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第八十九話 「砂塵の霊宮 Ⅶ」


  「うがーっ!!! ムカツく!!!!」

  「お、落ち着くのじゃ」


俺は台座の所で地面を蹴り飛ばし、イライラを抑えきれず地面をひたすら蹴っている。

 理由はこれだ。 この手の罠には在って当然といえる時間制限。 それが無い。


水に毒があるかも知れないが、その先に目に見えて通路がある。

 然しその通路も繋がっているか不明。 その上で冷たく退路も無い。

通路が無く、戻ってきても暖を取る方法が無いに等しい。 

 この寒さの中、ずぶ濡れ状態を松明で凌げるとも思えない。


台座に月晶石が安置されてるが、明らかに取ると水没罠が発動します。と、露骨に見えた仕掛けと泉。

 然しそれが正解であるという可能性も捨てきれず。


それを時間制限をかけないで決断させる。 決断する意思を弱めてくるという捻くれた罠。

 そのまま考え続けても腹が減る一方でイライラが増してくる。


そんなどうしようもない苛立ちを地面にぶつけている俺。

  「はぁはぁ…ったく。 どっちだ…精神的にキツいわ」

  「じゃのう…。 手がかりが全くあらぬでね」


そうだよったく。 ヒントらしいヒントったら、プレートと、台座の象形文字みたいな言語。

 その二つだけ。 そもそも何で急にここだけ…ん?象形文字。 …絵。  そういうことか。


  「答え判った!!」

  「本当なのじゃか?」

  「ああ、バーレ言語? だったかソレが答えだよ」

  「いや、アレは蛇神についてじゃな」


首を傾げているイストを肩に乗せて俺は天井近くに飛ぶ。 台座の真上に行きそこから地面を見下ろす。

 俺は地面にある泉を見下ろして指をさす。

  「これが答えだよ。 泉が台座の周囲を囲ってる…円で囲ってる」

  「成る程のう…。バーレの文字は絵に近いからそれが手がかりになっておったのか」


再び台座に下りて、イストの顔を見て言う。

  「ああ。 ここだけいきなりその文字になってるってのは変だろ?」

  「確かに、言われてみれば明らかにおかしいのう」

そのまま躊躇い無く台座の月晶石を手に取ると、その隙間までの部分が少し上がってきた。

 その直後、鈍い音と水を吸い込む音とともに、泉の水が減っていく。

おそらくあの水路の先に吸い込み口でもあるんだろ。 俺達は水が無くなるまで待ち、

 水路へと入って行く。

  「扉じゃな。そしてこの月晶石と同じ形の窪みが」

  「ふう、危ない危ない。 危うく凍死か毒死させられる所だったわ」


そう言うと、水路を進み扉付近まで行くと…また壁にあの目があり。こちらを見ている。

  「なんじゃ、またコヤツか?」

  「また見てるなまぁ問題無いだろ」

その瞬間、壁が落ちてきて退路が塞がれた。

  「毒死でも凍死でも無く、水死かよ」

  「危なかったのう…」


ひでぇ罠ばっかだなおい。 俺は手に持っている月晶石を少々勿体無さそうに窪みにはめ込んだ。

 そうすると、鈍い音と共に扉が右に開いて行く。入るとまた扉が閉まる。石は抜けないみたいだな。

  「おしゃー。 後はまだなんかあるのか…わからんが行くか」

  「じゃな…」


その水路を進んで行くと、すぐに道がひらけ急に古臭く暗い部屋に出てきた。

  「何か急に暗くて狭くい部屋に出たな」

  「うむ…」


俺は腰に下げている道具袋から松明を取り出し、火をつけて周囲を照らす。

  「うぉおおお!!」

  「凄いのう…なんという量じゃ」

金銀財宝てんこ盛り!! 中心を除いた四方全てが金貨や銀貨、宝石等で埋め尽くされている。

  「これだけありゃ、一生遊んで暮らせるな…」

  「じゃな」


思わず歩み寄って足元に転がっている宝石。多分ルビーだろうしかも大粒の、それを手にとってみる。

 審美眼は無いので本物かは判らないが、とても綺麗なのは判る。

イストも、興味深そうに見ているが…。 横から視線が突き刺さる。 さっきまで視線なんて感じなかったのにな。

  「アンタがリーシャか?」


宝石を手に取り、それを見つつ声を出すと、イストが周囲をキョロキョロと見回している。

  「何をいっておる? 誰もおらぬぞ?」

  「いや、其処にいるだろ?」

俺は視線を感じた先を見る。 明らかに女が立っている。 イストに見えて無いのか?

