第六十話 「策」
第六十話目の投稿となります。
今回は主人公メイン。
眼下では赤く焼けた溶岩がこのレガートを覆いつつあり、降りていったガット達を心配しつつも、
視線は、ケルドも含め姐御に向いている。
神慮思考、読めば必ず裏をかいてくる。 そんな奴に策を持って戦っていた姐御。
どう考えてもガットの何も考えていない行動。
その行動に即座に対応出来るゼメキスさんのシャドウストーカー、影から影への瞬間移動。
それしか無い様に思えるが…それ以外に何を…。
恐らくは全員だろう。気絶しているメディを除いた全員が姐御に視線を移す。
「なんだいアンタ達もかい。 まぁいいさ」
リセルに抱き抱えられつつ、姐御の視線はケルドへと。
「さて、どんな策をして私を出し抜いたと言わしめますか?」
「出し抜いたかはどうだかだけどね! 森で会った時にディエラの言った事は覚えているかい?」
「広大な森に同じ木があり、その木の内の一つ。印の無い木を見つけられるか。
普通は見つけられないが私ならば見つけられる。 でしたね」
睨みながら言い返す姐御。
「ああそうさ。ここに居る全員がガットが本命だって考えてるだろうね。
だけどね、策自体はあの時アンタが余裕カマした時点で終わってるのさ」
ん? 俺が見て無い所か。 ケルドが何か気付いたみたいに笑い出したな。
「成る程…。ガット君が本命と思わせ。
私の性格上、メディ君も含めた彼等を丁重に扱うと踏んだ。
策を持って戦う事に飢えていた私のソコを突いてきた」
「そうさ、アンタ頭使って戦う様な相手に相当飢えてる。そう踏んだからね。
余裕カマして色々と手が甘くなるとね。…案の定リセル君達にやり方どうあれ、アンタは手を貸した。」
いまいち…判らんぞ。
ケルドが顔に右手を当てて大笑いしだしたぞ。
本人判ったのか? 笑いを止めると語りだした。
「広大な森の中で印の無い木。それを探し出しても、それは他と同じ木でしか無く。
けれどその木に何かあるのだろうと、答えの無い答えを探させ続ける。 と言った所ですか」
「その通りさ。そしてアンタ程の奴なら、決して諦めない。
探している間、この子達の身は安全という事さね」
ひでぇ…騙しかよ!! 思わず姐御の方を向き右手で空を叩く。
まぁ、確かにアイツなら策に期待しつつ、本命と思っているガット達に気を取られて。
俺やリセル達にも必要以上に手を出してこなくなるわな。
「策はあれど意味は無い。いや、答えが無いからこそ意味がある策。ですか…。
確かにあの時に、答えの見えない策に期待して彼等を丁重にもてなす。
そう言った時点で勝敗は決しておりましたね。
それどころか私を利用までしていたとは…」
全員が姐御を見て唖然としている。
その中でケルドだけが狂った様に仰け反って笑っている。
「そんなに可笑しいかい!?」
「いやいや…これは確かに、してやられましたね。
宜しい。約束通りメディ君は、そのままお返し致しましょう」
戦闘力だけかと思ってたら、殆ど詐欺まがいな頭の使い方もするなこの姐御。
ってうおぉっ!? 何か飛んで来たぞ。すげぇ風圧が!
「ケルド…貴様ァぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!」
なんだっ!? っつか! 背中に乗ってる奴等落ちたぞ!!
「おい! 人が落ちた!!」
全員手が塞がってるっつーのに…お? 今の赤竜の怒りの声で気がついたのか、
茶色い髪したオッサンの方と緑色のポニーテールの子がリンカーフェイズして、もう一組抱き抱えたな。
「誰か知らんが大丈夫かよ!」
その声に気がついたのか、コッチを見るがすぐに地面。溶岩の海になつてるレガートに視線を移す。
「なんだ、ありゃ。 まぁいい」
視線をケルドの方に移したら赤竜がケルドを追いかけてまわしてやがる。
相変わらず転移で逃げて、赤竜を挑発している様にも見えるが。
…ん?今度は地鳴りが下から聞こえ…どはっ!
