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第六十五話 「奈落」

六十五話目の投稿となります。

 ようやく二幕の終りが見えてきました。


俺達は、レガに頼んでセアドの森へと来ていた。

  降りた所は、ディエラ達の住処の近く。

レガが降りた震動に気付いてか、ディエラ達がお手製の傾き古ぼけた小屋から出てくる。

  「あら…どうかしましたのかしらぁ…?」

  「んまっ! メディちゃんどうしたのよっ!!」


相変わらずというか、岩石みたいな顔に不釣合いな人形の様に可愛い目と長い睫。

 金髪クルクルパーマにクロワッサン。鋼の肉体に鋼色の肌。

 そして、これでもかともっこりした女性用のビキニを愛用している男好きのインキュバスのオーマ。

その見るだけで精神崩壊起こしそうな容姿。

 その容姿で図太い両腕を胸に当て体を捩じらせて、

 姐御に抱き抱えられて意識を失っているメディを心配そうに覗き込んでいる。


同時に俺に尋ねてきたのが、ディエラ。

 青白い肌の色に、腰まで届くストレートの黒髪。彫りが深く整った顔立ち。

そして、おそろいまでに肉付きが良く、非常にエロい体をしている。

二人の共通点といえる目。黒い目に赤い眼が不気味に浮かんでいる。

 服装はオーマと同じく、紐といってもいいような水着に近いモノ。

  「オオミ…? …どうしたのかしら?」

こう…蛇に絡みつかれる様な声質をしているディエラ。

  「あ、うス。 リンカーフェイズしたら暗闇の底からこう…鎖が沢山ぶわーっと」


両手を下から上に上げつつ喋る俺。

  「あらぁ…咎人の鎖…そう。 メディはあの時にレガートの人…殺め過ぎたのね…」


咎人の鎖? 殺め過ぎた?

 俺は右腕を顎に当てて考え込む。

 確かにレガートで溶岩噴出させて、相当な人間やら魔人殺してしまったからな。

…ん。罪人を縛る鎖。 タルタロスでもいるのか? まぁ似たような番人でもいるんだろう。


  「成る程…けどなんで…」


ふと、メディ達の方へと視線を向けるとセアドが其処に居た。

 白で統一された長髪と肌。痩身に透ける様な布を纏っている。ギリシャ神話に出てきそうな女神っぽい。


  「うお! 精霊セアド何時の間に!?」


思わず驚いた姿勢をしてしまう。

 が…まぁ、自分の娘だしな。 当然か、なら話は早い。

俺は、セアドの方へ駆け寄る。

  「お久しぶりっス。 咎人の鎖というやつを詳しく教えてもらえないっスか?」


心配…いや、厳しい目でメディを見ていたセアドは、ゆっくりと俺の方へ向く。

  「異界の人間。 …気付きませんか? 以前に話した魂の質量に」


魂の質量…そいや、罪は魂に刻まれてそれが刻まれすぎると無へと落ちるとかなんとか…。

 ああ、成る程そういうことか。

  「そういう事っスか。確かに輪廻間にあるみたいな事いってたっスな」

周囲の奴等が話についてこれて無い様なので俺は、


その暗闇の底を奈落と称して、リンカーフェイズする際はその上に居る。

 そして生物を殺め過ぎると、魂に罪が刻まれ咎人の鎖に引きずり込まれる。そう説明した。


  「成る程ね。で、助ける方法はあるのかい?」

その言葉はセアドに向けられ、俺を含む全員がセアドの方を見る。

 然し、俯いて静かに首を横に振ったセドを見た瞬間、俺は詰め寄って尋ねた。

  「あんたメディの母…」

ぐお! めっさ睨まれた!! 言うなって事か。

 それから繋げる言葉は誰も出ずに、静かにセアドの言葉を待つ。

  「彼女は、魂に罪を刻み過ぎました。 最早…私でも助ける事は出来ません」


顔色一つ変えないなおい。

 然しどうすんだよ。 暫く皆考え込んで立ちすくむ。

ん? 何か意を決したかの様にケルドがセアドに歩み寄ったな。

  「お言葉ですが、偉大なる精霊セアド。

   アルセリア様の教えに則るなれば救い出す方法は在るのでは無いでしょうか?」


アルセリアの教え、確か罪を許した者は共にその重みを背負う背負い歩くべき。

 という追記をリカルドから聞いたな。

アルセリアなら当然この奈落と鎖の存在を知っていただろう。

 もしかしたらそれに対する方法を残していたのか?…其処は判らんが。

  

