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第四十九話 「疾風の契約」

四十九話目となります。

 今回から時間軸的に、主人公・リセル・リカルド・シアン組となります。


先ずは主人公メイン。



  ノヴィアの集落から少し離れた所で、相変わらずの地獄の日々。

それが報われつつあるのか。 

リンカーフェイズ無しの俺がそこに立ち。

 そして、大きく地面を削ったかの様な跡をつけて座り込むヴァラン。

場のあちこちには、焦げて大きく穿たれた穴が無数に散らばる。


  「うっしゃ! どうだこんちくしょい!!」

右腕を曲げつつ前に出し、左手を右肘に当てて、右手の中指を突き立てている俺。

 それを満足そうに見ている雷竜ヴァランは口を開く。

  「この短期間で、人間の身でよくそこまで…」

  「伊達にツルッパゲにされたワケじゃねぇっスよ!!」


そう、ヴァランの雷撃を初めてまともに食らった時、頭がドリフになったらしく、

 気絶している間にスアルに剃られた。 それを覆い隠す様に巻いた皮製のタオルの上にアリオが乗っている。

  「うム。 まだまだだガ。 なんとかコツは判ったみたいだナ」

  「つかありえねぇよこれは。 手を出した相手を確実に蹴散らすじゃないか」

  「アホウ! だから言っているだろう。 動けば殺。 動かねば活ト」


頭の上のアリオと言い合いする俺を見て、ヴァランは笑う。

  「ははは。まぁ、そろそろ頃合ですかな? クァ」

アリオは俺の頭の上からヴァランに相打ちを打つ…なんだまだなんかあるのか?

  「そうだナ。 そろそろオイラの力を授けても良いだろウ」


頭の上のアリオ。青白い毛色の鳥をを掴み、 目の前に持ってくる。

  「無風活殺がお前の力じゃねぇのかよ!」

思い切り嘴で突付いてくるアリオを投げ捨てた。

  「いてぇっ!!! 何しやがる鳥!!」

  「アホウが!! 無風活殺はかぁちゃんの力だ! オイラの力でもあるがナ。

    オマエの血族に精霊の契約をすると言っているのダ」


契約…そういや召喚師みたいなのも居たよな、エルフィに。

 だが俺はそんなMPとか持って無さそうだが…。

  「俺の血族にって…イマイチ話が見えないんだが」

割ってはいる様に、ヴァランが顔を近づけてきた。 相変わらず近くで見るとTレックスを凌ぐデカさ。

  「私が説明しようか。 風の精霊は既にこの地に契約の血族が在る。

    然し、クァには未だに契約の血族が居ない」


クァの方を見えない目で見ているヴァラン。それにに頷いているアリオ。

  「そいや、術者っつか契約者スかね。紋章みたいなのが刻み込まれて、常に体力奪われ続ける。

    そう聞いた事あるっスね」

再び、俺の方を見るヴァラン。

  「その通り。 だが少し誤認がある様だ。

    体力を奪われるのでは無く、契約した精霊に捧げるのだ」


成る程。MP無しでHP削って召喚ってとこか。

  「成る程っス。 でも何でいままでクァに契約者がいなかったんスか?」

  「オマエみたいな体力を持て余したアホウがいなかったからダ」


間髪いれずに答えやがったぞこの鳥。

  「悪かったな体力馬鹿で」

  

  「まぁ、言い方は悪いがその通りだ。クァは並みの精霊では無い。

    それ故に、いままで居なかったのだよ。君の様な生命力の高い者が」


あ~…上位精霊だったな確か。

 で、俺を術者に選んだと?

俺は首を傾げる。どこか腑に落ちない部分が。

  「まぁ、オマエの世代ではただの体力を奪い去る紋章にしか過ぎないけどナ!」

おい! そんなモンいらねぇだろ!!!

 いらん!断じていらん!!

  「オオミ! そのユグドラシルの実。いや、精霊セアドの刻印の入った実。

    それをスアルに渡すのダ」


!? いや、体力奪われ続ける呪われた紋章といえばいいのか。 それの対抗手段のリジェネだろ?これ。

  それを手放せと…。

  「いいから早く後ろの方で見ているスアルに渡してこイ!!

