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第五十八話 「けじめ」

五十八話目の投稿となります。

 今回はリセルメイン。


二幕は一話ごとに視点を変えておりますが…小回り利かない上に色々と制限かかって大変です。


三幕からは、記号を使って区切って視点変更を取り入れます。


 

  「…ん。 あら、ここは」

気絶していたのかしら。 リンカーフェイズが解かれた状態で、皆も倒れている。

 周囲を見回すと牙の様なものが…。

  「赤竜の…口の中ですの?」

  「…しあん…した…」


シアンさんが下に残ってるんですの!?

 慌てて赤竜の口から身を乗り出す。段々と溶岩が城に向かいつつある光景が広がっている。

良く見ると、シアンさんらしき人影、メディらしき人影。

 他にも居る様ですけれど、よくわかりませんわ…。

その時背後で、うめき声と何かを吐き出す様な声が聞こえる。 その声の方に振り向く。

  「オ…オオミ!? どうしたんですの? その怪我…」

  「ぐ…畜生。 腹に穴あいてんじゃね? これ…」

  「…なおす…」

そういうと、オズがオオミの胸元に小さな手を当てる。

  「…しんぱくどうき…かいせきかいし…」

すると、二人を影が包み込み、先程の鳥の様な姿で現れる。

  「…ったく。 死ぬっつーの…」

  「オオミ、貴方はその程度じゃ死にませんですわよ」

  「うるへー」

  「…きず…なおす」

再生能力に全て回していますのね。 でも…治してる間に会長達が溶岩に。

 慌ててリカルドの傍に駆け寄り、彼の顔を叩く。

  「ほらリカルドおきなさい!」

…ダメですわ。 相当無理してたのですわね。

 こちらは体力的に限界なのかしら。


やれる事をまずやろうと、赤竜の口から再び身を乗り出し周囲を見る。

 周囲に大きく窪んだ穴があるけれど、それも埋まりつつある。

…余り長くは持ちませんけど…。

  両手を前に出し、窪みの外側。そこを包む様に空気の塊を作り出す。

溶岩の流れは一旦止まりはするものの、長くは持ちそうに無い。

  「思った以上に…キツいですわね。 ディエラ達はどこにいったのかしら」

周囲を見回すもあの二人の姿が無い。

  「うし…。 そろそろ動けるな」

視線を前にしつつ、後ろで立ち上がってきたでしょうオオミに喋る。

  「相変わらず…体力の化物ですわね!」

  「うっせ! それよりシアンさん達が見当たらないが」

  「下ですわ!」

  「下? うげ」

それを確認するや否や、赤竜の口から飛び立ち、彼女の元へと。

  「ちょっと! メディもいるのよ!?」

あの力場の中でどうするのかしら…。

 