そのリカルドの言葉にセアドは、俺達を見る。

  「その通り。魂に刻まれた重みは確かに分かち合って往けます。

    ですが、咎人の鎖から救い出す方法が…」


やっぱ心配なのか。沈んだ表情で語りだしたセアド。

  「ちっとまってくれ。セアド一つ教えてくれ」


俺の方を向いて、まるで救いを待つかの様な表情で見ている。

 周りの奴等も似たような視線。 …プレッシャーが。

  「なんでしょう?」

軽く咳払いして、尋ねる俺。

  「仮にその鎖がある暗闇の底を奈落として、

    その奈落は一つしか無いのか?」

それに頷いたセアド。

 そしてリセルが俺の首根っこを掴んで聞いてくる。

  「どういう意味ですの? 助けられますの!?」

  「おちつけ!!」

我を失いそうな勢いのリセルの腕を払って答える俺。

  「奈落が一つなら、助ける方法は・・・あるっスわ」

  「異界の人間。それはまことですか?」

あの冷静なセアドが表情が強張っただと!?

 少し、頭の中で整理して、全員にこう語った。

フェンリルは、過去に神々を食い殺した。相当罪が重く奈落に居ない筈が無い。

 が、以前にメディとリンカーフェイズした時に向こうから現れた事があったと。


判ったのか、姐御が口を開く。

  「成る程ねぇ。つまり奈落って所にいるフェンリルにさえ会えれば・・・助けられると。

    でもどうやって会うんだい? メディはこの通りだよ」

  「奈落は一つ。どこからでもいけるって事スわ」


頷いた姐御を押しのける様に、リセルが俺の胸元に手を当ててくる。

  「つまり、私がオオミとリンカーフェイズしていけば良いのですよね?」

  「あ、ああ。だが、問題はある。」


再び全員が俺の方を向く。

 俺は、仮にリセルと奈落へ行ったとして、フェンリルに会えるとも限らない。

  それに咎人の鎖を断ち切れる程の力を出して、無事かも判らない。

 そう告げた。

  「…構いませんわ。 このまま手をこまねいているだけより…マシですわよ!」

  「そうかよ。ヘタすりゃ俺等も鎖に捕まるぞ?」

  「その時はその時ですわ!」


リセルの真剣な眼差し。断るワケにもいかねぇか。

 問題はフェンリルの居る所まで行けるかが…。

ん? 何か俺のズボンの裾を。

  「…いく…」

オズ…だがお前も深い所までは…いや、

 二人分ならいけるか? 確かリセルは現世同士で繋げられたしな。

然しリセルが持つのか?

  「オズとリセル。二人と一緒にいけば、フェンリルの所まで届くかも知れないスけど。

    問題は…」


リセルが怒った様に喋りだす。

  「やってみせますわよ! メディを助けられるのでしたら必ず」

やる気まんまんだな。

 その言葉にセアドが口を開く。

  「私には、どうする事も出来ません。 頼みましたよ」


…頼りになら無いなおい。

 まぁいいか。

俺とオズはリセルを挟む様に囲い、リセルは俺とオズの胸に手を当てる。

  「心拍同期…外部接続確認コンタクト解析開始アクセス!!」


一瞬影が出てくるが、それがかき消される。

 そしてその場にしゃがみ込むリセル。

  「くっ…弾かれます…わ」


再び立ち上がり、それを繰り返すがその分弾き返され失敗に終わる。

 息を荒げて、髪を振り乱しながらもまだ続けようとするリセル。

  「おいおい。 もう限界じゃ…」

  「お黙り!!」

こわっ! 目がマジだ。

  「もう少し…もう少しで…」


何か切欠でも掴みかけてるのか。

 その必死なリセルをただ見ているしかない俺達。

  「心拍同期…外部接続…確認…解析開始アクセス!!」


お? 今度は巧くいったのか? 影が俺達を包んだ。

 その瞬間、視界に広がったのは暗闇。

そして、俺の輪廻の中の様だ。 窓っぽいのに前世の記憶があちらこちらに流れて行く。

  息を荒げて俺の肩に持たれかかっているリセル。

  「大丈夫か?」

  「おだ…まり…それより…はや…く」

うお、相当精神力削ってるのか辛そうだな。

 そして今度はオズが俺の手を引っ張る。

  「…こっち…」

お。いけそうなのか。何か気付いているのか、オズに連れられて暗闇の底の奈落へと。

 結構な時間折り続けても一向にフェンリルが見つからない。

いや、それどころかリセルが限界じゃないか?