  「へいへい」


渋々と後ろにいるスアルの元へ行き、ユグドラシルの実を渡す。

  「・・・・」

相変わらず何をいってるか判らん。 そしてすぐに俺はヴァラン達の所へと戻る。

  「渡してきたけど、体力奪われるのにアレ渡して良いのか?」 

  「オマエなら死なん! が、スアルの子が耐え切れん成長するまでナ!」


つまり何か。もう俺の物語は終わりかけているとそんな感じがするが。

 いかにもこう…世界の為に死んで、リセル達に無茶しやがって言われつつ。

 空に顔が浮かんでいる終わり方しそうな気がしてきたぞ!! 絶対に死んでやるか!!!

  「クソ…絶対にラスボスと共倒れはしてやらんからな!!」

  「何を言ってるオマエ」

  「あ~、こっちの事。 で、まぁ確かに、俺がこの地を守るなら、

    アリオが俺の守る全てを守るといってたもんな。それが契約の事だったのか」

  「そうダ!」


ふ~む。然し、これから決戦だってのに…どうみても役に立たない呪い状態で行くのか俺。

  悩みこむ俺に気が付いたのかヴァランが口を開く。

  「オオミよ、残念ながらこの戦いで、彼を完全に倒す事は不可能だろう。

    彼が生き返ってくる理由すら判らない状態のままだからな」

  「ああ、そりゃ…そうっスね」

  「そうダ! オマエはこの戦いが終わったら、別のことをする必要があル。

    ケルドの力の源を見つけ出す事だ! 次にアイツが戻ってくるまでにナ!」


謎解きしろってか。まぁ、この二匹の表情みるからに冗談いってるワケでもなさそうだ。

 世代越えて戦えってことか…そいやサザも言ってたな。

世代を跨いでも生き残る為に進化を求めよ…か。

  「長期戦っスねぇ」

  「その通りダ! 神と戦って短期決戦でカタが着くとでも思っているのか!!」

  「こう…チェーンソーで真っ二つってワケにゃいかないんスな」

  「なんだそれハ!!」

  「いや、こちらのこと」


ゲームだとサックリ終わるのに、実際だと何百年…へたすりゃ何千年もかかるってか。

 気が遠くなる。

  「そして、セアドが認めた君が生涯を終えた時。 君はこの世界の何処かに生まれ変わる。

    気付いていないかも知れないがもあの実は、認められた者の元にいずれ戻る。

    魂の質に引かれてな。 その時生前の記憶は無いが、私が生きていれば私が伝えよう。

     私が既に死んでいれば、クァが伝えよう」


成る程。 そういうことか。 記憶無いってのは残念だが。

 記憶持ったまま転生したらそれはそれで大変だしな。

  「成る程っス。 よし。じゃ遠慮無くやってくれっス」

  「いいのカ? 少しの間死ぬ程痛いゾ?」

俺の顔の真正面でアホ面を近づけてくる鳥。

  「脅すかよ。 ったくやらなきゃなんねぇんならやってやるわ!」

  「わかっタ! では行くゾ!」


その瞬間、物凄い風が巻き起こり土煙の竜巻の様なモノが周囲を囲みだした。

  「ぶわっ! 目に砂がっ!! 実際こんなの外見だと格好いいが、中にいると目がっ目が!!」

  「我慢しロ、タワケ!!」

  「我慢しろってお前。 口に砂入るわ目に砂入るわ…ぐへ鼻にまで!!」

あまりの砂嵐に顔にやら体に痛いぐらいに砂と小石が叩きつけられる。

  「いてぇ!いてぇって!!」

  「このぐらいで痛いといったら耐え切れんゾ! そろそろ頃合カ」

  「何がだよ…ておい! お前、姿が…」

砂嵐でよく見えないが、手乗りサイズのクァが、

 これまたガルーダみたいな大きさになってる様に微かに見えた。

  「オイラは風がより強き風を求め生まれた疾風。

    この地を護るその腕に印を刻ム。 さぁ右腕をだセ」

いてぇし何いってるか聞こえねぇ!!

 目から涙を垂れ流しつつ、右手で視界を遮る。

  「ええイ! 早くだセこのアホウ!!」

  「あ!? 砂嵐で聞こえねぇっつの!!!」

  「右腕を出せといっていル!」


右腕だけ辛うじて聞こえたが…右腕を出せばいいのか?

 つかこんな火の精霊じゃなくて良かったわ。

火だったら今頃俺、こんがりウェルダンになってるぞ!!

  「右腕!? あいよ!!」

  「ようやく出したカ」


そのあと突然、砂嵐がおさま…いてぇ!! 腕を無数の風の刃みたいなものに切り刻まれた。

 そしてその中にさっきの風が入り込んで…ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!

