第三十三話 「誇り Ⅲ」
三十三話目となります。 今回は時間軸を少し戻した所のリカルドメイン。
「ど…何処まで行くのでしょうか?」
「ワタシの力がっ! 彼女に影響しないところまでよっ!?」
そう、私は今この方に抱きしめられて森を走っています。
ぶつかる事も無く、上が見えない程に巨大な木。その森を走っているインキュバスのオーマさん。
見た目は大変…何と申しましょうか。 生物の神秘とでも申し上げておきましょうか。
私は其処に辿り着くまで、少し頭の中を順番に整理する。
このお二人は魔王エヴァリアに関係している事は明白。
子孫…は、どうやら潰れた様ですね。本人達が愛を感じないと申されています。
然し、生殖行為自体。彼等の行動を見る限り興味が無いとは考えにくい。 まだまだ可能性の一つ。
当の本人である。 最も単純で最も確立の高い可能性。 しかしそれならばリセルさんは一体。
元々単体だった魔王エヴァリアが、何らかの原因で三つに分かたれた?
にしてはリセルさんの肌の色。何より、リンカーフェイズが出来るという説明がつきません。
彼女は魔王の力が使えると同時に魔人である。 これは確実。
私達が離れる前に最後に聞いたリンカーフェイズ。 これにはまだ知られざる秘密がある。
これが明らかになりました。 内容までは想像すらつきませんが…。
どうやら、その力とリセルさんの出生が関わっている。 そう考えるのが可能性が高いですね。
リンカーフェイズ。自身の中に潜む魔を現す力と認識されていた物。
それをオオミさんがセアドの知識を得て、
生前の生物とを繋ぐ力。と明らかにしました。
となれば、エルフィに向かったオオミさんがその鍵を見つける可能性が高いですね。
私も含め、リセルさんにも耐えられない。そうディエラさんは仰られておりましたし。
そして最後に、最も不可解な事。ケルド。
このリンカーフェイズという力を与えた者がケルド、魔人の生誕に関わる者。
自分に刃が向きかねる力を、何故与えたか。 それも敵である側に。
この辺りは、考えても無駄の様ですね。
奴の力、神慮思考。 読めば必ず裏をかいてくる。それの繰り返し。
本当に厄介な神で御座います。
会長が何やらお考えの様子ですが…神慮思考を持つ相手に、力では無く策を持って戦う。
ケルドもケルドなら会長も会長。 お二方とも恐ろしく思えます。
「そろそろいいわねんっ!」
おや、考え事が長過ぎましたか。景色を楽しむ暇も無く、着いた様で御座います。
「おや、これは…」
上空から確認出来ない様に、包む様に生えた木々の下。
そこには相当に広い野原の様な場所が広がっていました。
所々に、小動物が見受けられのどかさを醸し出している。
「じゃっ!早速…いくわよぉおおおおおおおっん!?」
「いや、あの。一体何をするのかわからな…ぐっ!?」
その瞬間、私の体はまるで地面に吸い寄せられるかの様に、叩きつけられた。
「アナタはただのっ…人間よ! それに変わりは無いわっ!!」
…その通り。私はただの人間。
「でもっ! 地の精霊アラードよりいくつか教えられているわねっ!?」
…砕。の事で御座いましょうか。…一体どこまで知っておられるのかこの魔族は。
私は渾身の力で起き上がり、答える。
「万物を繋ぎ止める部分。それを見極め破壊する力。
神と戦う為に、アラードより授けられた力で御座います。
名を砕と」
「うふんっ!懐かしいわっその力っ!!
神の復元能力を破壊し得る力っ」
確かにそう…その通り。 自らの体。それを構成するモノを破壊されれば復元能力も意味を成さない。
そしてそれを。
「そうっ! そしてそれを恐れたケルドが真っ先に…アラードを殺したのねっ!?」
その通り。…では何故、私は生かされたのか。
それは…。
「まっ! 奴の考えは理解しようにも出来ないからねんっ!?
