第七話「学園」
第七話目の投稿となります。今回から学園関係が関わって、より多くのキャラクターが出てきます。数に振り回されない様に気をつけて作りこんでいきます。
あ゛~体のあちこちが痛い。酷い筋肉痛だなこりゃ。
昨日は散々街の修繕に走り回ったからな。それでも全然復旧の目処が立ちそうにもなかったが。
まぁ、あんだけ派手にぶち壊れりゃ当然か。壊した当人が言う台詞じゃなさそうだが。
さて、今日からは別の用事があるらしく残念ながら手伝いにはいけない。
イグリスの政治機関っつーか、リンカーやらを育成する機関と言った方が正しいのか。
そこに俺も入らなくてはならない。メディも通っているらしいしな。
リンカーとしての基礎的な事を学ぶ必要があるらしく。んなものメディの記憶になかったか調べて見たが。
残念ながらそこまで詳しい事は判らず。まぁ、きっちり覚えておいた方がいい事は確かだ。
そして、厄介になっているメディの家・・・つかセオさんの家か?まぁ、その一室。
そこに寝泊りする俺と、目の前にある机の上にある学園の制服。
全体的に黒で統一された長袖と長ズボン。長袖の右側に、赤い線が横に二本。
然し、メディとリセルの服が同じだった所を見ると、アレが学生服だったんだろうな。
白い襟だけついたチョーカーみたいなモノと青いネクタイ。上着というかシャツっつーか・・・何故か肩と胸元が露出の高い白い服だ。
それに短めのスカート。・・・学園の上の連中どういう趣味してんだよ。素晴らしい。
そういや、メディの襟の部分にも青い線が二本入ってた様な…ああ、入ってたな。記憶にあった。
学年を表す本数の様だ。最大で4本か。また縁起の悪い数字で止めるなこの世界の住人は。
そんなこんな、考えつつ、俺は学生服に着替えた。・・・ほう。中々悪くないんでね?
ドレッサーの所にある立ち鏡の前でちょっとポーズなんぞつけて見た俺。 そして、その立ち鏡に映る背後の入り口。
そこに何してるのと言わんばかりに見て立っているメディ。
慌てて何か誤魔化そうかと必死に考える俺を見て、メディが笑いながらこう言う。
「うん、似合ってると思うよ」
やめて!お願いそういう合わせ方されたら余計惨めだからやめてっ!!!
ともあれ、俺はメディに照れ隠ししつつ挨拶をする。
「うん。おはようオーミ」
…そういや、ずっといい損ねてたが。
「なぁ、メディ」
「…ん?」
「そのな、オーミじゃなくて、オ オ ミ。伸ばさないんだよ俺の名前」
「そうなの?」
また可愛らしく首を傾げる。っつーか、怒ると凄いが普段はいたって普通の可愛い子なんだよなぁ。胸が残念だが。
あんな化物ったら機嫌損ねるな。神話の狼に一歩も引かずに啖呵きりやがったからな。凄まじく肝の据わった子だ。
「そう。オオミ。それが正しい発音」
「うん、わかったよオーミ」
…わかってねぇ!!!つかこの世界の住人この手の発音に不慣れなのか?文法の差も凄いだろうからまぁ、良しとしとくか。
「もういいよ」
「だって言いにくいんだもん。オ オ ミ なんて。オーミでいいじゃない」
いやなんつーか、ガラスっぽい目玉一杯ついた某芋虫連想させられるから実は嫌なんだが・・・。
「それよりもほら、朝食だよ~」
「ん?あ、ごちそんなります」
夕食もそうだったが、空気が良いからか材料がいいからか、料理人の腕がいいからか。…それとも見慣れない料理だからか。
まぁ、全部だからやたら美味いと言う事にしておこう。
俺とメディは、寝室を出て、広く長く、天井の高い通路を歩く。誰が掃除してるのか考えると頭が痛くなりそうな広さだ。
高そうな壷や像。踏みたくなくなる様な真紅のカーペット。どれもこれも恐ろしく高値なんだろうと素人目でも判る。
その通路を歩いて5分。普通に考えて5分もかけて家の中を移動とか考えられんよ。
