
「オラ、しゃきっとしな! 今回の戦いの主力になるんだろうアンタがそれでどうする!」
「いや…俺より強いのが現時点で目の前に二名いるんスが…」
「アイツは力だけじゃ勝てないんだよ。 …それにアンタの疾風の直系魔精具も十分過ぎる戦力じゃないか」
あー…そうなのか。 しかしだる…ぎゃーっ!! ケツ蹴られた。
そしてイストの首根っこを持ち、軽々と俺に投げてきた。 どんな力だよこの姉さん。
「なっ…何をするのじゃ!!」
「とっととトアにいってきな! そこの寝ている子は見といてあげるから」
「ういういさー」
逆らうとろくな事が無い。
そう悟った俺はイストを連れてフラフラと俺は部屋から出ようとする。 そうするとまたケツを蹴られた。いてぇ…。
イストはさっきからあの玉をジッと見ているが、
そんなに解除ややこしいのかまぁ…とりあえず俺達はリンカーフェイズしてトアの村へと急いだ。
-----------トアの村・ラナの家----------
「おばさーん! 持ってきた…ぎゃーっ!!!」
「モテモテじゃのう…主」
「お帰り! よく生きてかえってきたよ! あんな判りづらい謎かけをよくまぁ解いたモンだよ」
んだよ!! ラナさん内容知って…ああ、生きて帰ってきた奴はいるんだよな。成る程。
しかしラナさんの豪腕に抱きしめられて息が…
この天空の城のアレに出てくる婆ちゃんみたいなっつーか、熊っつーか、巨人ドワーフっつーか。
そんなオバチャンに豪快ベアハッグを喰らい。埋まりたくない超巨乳に押しつぶされている俺。
「いぎが…ギブ…ギブっス!!」
「ああ、悪いねついつい」
はぁ…。精神的に死ぬかと思ったわ。 中腰で息を荒げつつ、早速水天月晶石を見せる。
「うス…リーシャから譲り受けた一品っス。こいつでよろ…ぎゃーっ!!!」
今度は逆。 豪腕で石だけ取られて突き飛ばされ、家の壁に激しく衝突し、
上にかけてあった何か知らないが、動物の頭の剥製。ソレが俺の頭に落ちて鈍い音を立て、そのまま床に倒れこむ。
「おばさ…手加減…してく…れ…よ」
「見事に突き飛ばされたの」
いや、倒れこむ俺を突付いて遊ばんでよろしい。 ん? オバサンが石を俺の方に持ってきたな。
「水天じゃないか。 こんなものがあそこにあったのかい…。 という事は盗賊リーシャは…」
俺の代わりにイストが自慢げに言う。 そこ俺の台詞じゃないか? 普通。
「リーシャ=スレイワード。 典文の一人じゃったよ」
「はぁ…驚きすぎて反応に困るね。 然しまさか典文級の補助石持ってくるとはね…」
「うむ。良い事もあるが、同時にそれに匹敵する悪い事もあるのじゃ」
興味深そうにラナさんがそれを聞くと、イストが判りやすく説明した。
うわ…表情が強張ってる…が、体が武者震いか? 少し震えて…あら笑みがこぼれた。
「いいね…アタシの生涯で打った直系の中で最高の一打ちになるだろう。
そいつのお披露目にはまたとない相手じゃないか。…ついでにアタシも暴れさせて貰うかね」
うほ…過去の豪傑参戦決定。つかそんな大層なものなのか? 蛇神とか言うのが。
どうもイグリスとレガートの封印で戦った奴と比べてしまって…緊張感薄いんだが。
「その蛇神なんスけど…そんな強いんスか? イグリスの下位神と、ファラトリエルと戦った事あるんスけど。
そいつ等と比べると強いんスか?」
うが! 倒れてる俺を掴んで無理矢理起こしてきやがった。
「アンタ何者だい!? 250年も前の…まさか。
噂に聞く記憶を持って生まれ変わり神を追っている人間。オオミとかいう奴かい?」
ああ、言ってなかった。ここまでしてくれる人に嘘はつけんわな。
「ウス。 直系つーよりもその血縁の祖っスわ…一応記憶だけ」
「いやー! 驚く事が連続で腰抜けそうだよ。 しってたかい? アンタ典文に記された一人になってるって」
おい…初耳だぞ。いや、その典文自体初耳だったんだが。 何そんな偉人になってたの?俺。
「いやつか、大した事してなかったんスが…。 そんな本に名前載っていいもんなのスか?」
うがぁ!! またベアハッグ!! つかイストが横で我知らずとあの玉ばっか見てやがる。 くそ。
「くるしいっス・・・!!!」
「全く謙遜し過ぎなんだよ…おっとすまないね」
ベアハッグから開放され咳き込む俺を見つつラナさんが外を指差して喋る
「よし、早速もう一度武具の選定をしようじゃないか。 ちょっと気にかかる事があってね」
「え…また手の甲バッサリいかれるんスか…」
そう言うや否や、俺は強引に外に連れ出された。 その後を玉をみながら、ついてくるイスト。
そして例の粉。燼王とかい木の粉を地面に平たくまぶして、俺の手の甲を切る。
いでぇ…。 切り口の両端から泡が少し吹いて血が垂れ出てくる。
それが粉の上に落ちて、何かのシルエットが浮き出てくる。 相変わらずのガントレット。
剣とかさー、槍とかさー。 ドラゴンスレイヤーみたいなのが欲しいのに何で篭手なんだよ!!!
泣くぞこら!!!
「ふむ…やはり普通の直系魔精具と何か違うね…。途中で途切れて…まさか」
ん? 何か視線がイストに。まさか…うわやっぱイスト捕まえた。
嫌がるイストの手の甲を遠慮のかけらも無くスッパリ切った。 涙目になってやがる。
痛いのを我慢して涙目になって歯を食いしばってやがる…。
「なにを…何故にワシまで…」
泣きそうなのを必死で我慢してるな。 まぁ痛いわソコ斬られたら。
「ふむ…やはりね。 コイツはツガイだよ。スヴィアとお嬢ちゃんにそれぞれ一つずつ。
それで初めて一つになるようだね。 契約者以外の者に影響するのは初めてだね」
単体だと耐え切れないからか? まぁそんな所だろうと予想。
「強力過ぎて分割されるとかスか?」
「いや、それは無いね。 ふむ…」
ん? ラナさんが粉の上を指で弄って何か見てるが…判らん。
「どうやら、これ以上はどうなるかは判らないが…
水天の事もある。水系の何かではある事は確かだね」
水属性の何かになるのか。が、まぁ。何のかんの凄まじいモンになるのは確かだろう。
「おっと、さっきは別のことで驚いて、言い忘れたけどね。
蛇神キュグラは…」
ラナさんの口から教えて貰った蛇神の事つーか、神の事。
下位の神は、少人数でも実力のある者がいれば何とかなる。
中位の神は、大多数で、それも実力者が多数いないと勝ち目は無い。
上位の神は、国でぶつからないと話にならない。
最上位、つまりアルセリアとケリアドは世界中が戦場になるとの事。
ちなみに蛇神キュグラは上位神。言視術という特異なモノを使うが、既に過去に埋もれて不明。
だが、とんでもない力である事に違いは無いらしい。 どんな奴だよ国でぶつかるとか。
「さて、そんなものの封印とけるなら急いだ方がいいね。さ、作業場にいくよ」
と、言うと腕を引っ張られて俺は作業場に連れて行かれた。
どうにかならんのか、このマイペースオバサン。
ボスキャラ相当厄介そうだ…何か豪傑っぽい人が次から次へと。 俺…役に立てるのか?