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第四十七話 「仔竜」

四十七話目となります。 引き続きガットメインとなります。





  「小僧…。本当にあのクラドと戦ったのか? 弱過ぎて話にもならんぞ」

  「ケルド~? 少なくとも封印されてた神と戦って生きてたぼうやよ?」


く…言いたい放題だな畜生。

 あれから数日経ってキリウのオッサンと戦える様になったのはいいが、

  強過ぎる!! 視界から消えるわ攻撃力高いわ。 なんだこの化物!!

地面に四つんばいになりながらキリウのオッサンをにらめつける。

 まだコイツが何の竜のリンカーかも判っていないっつーのに。

  …仕方ネェな! 痛くてあんまやりたくないが…。

  「おいアリセア! アレやるぞ!!」

  「え? まさか…いやよキモチワルイから!!」

  「うっせぇ! やらないと勝ち目がまるでねぇ!」

  「はぁ…そこまで勝ち負けに拘るのよ…」


立ち上がり、キリウのオッサンを指差す。

  「オッサン! ちっとまってろよ!! 今からが本気の本気だぜ!!」

  「もう馬鹿!!」


それを聞いたオッサンが興味深そうにこちらを見て答える。

  「まだ何か隠しているのか」

  「あ~わかった! 報告にあった子じゃない? 普通死んじゃう事をやって生きている子って」

  「ああ…。 少しは戦える様になるか」


余裕カマしやがって!! ぶっ飛ばしてやる!!

  「アリセア!!」

  「判ってるわよ!! 


   魂連発現リンカーフェイズ解除…再解析リアクセス…主をワイバーンに。


         魂連逆転リンカーフェイズ・アナザー!!」



 一瞬俺様達を影が包み、それが取り払われる、その直後体が煮沸したかの様に隆起する。


  「いやーっ!! いつみてもキモチワルイ!!」

  「自滅するしか無いモノを使って尚生きている。 質量が近いとはいえ。大した精神力だ」

  「だよね~…。サイズそのものは変わらないみたいだけど、内臓とか作りかえられてるのに」


口から大量の血液を吐き出し全身に激痛が走る。 骨が砕け筋肉が千切れそして別の形へと再構成されていく。

  「いでぇ! やっぱいでぇぇぇっ!!!」

  「だから何でアンタそんな状態で意識あるのよ!! 普通痛みで死んでるわよ!!」

  「面白い小僧だ。 …が、そんな状態を敵の前に晒しているのは頂けないな」

段々と伸びていく首と顔の変異。その痛みに耐えつつオッサンの方を向く。

  「いでで…はっ!! やれる…もんならこの再生能力を上回る攻撃力だしてみ…ろ!!」

  「そうね~。この状態の再生能力は異常だし…。 キリウでも無理そうね」

  「ふむ。確かに並のリンカーのソレならば、上回る事も出来ようが…竜か」

  「早く形成終了しなさいよっ!! 気持ち悪くてみてられないわよ!!」



その後、数分かかって、ようやく仔竜の形成が終了する。

  「おら! こっからが本番だぜオッサン!!/ だぜ!!」

  「またメインのワイバーンの意識に混ざってる!!  キモチワルイわよあんた!!」


  「本当に面白い小僧だ。 ワイバーンの意識を乗っ取っているのか」

  「器用…というか。 人間じゃないわねこの子」


ええい! 散々いわれまくってるが。

 そんな余裕ぶっこいてるオッサンに先手必勝とばかりに、一気に詰め寄り右手の爪で斬りかかる。

  それを上体を右に逸らしてかわしたオッサン。 そのままの勢いで一回転して尾でオッサンの肩を強打した。

オッサンは地面に叩きつけられる。


  「おらどうだ!!/どうだよ!」

  「うそ…当てちゃったよ」


然しダメージがまるで無かったかの様に立ち上がってきやがった。

  「ほう。 速度も攻撃力も動体視力も全てが上がった様だな」

  「凄いわね~。 まともにキリウに攻撃当てたのってクラド以来じゃな~い?」


ま…た余裕カマしやがって…!!