俺等より少し横に光の柱が立ち上っていく。
立ち上った光の柱は、空高く昇ると夜空に鎖? の様なものが一瞬見えてソレを砕く。
そうすると、光の柱が段々と小さく…こりゃまさか。
「あら…レガートの封印解けてしまいましたわね…」
「オーマ…何やってるのかしらぁ…」
「オーマさんでも止められない…溶岩かよ。そりゃオーマさんでも無理だ」
俺の言葉に全員が頷くと、光の柱の出元からあの時の様にまるで意識が無い状態であがって来る。
「ここは私達に」
「ですわね、今の状態ならリカルド一人で十分ですわ」
そういうと、出てきた意識の無い神族に飛び込んでいった。
そして俺の横に転移で現れるケルド。
「おやおや、心から愛した者の胸に抱かれて眠る姫君。と言った所ですね。
少々、リセルさんが可哀想にも思えますが…」
「んだテメェ!!」
メディを隠す様に抱き込み、翼で風を受け止め間合いを取る。
「お返しすると申し上げましたので、これ以上何かする事も
…いえ、必要が無いといった方が正しいでしょうか?」
何か不敵な笑みを浮かべてメディを見てるな。 何考えてやがる…。
「そうそう、リセルさん達が心配そうでしたので…、
彼等なら自我を捨てた神ならば…最早敵ではありませんからご心配なく」
どういうことだよ…いやそりより折角だ。ちっと突付いてみるか。
俺はケルドを睨みつつ尋ねる。
「ケルド、テメェもこの世界の奴じゃネェだろ。ネタは上がってんぞ」
軽く笑いながら答えてくるケルド。
「ふむ? …ああクァから聞きましたか。
その通りですが…それは君の中にいるフェンリルに聞いてみればいいでしょう?
もっとも…聞いた時に後悔する事になりますが…」
またしても不敵な笑みを浮かべるケルド。
「どういうことだ。そりゃ…」
「どうもこうも、そういう事で御座いますよ?」
ち、突付いたつもりが逆に手玉に取られたか。
「まぁ、知った所でどうする事も出来ませんよ」
「ったく。わけわかんねぇ…北欧神話で、そんな奴いたっけか」
「さぁ…それはどうでしょう」
「ケルドぉぉぉぉおおおおおおっ!!」
ったく。 ってうお! こっちに赤竜が突撃してきやがった!
相当怒ってるな!
「おやおや、大層ご機嫌斜めのご様子」
赤竜が通り過ぎた後の、風圧で俺は吹き飛ばされる。
慌てて翼で風を受け止めて姿勢を整えて、視線をリセルの方に移した。
「おいおい。まじかよ…」
何があったか知らんが、既に封印されてた神が崩壊し始めてるぞ。復元能力どこいったよ!!
何がなんだか判らないまま、リセル達に近寄る。
「お前ら何やったんだ? ケルドに気を取られて見てなかったが」
「あら、オオミ。遅かったですわね」
「偉大なる地の精霊アラードより授けられた力。復元能力を無効化する力ですよ」
無効化? どんなチートだよ!!
「イマイチ判らん!」
「はは。万物を形作る一点を砕く。偉大なる精霊アラードの力。 砕で御座います」
ん?レトがやったアレか! 物質構成の核を砕いて形を維持出来なくするとか言う。
…それをやったのかよ。 無茶苦茶だな。
唖然としている俺を見てリカルドが軽く笑う。
「私とて、いつまでもリセルさんに付き従っているだけではありませんよ」
「あら、言ってくれるじゃない? リカルド」
まぁ、ケルドを倒すのにゃもってこいの決め技だな。
そもそもこの無風活殺でどうやってアイツ倒したのかすら判らんしコッチは。
「あらっ! 封印されていた下位神を瞬殺なんてっやるわねっ!!」
ん? ゲ! オーマ!! 相変わらず凄まじい容姿だなおい!!
その後にガット達…無事だったか。
じゃあ後は…。
「後は、ケルドだけですわね」
「一番厄介ですが…なんとか動きを止められれば」
「そうねっ! 私とディエラが逃げられない様に周囲に結界を張っておくから頑張るのよっ!」
そういうと、ディエラさんとこに飛んでったオーマ。
取り合えず逃げ道は無くなったと…が、どうするんだ。
動きを読まれる…転移で消えたり出たりする。
一度に読める数には限りがある…このタイプの攻略法は…っと。
「何を考えていますの? オオミ」
「何かケルドの動きを止める方法でも?」
「ん? ああ、ちょっとまってくれ」
ガットも赤竜の所にいってケルド追いかけているな。
俺は、その間にリセルとリカルドの手に入れた力を詳しく聞き、
戦い方を考えた。 転移は一瞬で移動する…一瞬。
そうか。 一回キリだがいけるかもしんネェな!
「良し、一度しか通じないだろうけど…」
リセル達に内容の一部を告げる。
「それはいいのですけれど、オオミは大丈夫ですの?」
「大丈夫だ! 手加減抜きでやってくれよ」
「判りましたわ」
リカルドが俺をジッと見ている。
「どうしたよリカルド」
「いえ…ありがとう御座います」
…まぁ、トドメが俺じゃないってのは気に食わないが、
現状最良だろうな。 俺達は赤竜の元へと急いで飛んでいった。
六十話、最後まで読んでいただきありがとう御座います。
ようやく、ケルドのみとなり、
一幕からの複線回収とリンカーフェイズ諸々の設定が表に出てきます。