  「痛いっ! つか痛いとかそういうレベルじゃねぇぇぇぇえええええええっ!!」


その場に右腕を左手で押さえて転がりまわる。

 なんか擦り傷つかヤスリでついた傷に、塩水をすり込まれているとかそういう類の痛み。

   いやそんなもんじゃ…兎に角もう痛い痛過ぎる!!

  「ぐぁ…洒落になって…ねぇ! 痛い上に何か疲労感が凄まじいぞ!!」

  「ほウ。 契約して即死しない上に、転げまわるだけの体力があるカ。

    流石に生命力はあるナ」

  「クァと契約して即死しなかった人間は初めてみましたな。

    これは大変素晴らしい血をノヴィアは手に入れましたな」


いや、お前ら顔を見合わせて和みながら会話してんじゃ…ね・・・え。


  「気絶したナ」

  「まぁ、生きてはいる様で。 今日はこの辺り終了ですかね」

  「そうだナ。 明日からまた無風活殺の続きダ」

  「竜の私でも、体が持つかわかりませんな」

  「コイツは頭が悪い分。体力だけは竜族のソレを超えてるのかもしれんゾ」

  「それは面白い。 この者の残した子孫。育つのが楽しみです」

  「まぁナ」





結局あの後、気絶したのか、いつものテントの中で寝ていた。

 当然…隣には裸でしがみついて寝ているスアル。 もう裸に見慣れたのか驚きもしない。

 然し…まだ痛いぞこの右腕、激しい痛みを訴える右腕を焚き火の光にあててみる。

黒い色で風を象っている紋章の様なものが刻み込まれている。

 確か、生まれてくる奴にもこれがあるんだよな。…どういう仕組みだ?

考えても無駄か。 とりあえず…この。 何もしてなくても全力で走ってる様な疲労感だ。

 念仏となえりゃ精霊使えて敵倒せるのかと思ったら…ひでぇな。

どうにもこうにも…これでまだ暫くは夜はスアルのお相手。朝昼はヴァランと肉体言語で語り合えと。

 …此処にきてから俺に対して良い事ってあったのか? いや可愛い女の子とナニできたのは良い事だが…。

ふと寝ているスアルの顔に視線を向け…おきてたよ。 あの大きめのつり目にすわった目付きでジッと見てるよ。

  「・・・・」


う…。俺の太股に彼女が股を挟んできてこう…熱い感触というかなんというかソレが。

 この状態でやれと?

  「ほレ。 さっさと交尾しロ」

いたのか!! お前いたのか! 声の方、テントの支柱の上にアリオが止まってコチラを見ていた。

  「だから、交尾言うなと!!」

  「さっさとしロ!

  「へいへい」

軽く、スアルの頭を撫でつつ、アリオに聞く。

  「なぁ、本当に大丈夫なのか? メディの奴、話聞く所、時間がたつにつれヤバくね?」

  「危険だナ。 正直既に手に負えない程、憎悪の塊になっていル」

  「だったら今すぐに…」

  「アホウ! まだ無風活殺もまともに使えんのに、行ってどうすル。 死んで終りだゾ」

  「む…むう」

スアルが体を強く絡みつかせてきた。 催促かよ。

  「・・・・」

  「早くしろ。 だそうダ」

  「またそれかよ。 判りました判りました。 つかいい加減死なんな俺も」

  「だからこそオイラが契約したんダ。 お前の生命力は竜族のそれを上回ってるゾ」

  「オーガ並の体力からドラゴン並の体力にランクアップかよ…」

  「頭はスライムのままだがナ」

  「うるせぇ!!」


というと、掛け布団がわりの毛皮をアリオに投げつけ。

 スアルと唇を合わせ舌と体を強く絡み合わせる。



いつも通りの一晩休みなしで抱き続け、朝が来る。


 そして昼少し手前か、お日様がてっぺんに近い時間帯。

  いつも通りに、ヴァランの雷撃の音が集落に響き渡る。

 ただ違うのは、ヴァランが吹き飛んで地面に着地する地鳴りにもにた震動も混ざっている事だけ。

いい加減俺も姐御みたいに人間離れしてきたなと、実感する今この頃。


四十九話、最後まで読んで頂いてありがとう御座いました。


段々主人公も強くなってきた模様。 

 然し、ほとんど呪い状態という悲惨な。

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