さっ…考えるより体を動かすわよぉおおおおおおおっ!?」
と。言うや否や、何故か体の自由が奪われたかの様な圧力。
それの所為でまともに動く事が出来ない。
私はオーマさんの左拳を辛うじて上体を逸らしかわす。
「あらっ! この中でそこまで動けるなんてっ! やるわね…」
「ぐ…!?」
更に圧力が増した!? 耐え切れずに片膝をつく。
「う…美しいオーマさん。これは一体…」
「もうっ!お喋りは終りといったはずよっ!? まぁ…いいわっ。
そのままでお聞きなさいっ! 神族・魔族・精霊族っ!
神力・魔力・精霊力。 ともに違う質の力があるわねっ!
そしてその力でちょっとしたフィールドを形成するのよっ!?
その中で互いの力が拮抗するっ! 互いに互いを侵食し合うのよっ!
戦いながらねっ! つまり…こうやって相手の動きを鈍らせながら全力で戦うのよっ!!!」
「ぐっぐぁあっ!!」
私の居る地面どころか、周囲に亀裂が走り近場にある小石が砕け震えだす。
「ぐ…な…」
「リカルド…アナタ。 リセルが自分の力を使える様になったら
こんなもんじゃないわよ? …護る気あるのかしら?」
!? あの妙なテンションのオーマさん。その言葉遣いと顔つきが…。
…どうやら浮ついた心でやっていい事では無さそうですね。
「ぐ…ぬおぉ…」
眉間にシワが寄り、歯が砕けんばかりに噛み締め、足が地面に明らかにめり込み、右片膝をついた姿勢まで立ち上がる。
「やるわねんっ!? どうやら…理解したようね!?」
「く…がっ」
「あらっ言葉も出ないほど必死なんてっ! 可愛いわんっ!
いいわっ。 と く べ つ に…」
…な…なんでしょうか…。
「80%よぉぉぉおおおおおおおおおおおおっん!!」
ばっ…。 私はその直後まるで巨大な山に押しつぶされたかの様な圧力に気絶した。
「あら…ちょっと力入れすぎたかしらん!? でもっ…チャンスねっ!!
食べちゃおうかしらんっ!?」
「冗…談は…。くっ…無しではありませんでした…か?」
「あらっ! 見た目はほっそり軟弱なのにっ意外にタフねっ!?
いいわっじゃ…セアドがほんのちょっぴり怒った時と同じにしてあげるわっ!!」
その瞬間、先程よりも遥かに強大な圧力が圧し掛かる。
「こっ…これで…っほん…ちょっとで…ございま…すか」
「そうよんっ!? 彼女は見た目よりも遥かに強い精霊よんっ!?
性格上、争いを好まないので戦いには干渉してきませんでしたけどっ!
だからこその力っ! 消費する事無く蓄え続けられた力っ!」
私は耐え切れず…いや、地面が耐えきれずに陥没し始め、体の半分が地中へとめり込む。
「ぐ…ぁあっ!」
それに逆らい、這い出し、また右の片膝をつく。
「やるわね…正直。 人間でここまで耐えたのは初めてよ。
アナタをそこまで突き動かすモノ。 それは何かしらね?」
「…ぐ…。私には…何もありませ…ん。 あると…すれば罪と罰。
…それのみっ!!」
一気に立ち上がり、オーマさんを睨みつける。
「そう。滅私、それがアナタの力の源って事でいいわね。
…人間にしておくには惜しいわっホントっ!
気に入ったわっ! これで動ける様になつたらイイモノあげるわよんっ!」
…滅私。 己を殺す。本当にそうなのでしょうか。
いや、今はそれで宜しいでしょう。 とりあえずこの…圧力に耐える事のみっ!!
