第五十三話 「阿吽」
五十三話目の投稿となります。
今回はガットメイン。 少し話を短縮出来たので展開を早めました。
時間軸は前回と同様です。
「だーっ! 疲れた!」
「ホントどういう体力してるのあんた…」
勢い良くベットに倒れこんだ俺様。その横で呆れた様にこっちを見て座っているアリセア。
そのまま仰向けになって天井に視線を向ける。
隣でアリセアが何か喋ってるがどうでもいい!
あれから連日、イドとマリアの相手。それも日増しに手強くなってきやがる。
復元能力が厄介なのは判るが、その他は目ぼしい能力は使っている様にも見えない。
アレの何を実験しているのかサッパリ判らん!!
ケリウのオッサンの相手もしているが、火属性の身体強化使ってようやくダメージが少しある程度。
とどめに雷竜の雷ときたもんだ。
そして合間に外周の連中に狩りの方法やら何やらと。
…ん? 何か横から吐息の様な生暖かいモンが…。
「ふう…」
ふう。とワザとらしく口に出して、耳に息を吹きかけてきてやがった!!
肌が泡立ち転げる様にベッドから落ちる。
そのままベッドから腕と顔だけ出して怒る俺様。
「なっ…何しやがんだ!」
「無視してるから、ちょっと意地悪」
意地悪ってオマエ…。
寝転び、顎を曲げた両腕に乗せてこちらを見ている。
「で、何か用か?」
「ホントに聞いてなかったのね。
これからどうするのって」
目を細めて呆れた顔をしやがった。
俺様は立ち上がり、両手に腰を当ててふんぞり返る。
「どうするってやるこた一つ!」
「先に言っとくケド…、レガートを変える。
それだけで何も考えて無い事言わないよね」
自信満々だった顔を少し引きつらせたまま、体が硬直し、
そのまま暫く沈黙が続く。
「…」
「…」
図星かと言わんばかりの呆れ顔で溜息つきやがった。
「あんたほんっと馬鹿」
「うっせぇ! 取り合えずどうしようもネェだろ。
イドとマリアは戦闘訓練時以外会えないしな」
再び、ベッドの上に座る。
「必要な時以外に会えない、とどめにあの無感情だろ?
暫くは無理だぜ無理。 つかココじゃ無理といった方がいいか」
「ココだと無理? ああ、イグリスに連れて帰れば判らないって事ね」
軽く頷いてアリセアの方を見る。
「イドやマリアだけじゃねぇ。 あの外周の奴等もだ」
不思議そうに俺様の顔を見てくる。
「ほれ、イグリスも人手足りネェしな丁度」
「ああそういう事。でもそんな事…」
「出来ませんね、流石に」
うおっ!? またどこからともなく!
驚いて飛び起きたアリセアと、少し身を引いた俺様。
「またいきなりかっ! ニーチャン!」
「お…驚かせないでよ!」
軽く笑うとケルドのニーチャンは真面目な顔になり答える。
「ははは。まぁ、それは不可能でしょうね。
流石に外周の者をイグリスに向かわせるのは、上部も黙ってはいないでしょう」
「そりゃそうだろ! 師匠がここ攻め落としてからの話だ!」
「ガット?」
また不思議そうに俺様を見ている。
「どうせまたケルドのニーチャンが、封印解いてしまうだろうしな!
そうなったらレガートも瓦礫の山だぜ?」
わざとらしく両腕を左右に軽く広げてケルドのニーチャンはこういってくる。
「おやおや、そんな事はしませんよ?」
どうだかな!
「疑り深いですね。 前回はレガートの意志でしたが、今回はレガートの封印ですよ?
私がここの封印を解いて、何かあるとでも?」
…うさんくせぇ。
「はっ! どうだかな!」
ん? 何かアリセアが考え込んでるな。
「でも、どちらにしても。 ただじゃ済まないよね」
「そうですねぇ。 あちら側も相当な戦力となってますし…」
「ケルドさんが何か隠していると思う」
目を丸くしてアリセアを見るケルドのニーチャン。
「おや? 何故でしょうか?」
「ケルドさんここに居るってことは、どこかにメディ先輩も居るって事でしょ?
