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第六十七話 「イグリス再建」 第二幕終了

六十七話目の投稿となります。

 

これにて二幕の終了となり、

 若干ショートギャグ気味の輪廻転生後、世代交代となります。


あの出来事から、二年程が経った。

 遺体が散乱し、腐臭漂う廃墟も随分と様変わりしたものの、

 まだまだその傷跡は深く残っている。


然し、確実に街に活気が戻りつつあるイグリスの中央付近。

 そこに俺は建材を持って走り回っている。

何気に街の大工の人の下で働いているワケだ。

 異世界…つか並行世界にきても結局これか? と思いつつもまぁ、満足している。

ドえらい代償を払う事になったが、神頼み通り彼女…どころか嫁さん出来たワケであって。

 

  「おーい昼飯にするぞ!」

  「うぃース」


何か、もう何。ほんと職人って感じの、角刈り親父。服は鳶装束でも無い、いたって普通の茶色い布の服。

 その親父さんが飯だと言ったので、手を止めて休憩場にしている所へと。

  「飯!!!」

  「おう、元気いいな。 然しお前も変わりモンだな」


休憩所には、街の女性が飯を作って待っている。 

 街そのものが破壊され、それからと言うもの全員が家族になった様な感じだ。

その中にメディも混ざって飯を配っている。

 少し背が伸びているが、胸は残念と言わざるを得ない。

 髪の毛は少し切って肩までの長さ、炊飯しているからか、それを今は横に纏めている。

 相変わらずガラス玉の様な綺麗な蒼い目をして、胸は残念だが…いい感じに美女になりつつある。


そんな俺に気付いたのか、こちらに手を振っている。

 軽く俺は手を振り返すと、親父さんが俺の脇腹を肘で突いて来る。

  「あの子以外にリンカーフェイズはゆるさネェってか?」


そう、リンカーフェイズしてゴリラパワーを使えば、もっと再興も早いだろう。

 それは判ってるが。 アイツ以外とはしないと誓ったワリと一途な俺。

 そして、輪廻…咎人の鎖の事もあるので、メディはリンカーフェイズは出来ない。

 それは、俺がリンカーになれない事を意味する。 

それを持ってこの親父さんは変わりモンといってくるが…どうもソコを気に入られた様だ。

  「そりゃ当然スよ」

親父さんがその直後に、大笑いしながら遠慮の加減も無く俺の頭をぶん殴りやがった。

  そのままメディの元へと行き、俺と親父さんの分を貰う。

  「お昼からも頑張ってね、オーミ」

うほ、軽く頬にキスされた。 うわ周りの視線が…。

 軽くメディの頭を撫でると、一目散に親父さんの所へと。

  「うぃっス。貰ってきたっスよ」

  「おう」

そういうと、昼飯を受け取った親父さんが、まだ損壊した家が多くある街外れへと視線を移す。

  「まだまだかかるな。こりゃ」

  「そりゃそっスよ」

そういうと、昼飯に視線を戻して、むさ苦しい野郎二人並んで食べている。

 そこにリカルドが、俺お手製の車椅子に乗せたリセルを連れてやってきた。

  「こんにちわ、まだまだ傷跡が多く残っておりますね」

  「おう! ニーチャンか。 まぁ…それぐらいあった方が、こちとら遣り甲斐があるってモンよ!」

右腕を曲げて前に出し、太い腕を左手で叩く親父さん。 

  「おーすリカルド。 リセルの方はどうだい」

そう、メディを助ける為に払った代償。

 俺は、生まれ変わっても記憶が残り、それを繰り返してケルドを再び追い詰める事。

 リセルは、自分の力量以上のモノを使った為に、精神崩壊を引き起こした。

  リセルの方は、セアド…いや、ユグドラシルの助けもあって、じきに回復するとの事。

  「…オオミ」


ん。俺の方を見て右手を差し出してきたな。 どうやら完治も…。

 安心した瞬間それは起こった。 何故だ。

精神崩壊引き起こしても、ツンは忘れないのか? 

 風空自在を使って何もして無い俺に。小さい空気の塊をぶつけてきやがった。

それがモロに顔にぶち当たり、鼻血を撒き散らして、座っていた椅子ごし後ろに勢い良く倒れこむ。

  「テメェ…リセル。 もう治ってんじゃネェのかよ!!?」

  「はは。 先程、メディさんがキスされたのを見ておりましたから。

    反射的に出たのでしょう」


おいおい。 ツンじゃなくて嫉妬かよ。 いい加減早くリカルドにデレてやれよお前!!

