第六十九話 「輪廻転生 Ⅱ」
六十九話目の投稿となります。
引き続き主人公メイン。
などと、前世で格好良さげな死にかたをしたのに関わらず、
何の因果かまたしてもイグリス周辺。 何故だ?
判らんが…早速ながら俺は今、危機に瀕している。
目の前には二人の子供。所々に歯が抜け落ちて、それはそれはマヌケな笑い顔の子供二人。
その手には枝。 突付かれて転げまわされる俺。 今回は虫らしい。
長い間、土の下で身動き取れずに居た所を考えると、カブトムシに似た昆虫…その当りだろうか。
何にせよ、ようやく土から這い出て脱皮して。メディを見に行こうとした矢先にコレだ。
枝で突付きまわされ、指で突付かれまくる。
流石に何十倍…いや何百倍か? もの体格差があると、無風活殺も意味を成さない様だ。
されるがまま、転がされ。 されるがまま、掴まれて投げ…んなコラ!!!
激しく地面に衝突し、大きく4~5回バウンドしてもがく俺。
死なないのが面白いのか? 更に掴んで投げ飛ばしてくる。
再び叩きつけられて地面でのた打ち回る。
とどめに仰向けに倒れたらしく、起き上がれない。何本あるかもわからん脚をバタつかせる。
どうやら体は黒い様だ、足の色から察する所。
そんな余裕かましている俺に、再び子供の魔の手が襲ってくる。
まぁ、虫の死なんてこんなもんか? と思い死を覚悟する。
その瞬間、子供の親だろうか、呼び声が聞こえ手がすんでの所で止まり、離れていく。
子供が親の所へ走っていくのを確認した時、俺は生ある事の喜びを感じた。
そして、その瞬間…目の前に鳥の嘴が迫ってきて…食われた。
生きたまま、甲虫だったんだろう、硬い外皮が砕かれて肉が押し潰される。
背骨をやられたのか。不思議と痛みは無く、
ただ薄れ行く意識の中、自分の体の残骸が鳥の口の中であちらこちらに四散している様を見て絶命する。
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今度は何だ…暗いぞ。 何も見えずその上狭い圧迫感。
俺は渾身の力を込めて、その暗い何かを両手と頭で吹き飛ばした。
その瞬間目に入ったのは、上に乗っかって抱卵でもしてたのか? 吹っ飛んでこけている親鳥。
元々丸い目を更に丸くして、こちらを見た。 なんだよ…こっちにきてなにす…ぶへら!!
デカい尻に敷かれて暖められた。 察する所ペンギンみたいな奴か?
少し見れた親鳥。その羽は飛べる様な代物でも無く、ただの飾りといってもいい。
そのデカい尻から顔を無理矢理出して、あたりを見回す。
こりゃどこだ? イグリスじゃない。 見たことも無い所だ。
森林に囲まれて、えらい不恰好な小屋が至る所に。
人間の家畜なのか…ん? か ち く? という事はアレか? 食われるのか?
まぁ、動物に生まれたんだ、動物として生きて動物として死なないとだな。
改めて周囲を見回すと、何か見たことのある服装。…紋様。
…エルフィか。この服ともいえない布。 なによりも、
俺を覗き込んで座っている、パンツをはいてない少女!!
モロじゃないか、凄いアングルだなおい。 おっと…動物動物。
ん? 何か抱え込まれた。 つか何か見たことある面影だな。
少女が、俺を顔の目の前に持ってきて…確信した。
掴んだ右手の疾風の紋様。 何よりもこの釣り目+すわっている目付き。
明らかに、スアルと俺の子孫だろう。 つことはノヴィアか?
いやでも、草原だっただろうあそこは。
…水脈掘り当ててから年月が経って、植物が育ったのか? そんな所だろう。
にしても、ふむ17~8ぐらいか。 中々の発育具合。お爺ちゃんウレシイヨ。
ご立派な胸に体を押さえつけられて、なんとも動物って素晴らしいと思った。
それにしてもだ。ここがノヴィアならヴァランがいる筈だな。
胸の谷間から必死で顔を出して、周囲を見回すが、木々が邪魔して探せない。
それからは、ある程度体が育つまで、ジッとしている事にした。
何年だろう。判らないがどうやら立派な雄として成長した様で。
俺は適当にそこらを歩いて回っていると、居たヴァランだ。
相変わらず寝ているな。 ・・・。 こちらに気付いたのか、俺を見ている。
コイツには雷撃でお世話になったからな。ちょっと睨んでみたりした。
ん? …おい。 口をあけて何をしている。
まさか…やめろ。
食うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!!
