第六十三話 「死に際の言葉」
六十三話目の投稿となります。
今回は主人公メイン。
ここから世界観の細かい部分が出てきます。
俺はあれからイグリスへと戻り、早速姐御達を集めて再び情報を統合する。
その際に必要だったのが、この世界の地図。
どうにも星がおかしい。双星の存在感があり過ぎて星座まで気にも留めていなかった。
双星の事がわかり、その存在感が薄れてようやく気付いた事。
星座が同じ。そして北極星の位置も…多分同じ。
確か北極星は昔の人間が、旅する為の道標にしていたんだったよな。
いや航海だったか? …知らんけど。
それが同じ。 動物も何か似通ったモノが多い。
とどめにエルフィのエアーズロック似の山だ。
もし、地図がその通りなら…。
姐御が持ってきた、地図を見る。 結構焼けていて所々見れないが…明らかに地球だ。
ここがオーストラリアってことになるのか。
まぁ、それはいいとして。 これで合点がいった。
「ああ、やっぱりっスな」
そういうと、全員が地図を覗き込んでくる。
「地図で何かわかったのかい?」
「これで何が判りましたの?」
「詳しくお聞かせ願いたく」
ガットは何か向こうで塞ぎこんでるな。
アリセアも心配なのか、隣に座っている。
オズは…アラストルとかいう姉さんに引っ付いて何かしているがまぁ、おいといて。
軽く咳払いをして口を開く。
「え~とっスね。 平行世界ってもわかりにくいっスな」
俺は地面縦線を引き、その中心に石を一つ置く。
「取り合えず、縦線が時間。 そして石が何かが関与しない限りは、この位置にあり続けるっスな」
全員が頷いてソレを見ている。
「んで、俺がこの石を横に移動させる。
そうすると、この石が移動した状態と、石が移動していない状態。
二つの時間と世界に分かれるっスわ。 勿論そんなもの在るかも判らんス実際」
「何かイマイチよくわかんないねぇ」
「わけがわかりませんわ」
「つまり…、オオミさんの居た世界と、ここの世界そのものは同一である。
けれど、何らかの理由で分かれた。という事でしょうか?」
お。リカルド飲み込み早いな。天体の話すると厄介そうだから省いておこう。
「その通りっス。 つまり俺の居た世界であるけれどそうじゃない世界。
ここに進化の違い。これが関わってくるっス。
俺の世界だと、ドラゴンなんて居ないっスから…。
多分、恐竜…ドラゴンの祖になったモンが絶滅しなかったらこういう世界になっていた。
それが、今この世界という事になる…そう思うっスわ。
で、俺の世界だと、恐竜が絶滅している世界。だからドラゴンが居ない」
リカルド以外首を傾げてるな。
まぁパラレルワールドなんて説明し難いからなぁ。
「まぁ、早い話、その石が移動させられた世界と、しなかった世界。そういう事」
「何か…よくわかんないね。けどまぁ、つまりサザにアンタが教えた進化。
その過程の違いがあるだけで、世界自体は同じという事かい?」
「スな。 進化の過程の差異がある別世界。そんで…そこにリンカーフェイズ。
コイツが関わってくるスわ」
俺はリセルの方を向く。
「な、なんですのよ」
「何で照れるんだよ。 まぁいいか。
リセルがリカルドとリンカーフェイズした時、
映像っつか絵みたいなモンからガーゴイル飛び出してくるか?」
首を横にふるリセルとリカルド。
「いいえ。暗闇の中に居ますわよ?」
「ですね」
「だろうな。リセル達の世界の前世だ。そりゃ当然。
だが、軸のズレた俺の前世だとそうはいかない。
ここには存在していないんだからな。
絵からそれをコッチに引っ張り出してきたからな。メディが」
また首を傾げられた。
こっちも説明し難いっつーの。
「んでだ。フェンリルだけ暗闇の中に居た。
何らかの力でアイツは、俺の居た世界と、この世界の中間に居る。
つまり、輪廻が世界と世界の間にあるんじゃないかと。
いや、輪廻の上に世界が重なっているといった方がいいのか。まぁ、そんな感じだ。
で、その力を授けたのがケルド。コイツも俺と同じ世界の神だ。
だもんで、…アイツの力が輪廻間を自由に行き来したり、生まれ変わったり出来る。
そんなアーティファクト。…神器を持っていたと仮説を立てると合点いくわけだ」
俺の方を見て、リカルドが答えてくる。
「それが偉大なる精霊セアドが言っていた、禁断の力でしょうか?」
「だろうな。 実際これが正しければ、とんでもないしな。
未来にゃいけないが、多少縛られるだろうが過去に戻れたりする。
もし、『自分の生前以外のモノにも生まれ変わる力』。
だったりしたらもう手がつけられねぇよ。やりたい放題だ」
お? 納得したのか、顔が少し強張ったな。
「それが本当だとしたら…確かに殺せないねぇ」
「本当ですわよ。 でもケルドはオオミの世界の神なんでしょう?
