第四十二話 「貧困」
四十ニ話目の投稿となります。
今回から、二幕の本筋突入となります。
お気に入り登録数が70件越えておりまして、大変励みになります。
ここから見ていく方もおられると思います。
ですので、ここで少しこの作品について。
この作品は習作となっております。 ライトノベルの文章構成がまだ判っておりませんので、会話メインになったり、心理描写やら、風景描写メインになったりコロコロ変わったりします。 色々試して自分なりの文章構成とバランス見つけていく。という感じになりますので、そのあたりはご容赦ください。
「ね、ねぇ。ホントにいくの?」
あのトラウマを思い出させる事があってから数日、ようやく俺様達はレガートを目前にしていた。
然し! このブスはいまさら帰りたいみたいな事言い出す始末!!
不機嫌そうなドングリ目。男みたいに切った短めで緑色の髪を弄ってやがる!
「ここまで来て何いってやがるんだブス!!」
「あっ…アンタが勝手にさらってきたんでしょうが馬鹿ット!!」
「馬鹿ット言うんじゃネェ!!」
こんな会話がさっきから続き、レガートの城砦が視認出来る森で身を潜めている。
そんでさっきからこう…何だ。ぶつぶつぶつぶつとこの女は。
「折角オオミ先輩とお近づきになれそうだったのに…」
「ええい女が過ぎた事を言ってんじゃねぇ!!」
「それは男でしょうが!!」
「師匠は言わん!」
「この馬鹿ット!」
もうこればっかだ! さて、あのオッサンの息子と娘。
イドとマリアだったか? そんな名前の二人とレガートを変える約束をしたんだが…。
いや。 考えるのは俺の性分じゃねぇぜ!
「よっしゃ! いくぜ!!」
「え?行くって…ちょっ!」
再びアリセアを担ぎ上げてレガートの城下街へと駆けていった。
「ウチ等、面割れてるでしょ馬鹿っっ!!!」
「はっ! 来た奴等は軒並みぶっ飛ばす!!!」
「バカァァァァァァァァァァァァァアッ!!」
嫌がるアリセアを担いで城下街に入ってきたのはいいんだが…。
ほぼ灰色といって良いこの周囲の街並み。 いや、街というよりも廃墟に近い!
道端でボロボロの皮を敷いて寝てる奴やら。 もうほぼ骨と皮しか無いがお腹だけでている子供も見かける。
すぐ隣の壊れかけた家の壁には、
泣いている赤子を抱いている服ともいえないような服を着た母親が座り込んでいたり…なんだよこりゃ。
「なんだ…こりゃ…」
「うわ~…」
イグリスとの落差に俺達は呆気に取られた。一体なんだこりゃ。
周囲を見ている俺達に、一人のみすぼらしい男が声をかけてきた。
「旅の方かな」
俺達はその声の主の方へと振り向く。
「あ? 違う! 俺達はレガもごごごご…」
俺の口を慌てて塞いで喋るアリセア。
「あ、はい。そうです」
それを確認したかったのか、次は両手を差し出してきた。
「もし、宜しければ。何か食べ物を恵んでくださりませんか」
なんだ!? 食いモン寄こせとか! …まぁスラクの肉が結構余ってるからいいか。
「おう! 好きなだけもってけ!!」
「そ、そうだね。うん。 ウチ等ならこの馬鹿ットがいくらでも取ってくるし」
「馬鹿ット言うんじゃ…なんだぁあああああああああああっ!?」
「きゃぁあっ!!!」
そのみすぼらしい男に、スラクの肉を燻製にしたモノを手渡した。
その直後、一体どこに居たのかと思うぐらいの人が集まってきた!
全員が俺達に手を差し伸べてきている。
その手はいたる方向から様々に出してきているが、言葉は一つ。
…お恵みを…
だけだ! 何がどうなってんだこりゃ!?
「とりあえずテメェ等落ち着け!!!!!!」
俺様は震脚と共に地面を踏み壊す。
「ガ…ガット!?」
「落ち着いたか! ったくなんだテメェ等。わけわかんねぇ!!」
「アンタも落ち着きなさいよ!」
半ばケンカ腰で怒鳴り散らす俺様を抑えてくるアリセア。
「多分ここ、貧富の差が激しいのよ!」
「なんだ? そりゃ」
アリセアの顔を見ている俺に、先程の男が話しかけてくる。
「その通り。此処はレガート…。 力無き者は決して報われる事の無い国です。
見た所、君達は若くそして今の力。 この国に仕えにきたのかな?」
「いやだから俺様はこぶぶぶぶ…」
またしても俺差のの口を塞ぎやがるこのブス!!
「あ、はいそうですそうです。 でもそんな酷い所だなんて…」
…。
「テメェ等腹へってんのか?」
「ガット?」
「恥ずかしながら、私も含め…今来た者達は皆、飢えと寒さしか与えられません」
…。
「そうかよ! おっしゃちょっとまってろよ!
