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第七十四話 「イストラード Ⅳ」

  「で、如何致すのじゃ? こやつを」

  「どうってもなぁ。 斬っても砕いても戻るからな」


あれから何度も体の一部を斬ったり、粉砕したりしてるが、直に戻りやがる。

 リカルドいりゃ一撃で終わるんだろうがなぁ。

  「ほれ! また傷を治してこちらにきよるのじゃ!」

  「わかってるわかってる」


再び跳躍して噛み付いてくる巨大な蛇、その頭を払い、身をかわす。

 そのまま駆け出して近くの岩場にイストを下ろす。

  「如何致した?」

  「両手使って戦うだけだよ。ちと…隠れてな」


頷くと、イストが岩陰に隠れて顔だけ出している。 ちゃんと隠れろっつのに。

 視線を蛇に移し、睨みつける。 蛇の方から這い寄り、また飛び掛ってくる。

  「…っとに攻撃単調だなおい」

風を巻き込んで飛び掛ってきた蛇の頭を、払って今度は内部。頭蓋骨やらその周囲だけ粉砕する。

  「これでどうだ」


その場に倒れこんで動かなくなるが、少しするとまた起き上がり、コチラに這いよってくる。

  「うぜぇ!! いい加減死ねよ!!」


ったく。また間合いを詰め寄ってきて飛び掛り、斬るなり払うなりの繰り返しが幾度か続く。

 いい加減ゲンナリしてきた俺の頭上で声が聞こえる。

  「そこのニーチャン! そいつは真っ二つにすると分裂すっから分裂させまくって倒すんだよ!」


お? 何か天から助けの声が。成る程、復元つか細胞分裂速度が速いのか。…アメーバみたいな蛇だな。

  「おー! 誰か知らんがありがとよ!」

目は蛇を捉えたまま。そしてまた飛び掛ってきた蛇を、三枚に…いや、綺麗に縦一直線に何等分にもスライスした。

 そうすると、内臓と血を撒き散らしながら…確かにこうすると良く判るな。 引っ付くでも再生するでもなく。

復元に見えるが、分裂して8体に分かれた。 体も小さくなったし。

 そして完治したのか、一斉に飛び掛ってきたのを再び縦一直線でスライスにした。 それを繰り返す事5回程。

 ついに奈良のミミズより少し大きいぐらいのモノになり、脅威ではなくなった。 足元でのたうってるだけにしか見えない。

俺は、軽く深呼吸して、息を整えて空を見る。 …ん? 赤い髪の爆発頭? 何か見覚えあるな。

  俺の視線に気付いたのか、飛んで降りてくる赤髪の少年。 そしてどうみても竜のリンカー。

   「どうも助かったよ。雑魚には違い無いが、倒し方に難儀してた所でね」

   「いいってことよ! たまたまオズの奴が、岬の方に飛んでいく赤竜見たっつうからよ!

      その上あの音だろ? 気になって見にきたらこれだぜ!」


ん? 今…なんつった?

  「今、オズと言ったか?」

俺は、赤髪の少年。その肩に浮いている緑髪の女の子の右腕をちょいと拝見する。

  「…すけべ」

また変な言葉覚えたのか!! いやそれよりも250年もたっててまだ生きてたのかよ。

 結局ドールは姐御から聞かんずくだったからなぁ。

  「何してんだ? ニーチャン」

  「つかぬ事を聞くけど、君はレッドという名がつかないか?」

驚いた様に目を丸くして、俺の方を見ている。図星かよ。

  「なんで知ってんだよ!! アルド=レッド とは俺の事だぜ!

     何? 俺ってそんな有名だったか? オズ」

  「…わからない」

オズも結構喋る様になってんな。まぁ、オズの事も含めて道なりで聞いてみっか。

 俺は後ろの岩場に隠れ…いねぇな。 どこいったイスト。

  「ワシならここじゃぞ?」

  「何時の間に足元に。 とりあえず助かったっぽいな」

  「つかニーチャン強ぇな! リンカーフェイズ無しで魔物と戦って雑魚呼ばわりかよ!