  「なんだ? 見えて無いのか?」


白銀の髪が足元まで着くかつかないか、目はどんぐり目で…金色。 服はかなりボロボロだな。

 見た目6歳ぐらいの白い肌の女の子。 その子が笑いながら俺に話しかけてきた。

  「ずっと見てたよ? 凄いね。ここまでこれた人はじめてだヨ」

ずっと見てた…成る程。 で会う資格が俺だけってとこか? …まぁ何にせよ。

 俺は無言でリーシャに歩み寄る。 それを不思議そうに覗き込んでいるリーシャの頭を殴った。

  「いたっ!! 何するんだよ!!!」

  「お子様がこんな凶悪な罠仕掛けるんじゃありません!!!」

  「なんじゃ? ここにいるのか?」


リーシャからイストに視線を移す。

  「ああ、ずっと見てたって言ってるから。謎解きしたのが俺…会う資格が俺だけってとこだろ?」

  「残念じゃな。 どんな者じゃ?」

  「銀髪で金色の目をした子供」


その言葉に目を丸くして答えるイスト。

  「銀髪に金色の眼? バーレ人じゃないかの」

  「そうなのか?」

頭を抑えて蹲っていたリーシャが立ち上がり、答える。

  「まさかボクの頭を叩く奴がいるとは…まぁいいや。 お察しの通りバーレ人だヨ。

     名前はリーシャ=スレイワード」

  「バーレ人らしいぞ。 リーシャ=スレイワードとかなんとか」

驚いた様にイストが答える。

  「スレイワードじゃと!? 蛇神を封印した世界屈指の魔術師の名前がそうじゃ!

    失われた術が仕掛けられていると思ったら、そう言うことじゃか」


最強魔導師様ってとこなのか? こんな子供が? 馬鹿な。 俺はリーシャの頬を左右に引っ張って遊び出す。

  「何ほふるほば!!!」

  「いや、どう見てもそんな凄い奴に見えないんだが」

  「文献じゃと、秘中の秘。時消操術を使うらしいからの。 見た目通りではなかろう」

  「なんじゃそりゃ?」


俺が手を離すと、何か両手を腰にあてて胸を張って答え出すリーシャ。

  「ん? そっちの子は詳しいみたいだね…む。…特別に姿見せてあげるヨ」

というと、何か手で印みたいなのを結ぶ。 するとイストが見れたのか驚く。んだよ始めから見せてやれよ。


  「その印は…幻視術じゃな。 魔族の使う術、全てを修めたというのはまことの様じゃ」

  「ふふん。 その通り!」

  「まぁその。なんだ、凄い魔術師様ってのは判った。 だからホレ」


両手をリーシャの目の前に出すと、首を傾げてたずねて来る。

  「なんだよ?」

  「いや、純度の高い月晶石探しにきたんだわ」

  「うむ。 ここにあると本であってな」

首を横に振りやがった。 無いのかよおい!!! イストも落胆の表情を見せてるな。

  「まだアレを手にする資質があるか見極めて無いからだ~メ!!」

  「まだあるのかよ。 んで何だよ」

  「なんじゃろう…もう部屋は無いみたいじゃけど」


リーシャは一歩下がり、部屋に散らばる金銀財宝に右手を向ける。 その手の先には四つの容器。

  まさか…。

  「どれか一つ選んで、最後に君の資質を見せてほしいのダ」


んだよ、聖杯のアレかと思ったら…資質? 杯は、金 銀 銅 鉄 の四種類。

  形状は全く同じ。 欲を試すワケでもなさそうだが…資質?

  「質問は大丈夫なのか?」

  「資質」

  「資質以外言うつもり無い様じゃな」

  「ちなみに間違ったモノを取るとどうなる?」


軽く笑って答えるリーシャ。

  「ここの財宝はご褒美に全部あげるヨ。 そして無事に帰してあげる。

         でもボクの秘宝。 水天月晶石は渡さない」

  「すいて…なんじゃそら?」

イストは判ったのか、俺の顔を右手で押さえつけ身を乗り出して喋り出した。

  「水天月晶石じゃと!? そんなものを護っておったのか主は!!」


なんだよ。俺だけ取り残されてるじゃないか。

  「なんだ? そりゃ」

  「知らぬのか? 純度の高い月晶石を錬金して生み出されたモノじゃ。

     生成法は完全に失われておるし、存在自体怪しまれているモノじゃ」

  「ほへ~…何か凄いんだな」

  「間違えるでないぞ? こんなモノ手に入る機会なぞ一度あるかないかじゃ…」


といわれてもなぁ。資質だけっておい。 俺はリーシャの顔を見てみると、ニヤけてるな。

 何かあるぞ、絶対何か引っ掛けがあるぞ。 

  「そんな大層な代物をおいそれと渡せるモンじゃないだろ?