目を覚ましたのか、私の横に来たリカルド。

 「…私達も参りましょうか」 

頷き、一旦風の壁を解いてリカルドの胸に手を当てる。

  「心拍同期…解析開始アクセス!!」


影につつまれ、ガーゴイルの姿を借りたリカルドが、影を取り払う様に出てくる。

 そのまま赤竜の口から降下して、オオミ達のいる地面へ。

地面に近づくにつれて力場の圧力が酷くなる。

  「く…あいかわらずですね」

  「なんて圧力ですのよ!!」

少し早めに翼を広げて浮き上がる。それでも落下の勢いと重さに耐えきれず

 かなりの衝撃とともに地面に叩きつけられる。

  「ぐぁ…」

  「なんて…重さですの」

周囲を見ると、オオミがメディの気を引いてますわね。

 私達は近くに倒れているシアンさんと、ゼメキスさんを抱えて飛ぼうと翼を広げた。

  然し…余りの重さで飛ぶ事が出来ない。

  「これは…飛ぼうにも飛べませんね」

  「く…どうにもならないですわね」

中腰で二人を必死で抱えている横に、ディエラが現れる。

  「貴方…いままでどこに!?」

  「ごめんね…ちょっと封印探してたの。 この状態で…解かれたら危ないから」

  「成る程。美しいオーマさんが封印を護っている。という事で御座いますね」

  「ええ…」

そういうと、ディエラにシアンさんとゼメキスさんを預ける。

  「この二人を安全な所に…お願いしますわ」

  「私達はメディさんを」

  「大丈夫? …今の彼女。 私達でも手に負えないわよ…?」

私達はメディの方へと歩きながら答える。

  「手に負えなくても…やるしか無いのですわ!」

  「その通りで御座います」

頷くと、その場から転移で消えたディエラ。

 私達はなんとかオオミの傍まで歩み寄る。

  「メディ…目を覚ませよ」

何か…おかしいですわね。

 明らかに木の根や、瓦礫が彼を襲っていますのに…彼に当る瞬間全て叩き落されてますわ。

 一体何が…。

  「…どうして…死なないのよ!」

泣き顔に近いですわね。 そういう顔で腕をオオミにかざして木の根やら瓦礫を操って…。

 それをオオミが当る瞬間に砕いたり打ち落としたり。

それは判るのですけれど、背後から来るのまで…どうなってますの。

  「オオミ? 貴方一体どうしたんですのよ」

  「何か…手に入れてきたみたいですね」

  「リセル達か、離れててくれよ。 …とばっちりくるからよ。

    俺ならこの程度の攻撃全て迎撃できっから」

視線をメディに向けつつ、矢継ぎ早に飛んでくる木の根や瓦礫。

 それら全てを打ち落としている。

  「き…器用ですわね。 でも…どうするのですの」

  「わからねぇ!」

再びメディに語りかけるオオミ。

  「なぁメディ。 泉の時だけどさ。 ありゃ…お前を捨てたんじゃねぇんだよ。

     こう…緊張しちまってて。体が動かなくってよ」


…。 余り聞きたくない話ですわね。

 私は少し視線を横にやる。 そこにはレガートのリンカーかしら。

二人とも気絶し…危ないですわ! 咄嗟に手を出し空気の壁を作り溶岩の流れを止める。

 敵だけど、目の前でそんな死に方されたら寝覚めが悪いですわ。

  「く…。目を覚ましなさい! そこのレガートのリンカー二人!!」

力の限り叫ぶ。

 然し反応が無い…その瞬間、目の前に大量の血が飛び力場の所為か、すぐに地面に叩きつけられる様に落ちる。

  「ぐはっ…」

  「リカルド!?」

今度は木の根がリカルドの腹部を捉えていた。

  「リカルド! おいメディ!!」

慌ててメディの方を見ると、視線が私達の方へ向いている。

  「リセル…よくもいままで…騙して…」

  「騙す? 何をいってますのよ!! …きゃぁっ!!」

その直後、一際大きい瓦礫が横から叩きつける様に飛んできて、私達は付近の瓦礫に叩きつけられる。

  「ぐはっ…」

  「リカルド?」

今ので更に傷口が開いたのか、大量の血を吐き出し、腹部からも血と内臓が…。

 急いで再生能力に回し、回復を待つけれど、これでこちらは身動きとれませんわね。

  「メディ…こっちむけ!」

  「捨てたのに…今更…」

捨てた…まさか。あの時見てたのかしら。

 だとしたら…確かに私はオオミを頼ってましたから。 私は何も言わない方がいいですわね。

  「捨ててねぇって! 捨てたんならココまで追いかけてくるか?

    リセルもそうだ! お前の為にココまで来てんだろが!

     シアンさんもリカルドもガットも…皆だぞ!」


何時になく真剣な顔をしているオオミ。

 私にはそんな顔…してくれた事は無かったですわね…。

 …あら、少し力場が軽くなった…?

  「それは…」

メディの表情に迷いが出てますわね。胸元を両手で押さえて俯いて考え込んでますわ。

  「捨てたんじゃねぇ。 …俺がハッキリしなかっただけなんだよ!」

ハッキリ…。

胸の奥が痛くて苦しい。 …聞きたくない。 …けど。

  「そうですわよ! メディ! 私は確かにあの時オオミを頼りましたわ。

       でも、…確かにオオミは私を拒み続けましたわよ!