絶対何か隠してる…」
ベッドで四つんばいになり、睨みながらケルドのニーチャンに歩み寄っている。
「さぁ、それはどうでしょう?」
「絶対何か隠してる」
ジリジリと寄っていくアリセア。
「ははは。まぁ、それは見てのお楽しみという事で」
…メディ先輩がココに居る。そいやそうだよな。
どこかに監禁でもしてるのか? 見たことが無いぞ。
「さて、用事がありますのでこれで失礼」
そういうと、またパッと消えてしまった。 消えたり出たり忙しいな!
「あ! ケルドさん!?」
居なくなったケルドのニーチャンの場所をむくれっ面で睨んでいるな。
怒ってる怒ってる。
「もう! でもメディ先輩どこかにいるんだよね」
「そりゃそうだけどよ? このだだっ広い所で、
しかもあのニーチャンに、見つからずに見つけるなんて不可能に近いぜ?」
その場にうつ伏せになり、顔だけこっちを見るアリセア。
「そうなんだよねぇ。 場所が判ってるのって赤竜だけ…」
赤竜…確かサザの子供だったよな? …。
あれから結構経つしな。 …そろそろ頃合か。
「ちょっとガット。 またヘンな事考えてるでしょ?」
良し!
俺様はベッドから勢い良く飛び上がる。
「ちょっとガット!?」
「会いに行く!」
「誰によ!?」
そういうと、ドアを開けて訓練場への途中。そこにある分かれ道。
その分かれ道の真ん中のデカい部屋。
入り方は判らないが、窓から赤竜が青白い魔法陣に閉じ込められているのは判る。
慌てて後ろから追いかけてきたアリセアが小声で喋って来る。
「ちょっと…外には出ていいっていわれたけど、
これはヤバいんじゃないの?」
俺様は関係無いとばかりに一笑に伏して一言。
「はっ… 関係ネェ…」
「馬鹿っ…目立った事はするなってあれほど…」
「だからだよ…」
「どういう意味よ…」
「いいからさっさとリンカーフェイズしろ…」
アリセアの右腕を無理矢理掴み、胸元に当てる。
「何考えてるのよ全く…あとで怒られてもしらないからね…。
心拍同期…解析開始…」
その場で影に包まれ。影が晴れワイバーンの一部の姿を借りた状態。
その俺様と肩に小さくなったアリセアが浮いている。
「よし…」
「だからなに…ってちょっと!」
窓を叩き割り、強引に内部に入り、赤竜の前に下りる。
何か一つだけと思ったら…いくつもの魔法陣が重なってるな。
「…これ、縛り付けておくだけのじゃないね…」
ふよふよと浮きながら、魔法陣を見ているアリセア。
「そうなのか?」
「うん…別の何かも重なってる」
「何かってなんだよ」
小声で相談している俺様達に気付いたのか、
赤竜がこちらを見て口を開く。
「見慣れない小僧だな。 これは俺を縛り、
そして生命力そのものを吸い取る仕掛けもある。忌々しい」
なんだ? 意識はあるのか。
じゃあ話は早い!
「オマエ確か、サザの息子だろ?」
目を丸くして俺達を見ている。
「親父を知っているのか。 …なら俺の性格も聞いているだろう。
何をしに来た」
その言葉にアリセアも俺様の方を向く。
「そうよ…。 一体何するつもりなのよ」
両手を腰に当てて、赤竜に言う。
「オマエをここから逃がす。その代わりに一つ条件飲んでくれないか?」
いでぇ! 耳を引っ張るなアリセア!!
「ばっ馬鹿! そんな目立った事したら
…というかこんな危ない竜…野放しにしたらどうなるかわからないの?」
「そっちの小さいのは良く判っている様だが…。 その条件とはなんだ?
内容次第では、聞かなくも無い」
俺様は赤竜に指差して一気に答えた。
「簡単だ! このレガートの外周だけ残して派手に暴れてくれ!
んであのブレスを空に向けて一発頼む!後は好きにしたらいいぜ!」
「外周だけ…か。 ブレスも容易い事だが、それをして何の意味がある?」
少し焦り気味に答える。
「あのニーチャンに気付かれる前にやる必要があるんだよ!
意味があったら意味が無いんだ!」
いでぇ! 耳に噛み付きやがった!!
