表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/129

第五十七話 「溶岩の海」

五十七話目となります。

 視点の切り替えを一話ごとに変えて試しております。


今回はシアンメイン。



  「にゃろ!! アリセア!仔竜になんぞ!」

  「バカタレ! そんな事したらなる前に首を折られるよ!」

ケリウという男に捕らえられ、首を押さえられているガット。

 それから逃れようとアレをやろうとしたみたいだけど…。何処まで頭悪いんだかねこの子は。

  「その通りだ。迂闊な事はしない方が利口だ小僧」

  「竜化なんてさせたらちょっとやばいしね~?」

どうにもならんかねこりゃ…。 ちっ! さっきの子供。神族のリンカーか…力場をぶつけてきやがったわね…。

  「く…また難儀なモン作ったねレガートは!」

  

然しこの力場に奴等も耐えている事になる、アタシはそこまで動けないワケでも無い。

 逆に都合が良いか。…ん?

その瞬間、周囲にいくつか何かの塊が落ちて、瓦礫が砕け散る。

  「ありゃあ、リセル君達かい…ケルドに足止めされてるね」


その声にも男の方はアタシから目を離さない。…ちっとぐらい意識向こうに行くと思ったんだけどね…。

 そのまま暫く睨み合いが続く。

  「だーっ! もう師匠! 俺様ごしぶん殴れ!!」

  「生憎とこの状態だと手加減できなくてね!」


下手すりゃガットまで殺しかねないからね。

 さて、どうす…今度はなんだい! 再び上空に視線を移すと、オオミ君が来た様だね…って。

 あの時のアレをやるってのかい。 ここに居る事知ってるのかね!?

…まぁ、巧く外してくるだろうから、その爆風を利用してガットを助けられるか。よし。

  「ガットとアリセア君。ちっとキツいのくるみたいだから頑張って耐えるんだよ!」

  「何がくるってんだ師匠? て、なんだありゃ!?」

  「どういうこ…きゃーっ!!」


上空から巨大な火の玉が空気の渦を巻いて落ちてくる。

 以前に見せたオオミ君の技の一つだね…、魔力も何も使わないのにヤケに破壊力のある。

その瞬間、少し離れた所にソレが落ち、激しい地響きとともに爆風と瓦礫の破片が飛んでくる。

  「ぐあっ!? なんだ!」

  「なになに! 今度なによもう!」

瓦礫の破片が男の背中に突き刺さる。 

 それに意識を取られた瞬間を狙って一気に詰め寄り、ガットを掴んでいる腕を引きちぎった。

  「ぐっ…貴様!!」

更にガットを遠くに回し蹴りで蹴り飛ばし、その回転力で更に裏拳を男の顔面に見舞う。

 大きく横に仰け反った男。それにもう半回転して蹴り飛ばす。

その直後に、熱を帯びた土煙が今度は爆心地から雪崩の様に迫ってくる。

  「あつっ…! ったくオオミ君も手加減をしらないねぇ」

男は…だめだね。視界がほとんど…今度はなんだい!!

 再び激しい地響きが起こり、今度は地割れがいくつも足元で起きる。

  「上で何してんだい全く!!」

いくらケルド相手にしてるってもね。 こっちの事も少しは考えて欲しいモンだね!!

  「師匠みっけ!!」

  「あつっ!!目にほこりがっ!」

  「ああ、無事だったかい、 それよりアンタ達この地下に何かあったかい?」


爆心地の少し向こう、さっきの何かが落ちた所。 

  そこに…よく見えないが…人影が二つ。 さっきの小さい子のリンカーは爆風に巻き込まれて行方が判らない。

  「地下? ああメディ先輩がいるぜ!」

  「確認はしてませんけど、ケルドさんがもういかにもそこって目で」

成る程。 んじゃさっきの地割れで出てきたか、ケルドに連れ出されたか。

 どちらにして…ぐはっ!!