     私を心配してか…ちょっとお馬鹿な事もしましたけどね…」


更に力場が軽くなり、メディはその場に力なく座り込み、オオミを仰ぐ様に覗き込んでいる。

  「ほ…んと? 私の…居場所…」


居場所? そう…そういう事ですのね。

 私は、こみ上げてくる何かを必死で押さえ、大声で怒鳴る。


  「オオミ! 今度ハッキリしなかったら

   …一生…許しませんわよ!!!」


その直後、私はリカルドの影で耳を塞いで目を閉じた。見たくなかったからだと思う。

 完全に力場が消失したのだけは感覚で判った。

  「…」

誰かが私の頭に手を乗せて、優しく抱き寄せてくる。  

 誰? …誰でも良い。その人の胸に泣き付いた。

  「…」

少し抑え切れなかった感情が収まったのか、目を開いて横を見る。

 そこには…お馬鹿な顔をしたオオミが…笑っている。


  「何泣いてんだ? リセル。 うはっ! 

   その二頭身サイズで、鼻水垂らして泣くなよ」

…。

 このお馬鹿…人の気も知らないで何を笑って…。

誰の胸か知りませんけれど、そこから跳ね飛んでオオミの顔に、小さい空気の塊をぶつける。

  「うおっ!! な…なんじゃその力! あぶねぇな!!」

  「うるさいですわっ!このド馬鹿!!」

  「ド馬鹿ってなんだよ!」


全くこのお馬鹿は。

でも、…空気の塊でも軽く弾き飛ばしましたわね。一体どんな事したのかしら。

そして…良く見ると、メディを抱えている。

 気絶してるけど、なんて安らかな寝顔ですこと。…羨ましい。

羨ましそうに、抱えられているメディを見ている私。

 それに気付いていないオオミが口を開く。


  「と、後はこの溶岩なんとかしないとな」

  「そっ…そうですわ!  コレ何とか…って、ケルド!」

  「テメェ!!」


また突然現れたケルド。楽しむかの様にこちらを見て笑みを浮かべている。

  「おやおや。まだ心のどこかで安らぎを求めておりましたか。

    ふむ…悲劇で終わるかと思えば、そうでもなかったよう…いや一部悲劇ですか」

  「テメェ…ぶっ殺す!!」

  「ケルド…貴方は絶対に許しませんわ…」

メディを地面に寝かせて、ケルドを睨むオオミ。

 私もケルドに右手をかざして睨みつける。

  「オオミ君。 無風活殺は防御の力。 こちらから攻撃しなければ無意味ですよ?」

  「くそっ…そういやこいつで殺されてたんだなテメェ」


…防御の、そういえば攻撃一切してませんでしたわね。メディだからと思ってましたけれど。

 …! ケルドの影が!

  「っと…危ないですね」

シャドウストーカーの…瞬間移動ですら捉えられないのかしら。

 現れては消えの繰り返しで、影は執拗に追いかける。

が、ゼメキスさんの息が持たなくなったのか、シアン達が出てきましたわね。

  「ったく! 神慮思考の上に転移。なんて厄介なんだい」

両手を腰に当てて、ケルドを睨んでいる。ゼメキスさんは…四つんばいになって息を荒げてますわね。

  「取り合えずアンタ達! 一旦空に逃げるよ! 溶岩が結構近くにきてるからね」



頷くと私達はシアンさんを抱え、ディエラさんも来たのか、ゼメキス君を。

 オオミはメディを抱えてますわね。 そうですわ…レガートのあの二人!

と…振り向いた瞬間、ガットも意識取り戻したのですわね。

リンカーフェイズした状態で、すれ違いで溶岩の海に戻っていきましたわ…って。

 赤竜まで!? 物凄い風を巻き込んで降りていきましたわね。

気性の荒い竜と聞いてましたのに、ガットと何か意気投合していた様な…まぁいいですわ。

 あちらは、大丈夫な様ですわね。



私は一緒について来たケルドに視線を戻す。

 不敵な笑みを浮かべてこちらを見ている。

  「さて、シアお嬢様…そろそろ策とやらをお教え願えませんかね…?」


その言葉に、気絶しているメディを覗いた全員がシアンさんに振り向く。


  「その名で呼ぶんじゃないよ! ったく。…まだ気付いて無いのかい? 

    見事に引っかかってくれたもんだね!」


策…ガットのその場の判断だけに任せたのかしら。

 でもそれだと確かに何時行動起こすか不明ですけれど、判って当然ですし。

…シアンさんの答え待つしかありませんわね。

五十八話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。

 まだ暫く戦闘は続き、同時に一幕からの複線がごっそり繋がってきます。

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