「馬鹿!ホントに馬鹿!!」
「あとな! オマエの父ちゃん、良い死に様だったぜ?」
お? 何か目を閉じたな。
「親父の死に際に立ち会ったのか。…それは後で聞くとしよう。
俺もいい加減ここには飽きていた所だ。 条件を飲もう」
軽くレガに向けて笑うと、俺は大きく声を上げる。
「おらいくぜ! 開戦の合図だ!!」
そういうと、俺様は地面をぶん殴り、床ごと魔法陣の一部を吹き飛ばした。
「ちょっ…! 開戦ってそんな勝手に!!
というか爆風で魔法陣吹き飛ばすなんて無茶苦茶だよっ!」
「以前にオオミのニーチャンがやっただろ!
ニーチャンに出来て俺様に出来ない筈が無い!!」
「馬鹿!!」
その瞬間、レガは大きく翼を広げて残りの魔法陣を吹き飛ばし、
大きく咆哮して天井を破り飛び立った。
その翼の巻き起こした風に巻き込まれて壁に叩きつけられる。
「ぐはっ! おもったよりスゲェなアイツ!!」
「馬鹿っ!サザ見てなかったの!?」
「見てたぜ! だからこそなんだよ!!」
「どういう事よ!!」
段々と周囲のモノが崩れ始め、激しく揺れだしてくる。
「よっしゃ! 俺達も外に逃げるぞ!!」
「え!? イド君達は!? メディ先輩は!?」
レガの飛び立った後を追い、空へと飛ぶ。
崩れ始めた城内。落ちてくる瓦礫を砕いては避け、ひたすら空へと。
「一瞬で消滅でもしない限りあの二人は、死ぬタマじゃねぇ!
メディ先輩はどうもケルドのニーチャンの切り札っぽいからな!」
「な…なるほど。 でもどうするのよこんな勝手な事して!」
「それを判ってていかせたんだよ! おおっ!!」
先に夜空に出たレガが怒りの咆哮と共に、すげぇデカいブレスを空高くに吐いているのが見えた。
その天を裂く様なブレスが、あたり一面を真っ赤に染めている。
「はっ! ジーサンでたれだけデカかったんだ。若い赤竜のブレスならイグリス全土から見えるぜ!!」
「すごっ!火山の噴火みたい…。
あんた…まさかレガのブレスを…。でもあんなドラゴン野放しにしてどうするのよ!!
「そいつも計算づくだ!!
それよりも…、ちょいと遅かったな! ケルドのニーチャン!!」
慌ててアリセアだけ振り向いた。恐らくは居るだろうと思った。
「困りましたね。 あの竜を開放されてしまっては…。
一体何を……成る程。 何も考えない子供と思っていましたが…中々どうして」
「はっ! それよりもメディ先輩はどうした!?」
ん?視線を城の足元に…地下か!
「そこか! いくぜアリセア!」
「え? ちょっと何!?」
急いでいこうとする俺様を呼び止めるケルドのニーチャン。
「行くのは勝手ですが、死んでしまいますよ? …君達が」
「それはどういう意…っケルドさん!?」
その瞬間、ケルドの左足が消し飛び、大量の血が流れ出す。
流石師匠のリンカーフェイズ。行動が早い!
「ったく! 相変わらずの聞かん坊だねぇガット!」
声のした方へと振り向くと、リンカーフェイズしたリカルド先輩。
そしてその下、半ば崩れた監視塔に師匠とゼメキス君。
「はっ! そうさせる為に行かせたんだろ師匠!!」
「え? ええええっ!?」
困惑して俺様と師匠に視線をいったりきたりさせているアリセア。
「ちっと予定より早過ぎるがね!
もうちょい早かったら…危ない所だったよ全く!!」
そういうと、復元しているケルドの方へ師匠は向く。
「さてケルド! 年貢の納め時だよ…って危ないね!!」
暴れまわる赤竜が監視塔付近を破壊しだした。
「これが…策でしょうか? シアお嬢様」
崩れていく監視塔から、別の場所に移動した師匠達は再びケルドのニーチャンの方を向く。
「はっ! 違うね! …それよりそんな余裕カマしていいのかい!?」
ケルドのニーチャンはその言葉を聞くと同時に、体の半分が大きく爆ぜ、血が大量に飛び散る。
「…余所見している余裕ありまして?」
なんだ!? リカルドのニーチャンの肩にいるリセル先輩が、
腕をかざしてるが何かやったのか!?
「くっ…。 そうですか。風空自在もありましたね。
然しこの程度で私は殺せませんよ? それに…」
…ちっ。 着やがったか! キリウのオッサン!!