    イグリスのシアンさんみたいじゃないか!!」


…読めたぞ。

  「アルド君は、あれかな? レガート生まれのレガート育ちで、

   シアンさんにここらの調査頼まれてレガートから来た。 違うかな?」

足を大きく前後に開いて、驚いているアルド。 ガット同様判りやすそうだな。

  「ニーチャン何者だよ!!」

  「ああ、シアンさんの依頼でここの調査に来たスヴィア=ヤサカ。

    こっちの小さいのは、イストラード=メギスン」

小さいのといった事に対してか、頭を撫でた事に対してか、どちらにせよ、怒り出すイスト。

  「小さくないのじゃ! 頭も気安くさわるでない!」

  「さいですか」

軽く流して、アルドの方を向く。何か嬉しそうな顔してるな。

  「よっしゃ! これではかどるな!! 人数増えたぜ!!」


いやまて、君の脳内ではもうPT確定してるのか? まぁ…いいが。

 それから、港町までの道なりを歩きつつ、この当りの情報やら、オズの事。

オズの事を聞けば当然、俺の事も明かさないといけないのは仕方ないが…。


右側に海岸が結構遠くまで続いている、ただ砂浜ではなく岩場。

 その岩場に波が叩きつけられて波の音が高く、磯の香りが凄い濃い。

その岩場の合間を歩いて港町を目指しつつ、情報をある程度得て向こうにも伝え終わる。

  「…オオミなの?」

  「おうよ。だが今はスヴィアだぞ、オズ。 つか喋る様になったなおい」

アルドは岩場上を飛んだり跳ねたりして…ガットの血だなぁとつくづく。

  「…なつかしい」


お~。ガット偉いぞ。あの表情の全く無かったオズがうっすら微笑んだ。

 割と成長したのか、姉さんに似てきてるな。 髪は相変わらずベリーショートのデコだが。

  「随分感情出てきた様だな。良かった良かった。 アラストルやらイド…は流石に死んでるか。

    マリアの方も元気か?」

  「…元気」

口数はアレだが、まぁ喋る様にはなったな。…んだ? 俺の裾をさっきからぐいぐいと。

  「どうしたよイスト」

  「これからどう致すのじゃ? 情報は少し手に入ったのじゃろうが」


ああ、そうだな。取り合えず先に来ていたアルドが集めた情報。

  最近港から出る漁船が尽く行方不明になって、漁が出来ない状態。

 それは同時に貿易船にも言える事。 デイトのリンカーはその原因を探しに海に向かうもそれも行方不明。


 魔の海域ってか? そんな感じだな。 言ってみないと判らないか。


  「取り合えず、船調達して海に出るしか確認する方法が無いな」

  「じゃが、迂闊に出て二の舞になるのは頂けぬぞ?」

  「そりゃそうだが、知る人間が居ないッつー事になるからな」

  「うむ…」


納得行かない顔して頷いているイスト。 俺ももう少し情報欲しいと思うわそりゃ。

  まぁ、ぼちぼち港の奴等に細かい事聞くしかねぇやな。

ふと、視線を前にやると、一人で既にかなり遠くにいってるアルドが見える。…元気だなおい。

 俺達もぼちぼち、岩場の合間を歩いて港へと。



----------港町デイト-----------


海から見た時の通り、茶色をメインにした色合いでほぼ木造建築。

 足元は土がそのままの様で、ちょっと昔の街並みって感じがする。 

 空を見ると、もうじき日が暮れそうなので、先に宿を探す事に。

  「取り合えず宿屋みつけないとな」

  「…こっち」


お? オズ達が泊まっている宿か、そこに案内される。 見事に古いというしかない概観。

 木の一部がひび割れてたり、腐ってたり。 潮風で痛みが激しいのか? それともただの年季か。

四階建ての横に長い宿。入り口は土から一段高くなっていて、階段を昇って入り口に入る。

 そうすると、概観の酷さとは対照的に、えらいこざっぱりして綺麗な内装。 壁に何かデカい生き物の骨がかけてあったり。

 隅っこにガラスの様なケースに結構なサイズの錨なんかもおいてある。 入り口の正面10mぐらいか?