私は体を奮い起こし、地面に深く足跡をつけつつオーマに歩み寄る。
「大した精神力じゃないっ! それほどリセルが大事なのねっ!?」
!? 大事。そう大事。 然し…。
「人間。 力は撥ね退けるだけが全てではありませんよ」
「あらっ!? セアドっ!」
「なっ!?」
私はその瞬間、力を抜いてしまい地面に再び叩きつけられる。
その衝撃で体の骨がいくつか折れたと思われる激痛が走る。
「ぐあぁっ!!」
「あらやだっ。 怪我しゃったかしらっ!?」
どうやら…肋骨と腕の骨が折れたかヒビがはいった様ですね…。
痛みで腕に力が入らず、息すらもし難い。
「あっら~…。 どうしましょっディエラにおこられちゃうわっ!」
…私は、やはりリセルさんを護れない存在になってしまうのでしょうか。
そうなれば私の存在意義は何処に…。
「人間。それで良いのです」
「どういう事よっセアドっ!」
確かに…ただでさえ動けないというのに…。
「アラード。彼の教え、思い出しなさい。
人間、その力が使えない。そしてこの場に耐え切れない理由もそこにあります」
…! 砕が使えないのもお見通しですか…。 然し砕と…この馬鹿げた圧力とどういう関係が。
「ああっ! 成る程ねん! 教えていいのかしらっ!?」
「なりません」
「もうっ手厳しいわねっ!!」
…アラードのおし…ぐぁぁぁぁぁああああああっ!!!
「ちょっと!? セアドっ! アンタっ殺す気なのっ!?」
「この者の罪は重い。 それを背負い歩く覚悟があるか…。
無ければせめてもの情け。…ここで果てなさい。
然し、在るのなら、立ち上がりなさい」
「厳しいわねっ! いいわっ! じゃっ…ワタシも本気よ」
ぐっ…が・・・・・・・。
薄れいく視界、周りの地面が砕け隆起し、同時に陥没していく。
その中に巻き込まれる私。…罪の…重さ。
「リカルド。 最後に伝える事がある」
「何で御座いましょう。偉大なる精霊アラード」
「未だ成らぬその力。 神を神足らしめる力を砕く力」
「砕…が何か」
「自らを捨て、他の為に己が全てをささげる精神はあれど。
それ故に、受け入れる事を失っている」
…気絶したのか、過去の記憶が蘇る。…気絶…いや死にかけているのでしょうか。
懐かしい。地の精霊アラードの姿。
それは、姿はあれど姿無く、ただ一つの山。 それがアラード。
…。 私が失っている物。 受け入れる事を失っている。
然し、私は罪を犯した。償う為には…。
「ちょっとっ!! ホントにしんじゃわよっ!?」
「構いません。 これで死ぬのなら、この先生きてはいけません。
それならば、ここで静かに土と帰らせてあげましょう」
「もうっ!」
「…人間よ。 聞こえますか」
…セアドの…声。
「貴方は、確かに罪を犯した。耐え難き罰をを受け入れた。
それが出来て、何故他者を受け入れる事が出来ない」
…受け入れる。…。
「人間の力は微々たる物。 それは今…痛感している筈。
微々たる力で強大な力を撥ね退けるは、不可能。
受け入れなさい。 重き罰も、重き力も」
理屈は判ります…が然し、どうやすれば…。
「…受け入れる気は、無いのですね」
ぐっぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!
更に激しく、重く圧し掛かる力。
最早、地面が遠くに見える程に地中へと、土と共にめり込んでいく。
「ほらほらっ!!
セアドがじきじきに教えるなんて…ホントに在り得ないことよっ!?
立ちなさいよっ!? リカルド!!」
確かに…身に余る光栄。アラードだけでなく…セアドまでが。
身に余りすぎて…持ちそうにありません…が。
「おや。招かれざる客がきましたね」
「えっ!? それってまさかっ!!」
「ファラトリエル。 魔の娘を弄び何をするのか」
…魔の娘…リセルさん?
「私は参ります。 彼の者は此処に来るべき者では無い」
「そっそうねっ! 私も行・・・」
受け入れた? 違う。 この力を…判りませんが。
何故か体が少しだけ軽くなった気がしました。
大きく窪んだ地面から、右腕と上半身を出し、そこに立っていたオーマの足を掴む。
「あらっ! この中でこの深さを這い上がってきたのっ!?」
「不器用な人間。 どうやら罪と罰以外にも受け入れた者がありますね」
「なるほどんっ!! ちょっと妬けちゃうけどっ!