 鼻血を抑えつつ、俺は起き上がりリカルドに言う。

  「ったく。お前らもさっさと結ばれちまえよ」

…またそれか。 首を横に振るリカルド。

  「私が犯した罪は重い。 私はアルセリア様の教えを広める為。

    そして、リセルさんが完治されて、次に成そうとする事を助け続けるだけです」


はー…。確かに罪を犯した奴が、懺悔して神父になるケースがあるにゃあるが。

 コイツもソレかよ。まぁ、その内結ばれるだろうが。

それは良いとして、軽く笑いながら俺はリカルドに言う。

  「然しよ? アルセリアの教えも絶対じゃないぜ? 人間が自分自身を戒める。

    そんな簡単に出来ネェからよ?」

静かに目を閉じ、右手を胸に当てて答えるリカルド。


  「当然です。 然し、それに進み続ける険しい道にこそ…アルセリア様の御心があるのです」


勝てんわ。まぁ…そういう教えがあっても悪かネェ。

  「では、私達はこれから子供達にアルセリア様の教えを届けに参りますので」

軽く一礼したリカルドは、リセルを乗せた車椅子を押して、去っていった。

 そのやり取りを、黙って見ていた親父さんが俺を見ながらこういう。

  「本当にお前の知り合いは、変わりモンばっかだな」

確かに。

  「ま、変わりモンだからこそ。じゃないっスかね?」

いでぇな! 目一杯背中叩いてきやがった。

  「おうよ! 変わりモンだからこそ、何かに秀でてるモンだ!」

  「親父さんの建設技術も変わりモンの証拠っスな」


おもっくそ頭殴られた。


そんなこんな、やり取りして、昼休憩を終えて再び建材をひたすら運び、親父さんに手渡している。

 たまに間違ったモノを渡して、木槌が飛んでくる事もしばしばで。

頭にタンコブが出来る程に強烈な一撃と、俺の悲鳴が中央付近でよく聞こえるのは日常茶飯事となった。


そして、夕暮れ時。作業は終了して皆して夕食となる。

 今度は物凄い人数で囲って食べるワケだ。 子供が足元で走り回るわ泣くわ。

その中で一緒に走り回っているオズ。

 ガットがあれから立ち直ったのか、オズやイド・マリアを含めた街の年頃の子供達に、

  戦い方やら物騒な事を教えている。 レガートは変えられなかったが、イドやマリアの顔を見る限り、

  少なくとも半分は果たしている様だ。

噂をすればなんとやら、子供達と飯の奪い合いをしているガットが遠くで見て取れた。

 その後ろから姐御を連れたアリセアが。…あーあ。

  姐御が大きく振りかぶってガットをぶん殴った。 自業自得だな。

ん? こちらに気付いたのか、姐御がこっちに来たな。

 相変わらずの強気っつーか豪快姐さん。

   「や。お疲れさん。調子はどうだい?」

軽く挨拶すると、彼女の後ろにひっそりといるゼメキスさん。相変わらず存在感無いなお前。

  「ぼちぼちっスねぇ。 つか姐御も相変わらず素手で瓦礫破壊してるんスか」

  「何か棘がある言い方だね。ぶん殴るよ」

うへー。殴られたら身が持たない。

 このイグリスで間違いなく単体最強生物だからな。

  「サーセン」

  「まぁ、アンタのリンカーフェイズ使えなくて難儀してるけどね。

    オリエ君達が生きていたお陰で、弔いもはかどってるさ」


二年。…二年つかってまだ遺体が瓦礫の下に埋まってんだよな。

 まぁ、こんだけバカデカい街なら仕方ネェか。

ふと、俺は空を見上げる。

  「ん? どうしたんだい。 気の抜けた顔で空を見て」

  「いや、この街で骨埋めるのも悪かネェ。そう改めて思っただけスわ」

  「そうかい。まぁ、アタシは長生きだ。 

    人間か魔人に生まれ変わったら、ここにちゃんと来るんだよ」


何億といるだろうか? その生物種からたったの二種だぞ?

 相当確立が低いだろう。 気が遠くなりそうだ。

  「へいへい。まぁ…そんときゃお手柔らかに」

突然、腹の手前で両手を叩きだした姐御。

  「アタシが手加減するとでも思ってるのかい?」

  「アリエネェ…」



姐御の豪快な馬鹿笑いが街に響き渡る。







それから更に5年の月日が流れ、街は完全に姿と活気を取り戻した。

 リセルの方も、完治したらしく、

近々リカルドと式を挙げるという知らせを聞いた。おめでたい事で。


おめでたいといえば、俺にも子供が出来て、慌ててユグドラシルの種をお守りにして持たせた。

 お陰で俺は常時全力疾走状態。今はいいが老後が恐ろしい。


ガットは教えていた子供達が育つと、

 アリセアとイドとマリア・オズ・アラストル達とレガートへと旅立って行った。

どうやら残り半分の約束を忘れてはいなかった様だ。

 然し、ユグドラシルの種が三人か? 

 うまいことレガートを再建できたとしたら、とんでもない力に進化してそうだな遠い未来に。


結局あんまり面識の無かったオリエとナグア。この二人はエルフィに移住していった。

 どうも任務の際に向こうの土地が気に入ったらしく。

リンカーフェイズを使う事の無い国で、彼等が残した子供が、また新しい力を生むかもしれない。


ディエラとオーマは何を思ったのか、

姐御とゼメキスさんと共にイグリスの学園で戦闘の教師をやりだした。

 二人ともヘンな意味で危ないからな。 まぁ、強い奴等をどんどん送り出していくんだろう。


そんなこんなで俺は、残りの余生を…といや爺臭いが。

 街の外れで子供に無風活殺を教えつつ、まったり暮らす。

たまに、何をトチ狂ったのか、レガが戦いを挑んで着て、散々な目に会う。



  これで一先ずの俺の人生は終りを告げて、

   フェンリルとの約束を果たすべく天寿をまっとうした後、

   記憶を持ったまま転生を繰り返す地獄へと落ちる事になる。



 

六十七話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。


次回三幕から、一話ごとの視点変更から、

 記号を使って視点変更をしていく形を取ります。

文章ももう少し圧縮して作り、

内容が余り軽くならない程度のバランス取りをメインに書いていきます。


 では、第二幕まで読んで頂いてありがとう御座いました。

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