最初に来た時に入った広間につく。あのべらぼう長い机にいくつも綺麗に並んだ椅子。
そこに並んでいる木の繊維で編んでいるのか?ザルに入った果物各種。記憶にあったので名前も判るが以下省略。
取り合えず椅子に座り、メディもその横に座ってくる。それを確認したのか、
ちょいメイド服っぽい衣服を着た…美女を期待したのだが、残念ながらオバサンだ。そんな都合の良い事ばかりでは無いらしい。
パンと、コーンポタージュの様なスープが運ばれて、目の前におかれる。
それにコーヒーとも紅茶とも違う、イルトと呼ばれる木の実をすり潰して茹でた飲み物。
コーヒーや紅茶は香りだが、これは妙になんつーか炭酸?酸味がキツい。しかもホットだ。
単体で飲むとちょっと俺の舌には、どう考えても炭酸の微妙に抜けたあったか~いコーラ。にしか思え無い。
然し、パンと一緒に飲むと不思議と不味くない。むしろ飲みたくなる不思議だ。
色々と食文化の違いもあり苦労すると思ったが、ところがどっこい新鮮味が先に出てそうでもなかった。
パンもパンで、原料がどうやら小麦粉では無く、これまた木の実から作った粉で焼いている様で、硬い!
フランスパンが今までで一番硬かったが、それ以上に硬いわけだ。どれだけ硬いかっつーとだな。
まぁ、齧ってみよう・・・。
<バキッ>
普通出るか?パン齧って口の中でバキッて音がするか?キュウリでもバキッとまでいかないが。どんな硬さだよ。然しこれまた不思議。
この粉自体が水分吸収率がハンパなく高いんだろうか。すぐに唾液と混じって柔らかくなる。
中々に面白いパンがあるもんだ。パン自体は味は薄いがなんつーか、こう・・・そう。檜とか香りの高い木がある。
それに近い香りが非常に強い。バターとかそのあたりを期待したが、何もつけずに食べるのが風習らしくそれに従って食べている。
いや、つけて食べたくないな。余計なモノつける必要が無いといった方がいいのか。この場合。
まぁ、どちらにせよ面白い食感のオンパレードな毎日を当分送れそうな朝である。
そして、朝食を済ませ、いざ学園へ。…む?カバンは無いのか。そういえば置いてなかったな。記憶を探ってみる。
…どうやら学園の授業体系が全て実技・実習らしく机の上でどうとか言うのは無いらしい。
勉強が嫌いな俺には嬉しいシステムだ。
そんなこんな、俺はメディと一緒に屋敷を出て学園へ向かう。
まだまだ朝日が眩しい中で、既に街の修繕に取り掛かっている人もちらほら。ヘタすりゃ徹夜しているのも居るのかもしれない。
…っとまたリセルにどやされるな。ヘタな事を考えるより出来る事をする事が償い。確かにそうだ。気をつけねば。
そんな復旧中の街中を歩き学園へ向かう途中、見慣れた二人と出会う。リセルとリカルドのお二人さん。
「あ、おはよう~。リセルにリカルド」
いの一番に挨拶をしたのはメディ。キツい性格のアイツに何気に懐いてるよな。懐いてるっつーかまぁ、付き合いが長く良く知っているからか。
「おはようメディ。元気いいわねぇ…私は朝が弱くて駄目ですわ」
低血圧かよ。どう見ても高血圧かと思ってたが俺は。
「おはよーっス。リセルさ・・・」
うわっ!睨んでる!睨んでるよ!!
「さ…様」
…だめだ完全に尻にしかれつつある。然しまぁ、改めてこうゆっくり見るとなんつースタイルいいんだか。
メディだとこうちょっと残念な感じがする学生服だが、リセルだと素晴らしくゴージャス!特にこう胸元の谷間が…うっ。メディの視線が痛い。
「おはよう御座います。今朝も良い晴れ模様ですね。」
そして、リカルド。なんつーか、こいつは恐ろしく腰が低いというか物腰が穏やかかつ丁寧。怒らせると一番怖いタイプだな。
四人揃って二本線。つてことは二年生ってことか。…ん?二年生で学園どころかこの国で最強のリンカーってどんなだ。
先輩にもリセル達とまでは行かなくてもそれなりに強いのがゴロゴロいるだろう?