  「全力でぶっ飛ばす!!!/ ぶっとばーす!」

  「ちょ…! やめてよウチいること忘れてない!?」

  「知らん!!/ しらない!!」


翼を羽ばたかせて地面に風を叩きつけ、空に上がる。

 更に翼で体を覆う様に丸くし、大きく何度も羽ばたかせ空気の渦をつくり、

 一瞬できた真空に火を吐いて爆炎を作り出し吸収する。


  「おら! 全力全開!! / だぜ!」

  「あつ!あつつつつつっ熱い!!!」

相変わらず火に包まれた体の熱で転げまわっているアリセアを無視して、オッサンに急降下する。

  「おらーーっ!!! / おらっっ!!」

そのまま、尾を地面に叩きつけ、激しい爆風と土煙とともに、地面を焦がして穿つ。

 然し大振りだった所為か簡単に避けられてしまい、キリウのオッサンの反撃を顔の真横に食らう・・・が。

  「どうしたよ! そんなモン効きもしネェぞ!! / かゆいんだよ!!」


ソレを確認したのか、一旦身を引くオッサン。

  「ほう。大した防御力だ。 並の攻撃ではまるで通じない様だな」

  「思ったより凄い子じゃない~キリウ?」

  「そうだな…だが、防御が通じない攻撃もあると言う事を知らない様だ。

    まるで構えがなっていない。」


なんだそりゃ! やれるもんならやってみやがれ!!!

  「はっ!! そんなもんあるなら見せてみやが…」


  「ちょっとガットってきゃーーーーっ!!」




クソ!…雷竜かよ。 ぬかったぜ…電撃で体がしびれて意識が…。




気付いた時には、ベッドの上で寝かされていた。

 …うげ! 隣でアリセアが寝てやがる!! 

慌ててベッドから飛びのいた俺様は、周囲を見回す。

 アリセアしか居ないのを確認して、床に座り込み、軽く床を右拳で殴る。


畜生、気絶したのか。 あの後気絶してる間にアリセアが戻したんだろう。

 体に痛みがまだ残っている所を見ると時間は大してたってないのか。

…にしてもあのオッサンは雷竜か…。 厄介だ、防御が全く通じないじゃないか…クソ!!

どうする…仔竜になると攻撃力やら能力自体は上昇するが、攻撃的になりすぎて雷撃には相性が悪い。

 かといって、ならないとまともに戦えない。…くそ、強さの次元が違うってことかよ。

あの時に師匠がいった、クラドのオッサンが本気だしてたら速攻で負けていた。

 それが身に染みたのか、少し目に涙が浮かび、歯を食いしばっている。


やや丸まった姿勢の俺の背中に、何か柔らかい感触と、手が優しく包んでき…ぎゃーっ!!

 慌てて体を捻ろうとしたが、倒れてきたそれに阻まれて体が重なる様に倒れこんでしまった。

  「いた…馬鹿! 急にあばれない…」

  「うるせぇ! てめぇこそ急に抱きついてく…」


暫く室内に沈黙が続き、頬を激しく打ち付ける音が響く。

  「何処握ってるのよ!! 痛いじゃない馬鹿!!」

  「いてぇな!! 俺様もこんなもん握りたくもねぇ!!」

  「こんっ…ば…馬鹿!!」


再び頬を打ち付ける音が響き渡る中、聞きなれた声。

  「おやおや、仲がお宜しい事で。

    と、あれから数日見ておりましたがも私の同伴無しでも外出の許可がおりましたよ。

    ただ、国外には出ない事。そして暴れない事は守って下さいね」


おお!? 外に出れるのか!!

 俺様は、上に乗っかっているアリセアを押しのけてケルドのニーチャンに近づく。

  「ホントか!? おっしゃーっ!」

  「いたっ…ちょっと押さないでよ馬鹿!!」


  「ええ。ですが、先程も申し上げましたが…」

  「ああ!わかってるよ! んじゃ早速俺様いってくる!!」

  「ちょっ…ちょっとまちなさいよ!!」


  「あれだけ動いてまだあの様な体力が。 大したモノですね」


ドアを勢い良く開けて城外へと走っていく俺様。 

後ろから必死で追いかけているアリセア。 

  「まちなさーっい!」

  「うぇ~。 運動不足で体が重いのか?うぇ~」

  「こっ…この馬鹿ット!!」


城外に出て、丁寧に整理された庭を抜けて、わりと綺麗な街並みの所へと辿り着く。

  「お~、ここだと中間ってとこか?」

  「中流階級…ってとこ…みたいね…」


体力ねぇな! ようやく追いついてきた中腰で息を荒げているアリセアが隣に居る。

  「まぁ、ここの奴等に用はネェ!」

再び走り出してさらに外周へと向かう。

  「ちょっと…まちなさーっい!!」

  