土ごと丸呑みされて、転がる様に胃袋に到達。
冗談じゃネェ!! 生きたまま溶かされてたまるかよ!!
俺は胃袋と食道を繋ぐ部分をこじ開け、無理矢理食道を這い上がっていく。
唾液かなんか知らないが、やたらネットリシットリするそれを羽毛に大量につきながら、口の所へと戻ってきた。
そして、ヴァランの舌の先。それをさながらキツツキの如く嘴で突付きまわした。
耐えかねたヴァランが俺を吐き出す。 吐き出され倒れは地面に着地し姿勢を整える。
飛ぶ機能の無い右羽を前に構え、足で軽快なフットワークをしてヴァランに挑むかの様な仕草を取る。
ヴァランは目が見えないが、俺の殺気に気が付いたのか、前足を叩きつけてきた。
それをかわして、ヴァランの足を突付きまわす。
そんな事を繰り返していると、ヴァランが立ち上がる。
人間の時に見たそれよりも遥かに大きく見える。そして…。
「これは活きの良い餌だな…」
ナメんじゃネェぞ! テメェは既に攻略済みだぜ!
俺は、視線を地面に落とし、影に集中する。
そして先に落ちてくる影を軽快にフットワークでかわし、ソレを突付き回す。
「ほう…ならばこれはどうかな」
帯電しやがった!! ドラゴンがただの鳥相手に雷撃つかうなよオイ!!
まぁ、問題無し! 再び視線を地面に移し、先に落ちてくる雷撃の影を軽快なフットワークで尽くかわしてみせた。
「面白い…まだ死なないか」
はっ! 死んでたまるかよ! 再び俺はファイティングポーズを取る。
その後日が暮れるまで雷撃が地面を穿つ音が鳴り響いた。
その夕暮れ、ヴァランが先に疲れたのか、その場に丸くなって寝転ぶ。
「なんという餌か…。 然し、懐かしいなオオミを思い出すな…その体力」
その本人なんですがね。 まぁ、わからんだろう。
勝った勝ったと小躍りしている時、聞きなれた声が聞こえる。
「何してル。オマエは」
クァか、どうせ言葉判らないだろうから、悪口散々いってやるか。
「ブサ鳥アホ鳥クサレ鳥ー!!」
「なんだと家畜の分際デ!!」
あん? 言葉わか…ああ、コイツも鳥だったな。
「言葉わかんのかよ。 久しぶりだなアリオ」
驚いた様な仕草で俺を見るクァ…いやアリオでいいかメンドクセェ。
「なんだト!? オマエ…オオミか!!」
その言葉に一番驚いたのが…。
「オオミだと!?」
うお! まだ体力あんじゃねぇか、物凄い勢いで立ち上がりやがった。
「おうヨ。 メディ助ける為に、ケルドを完全にぶっ殺す方法見つけ…」
「知ってるゾ」
ああ、コイツはチート性能だったな。
再び座り込んだヴァランの顔の横に俺は歩み寄る。
「オオミだったのか、道理で手強い餌だと」
「食われてたまるかよ!」
アリオが通訳したのか、ヴァランが大きく笑う。
「然し、メディを助け…ケルドをも完全に倒す為とはいえ、辛い道を選んだモノだな」
同情されちまってるぞおい。
「まぁ、仕方無いだろ。 …ん? 何か胸元が焼ける様に熱いぞ…」
自分の胸元を出来る限り顔を下げてみてみると、何か長いモノが突き出ている。
まさか…。 その瞬間口から大量の血液が喉の奥からこみ上げてきた。
「おい、オオミ」
「オマエ! スアルの子孫にまで矢で射抜かれるなマヌケ!!」
スアルの…子孫にまで矢で射抜かれ…た。 がくり。
六十九話、最後まで読んで頂いてありがとうございます。
次回から三幕の本題へと入っていきます。