  「なん…だいこりゃ」

  「おもっ!!!」

  「重い…っていうか…潰れちゃうよ!」

周囲の瓦礫が砕け、地鳴りが酷い。 なんだいこの馬鹿げた力場は。

 まさか…メディ。…ユグドラシルの実かい。


  「アンタ達、油断するんじゃないよ。 どうやら一番恐れていた事になってる様だ」

  「どういう事だよ! つか重過ぎて立ってるのがやっとだぜ!?」

  「体がきしむよっ!!」


  「ユグドラシルの実…メディの精霊力といえばわかるかい?」

  「かーっ! メディ先輩ブチキレてんのかよ!!」

  「…まぁ、そんな所だ」

ん? 少し軽くなったね…上空にケルドが連れていったのか。

  それを見上げていると、目の前にケルドが現れる。

  「ふう。流石に至近距離だと耐え切れませんので、こちらに」

  「ケルド…アンタ。 なんて事してくれたんだい。 封印の方がまだ可愛いじゃないか」

  「ケルドのニーチャン!! メディ先輩に何しやがった!!」


全くだ。 然しこの状態だと戦…冗談じゃないなんだいありゃ。

 周囲のモノを燃やしながら、粘度の高い赤い溶岩がゆっくり中心に向かって流れてきている。

  「溶岩…!? メディか…」

  「うげ!! 何か向こうから…いや、あっちからも溶岩流れてきてるぞ!!」

  「いやーっ!!」

  「ああ、先程メディさんが力を使った時に、溶岩が外周から噴出しましてね。

    まぁ、もう外周の者達は生きてはいないでしょうね流石に」


その言葉が終わるや否や、ガットが飛び出しケルドに殴りかかる。

 それを転移でかわして、瓦礫の上に立つ。

  「てめぇ…!!」

  「ガット落ち着きなさいって!!」

  「なんて事してくれたんだい全く。 もうこれじゃレガートはお終いさね」

さて、どうにもこうにも、取り合えず溶岩から逃げないとね。

  …!! なん…だいこりゃ。 まともに立っていられない。

さっきとは比べ物にならない力場が圧し掛かる。

 その直後、上空で耐え切れなくなったのか、オオミ君達が落ちてきた。

激しい土煙を上げて、必死に起き上がろうとしているけど…とてもじゃないけど無理だねこりゃ。

  「大丈夫…かい? アンタ達」

  「シアンさんか! 洒落になってネェよ! なんだこの重さ!!」 

オオミ君はわりと余裕あるのか口が聞けるが…周りの連中は口も聞けない様だね。

  「ハハ。…流石に私も辛いので、少し逃げさせていただきますよ」

そういうと、転移で消えてしまったケルド。

  「畜生…!!」

ジワリジワリと流れてくる溶岩、更に圧力を増し続ける力場。

 冗談じゃないね! このままだと全員お陀仏だよ!!

 流石に耐え切れなくなったのか、全員地面に這い蹲る形になり、その正面に…。

  「メディ…アンタ…」

  「メディ! やめろって…の!」

まだ喋れるのかい…アンタもいい加減頑丈だねぇ。

  「…どうして私を捨てたの? オオミ」

なんだい? 何か言ってる様だけど…。

 ってオオミ君、立てるのかいこの中で。

地面に足と腕を叩きつけて、歯を食いしばり立ち上がるオオミ君。

  「捨て…てねぇよ」

  「捨てた…捨てた!!」

捨てた? …何か良く判らないけど、どうにもこれは任せるしかなさそうだね。

  …!! また地響き今度はなんだい次から次へと…赤竜? 

メディとオオミ君の少し後方に赤竜がコチラを見て立っている。

  「貴様か!! この力場の主は!!」

うわちゃ…怒ってるね。 然し流石に赤竜。この中であそこまで動けるのかい。

  「あ…あんた。サザの…息子かい?」

何とか声を出して、彼の気を引こうとする。

  「ん? 貴様もあの赤髪の小僧の仲間か。 そうだ俺はレガ。

    サザは親父だが…それよりも…この力場の主を消し飛ばす方が先だ!」


くっ…口をあけた…まさかこんな所でブレス吐くつもりかい!!

  「やめろレガ! 頼むからソイツはやめてくれ!」

  「ガッ…ト! アンタ立って…」

  「赤髪の小僧か。 然しコイツを消さねば全員が死ぬぞ」

  「ニーチャンが止めてくれる! もう少し様子みてくれよ!!」

  「…条件は果たした。 悪いが好きにさせてもらう」

  「レガ!!」


そう言うと、あの時よりかは小さいんだろうね。

 それでも強力なブレスを吐き、メディの方向とは違う別の場所。

 溶岩が流れてきている周囲に大きく溝を作る様に吐き出した。

  「これで時間は稼げるな。 親父の死に様を言わずに死なれては困る」

  「流石…サザの息子だね。 気前が良いね…ぇ」

  「ありがとよ!レガ…ぐはっ」

気が抜けたのか、一気に地面に叩きつけられたガット。

 どこにそんな力あったんだい。

 にしても、オオミ君がどうするのか。

  「オズ。早く解いてくれ」

  「…しんぱくどうきかいじょ…かいせきしゅうりょう…」

元の姿に?… オズ君が危な…何? ・・・ああそうか。

 彼女も人為的に作られたとはいえ、ユグドラシルの実か。

この力場の中で普通に立っているオズ君とメディ。

 二人とも化物かい全く。

  「おら…早く俺にリンカーフェイズ…して、記憶見てみやが…れ。メディ!」

  「…捨てた! みたくない…もう見たくない!!」

 

そのままオオミ君がメディ君の肩を掴む。

  「いいから…見ろって。 俺ももう…まともに立ってられない」

  「うるさいっ!!」

地面から突然生えてきた木の根がオオミ君の腹部を…これはヤバイね。

  「ぐは…メディお前…」

 大量の血を口から吐き、その血がメディにもかかる。

  「もう…見たくない。 全部…全部!!」


更に圧力が増し、地面が大きく窪む。

 ち…他の奴等気絶したかいこりゃ。…レガ?


地面ごしアタシ達を口に咥え込み、その場を離れる。

 上空に来た所為か、わりと圧力が掛からなくなる。

  「ふう…って、ゼメキス君!」

アタシは、飛び降りて溶岩の海になりかけている地面にむけて飛び降りる。

 地面が近づくにつれ、圧力が増す。 そのまま地面に叩きつけられる様に着地する。

流石に耐えきれなかったのか、足の骨がイカレちまったね。

 倒れこみながら周囲を見回すと、少し離れた所で、気絶しているゼメキス君を見つける。

  

「畜生…!! 思わず飛び降りたものの、どうにもならないねこりゃ…」


痛みと圧力の所為か、流石のアタシも意識が遠くなる。 


五十七話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。


次回はリセルメインとなります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