気になるな、ちょい聞いてみようか。
「なぁ、リカルド。」
…怖いのでリカルドに聞く事にした弱気な俺。
「はい、なんでしょうか?オオミさん」
お、発音出来てるよな。そいやリセルも爺さんもアルヴェさんも発音出来ている。…なんでメディは伸ばすんだよ!!わかんねぇ。
「ちょっと失礼な事を聞いてもいいっスか?」
満面の笑みで答えてくれたリカルド。
「ええ、遠慮なさらずどうぞ。まだこちらの世界にこられて間もないですし。判らない事があればいくらでもお聞きくださいませ」
うわ~…頼もしいっつーか、安心感を与えてくれる人なんだよなぁ。こうなんつーか隣の上から目線のツンデレ娘と違って…睨まれてるよ。
「どもっス。本当失礼な事聞くかも知れませんが、リセル…様とリカルドのお二人が、この国で最強のリンカーと繋ぐ者なんですよね?」
…妙にリカルドの口調が移っちまった気がしなくも無い。そして、横から刺す様な痛い視線。見ずともわかるリセルだ。
そして、何を聞こうとしてるのか、下から覗き込んでいるメディ。
「ええ、身に余る評価を頂いております。ですが私達の他にもそれは素晴らしい方々が沢山おられますよ。
単純な力のみで言えば、私達は四年の方々には到底敵いません」
む?単純な実力なら上がいるのに、国で最強のリンカーだって?
「…ちょっと矛盾してないっスかね。リカルド達より強いのがいるのに、国内最強っスか?」
「はは。何も単純な個の力のみで強さが決まるわけではありませんよ?」
…よくわからん。何か別のことに秀でているってことになるのか?
「お馬鹿に言っても無駄ですわよリカルド」
「ひでぇ」
相変わらずのツンの度合いがキツい。
「まぁまぁ、リセルさん。そうですねどう伝えれば宜しいのでしょうか。…ふむ。
簡潔に言いますと、リセルさんの才能が国内最強と評価される理由ですね。
もっともメディさんにオオミさんが見つかった以上、その評価も危ぶまれそうですが」
余裕だな。まぁ、どちらが強いとか俺はどうでもいいが。そういやメディもいってたな。メディは異才。リセルは天才。
何につけて天才と言わしめてるのか。気になるな。
「そいやリセル…様が天才だとい・・・」
「天才とか言うのおやめになって下さいませんこと? 私、それを言われるのが非常に苛立ちますの」
「あ、そりゃすんません」
「以後気をつけてくださいませね」
何だ。普通喜ばないか?天才とか良いじゃないか。
「あのね~オーミ」
「ん?」
「リセルはね。8歳の頃には既に戦場に立っていたの」
な…なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 思わずアレな顔になってしまいそうな衝撃。
「すげぇな。8才で既に?」
「うん。だから戦う事にも慣れているし、戦術自体も実践で覚えてきたの」
成る程…見た感じお嬢様っぽいがバリバリの叩き上げ軍人って感じだな。
「だが、肝心の才能ってなんなんだ?」
「あ…うんそれはね、リセルは、本当は並の力しか無いの」
は?並の力しかないのに天才?なんじゃそりゃ。ますますわからんぞ?
「ずっと見てきたから、良く判る。リセルは…」
「お喋りが過ぎますわよメディ」
「あ、ごめん」
ちょっ!いい所で邪魔すんなよ!? 気になるじゃないか!!!!
「ははは。じゃあこう申し上げましょう。」
「お?」
「能ある者は手の内を無意味に曝け出して自慢をしたりしないものですよ」
成る程。能ある鷹は爪を隠すか。まぁそりゃそうだ。然し気になるったら気になる!!!