 肩で持たれかかっているリセルを見る…ウホ。これはいいおっぱ…いややめとこう。


それからまた暫く往くと、見覚えの在る色がほのかに光っている。

  「あの銀色は…おーいフェンリル!!」


声が届いたのか、こちらへ駆け寄ってきた。

 風が無いのか相当な速度で来たのに髪も揺れない。

…厄介だな、無風活殺もリセルの風空自在も使えないのか。

  「貴様か…呼びかければ声は届いたモノを…」


…そいや、声どこにいても届いたんだったなコイツに。

 ぬかった!! 然し、何かフェンリルの様子がおかしいな。

  「まぁいい。用件は判っている。

   タルタロスの鎖からあの娘を救い出す為に我が力を望むか?」


奈落の底にいるメディの場所を知っているのか、その暗闇の先にに顔を向けるフェンリル。

  「ああ、手伝ってくれるか?」

  「…良かろう。但し条件がある。…貴様はロキをココに追い詰めた。

    その力を買い、貴様に一つ託したいモノがある」

なんだ? アーティファクトくれるのか?

  「ん? ケルド…いやロキの持っているソレがイマイチ判らんスけど、

    ソイツをアンタも持っている。と言う事か?」

再び顔を俺の方へと向ける。

  「そうだ。輪廻の鎖。その一部だ、これで自由に行き来は出来ないが、

    記憶を持ったまま生まれ変われる」

ん? 転生してアイツをまた倒せってことか?

 …俺の考えを読んだのか、判りやすく説明してくれた。


ロギが持っているのは、輪廻の鎖という。

 記憶を取り留めたまま、自分以外の生前へ生まれ変われる神器。

 最悪だな。予想以上にえげつないアイテムだ。

で、それをロキが盗む際にフェンリルが噛み砕いて、一部だけを持っている。

 その一部の力で此処に留まっている。

鎖の数は二つ。 その内一つだけだと輪廻間を移動する事は出来ない。

 そして、俺をあの世界に呼んだのはフェンリルだと言う事も判った。

理由までは聞けなかったが、…ただその条件が厳しい。


  「成る程、つまり…。俺が人間とか以外に転生しても、

    人間のときの記憶がある。その苦しみに耐えて、

    再び人間か魔人なりに生まれ変わり、尚且つロキがいる時間を待つと」

  「そうだ…。 生半可な苦しみでは無い」


そして、再び尋ねて聞き出した事。

 ロキの倒し方。現世では不可能だが、ここに追い詰めれば倒せるとの事。

つまり狼役を俺がやるってことか。

 然し、昆虫とかに生まれ変わって…この記憶持ってると…うげぇ。

  「判った。だが一つ教えてくれよ。 なんでロキをそこまで追うんだ?」


その瞬間、凄まじい殺気と憎悪を感じた。

 気を抜くと視線だけで殺されそうな。

しまった…逆鱗に触れたか。

  「す…スマン。忘れてくれ。 いつか話す気になった時にでも聞くことにするわ」

  「…」


うわー、怒らせた。怒らせた!!

  「よかろう。 そこの娘。我とオオミを繋げ」

  「長話は…おわりました…の? ではいきますわ…よ!」


こいつもこいつでバケモンだよな。

 本当にメディのためなら軽く魔人のソレ越えていきやがる。

  「オオミ。タルタロスの鎖は容易く斬れん。

    今まで以上の力を必要とするが…」

  「あれから結構鍛えられたッスからね。

    あの暴走した時ぐらいは平気スよ多分」

少し沈黙した後の一言。

  「その倍だ」

  「ちょ!!」


問答無用で俺達の間に入り、息を荒げて繋げ様とするリセル。


  「しっ…心拍同期・・・外部連続…接…続!

    主をオ…オミ…に・・・無限連鎖インフィニティーチェイン!!」





六十五話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。


前回は会話で説明をしていましたが。

 キャラの理解不能っぷりを出そうと試みましたが…どうも宜しくなかった様で。

今回は、説明は纏めて簡略してみました。


然し、主人公の扱いが段々酷くなっていっております。


次回はメディメインとなります。

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