もう少しで彼のハートはっワタシのものだったのにねんっ!?」
「彼女の誇りは…私が守る。それが私の…。!?」
今まで重苦の如く打ち付けていた全てが無くなり、軽くなった。
「ふふんっ! 誇り…ねっ! 気持ちも力の源っ!」
「人間。気をつけなさい。 それは危険な力。
そして、ケルドが最も扱い易い心の隙間」
…。確かに…ふう。 私も素直ではなかったのでしょうかね。
「承知しております。 偉大なる森の精霊セアド」
「…人間。 アラードの残した遺志。失ってはなりませんよ」
「肝に銘じて」
私は深くセアドに跪く。 そしてふと見上げるとそこには既にセアドの姿は無…っ!?
突然オーマさんは私を担ぎ上げ、リセルさんとケルドの居るであろう場所へと駆けていく。
体の節々が痛い。 一体いくつ骨を持って入れたのか。
まともに動く事すら出来ない体といっていいでしょう。
…それでも、私は…守らなければいけない。 少々理由が増えたみたいですが。
また、少し考える時間が出来たのか、再び考える。
砕の力。 神族・魔族・精霊族の戦い方。
どうやら、互いに質の違う力をぶつけ合うだけでは無いと。
セアドの言う受け入れる。
理屈では理解出来ました。 つまり受け流せという事でしょうか。
…いやともすれば…。 判りませんね結局。
ですが一つ確かな事。 セアドに教えを請う事が出来たという事。
これは会長にとっても私にとっても、大きな収穫といえるでしょう。
と…どうやら見えてきた様ですね。 先程のセアドの力を感じます。
「どうやらあの泉のようですね」
「あらっ! わかってきたわねっ!?
じゃっ!いくわよぉぉぉぉぉぉおおっ!!」
更に加速して、一気に森の傍にくる。 下ろされた私は激痛で片膝をつく。
そして視線を泉の方に向けた。
目に入ったのは、一糸纏わぬリセルさんと、…オオミさん!? いや、ケルドですか。
成る程。やはりそうきましたか。
ですが、リセルさんの様子を見る限りはうまくいかなかった様子。
「去りなさい。 ここは貴方の居て良い場所ではありません」
先程よりは比較的軽いですが、それでもかなりの圧力を伴っている。
しかも…質が少しおかしい。 押し潰すというよりも、相手の力を奪うかのような。
「私も用事がありましてね。 もう少し居させて頂きますよ?
勿論、争い事は致しません。」
…用事。 まだリセルさんに何かするつもりでしょうかね。
怒り? …いや嫉妬。 オオミさんの姿で裸。それもリセルさんまで。
恐らくは嫉妬でしょう。 私はその中でケルドの背後、少し遠くの位置こう言った。
「それでも、ご退場願えませんか? ケルドさん」
「おや。これはリカルド君も。 お久しぶりですね。
お元気そうでなにより」
…相変わらず相手を怒らして、隙を突こうとしているのでしょうか?
そうは参りません。
「んもぅっ!! 出てくる早すぎよっ!? もうちょっとでっリカルドのっ愛をっ!!
許さないわよぉぉぉおおおおおおっ!!!!」
「あらあらぁ…森が騒いでいると思ったらぁ…。 久しぶりねぇ…?」
「おやおやおや。これはこれは。 何千年ぶりで御座いましょうか?
相変わらずお美しいですね。 お二人とも…いえ。一人というべきでしょうか?」
二人が来て、そちらの方ほ見て軽く右手を胸に当て、一礼するケルド。
やはり顔見知りですか。 そして、二人は元々は一人だったと。
…おかしいですね。 ともすればリセルさんは…。
私はリセルさんの方を見る。 どう見ても魔人。肌の色も違う。
では一体リセルさんは…。
「そして、そこで隠れている方も。出てきたら如何でしょうか?