「そっスか。じゃあ聞けないっスねぇ」
「すみませんね…然し、いずれ判りますよ」
「それもそうっスね」
そんなこんな話をしつつ歩いていると、気が付けば学園がもう目の前である。
ここに来た時崖から見た巨大な城の様な建造物。これがそうだったんだよな。
まぁ、その中に入る。…お~いるわいるわ結構な数の繋ぐ者とリンカー。中には子供も混ざっているし候補生もいるのか?
結構な数だ。然しまず耳にはいったのが。
「リセルにメディだ」
「は~…いいよね。持って生まれた才能だけで贔屓されるなんて」
「しっ。聞こえたらどうするの」
…不快だ。思わず顔が引きつる皮肉めいた小声のラッシュ。こいつら毎日こんなの聞いて歩いてるのか?
たまったもんじゃないな。
そんな嫌過ぎる皮肉の森を歩いて、いるとこれまた男女の二人組みが声をかけてきた。
「おはよう!リセル君にメディにリカルド君に…君は確かメディについに見つかった神族のリンカーのオオミ君…でいいのかな?」
何か変な認識持たれてないか?慌てて弁解する俺。
「いやまて!神でもなんでもないぞ!ただの一般人彼女いない暦16年だ!!」
「…何言ってますの?お馬鹿」
「オオミさん…」
「オーミ、恥ずかしいよそれ」
しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!ついまたやってしまった!しかもこんな人の多いど真ん中で!!穴があったら入りたい!!
「ん?ぷ…あはははは!面白い奴だね。初めまして、アタシは、学園四年のシアン・イグニス 一応、ここの生徒会長をやってる者よ
そしてコッチはアタシの相方。リンカーのゼメキス・リヴァ。リカルド君に勝るとも劣らないリンカーとアタシは自負しているわ」
お~、なんつーか丁寧だがどっか豪快な姉さんだな。
性格がまんま出たような赤い髪に褐色の肌。白い学生服がこれでもかというぐらいに似合っている。胸も中々こう…おっと。
もう一人は、えらく小さい、黒髪で白い肌。病弱っぽい印象を受ける。見事に頼り無さそうだ。
「は…はじめまして、ご紹介に預かりましたゼメキスです。その…よろしくです」
ん?何かリセルもそうだが、繋ぐ者とリンカー。対照的なのが多いのか?面白い程に対照的だが。
「おはようございますですわ会長」
「おはようございますシアンさん」
「おはよ~シアン義姉さん」
ん?姉さん?どういうこった?
「メディ。姉さんってどういう?姉妹?…似てねぇ」
「あ、そっかシアン義姉さんは、お爺様の実の孫なの」
あ~…そういうことか。てこたあの爺さんとは血の繋がりはメディには無いんだな。
「成る程。そういうことか。いや~、セオさんにはご迷惑やらお世話かけっぱなしですんませんっス。シアンさん」
「ああ、気にする事は無いさ。自分の家だと思ってくつろぐといいよ」
「じゃあ、私達は先にいってますわね」
お?何か相性悪いのか?リセルがさっさと先にいっちまったよ。然し、屋敷に住んでいないのか?一度も会ったことがないが。
「あら、相変わらずねリセル君は」
「あはは、いつもあんな感じっスか?」
「ああ、まぁ素っ気無いが、自分の力をしっかりと認識して、
それを使いこなす努力を惜しまず、そしてそれを他人の為に全てを傾けられる奴さ」
ほ~…さっきは聞きそびれたが、成る程。つまり天才っつーよりも努力する才能に秀でた天才。ということか?ドスがきいてるな。
「すげぇんスねぇ、やっぱアイツ。」
「うん凄いよ。この国で最強と評価されているのは過大評価とかそんなのじゃないし」
「だねぇ。確かにあの子の力は素晴らしいよ。限定的ではあるけれど、
特別な条件下の元で、10歳の頃ににドレイクを倒した経験もあるしね」
10歳!? ドレイク…ってドラゴンかよ!?つか限定的な条件下で強さがでるのか。…そういうのって恐ろしく強いのが定番なんだが…。
「ほへぇ。ますます判らなくなってきたな。」
「あはは!心配するな私は見ていたぞ。君の力も凄いじゃないか。異界の力だってねぇ。