アリセア! リンカーフェイズだ!」
「え? え? う、うん」
俺の胸に手を当てるアリセアを見て、その男は驚いている。
「じゃいくよっ。 心拍同期…解析開始!!」
その場で影に包まれる。
「お…お。まさか…」
そして影の霧が晴れると同時に、ワイバーンの姿を一部借りた俺様と、
手乗りサイズになったアリセアの姿が現れる。
…ん? 何か様子がおかしいな!! おかしいってか俺様にひれ伏してるぞ!?
「な、なんだ!? 今度はなんだよ!!」
「ちょっと…今度は何?」
さっきの男がひれ伏しながら、声を出している。
「これは、リンカー様とは露知らず。 どうか命だけは…」
なんだ!? 何がどうなってる!!
「おいアリセアこれなんだよ!」
「わかんないよ!! …でも。
レガートだとリンカーの地位が高いと言う事は確かみたいね」
「おいオッサン! とりあえずテメェ等全員立て! んなことしてんじゃねぇ!」
「ガット…?」
お。立ってきたな。 何か良く判らないが…とりあえずやるこた一つ!!
「よし! テメェ等! 少しまっとけよ!?」
「え? ちょっと何よ? ねぇ!?」
そのまま翼を羽ばたかせ、地面に風を叩きつけて一気に上昇する。
レガートの城下街を一度出て、アレを探す。
「ねぇ、何さがし・・・きゃーっ!!」
「一匹目発見!!」
狙うのはスラクの頭! 勢いよくスラクの遥か上空から降下し、
翼を折り落下の勢いに全体重を右足に乗せ、スラクの頭に向けて落ちる。
「俺様キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック!!」
「またその恥ずかしい名前や…キャーーーーーーーーーッ!!」
激しい轟音と共に土煙が、高く舞い上がり、
同時に大量の血飛沫が吹き上げ、
頭部を失った黄色と黒の毛色したバカデカいスラクは横に倒れこむ。
「まず一匹! 次いくぜ!」
「あんた…まさか」
再び翼を羽ばたかせ、地面に風を叩きつけて上昇する。
「二匹いりゃ足りるだろ!」
「あんたあの人達の食料と毛皮とるつもりなの?」
「あんなもん見たくねぇ!!」
何だ、何か俺様の目の前にきて、顎に手を当て目を細めて笑いやがったこのブス。
「ふ~ん。 ちょっと見直した…かな」
「うっせぇブ~ス!!」
「ブス言うな馬鹿ット!!」
「うぇ~ブースブースブスブスブース!!」
「こっのばっキャーーーーーーーッ!」
二匹目発見!! 俺様は再び二匹目のスラクの頭目掛けて落下し、
頭を蹴り潰した。
「おっしゃ! 後はコイツを持ってくぜ!」
「もってくってどうやってよ!?」
「あん!?決まってんだろ! ジーサンのアレをやるぜ!!」
「ま…まさかサザの!? やめて熱いから嫌!!」
必死で俺様の口を引っ張って嫌がるアリセアを無視!!
一度空に戻り、体を包む様に翼を丸め、大きく広げ何度も大きく羽ばたかせる。
次第に空気の渦が周囲に出来て取り囲み。それに向けて火属性のブレスを吐いた。
一気に燃え広がる火を更に自分の体に取り込む。
「あっっつ!熱っ!あつ!アツツ!あつつつつつ!!!」
何か隣で小さいアリセアが、浮いて転がりながら叫んでるが…男は小さい事を気にしないんだぜ!!
「おっしゃ!ジーサン直伝の火属性身体能力強化!完全にモノにした俺様最高!!」
「あつっ!馬鹿っ!あっっつ!いってんっじゃない…わよっあつつつつつっ!!」
風を巻き起こし真空を一瞬だけ作り火を吐く、その時に生じる爆炎を吸収し、
身体能力を上げて、物理攻撃に火属性を伴わせる。
それを使いスラクを持ち上げる。
「ぐっ…やっぱこれでも…重いな!!」
「あつつっ…馬鹿!!」
流石に飛べないので、城下街の入り口手前まで地面に深い足跡残しつつ歩いていき、スラクの死骸を地面におろす。
それをもう一度繰り返した俺は、火を取り払ってさっきの場所に飛んで戻った。
お~、本当に待ってるぞ。 一体何でそんな見ず知らずの奴の言う事をそんな。
まぁいいか!
そのまま地面に降りて、さっきの男に俺様はこう言った。
「よっしゃ! 準備できたぜ! 街の入り口にテメェ等来い!」
「…この馬鹿がスラク二頭捕まえてきたから。 この人数なら十分よねオジサン」
「スラク…あの獰猛な動物を? リンカー様とはいえ、君達の様な子供が…。
判りました…仰せのままに」
そう言い終わると、男は周囲の奴等全員を連れて街の外に行った。
しっかし、凄い人数だな! 二頭で足りたか?