どの神か検討つきましたの?」
ああ、大体聞いてアタリはついたな。
「貰った情報統合すると、
積み上げた玩具を壊して楽しむだけの子供。ソレみたいなモンだわ。
それに該当する神が一人居る。 悪戯を好むロキってヤツが」
「ロキ。ソイツは・・・ああ。確かに言われてみれば行動に統一性が無い。
子供がそうだねぇ」
姐御と顔を見合す。
「で、そのロキとフェンリルに何かあって、コッチの世界に来ている。
いや、ロキがコッチにきてフェンリルも被害にあったのか?
まぁ、その当りはフェンリルに聞いてみないと判らない」
「成る程ですわ。 まだちょっと世界の事が理解できませんけれど、
ケルドの持っている力が、オオミの世界と繋げられる力ってのは理解できましたわ」
「繋げるっつかまぁ、…輪廻を使って行き来出来るって所だな」
首を傾げられた。
輪廻自体わかってないからどうにもならん。
お? メディがコッチにきたな。ドコにいってたのか知らんが。
「お~。お帰りメディ…ってぬお!?」
メディがしがみついてきた。
うほっ。スアルのちょい大きめのおっぱいも良かったが、
こう…あるか無いかわからない際どいラインのおっぱいもこれはこれで…。
「オオミ。鼻の下伸び切ってますわよ」
「アンタねぇ…」
だーっ! 視線が痛い!!
「オーミ? フェンリルに会いにいくんでしょ?」
「ん? ああ途中から聞いてたのか。 そそ。…ただ一つ、
ケルドが死ぬ瞬間にフェンリルに会いに行くと後悔する事になる。
そう言って死んだんだわ」
強く抱きしめられる俺。
そして何故かリセルの視線が痛い。
「後悔するって何を後悔するんだい?
リンカーフェイズしても大した力ださなきゃ問題ないだろう?」
姐御に指さして答える。
「そう、そこなんスわ。 自我の崩壊引き起こすというワケでも無い別の理由。
それで後悔する事になるって事」
「成る程…けど、これ以上の事を知る必要が在る以上…」
頷く俺。
「スな。 アイツぶっ殺す方法もフェンリルが知ってるかも知れんスし。
何より、ケルドの力の全てを聞きだせるスからな。
俺は多少の危険は覚悟の上。…メディはどうよ?」
全員がメディの方へと向く。
「私は…うん。オーミと一緒ならどこでも行く」
おほ。潤んだ熱い視線と返事が俺に向けて。
「あ~熱い熱い。熱いったらありゃしないね! まぁ、それなら行って貰うしかないね」
「そ…そうです…わね。うん」
なんだ? 泣きそうな面してんなおい。
ああ、まさかマジで俺に惚れてるのか?
デレたらお前力使えないだろ!!
ツンで通せよおい!!
「では、今日はもう皆さんお疲れの様ですので、明日にでも」
全員が頷いて、話し合いは終わる。
俺はその場に倒れこんで完全に夜が明けた空を見る。
…あん? 何か双星の位置ズレてネェか。
封印が4つ。その内3つも外れてしまった。
鎖…楔…何か理由があってソレで動きを止めていた。…のか。
判らんがコレもなんか臭うな。 まぁ、まだコレといって変化も見当たらないしほっとくか。
ふと視線を横に向ける。
超至近距離にメディの顔があった。
一緒に横になっていたらしい。…あの時と違って緊張しないな俺。
スアル抱き過ぎて免疫ついたかこりゃ。 俺は軽くメディの頭を抱き寄せる。
「ごふぁっ!?」
その瞬間、俺の腹をリセルが踏み越えていった。
「あら? ごめんなさいね? 気付きませんでしたわ」
「おまえな・・・」
そういうと、さっさと向こうへ行ってしまった。
「ねぇオーミ。・・・その。…あの」
「謝らなくていいよ。なっちまったモンはしゃーない。
つかここの大陸では法とか裁判とか無いのか? まぁ、この状況だソレ所でもないが」
首をかしげている所を見ると、無いのか。
神の信仰もなけりゃ法も無い。学園で多少の決まりごとはあるにせよ・・・。
何気に無法地帯だなおい!!
まぁ、あんだけ食料になるのがいりゃ、あんま略奪なんかネェってことか。
再び、メディの方を向いて軽く抱きしめる。
そして脳内に再生されるアリオの言葉。
『メディと交尾しロ』
こんな街の惨状でやるのはちと頂けないだろ。大目に見ろクソ鳥。
そのまま疲れたのか、その場でメディを抱き込んだまま寝た俺。
目が覚めたら、まだ一波乱ありそうだな。
六十三話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。
平行世界と輪廻・神話。
そしてダーウィンの進化論を交えたストーリー構成と言う事が出てきました。
同時に、フェンリルとロキの関係の創作。一幕から隠れていた本筋と混ざっていきます。
輪廻の解釈も色々と弄っていたりしますので、お楽しみに。