それも神々を食い殺した獣をその身に潜ませているとか。いやぁ頼もしい限りだ!」
いてっいてててててっ!!背中を叩くな!!・・・なんつーか本当に豪快だな。
さっきの連中の様に才能とか力の話はするが妬みとかそういった感じを全く感じない。
むしろ後ろから、さっさと出せ!と蹴り飛ばしてきそうな勢いだぞこの人。…そしてリセルが逃げたワケがなんとなくわかったぞ。
「そう。そういや気になってたんだ。あの時に魔法陣ごとスライムを吹き飛ばした。アレはなんだったんだい?」
「あ…シアン義姉さん。それは私達にも判らないの」
「だな。俺はもうなんつーか、既にぶん回されてるだけだったしな」
うわ!やたら露骨に嫌な顔した!隠し事とか出来ないタイプだなこの姉さん…いや姐さん。
「なんだい。はぁ。もちっとしっかり意識保ってふんばれ若者!」
「いや、シアンさんも若者じゃないっスか」
「ん?ああ、そうだったねアハハ!!」
なんつーか、こう…すげぇ背中が頼もしそうな。
「所で、シアン義姉さんから声をかけてくるって珍しいね?何か用事なのかな?」
「ああ!そうだ忘れていたよ。上の方から直接言われてね。アンタ達二人にちょっと荷が重過ぎしないか?と思うんだが、任務受け取ってるんだ」
…任務?そいや実習やら実技しかないんだったな。早速ってことか。
「あ、はい。なんだろうね。オーミ」
「わからないが、まぁ、やらないと駄目だろうな」
「アハハ!まぁ、正直な所、この任務は非常に厳しい。いややる事自体は単純なんだが、行き先に問題があってな」
「も…問題ってなんスか?」
「ああ、まず内容からだろう? 任務は簡単。この国と契約している二人の魔族に届け物だ。ほれ」
いやほれって、そんな大事なモノ軽々しく放り投げていいのか!?慌てて落ちる前にメディが受け取った。
「あわわ。ちょっとシアン義姉さん危ないよ」
「ん?どんまいどんまい!」
自分で言うか普通。
「で、・・・その問題とはなんすかね?」
「ああ、そこはここから少し離れた所にある森なんだが。そこに最近住み着いてる奴が問題なんだよ。
既に老化が激しく、本来の力の半分も無いだろうが、赤竜がいる」
…うへぇ。いきなりドラゴンかよ。無茶過ぎるな。
「うん。判った」
「あいよ。精一杯逃げてやりますよニワトリの如く」
「ニワトリってなんだい?」
「あ、いやすんません。まぁ臆病な動物が俺の居た世界にいましてそれのことっスわ」
「それで良い!臆病も決して悪くないぞ!むしろ勝てない戦いに無理に挑む方が愚かだからな!」
あ~、そういう人か。納得。
「さて、じゃあ用件は伝えたよ。ヤボ用があるんで後は宜しく」
「あ、はい」
「ういーっス!」
何かもう何か体育会系全開なノリの俺。
そして・・・。
「あ、じゃあ。その僕もコレで失礼しました」
おどおどとお辞儀して、あの姐さんの後ろについていった。…ん?気のせいか?姐さんの背中に何か激しい怒気の様な…まぁいいか。
「さて、どうする?このままいくか?」
「うーん…リセルに伝えておいた方がいいかな。黙っていくと…」
「怒るな。間違いなく」
「うん」
早速、俺はメディについていき、ついた所はやっぱりあるのか教室。見た感じ大学の教室の様な作りをしている。
その中央付近にリセルがいるな。良し。
「あ、リセル~」
と、先にメディがいったか。まぁ、あいつの扱いはメディに任せておこう。俺はその教室を眺めていた。
あんまりこれは変わらない様だな。とくに目につく部分も・・・。
「なんですって!?」
お!?おいおい何か怒らせてんじゃないだろうな。メディの奴。
そっちに急いで歩み寄っていったわけで。そこで見たのは、怒りに震えるリセル。何だ何をいったんだ。
「あの腐れジジイですわね…まだ新米の二人にこんな無茶な事をさせようなんて」
「え?ちょっとリセル?おちついてよ」
「残念ですが、このリカルドも正直、我慢なりませんね。この様な卑劣な方法を・・・」
おいおい。リセルどころかあのリカルドまで血相かえてるぞ?この任務そんなやべぇのか?
