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第七十二話 「イストラード Ⅱ」

で、結局。考える時間をくれ、で納得したみたいだが、相変わらず横について来る。

 こっそりと崖の下に戻り座っている。俺とお嬢ちゃん。 然し子供は元気だな。

上り下りで一時間は使っただろう、レガと会っていた時間も含め一時間半といった所か。

 相変わらず、格闘練習してい…ん? リンカーフェイズしようとして、弾かれている子がいるな。

何か男の子の方が、えらい焦りを露にしている様だが。 あんな焦ったら心拍同期させ難いだろうに。

 その二人を見ていると、横にいるお嬢ちゃんが何を見ているのか聞いてきた。

あの二人を軽く指差して、信頼関係築けて無いとああなる。 と教えた。

 例にしてみた二人を見たお嬢ちゃんが一言。

  「全く合わせる気が無いみたいじゃな。 男の方が」

それに頷いて、腰をあげてその二人に近づく。 教える側じゃないが、女の子の方が可哀想だろうこりゃ。

 急かせている男の子の肩を軽く叩いて、少し落ち着け。そう言うと、こちらを睨んできた。

  

  「何だお前、あっちいけよ!」


焦りからか? 苛立ちを隠せない様だ。 俺は女の子の方に視線を移す。

 コッチも焦ってるな、これじゃ無理だわ。 俺は二人をその場に無理矢理座らせて、

リンカーフェイズがどう言うモノなのか、ソレを教えたら危ない部分は言わずに掻い摘んで教えた。

 二人は顔を見合わせて、少し申し訳無さそうに互いに俯いている。 今度は巧く行くだろう。

二人に再びリンカーフェイズを勧めてみた。 男の子の方は体の力を抜いて落ち着き、

 女の子の方は相方の胸元に手を当てる。 そうすると影が足元から湧き出て二人を包む。

初めての輪廻の中で探しているんだろう。 五分ぐらいしてようやく影が晴れた。

 中から出てきたのは…、魔獣かなんかか? 良く判らん見た事が無い。

周囲に水泡の様なモノがいくつも浮いているが、外見はあんまり変わらない。

 なんじゃこりゃ。…俺は二人に、中に居た奴の容姿を聞くと、人魚っぽかったという。

人魚の様な魔物? 人魚まんま? …セイレーンか何かか? だとしたら水を操ったり歌声だったりか。

 取り合えず、ソイツと話は通じるだろうから、力がどんなものか聞いて来いというと、

既に話していたらしく、力のソレは知っていた様で、やっぱりセイレーンの類の様だ。

 だとしたら、ここに水が無いから不利だなおい。 と心配する事もなく、

二人は俺に礼を言うと、格闘練習している連中の中へと混ざっていった。

 まぁ、戦える様になったから良いか。 …うえ、オーマが俺に気付いたのかコチラを見ている。

そそくさと崖の下に戻り、俺は再び腰を下ろす。 すぐにお嬢ちゃんが俺に話しかけてくる。

 

  「巧く出来た様じゃな。 何を言ったのじゃ?」


俺の方を向き、尋ねてきた。 俺はそれに対して知らんで良い部分は控えて答えた。

 ソレに納得したのか頷いて、視線を格闘練習している方へと。

  「流石にやり慣れておるみたいじゃな。 的確な教え方じゃと思う」

魔人じゃないがな。 それはそれで良いとして、さっきからオーマが俺の方ジッ…と見てるんだが。

 まぁいいか。俺も視線を格闘練習している連中へと移す。 

それが昼近くまで続き、一旦学園へと戻る事になる。




---------学園内部-------------------



取り合えず、飯を貰いに行こう。 どうやら給食制度の様であり、

 教室に給食当番にあたったらしい連中が、木箱に詰めた飯を配っている。

何か、小学校思い出すな、と思いつつそれに並んで受け取り、再び席に戻る。

 わりかしウマそうなモノが詰まっている。 それを口に運びつつ、

アッチで食いたかったな。窓の外に見えるユグドラシルを見ている。

 そして・・・ふと、飯箱の中を見るとおかしい事に食い物が増えている。

野菜の様なものばかり。 考える必要も無い。隣のお嬢ちゃんが入れているんだろう。

  「こら、好き嫌いしない」

…無視してもくもくと食ってやがる。 どんな育てられ方したらこうなるんだよ。

ったく、それら全部平らげて、一緒に貰っていた飲み物を飲みつつ、外を見る。

 安穏とした日々が続く中、唯一の問題が…隣のお嬢ちゃん。


溜息をつきつつ、外を眺めていると、入り口の方からオーマの声が。

 どうやら俺達を呼んでいる様だ。 何だ一体。

俺達はそれに従って、赤茶色のレンガの廊下を進んでいる。

 

 「ふふんっ見てたわよ?」


やっぱアレかよ。その酷い容姿で不敵な笑みをこちらに向けるオーマ。

  「ちょっと調べたら誰でも判る事ですよ」

軽く流す俺の横で、こっそり笑っているお嬢ちゃん。着いたのは、…どこだここは。無駄に広いな。

中に入ると、余りモノが置かれていない。

本棚がいくつかと、机と椅子。 いや、机の上に腰掛けてるのは…姐御かよ。

 何か嫌な予感がするな。 俺達に気付いたのか、姐御が机から降りてこちらにくる。

  「ようこそ。 オーマから話は聞いたよ…そっちのお嬢ちゃんは、リセル君とリカルド君の血縁だね」


俺を見て、少し考え込んだ姐御は再び口を開く。

  「そっちの君は、あの時見てたけど…戻ってきたなら来たとなんで言わないんだい?」


なんでバレてんだよ。 どうしてバレんだよ!!