 ソレぐらいの所にカウンターがあり、髭を蓄えたオッサンが座ってコッチを見ている。

  「お、客かい? 兄さん」

  「ああ、そうっスわ。 二人なんで一部屋貸して貰えるスか?」

  「…何日だい?」

  「取り合えず、ここの調査が終わるまでなんで…わからんスな」


髭を蓄え眉毛がまるで、某元首相の様に伸びている親父が俺を睨んで来ている。 んだよ。

  「調査ってなんだね?」


ああ、調査の内容に警戒してるのか。

  「イグリスから依頼受けてね。 この港町の行方不明者の捜索と原因究明と解決」


そういうと、オッサンは俺に鍵らしきものを投げつけてきた。

  「四階の真ん中404。代金はいらネェ好きに使いな」

ん? 割と話の判るっつか、気前いいな。 懐から金貨出そうとしてたのを元に戻す。

  「相当困ってるみたいスな」

なんだよ、また俺の裾をぐいぐいと。

  「んだよ、イスト」

  「何故部屋が一つなのじゃ?」

  「お前を俺が取って食うとでも? 安心しろ幼児体型に欲情する程、飢えてねぇから」

・・・!!!! いてぇ!! おもっきり足踏みやがった。

  「幼児体型では無い!!」

どう見ても幼児体型だろうったく。

  「まぁ、遊びに来てるんじゃねぇんだよ。 経費も極力掛からない様にする。

    特に気前良く部屋貸してくれたオッサンに迷惑はかけるなよ、イスト」

  「子供扱い致すな!!」


俺等のやり取りを見たオツサンが豪快に笑い。そして喋りだす。

  「ぶはははは! 面白い奴等だな、まぁ。

   他にも使っている奴等もいるんでな。二人で一つの部屋で我慢してくれや」

  「ああ、十分スわ。 どうも…と、一つ聞きたいんスけど、

     この港でその海域から生きて帰ってこれた人いないスか?」

大きく首を横に振った所を見ると0か。 取り合えず一休みしてから行動するかね。

  「んじゃ、イストいくぞ。 とオズはどうすんだ?」

  「…アルド探してくる」

  「そうか、じゃまた夕飯の時にでもな」

  「…うん」


ん? さっきのうっすらと笑ったのは気のせいか? 相変わらず表情無いな。どゆこった。

 まぁいい。取り合えず、俺達はギシギシと音を立てる床と階段を進んで四階の部屋へ。


鍵で部屋のドアをあける。お~、こりゃまたいい部屋だ。 大きめの窓から海が一望できる。

 そして、本棚が部屋の左右に一つずつ、真ん中にテーブルに椅子。その上にランプと、

 水の入った容器とコップが置いてるな。ベッドが…一つかよ。 まぁ、俺が床で寝れば良い話。

 で、左奥は風呂場と洗面所か。なんつーかこう…茶色で木製統一された部屋模様。

 オーソドックスなファンタジーって感じが強い。とくにテーブルの上のランプがそれを強調している。

 一度で良いから泊まりたい部屋的なソレに入る。


俺は早速入り、椅子に腰をかける。

  「どっこらせ…と。 ふぃ~」

んだよ、俺の方ジッと見て。

  「年寄り臭いのう主は」

婆さん口調のお前にいわれたかネェわ!! ったく。

  「お前がそれを言うかったく。 つか何入ってるんだ? やけにデカい荷物持たされてたが」

持ってきていた少し血がついた荷物に目が行く。

  「ワシに必要な衣服じゃが?」

  「どんだけ着替え必要なんだよお前は」

  「構わぬじゃろうが。…取り合えず潮風で髪がベトベトじゃから入浴してくるが…覗くでないぞ」

  「覗くかよ」


そういうと、俺は、コップに水を入れて軽く口に含む。 ちょい潮風にさらされてたのか、

 それとも俺の口の中に塩分があったのか、知らんが微妙にしょっぱく感じた。

そのまま椅子に持たれかかり、頭の中で整理を始める。


取り合えず、魔の海域みたいなのがあると予想。

 で、それに眠っていた神獣の話が関わってくるのは明白。

 ただ、それがどう関わってるのか知る手立ては現状行くしかない。

 ここに来る時に霧の様なモノは見当たらなかったしな、つことは突然海からデカい何かが食いついてくるのか。

 それが今一番有力そうだ。 取り合えずそれは此処までとして。


アルドとオズを姐御がレガートより派遣していた。ってこたそれなりに厄介そうだな。

 人数で行かないとどうにもならん相手なのかも知れんし。

取り合えず、酒場なり探して情報集めないとな。アルド達だと酒場は行ってないだろうし。


俺は、隅にある本棚に目をやる。 ちょい気になったタイトルの本いくつかあるな。

 『イグリスとデイト』…何か関わりの在る国同士なのか、そいや言葉も同じだしな。

 『夜霧の哀花』 夜霧…ちょい見てみるか。


椅子から立ち上がり、本棚からその本を右手で抜き取り、テーブルに置いて椅子に腰をかける。

 表紙はかなり古い本の様で、結構痛みが激しいが、表紙の絵はまだ見れるな。

霧の掛かった暗い海に、花びらが散っているな。

  「どれどれ」

ふむ…。 ページを一枚めくる。


 深い霧に夜の君 

 光を嫌う夜の君 

 何処より来て浜辺に立つ

 空に浮かぶ双星を望み 何を想う


…何かの民謡の歌詞みたいだなおい。 二ページ目をめくる。

 