「老いた赤竜そんなにやばいんスか?」
うわっリセルとリカルドに睨まれた!
「オオミさんメディさん。貴方達二人は、赤竜のブレスを知らないからですよ。
例え老いて体力が低下していても竜族は竜族ですよ」
「ですわ…まともにアレを食らったら骨まで綺麗さっぱり溶けてしまいますわよ?」
おげ…ゲームとかだと即死はしねぇから、軽く見てたが、実際そんなやべぇモンなのかよ。
「判りやすく例えましょうか…あれは息というよりも溶岩に近いモノですよ」
ぐぁ、そんなもん直撃しなくても火傷じゃすまねぇよ!!!
何か判ってきたぞ。その上の連中が、任務に乗じて不慮の事故死を目論んでるってことか。そりゃ俺でも怒るわ!!
「あ~…ムカついてきたっスね。流石に俺も」
「うん。私も許せないこれは。…お爺様気が付いてないのかしら」
「セオ様は特に多忙の身ですわ。生徒一人一人にまで気が回らない筈。
そこを漬け込んでくる…利用しようと思いましたけど、無茶過ぎますわ。
リカルド!私達も参りますわよ。私達が赤竜の首をあの腐れジジイに叩きつけてやらないと気がおさまりませんわ!」
「同感です」
お~。国内最強の二人の本気?が見れるかも知れんわけだな。こりゃ楽しみだ。だが限定的だよな。
その条件下にある所なのか?ともすればうん。楽しみだ。
「凄いよ~? リセル達はリンカーの常識を覆した人達だから」
「常識を覆した?」
「メディ!お喋りが過ぎますわよ?」
「あ、ごめんなさい…」
ふ~む。まぁ、楽しみにしておこうか。常識。繋げる事以外に何か別のことを見出したのか?判らん。まぁ、楽しみというしか無いな。
俺達は、学園の外へと向かった。
苛立たしい。…いくらあの厄介なスライムを退けたとは言え、赤竜をぶつけるなんて無茶すぎる。
アタシは、イストル様の私室へと競歩で歩いていた。
私室の前に立ち、苛立ちを露にした様に強くノックする。
「誰だね?もう少し静かにノックできないか?入りたまえ」
ドアを蹴り飛ばして開け、満足そうに座ってその醜い面を笑みで歪めた外道。
その前にある机を遠慮の欠片もなく蹴飛ばした。机は激しくイストル様にぶちあたる。
そして怒りを露にして臭い息を吐き出しそうな汚い口で喋る。
「なっ何をするかシアン!」
我知らずと、ぶつけた机に片足を上げ、膝に右ひじを置き、イストル様…いやイストルを見下す様ににらめつける。
「一体何事かね!」
「…テメェ…何ごとかね?だと…? あんな無茶なモンを戦闘経験の浅い二人にいかせて不慮の事故死させるつもりか?ぁあ?!」
「何を言っているのかね?落ち着きたまえ。私は彼等の能力を考慮した上でだね…」
「うるせぇよ…口がくせぇんだよ腐れ外道が。次んな事やってみろ。死んだ方がマシなぐらいの地獄を見せてやっから覚悟しろや・・・」
イストルに唾を吐きかけすぐさま出て行く。 流石にアレは無理がある。手伝わないと確実に死んでしまう。
逃げるとは言ったが、とてもじゃないが逃げ切れる代物じゃないからね。
アタシはメディ達の下へ競歩で急いだ。
「ちょっと待ってくださいよ・・・シアンさん」
「早くついておいでゼメキス君」
「は…はい~!」
第七話最後まで読んでいただきありがとう御座います。
更に楽しんで読んでいただける様に、ストーリー・展開もそうですが。心理描写をもっと強く書いていく事を心かげて参ります。