 俺は必死で誤解だ人違いだと慌てて両手を振る。

  「バカタレ。 攻撃かわす時の癖がまんまアンタだよ!」

ぐは、癖で見抜かれたのかよ!! どうしようもないな。諦めた俺は大人しく答える。

  「癖かよ。 じゃ仕方無いスな、あんまり俺が表出るのも何かなと思って隠してたんスわ」

  「ああ、そういう事かい。 反骨精神の強い子ばかりじゃないからねぇ」

  「その通りっス。 加えて全体的に弱体化でもそれたら、それこそシアンさんに殴られるっスし」


俺と姐御のやりとりを不思議そうに見ているお嬢ちゃん。

 それに気付いたのか、姐御がお嬢ちゃんの方を見る。

  「なんだい、さっきから忙しいね?」

  「学園長とスヴィアは知り合いなのじゃろうか?」

  「なんだい。彼にくっついてるから、知ってるのかと思ったら」

両腕を組んで首をかしげている姐御。 俺が大体の事情を掻い摘んで話す。

 すると姐御が俺の方に向いて喋る。

  「そりゃアンタが悪いよ。 メディの事をいつまで引き摺ってんだい? アンタはもうオオミじゃない。

    そこのところは、しっかりと分別しないと駄目じゃないか」


顔に右手を当てて俯く俺。その直後、頭に鈍い痛みが走る。

  「ぶん殴るよ」

  「学園長、殴ってから言っておらぬか?」


俺の台詞取られた。 で…それはいいとして。

  「俺達呼んだ理由なんスかね?」

  「は! 察しがいいね。 アンタも気付いてただろ? 双星の封印の影響。

    どうもここ数十年で出始めたらしくてね」


双星の封印。 二人の神を四つの楔と鎖で空に縛り付けていたアレ。

 その内三つが破壊されて、動いてなかった双星の位置が動き出していたので気にはなっていた。

それを姐御は知っていたのか、詳しく教えてくれた。

 過去にケリアドと共に代行者を滅ぼそうとした様々な神族、神獣やらが世界各地に眠ってると。

 封印の効力が薄れて目を覚ましつつあるらしく、力自体も封印されていた神とは比較にならないとの事。

で、一番先に起きてくるだろうソイツの周辺の調査をしてきてくれ。 そういう事だった。

 まぁ、これも伝承であって真実はどうだろうかと思うが。


  「いや、俺は構わないスがね。 お嬢ちゃんが危なくね?」

俺は隣にいるお嬢ちゃんの頭を軽く叩く。

  「イストラードじゃ! それにワシの力を甘くみるでないぞ!」

元気だけは良さそうだ。それを見た姐御は一言。

  「アタシがアンタ鍛えたみたいに、今度はアンタがその子鍛えてやりゃいいじゃないか」

ず…頭痛が。 どう見ても聞かん坊だぞ? リセルの血が濃そうだぞ?

 絶対無茶するぞこの子は。

  「という事で、レガには伝えといたから、明日にでもこの地図の印のある所に向かってくれ」


うへー。バレた途端にこの扱い。 もう老人なんだがな。

 渋々と地図を見る。 そうすると…海を越えた先にあるデイトという国らしい。

 世界地図に疎いので、アッチの方の名称が思い出せない。

ここに、何か厄介なのが眠ってる。それの調査。 っつー事は倒さなくて良いってことだな。

 んじゃ楽か。 俺は地図を受け取り頷いた。

  「んじゃ、頼むよ」

軽く頭を下げると、俺達は廊下を出て教室へ再び向かう。

 その最中、お嬢ちゃんが俺に声をかけてくる。

  「学園長じきじきとは、流石に信頼されておるのじゃな」

  「こき使われる。 と言った方が正しい」

  「それでも、任されておるのじゃからして」

  「へいへい」


俺達はそのまま教室に戻る。 そして席に座り、午後の実地を待つ。

 午後もまた戦闘訓練だった様で…それを見ているだけで終わる。


結局、旧知の者に簡単にバレてしまったが、それはまぁいいとして。なんぞバケモノ絶対出てくるだろうし。

何より細分化された神話・教えの違いで何があるか判らん。

取り合えず、家の本棚を漁りデイトという国を調べてみた。


どうやら、ここも神を敵視している国らしく、リンカーも存在しているが。

 割と魔人と魔族の比率が高く、貿易で成り立っている国。

詳しくは載って無いが、海に凶悪な神獣が眠っているとの事。

 この大陸とデイト、そしてリドリアという国の間にある海。

 そこに潜み、溶岩の中でも生きていられ、津波を起こす。水害の神獣。

…なんだ。 どっかで似たようなのが…火・熱・水に耐性…津波。

 …リ…リヴァイアサンかよ。 終末の獣じゃねぇか。バケモノなんてレベルじゃないぞおい。

そんな聖書級の奴が起きてきたら…たまったもんじゃネェなおい。


他に目ぼしいものは…何々、魚が美味しいと。 醤油は期待しても無駄だろうなぁ。

 取り合えず、先にある程度の知識を頭に入れて、ベッドに潜り込み寝る事にした。

明日からまた一波乱あるんだろうな。 ケルド見つけないといけねっつのに。

 

 

 

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