俺の真下に飛んできたオッサンは状況把握しようとしているのか、
ケルドのニーチャンに気を取られている。
「一体何があった? ケルド」
「何で赤竜あばれちゃってるのよ~? ってケルド!? 凄い怪我!!」
問答無用! 俺様は翼で空気の渦を作り、
火を纏って、隙だらけなキリウのオッサンを強打し地面に叩き落す。
「何!? 小僧…貴様!!」
「ちょっと!何よなんなのよ!?」
俺様はリセル先輩に一言言うと、オッサンを追いかける。
「このオッサンは俺が引き受けた! リセル先輩達はケルドのニーチャン任せたぜ!!」
「えええ!? ガットちょっと!?」
一気に降下し、オッサンの居るであろう場所に、ブレスを吐く。
融解し、砕けた城壁の合間を縫う様に走り、オッサンを探す。
「ちょっと! 無茶よ! 勝てなかったじゃない!」
「はっ! あのオッサンとケルドのニーチャン揃うと厄介そうだからな!
ここから引き離す!! おらぁああああああっ!!」
空を見上げているオッサンを見つけ、そのままの勢いで蹴りを見舞う。
軽く避けられるが、その勢いで傍の瓦礫を蹴り再び殴りかかる。
然し殴りかかった右腕を、捕まれ地面に叩きつけられる。
「ぐはっ!」
「きゃぁっ!!」
そのままオッサンは俺様の腹を踏みつけ、睨む。
「小僧。一体何をした?」
「そうよ~? なんでシアンとかまでいるのよ!」
腹に乗せられた足を払いのけ、転がりながら姿勢を整え、構える。
「はっ! 師匠のリンカーの能力知らないワケねぇだろオッサン!!」
余裕カマして、顎に手を当てて答えるオッサン。
「確か影から影への移動が可能だったな…奇襲か」
「でも、そんなのケルドが見抜けたんじゃ?」
「馬鹿が。 この小僧はその場その場でしか考えん。
いかにケルドでも、いつ何時如何にして来るかは読めはすまい」
両手を腰に当て仰け反る。
「はっはー! その通りだ!!」
その直後、またあの意味不明な突然消える攻撃。
オッサンの右足が俺の腹を捉え、後方の瓦礫に激しく叩きつけられる。
土煙を上げ、口から少量の血が飛び散る。
「ぐはっ…畜生! 相変わらず目を離して無いのに…突然消えやがる!」
「どうするのよ!」
静かに構えたオッサンが口を開く。
「然し、考え無しで落とせる程、レガートは甘く無い」
ちっ…! こいつも着やがったか!
瓦礫を払いのけて起き上がった俺様の横に、
イドとマリアもリンカーフェイズした状態でこっちを見ている。
「はっ! 上等!!」
「強がってる場合じゃないでしょ馬鹿!!」
一瞬、上空に目をやると、赤竜を抑えようとレガートのリンカーが大量に取り囲んでいる。
ケルドのニーチャンにはリセル先輩達。…てことは。
「大した余裕と自信だね!」
その瞬間、オッサンが今度は蹴り飛ばされ瓦礫に叩きつけられる。
大きく身を乗り出し、蹴りを出した姿勢から、姿勢を戻しつつコチラを見る師匠。
ん? ゼメキス先輩はどこだ? …瓦礫の影に隠れてるのかよ!!
「やっぱ来たな師匠!!」
「…ちゃんと戦力の分散は忘れてなかった様だね!
コイツはアタシに任せな。 アンタはそっちの小さいのをやるんだよ!」
「ああ! 気をつけろよ師匠! そいつは雷竜のリンカー!
とどめにイキナリ消えて攻撃してくるぜ!!」
「はっ! ちゃんと戦力の分析もしてたってかい…大したもんだよ!!」
そういうと、オッサンを追撃して更に奥の方へと追いやっていく師匠。
リンカーフェイズしてないのに…流石だぜ!!
さて、こっちもやろうか!!
「ガット! 会長と連絡とってたの!?」
「とってねぇ! あれだけデカいブレスだ。
イグリスの至る所から見えたろうよ!!」
「あ、成る程…。確かにサザの…」
「んな事より…いくぜおらぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
「ちょっ…!?きゃーーーーーっ!!!」
五十三話、最後まで読んでいただいて、ありがとう御座います。
次回は主人公メイン。 その後、各戦闘。一幕からの複線回収に入ります。