     それも確立的に偶然それを選ぶ事も考えられるしな」

  「へぇ? で、どうるするの? 諦める?」


楽しそうに覗き込んでくるな。 明らかに何か隠してやがる。 なんだ何を隠している。

 この絶対に選べないという自信ありげな顔…。

  「絶対に選べないって顔してるな」

  「そ~お?」


突付いても無駄か。 だが必ず答えはあるだろ…。俺は周囲を見回すが、宝物以外に何も無い。

  「早くしてよ~」

  「ちょい待てっての」

  「どれじゃろうね…」

明らかに試してやがる。 とどめに捻くれた事をしてくる筈。 絶対に手に入らない自信があるんだな。

 その自信はどこから…見た限りここに石は無い罠も無い。 …無いから自信がある。そう考えるべきか。


          だとしたら…。 


  「よし判った」

  「ん。 じゃ早く選んで…ってどこいくのさ? そっちには何も無いよ?」

  「何処に行くのじゃ?」


俺はさっきの道を戻り、扉の前に来る。そして鍵になった月晶石を指差す。

  「コイツが答えだろ? リーシャ」

  「あれ…? 何で判ったの?」

  「こ…これじゃったのか?」


俺はリーシャの頭の上に右手を乗せて喋り出す。

  「明らかに答えが見つけられないという自信。 そんで最初の一言、

   『この中で一つ選んで』 杯を選べ何て言ってないよな。 

 

ここにある物の中から一つ選べという事と先に月晶石を仕掛けている罠。

 取らずに水に潜ると水死、取って進むと鍵になる。 これで用済みとして意識から外れてしまう。

そして、純度の高い月晶石よりも強力な奴の名前だけ出す。

   目の前の宝石と難題の事もあり、更に意識から無くなるワケだ。

   

 ちなみに資質ってのは…、目の前にある宝や金銀財宝に誘惑されない。

   きっちりと目的を見失わない力があるかどうか。 違うか?」


お、両手を叩いて笑い出したな。 イストは唖然としているが。

  「お見事だヨ! 何事にも惑わされない。

    真偽眼の資質。 君なら蛇神キュグラの言視術を打ち破れる」

何だ、俺にの手を握って嬉しそうに…つか真偽眼てなんだよ。

  「待て、その言い回しだと…」

軽く頷いて答えるリーシャ。

  「うん。原因は判らないけど、ここ200年近くで砂漠一帯の魔力が弱まってね。

    それでこの場所を作って奴を封印…もしくは倒せる者を探していたんだ」

  「成る程のう…どうりでここだけ言語が新しいと思ったのじゃ」

  「いや、それならお前が倒せばいいだろ?」


首を振り、残念そうに答えるリーシャ。

  「ボクは時消操術の所為で、この霊宮から離れなれないんだヨ。

    そして、このまま若返り続けて消えてしまう。

    何故か魔力が打ち消されてしまうんだ…ゆっくりとネ」


悲しそうな目で自分の体を見るリーシャ。だが急に明るくなり言葉を連ねる。

  「でも! 消える前に望んでいた資質が二人も現れたんだ。十分だヨ」

  「二人? てことはイストも何かあるのか?」

  「ワ…ワシ!?」

思わぬ所から。 お、イストがめっさ喜んでる。目が輝かせて俺の肩から身を乗り出してる。

 まぁ、世界最強だろう魔術師から何か教えなり貰えるなら嬉しい限りだろうが…なんだ。

  「君はこの人の相方だね。 それもボクに勝るとも劣らない強大な魔力を持て余している」

そういうと、一つの玉を懐から取り出して、イストに手渡した。

  「これは…なんじゃろう?」


興味深そうに、透明度の高い玉を覗き込んでいる。

 覗き込んだ顔が球体に映ってる所為か変にマヌケな面になっているな。

  「君は見た所、風の魔術師だね。 だから風に関する失われた術。

    デスペラードを封印した玉をあげる。 頑張って解除してみるといいヨ」

  「デッ…デスペラード!? いいのじゃろうか、そんな代物を」

  「うん。 ボクも消える前に一つくらい遺しておきたいんダ」


何かものっそい物騒な名前だな。 俺はイストの顔を突付いてきいてみる。

  「なぁ、デスペラードってなんだよ」

  「風の禁術。 デスペラードはその総称じゃ。詳しくはわからぬ」

その言葉にリーシャはこう答えた。

  「個は全となり個へと帰す。 風の禁術デスペラードの失われた部分。

     頑張ってみつけてみてネ。 じゃ、君もはい」


というと、取れなかった月晶石を事も無げに取り外し、俺に手渡してきたな気軽にまぁ。

  「じゃ、…頑張ってネ。 ボクは封印をそうだね…15日後に解くから準備していて」

  「待て! 解かなくていいだろ!!」

  「ちょっと待つのじゃ!!」

慌てて止めようとするが…だめだ消えてしまった。 が、声だけが聞こえる。

  「正直、これ以上アイツを押さえつけるのが無理に近いのダ…。

      ギリギリだったけど、君達が来てくれてよかったヨ…」



んがー。 終わったと思ったらボスキャラかよ!!

 慌てる俺達の足元が急に明るくなり、気がついたら遺跡の外に居た。 転移か? 判らんけど…。

  財宝はくれなかったな結局!!! だがちゃっかりルビーだけ懐に忍ばせておいたがな!!


それはいいとして、準備しろってこた相当な化け物って事だよな。 とりあえず宿に戻って色々考えて対策練るか。

    

     

 

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