 夜を好む夜の君

 何を求める夜の君

 浜辺に立ち続け 夜空を望む

 波の数程時は経ち 尚も君は望む


波の数程。とんでもない時間ってことだな。双星…アルセリアかケリアドに関係してる誰かか。

 更にページをめくる。

…んだよ、破れて少ししか読めないぞ。


  …を…君は…

  …魂…眠り…

  私は君を……続ける


…肝心な場所が虫食いかよ。君ってのが神族に関係してるとして、魂…輪廻か?奈落か? 

 眠り…封印の影響の事だなこれは。で、私は。これが誰か別の奴がいて、続ける。

…流石に戦い続けるでは無いだろうから、護り続けるってのが妥当か。

更にページをめくる。

 破れた…私は…

 花と散…………涙……

 ・・・は牙を……

 ………………


何か最後らへんが物騒だなおい。 飛び飛びで最早何がなんだかわからんぞ。

 後のページはどうやら色々な解釈になってるな。

悪神を倒す為に夜の君は、海の獣と共にイグリス、デイト間の大海で戦い。

 悪神の呪いで花と変えられるも世界を護り死んだとか。

このデイトのサーガみたいなものなのか? 何にせよ情報ゲット。


鵜呑みにするのも駄目だからな。取り合えず、牙ってのが気になるが…完全に敵って可能性が下がったか。

 察する所、ケリアドの眷属とアルセリアの眷属の戦いだったんだろうな。

 取り合えずこれ以上は考えても無駄…お? イスト出てきたか。

  「ちゃんと体洗ってから風呂に入ったか…って誰お前」

風呂場から出てきたのは、薄紫色のウェーブの掛かかり、まだ少し濡れた髪が腰まである。

 目は釣り目で緑の目…服装が学園服…白基調の胸元がゆたら空いたソレから覗く割と大きめなおっぱい。

 痩身だが出るトコは出ている。そして白い肌。・・・あれリセルが何でいるんだよ。


  「誰とは何じゃ。誰とは」

  「イストか? 何で歳相応になってんだよ」

まぁ、もう何が起ころうが動じる歳ではない。軽く受け流して事情を探る。

  「言ったじゃろうが。 身に余る力は使わぬと」


それから聞いた話では、生まれた時から魔力が馬鹿みたいな高かったらしく、

 一定の年齢から、その魔力を抑える道具を身につけていたと。

で、魔力抑えてる間は何故か幼児になるってか…抑えだした年齢になるのか。


  「自分の力抑えるのはいい事だが。急に戦闘になったらお前、服破れないか?」

  「そうじゃ。じゃからして、主の様な単体でも強い者を相方とせねばならぬ」


成る程。まだ魔力に耐えられる体も精神も出来てないから、それに達するまでは…か。

  リセルは向こう見ずだったが、イストはそうでもないみたいだな。

  「ああ、納得いったよ。おりゃまた、ただ強いのを相方にしたい子供かと思ってたわ」

  「無礼な。ワシはそこまで愚かでは無い」

  「へいへい。サーセンサーセン。で、寝る時はその道具は外すのかよ」

  「抑え過ぎると今度は、体内で魔力蓄積され過ぎて危ないのじゃ」

  「成る程」


相当火力ありそうだな。まぁ、メディ以外の女にもう欲情せんぞ俺は。

 イストから視線を窓に向ける。 

  「で、何か判ったのかの?」

  「ああ、取り合えず完全に敵って線は考えにくくなったな」

  「ほう…どうしてじゃな?」


俺の向かいにある椅子に座り込んで、俺を見ている。然しリセル似だなおい。

 取り合えず俺は、イストの方にその本を置く。

  「それ読んだら判るよ」

  「うむ」


本好きなのか? 興味深そうに読んでるな。

 

 然しまぁ、ここでの行動は夜メインになりそうだな。 

俺は部屋の窓から望める海を見て、夜まで時間を潰す事にした。  

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