「えらいスッキリしたな! 人が全くいないぜ!」
「それはいいけどさ。 この後どうするの?」
「さぁな! とりあえず俺達もいくぜ!」
「はいはい」
後を追いかける様に、俺様達も飛んで入り口へと。
横たわっているスラク二頭に、さっきの奴等が囲っているが…なんだ?
「道具無いんじゃないかな?」
「んなモンはフィリド捕まえてくりゃ~いくらでも作れるだろ?」
いでぇ! 俺様の鼻を殴りやがった!!
「馬鹿! 皆が皆あんたみたいな野生児じゃないっての!!」
「あ~ったく」
軽く溜息ほついた俺様は周囲の森の前に下りて、木を数本薙ぎ倒す。
「うるぁーっ!!」
「あんたやっぱおかしいわ…いくらリンカーフェイズしてるからって…。
なんで素手で木を切り倒すのよ!! しかも大きいし!!」
「斬れないと思うから斬れないんだよ!!」
「どこまで馬鹿!!」
「うっせぇ!!」
その斬った木を担ぎ上げ、俺様はスラクの死骸の横に下ろす。
土煙を上げてその場に落ちた木を見て、危ないと思ったのか周りの連中が一歩引く。
続いて腰に差してある刃物で切り傷を大量につけ、燃料になる樹液を出させる。
「樹液出しまくって、この木そのものを薪にするぜ!」
「どんな薪よ…」
傷から樹液が大量ににじみ出て来た所を、刃物と予備の刃物を打ち合わせて火花で着火!!
一気に燃え広がり、あっという間に自分の何倍もある木が燃え出した。
「おっしゃー! 後は、あっちに残ってる木を放り込めば完璧だぜ!」
「あつっ!! ちょっと火力強すぎじゃないのこれ!!」
「これぐらい派手な方が俺様には似合うんだよ!!」
「馬鹿!!」
再びさっきの所に戻り、木を運び火の中に放り込む。
暫くすると一気に燃え上がり、最早火事!!
「あつっ! 馬鹿! こんな燃やしたらスラクの肉どうやって焼くのよ!!
近づけないじゃない!!」
「あ」
「あ。 じゃないよ馬鹿ット!!」
そんな大火力の焚き火の前で、俺達のやり取りを見てたのか、さっきの男が歩み寄ってくる。
「ありがとう御座います。 これだけあれば当分、飢えと寒さもしのげます」
その男の前にフヨフヨと浮きつつ慌てて何か謝るアリセア。
「あっごめんなさいっ。 この馬鹿ちょっと…どころじゃない程加減しらないのでっ」
「いやいや、火が少し弱まるのを待てば良いだけ…おや」
「え?」
俺様はその焚き火に向かって、翼を羽ばたかせて一気に火力を奪い、火をある程度鎮火させ。
浮いている小さいアリセアとオッサンの方を向く。
「これぐらいか?!」
「あんた…器用なのか不器用なのかどっちよ!!」
「どっちもだ!」
「馬鹿!!」
「じゃホレ! オッサンこのフィリドの刃物の予備やるから、
コイツでスラク切り分けて焼いて食いな!」
と、言うと俺様はオッサンに刃物を渡す。
余程腹減ってたのか、何も言わずにスラクに向かい、毛皮を削いで肉を切り取りだした。
それを分けて、焼きだすまで結構かかったが、俺様も少し腹へったので食べた!
「あんたも食べるの?」
「動いたら腹減るんだよ! お前も食うか?」
小さくなったアリセアの顔に焼いたスラクの肉を、これでもかと押し付ける。
「ちょっ…やめてよ馬鹿っ!!」
「食えよ!」
「太るから嫌!!」
「もう手遅れだろ! なんだその丸い体!」
「こっこれは仕方ないじゃない!! リンカーフェイズしたらなんかこういう形になるのよ!!」
「うぇ~ブスで寸胴デブ~うぇ~」
「この馬鹿ット!!」
顔を真っ赤にして俺の顔を殴ったり蹴ったりしているアリセアを完全無視して肉を食べ
ふとやった目線に入ったのは、来た時に目に入った赤子抱いてるオバサンだな。
…ん? 何か様子が…。
「どうしたのよ? 急にマジな顔になっ…ひどい」
…。
「赤ちゃんが…」
「おいアリセアいくぞ!!」
「え? 何。 何がどこに!? キャーーーーーーーッ!!!」
最悪の瞬間を見てしまった。赤子が死ぬ瞬間と、その母親が泣き崩れる瞬間。
何してんだこの国は…ここの上部の連中は!! 胸糞悪いから…
「ぶん殴る!!」
「シアン先輩みたいな事言ってなっ…まさかあんた!! 無茶よやめなさい馬鹿!!
レガートにケンカ売るつもりなの!? 頭冷やしなさいこら!!」
「うるせーーーーーーーーーーっ!!」
四十ニ話、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
レガート編は、かなりドロドロとした事になります。
…エロドロという方が正しいかもですが。
お国柄は次回から出てきます。




