第五十五話 「シアンの本気」
五十五話目の投稿となります。
暫く戦闘のみ。今回はシアンメイン。
瓦礫に叩きつけ、起き上がりを狙い下段から腹を狙い、震脚と共に拳を打ち上げる。
両手で受け止めるが、止めきれずに背後の瓦礫が砕け更に後退する男。
ソイツは地面に引き摺った跡をつけながら、姿勢を整える。
雷竜のリンカーらしいが、竜の外見を一部借りてはいるものの、茶色い髪を短く切り後ろで纏めて。
壮健な男性で20後半ぐらいの年齢ぐらいと判る。
「奇襲に続き不意打ちか」
「イグリスも結構やる事えげつないね~?」
姿勢を整えつつ会話。 間合いと流れを戻そうって腹かい?
そうはさせないね。
無言で姿勢を整えさせる間も無く追撃する。
地面を強く蹴り突進し、男の位置より少し手前で再び地面を強く蹴る。
蹴った勢いで方向を左へと変え、そこにある瓦礫を蹴りで粉砕し、土煙を撒き散らす。
「ぬ…」
「ちょっ…げほっ…卑怯ね!!」
問答無用。土煙で相手の視界を奪い、背後にある半ば半壊した建物に登り土煙から逃れ、男の位置を確認する。
確認すると、半壊した建物を蹴る。その反動と勢いを乗せた拳を男に見舞う。
土煙を巻き込みながら吹き飛んでいく男。 しかし相手の目がこの土煙の方をしっかりと見ている。
まだ余裕…いや、竜のリンカーの再生能力か。 生身だとやっぱキツいねぇ。
土煙が収まる前に再び瓦礫に身を隠す。
「ふむ。 余程戦いなれているな」
「相手リンカーフェイズしてないよね?」
起き上がり、姿勢を整えている。攻撃に転じさせると厄介そうだからね…。
近くの瓦礫を男に投げ、同時にその場から違う場所に移動する。
「む?」
「あれ? これちがうくな~い?」
投げた瓦礫を破壊して、それに一瞬気を取られ空いた右側面。そこに姿勢を低くした状態で詰め寄り足を払う。
「囮か」
「さっきから隠れてチマチマチマチマ!!」
姿勢を崩し、やや仰け反った相手の背に払った時の回転力で中段の回し蹴りへ繋ぎ、地面に叩き伏せる。
「ち…」
「ちょっ!?」
うつ伏せに叩きつけられた男の首を狙い、足で踏みつけようと回し蹴りが当った瞬間に止め、軌道を下に落とす。
男の首を捉える手前で、男は身を返しアタシの腕を掴むと、力任せに近くの瓦礫に投げつける。
身を翻し、瓦礫を蹴飛ばして直撃を避けて着地するが…参ったね。 間合いと姿勢整えさせちまったよ。
「恐ろしいまでの身体能力だな」
「魔…魔人よね~? コイツ」
さ~て、どうするかね。ダメージはあるみたいだけど、再生能力が厄介だ。
一気にゼメキス君とやってしまうか。…いやまだ早い。
ん? 突然男の姿が消えて、右腹に痛みが走り近くの瓦礫に叩きつけられる。
「がはっ…」
男は右手をやや前に出して、やや腰を落として構えている。
「厄介だねぇ…。それがガットの言ってた突然消える攻撃って奴かい」
「貴様こそ、魔人…女の身でよくそこまで戦えるものだな」
「化物だね~絶対コイツ」
男は突然構えを解く。
「相方はどうした…リンカーフェイズしろ。 本気の貴様等とやりたくなった」
「あ~らキリウったら」
はっ! 余裕だね。
「はっ! 残念だけどアンタみたいな竜のリンカー相手にはちっと相性悪くてね?