街並みは綺麗だが活気がまるで無い。 人気も無い。

 そんな街並みを走り抜けていくと、最初に来た時の廃墟の様な街並みへと変わる。

  「お~ついたついた」

後ろを見ると、ヨタつきながら必死でおいかけてきているアリセアが見える。

  体力無さすぎだろう。

  「おーい! おいてくぞ!!」

声が届いたのか、怒鳴りながら凄い勢いで走ってきた。…そしてそのまま右足が飛んできておもっきり仰け反った。

  「いてぇな!!」

  「この…馬鹿!! どれだけ走らせるの・・・よ!」


今にも倒れそうな勢いだなおい!

 俺様は周囲を見回して、あの時あてがわれた女三人を探そうとするが、

外周全てがこれだとすると、見つけるのは困難だと気付く。

  「畜生。これじゃ見つけられないか」

  「一体何を…あれ? あのオジサン 確か」

  「お?」


来た時にスラク捕まえて食わせたオッサンだな。

 流石にもう日が経つからな、そろそろまた捕まえてやるか?

  「オッサン!」

  「こんにちわ~」

俺達はオッサンの元に歩み寄ると、またひれ伏せたよ。 これやめろってのに!!

  「これはこれは…無事レガートに仕官なされた様で。

    その節はどうもありがとう御座いました」

  「いやそれ以前に、その姿勢やめてくれ! 立てよ!」

  「ちょっとガット!? 言い方悪いって」


そういうとオッサンは立ち上がり、口を開く。

  「本当に変わった方ですね。 他の方々は、

   私達など道に落ちている小石ぐらいにしか見ないというのに」


んな見方死んでもしたくねえ!!

  「つかそれよりもだ! あれから食いモンとったのか!?」

  「いえ、私達はその方法すら知らず…」


ちっ! だからこんなんかよ!!

 しかたねぇな!

  「っしゃ! オッサン! ここの奴等集められるだけ集めてきやがれ!

    俺様がスラクの倒し方と道具の作り方おしえてやるよ!」

  「ガット…あんた」

  「なんだよ!」

なんだ? アリセアの奴ちょっと照れた様に俯き加減で、もじもじしやがった。

 

 「その…うん、立派な奴だと…思うよ。 馬鹿だけど」

  「うるせぇ!ブス!!」

  「なっ…人が褒めてるのにブ…この馬鹿ット!!」


俺様は口から舌を出し、両手で目を左右に引っ張った顔をアリセアに向ける。


  「うぇ~。 ヒスッたブスが更にブスになったうぇ~」

  「こ…の…馬鹿!!!」  


そんなやり取りを見て、少し笑いながら男はこちらに歩み寄ってくる。

  「私達に、飢えや寒さ以外を与えて下さるのですか…。

    ありがとう御座います。。

    では、城下町の入り口で皆を集めておきますので。」


そういうと、ややおぼつかない足取りで向こうへ行ってしまった。

  「相当体力ないが…大丈夫か? あのオッサン」

  「そりゃ仕方ないよ…。 でもアンタならホントにレガート変えてしまうかもね」

  「はん! 俺様だけ頑張ってもどうにもならネェだろ!」

  「え?」

  「それじゃここの上部の奴等とかわらねぇって事だよ!」

うげ…また腕に抱きついてきやがった!!

 みつめるな! そんな照れた顔で見つめるな!!


  「あんた…馬鹿だけどやっぱ大した奴だよ」

  「だっうるさい! つか離れろドブス!!」

  「ドブ…スって何よ! 馬鹿ット!!」



腕を払って飛ぶように城下町の外に逃げる。それを怒鳴り散らす様においかけてくるアリセア。


その後、暫くして城下町の入り口に、かなりの数の人数が集まってきた。

 300~400…どんどん増え続けていく。



こ…この人数に教えるのか? ちょっと…キツいかも知れないと思った俺様。

四十七話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。

 

 次回は珍しくケルドメインとなります。

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