無駄はしない主義なのさ!」
再び、構える男。
「そうか。ならば致し方無い。 早々に消えて貰う」
「あら~? もうやっちゃうの?」
…雷撃かい。 それがアタシに通じると思っているのか。 上等じゃないか。
男は短い時間だが帯電し、そこから細い雷撃をいくつもこちらに向けて撃ち出してくる。
視線を地面に移し、先に落ちてくる影の大きさで順番を把握し、雷撃を避けつつ男に接近する。
そのまま男の背後に回り首を絞める。
「な…んだと?」
「雷撃避けた!? ってキリウ!」
「はんっ! その本家本元とやりあった事があってね。
生憎と雷撃は慣れてるのさ」
ダメージが蓄積しないなら、血液の循環を止めて気絶させる。
それを狙ったものの、男の右肘がアタシの腹を狙っている。
ソレを確認した瞬間に腕を放して、後ろに飛びのく。
「ったく…打撃も駄目! 絞めも駄目! 厄介だよ竜のリンカーは!」
ゆっくりと、こちらを向き、再び体が帯電している。
「決め手が無い。それは勝ち目が無いという事だ」
「諦めなよ~?」
再び撃ち出してくる雷撃をかわして、間合いを取る。
「仕方ないネェ。気が進まないけど…本気だしてやろうかね」
一瞬強く腰を落とし、震脚で地面を大きく穿つ。
大きな土煙と巻き込んで飛び出し、帯電している男ごと地面に殴りつけ、
そのまま体を一回転させ肘を相手のミゾオチへと叩き落す。
胃が破裂したのか、男は鈍いうめき声と共に血と吐しゃ物を大量に吐き出す。
そしてその口目掛けて拳を打ち下ろし叩き込むと、男の歯がいくつか周囲に飛ぶ。
空いた左手で男の髪を掴み付近の瓦礫へと投げつけ、瓦礫に衝突する瞬間に蹴りを重ねて男を更に吹き飛ばす。
巻き上がる土煙、首を少し傾けながら、出てくるのを待つ。
「悪いけどね。こうなったら…。
まともな体のまま死なせてあげられないんだ。恨んでくれるなよ」
土煙を翼で払い、血だらけになった男が、腹部を抑えて血を撒き散らしつつ出てくる。
そして、アタシの姿を見て目を丸くして驚く。
「ぐっ…貴様。…その体は?」
「え~!? いつリンカーフェイズしたのさ?」
翼は無い、手と足以外ほぼ人の形を残し、親父同様、額に一際大きい目…三つ目。
そして肌に竜鱗がついている程度の状態。
使い続けると…考えたくもないけどね。まぁ…。
「ケルベロスの時同様、並大抵の攻撃力だと通じなさそうだからね…」
傷を再生させつつ構える男は、血だらけの口を開く。
「リンカーフェイズはしていないだろう。
何者だ娘」
「見た事無いし聞いた事も無いよね~?」
その言葉を軽く笑って返す。
「そりゃそうさ、双極竜と魔人の混血児だからね。
…あんまり使いたくは無いんだがねぇ。後々に副作用があって」」
それを聞くや否や、男はその場を逃げ出す様に空に。
「ちょっと! キリウ何で逃げるのよ!?」
「馬鹿が! まともにやり合って勝てる様な奴では無い」
なんだい…逃げられると思ってるのかい全く。
ゆっくりと腰を落とし、地面を強く蹴る。瞬く間に上空に逃げた男の上へと回り込む。
「何!?」
「はやっ!!」
そのまま回り込んだ勢いで、男を翼のガードごし地面へと蹴る。
やや後方に男は蹴り飛ばされ土煙を上げて地面に激突する。
その付近へと降りて駆け寄り、土煙の前で両手を腰に当てて怒鳴る。
「ったく! みっともない事を男がするんじゃないよ!!
ん?…成る程。 こりゃ参ったね」
土煙が晴れ、男の姿が見えると、まだ近くで戦っていたのかガットの首を絞めて立っていた。
「空中に逃げたのはガットの場所を確認する為かい…」
「悪いな。まともにやり合って勝てる相手では無さそうでな」
男の腕の中で噛み付いたりして必死で逃げようとしているガット。
「なんだよ!? 畜生!…って師匠が本気出してるだと!?」
こっちに気がついたのか、暴れるのをやめて目を丸くして見ている。
「もうちょっと離れて戦えなかったのかい? 後でおしおきだねぇこりゃ」
「いや! 見た目より手強いんだぜ!! 体がクソ重たくなるし!!」
「会長!?」
ああ、そういやアリセア君は初めてだったねこれを見せるのは。
それはいいとして、重たくなる…。ガットの相手の子供を改めて見ると…。
「神族か何かのリンカーかい。 そりゃアンタの手には余るね」
「さて、形勢逆転という所だ」
「大人しく観念するんだね~?」
ガットの首を絞めたまま子供の方へと寄っていく男。
さて…どうしてくれようかね。
五十五話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。
当分殴りあいが続きます。