貴方らしくありませんよ? シアお嬢様」
シア…お嬢様? 一体どなたで…会長ですか。 然し何故シア?
まぁ、それは良いとしましょう。
「はっ! やっぱりお見通しってわけかい? というかその名前で呼ぶんじゃないよケルド!」
…この様になりますからね。
然しながら、何という豪胆さ。 神を前にして怖気づくどころか見下すような…いや怒り?
父上様が殺された怒りでしょうか。 良く判りませんが、いつに無く激しいですね。
「つれないお人ですねぇ? まぁいいでしょう。 貴女を待っていましたよシアお嬢様」
…。リセルさんではなく、会長に用事があったと? その為にこんな事を? まさかそれはありえませんね。
腕を組んで威嚇する様に会長はケルドを見ている。
その横でゼメキスさんは…まぁ、当然でしょうか。脅えておりますね。
ふとリセルさんに視線を戻す。
…不謹慎ながら、泉の波間にうっすらと見える彼女の胸は…ごほっ。 いけませんね。
再び、会長に視線をもどそうとしたその時。
「あ~…言う必要も無いんだろ?」
神慮思考。 会長、貴女はどうやってこれを打ち破ると。
読めば必ず裏をかかれる。
「では、簡潔に申し上げましょう。 私に力では無く、策を持って挑む者が絶えて久しい。
その挑戦、受けて立ちましょう。 もし万が一、私を出し抜ければ…メディ様をお返し致しましょう」
そう、それ故に力で対抗する他無い。そう考えます。
事実、彼の戦闘能力は他の神よりも低い。そう伝え聞いていますし。
…一体如何様な策を持って彼を出し抜くのか。…双極竜セオの血…いえ、知でしょうか。
これは、会長に任せればその内判りそうですね。
然し、仮に打ち破ったとして、メディさんを簡単に手放す。
嘘? いや、騙しはしますが、彼は彼の力に絶対の自信がある。それは考えにくい。
だとすれば、別の何かを隠している可能性がありますね。
それが、彼の自信溢れる仕草…いや。 何か隠している顔つきで判ります。
「へぇ! そりゃ大した自信だね。 その言葉に偽りは無いね!?」
会長もそれには当然気付いているのか、ソレに対して策も用意しているのか。
自信満面にケルドをにらめつけている。
最早、私の思慮の届かぬ戦いのようで御座いますね。
「勿論で御座います。 まぁ…貴女の策が破れた時…メディ様は…」
…。ケルドの視線がリセルさんへと移る。…一体何を。
「用が済みましたらじっくりと弄び、そして…殺して差し上げます。
そうですね。 首ぐらいはお返ししますよ? リセルさん?」
リセルさんを見下し、舌なめずりをして、自分の首を軽く掴むケルド。
…どこま…!?
「ケル…ド」
「おや? 精霊の力に当てられて動けないリセルさん。 どうしました?」
先程の私とは質の違う力に立てないリセルさんが…起き上がった。
…ケルド。 彼女の誇りを傷つけて何を。
「メディを…メディが…」
「意識も飛び、言葉を出す事も出来ない程…逆上されてますか? 宜しい、代弁して差し上げましょう。
幼少の頃より心身共々、痛みに耐え続けてきたメディ様。
耐え難きに耐え。願い…行動し続けたメディ様。
そのメディ様こそリセルさん。 貴女の誇り。 貴女自身に誇りは無く、メディ様にこそ貴女の誇りがある。
その誇りを汚す者を貴女は…」
明らかに、彼女の力。 魔王の力を引き出そうとしてますね。
然し、そうすれば自分にソレが向けられるのは必定。
一体何を考えている…。
大変。なんと申しましょうか。その…ええ。 …。
布一枚纏わない…はい。 リセルさんが立ち上がりまして。 目のやり場に困るといいましょうか。
目がいってしまうといいましょうか。
暗い泉に浮かぶ、一糸纏わずの立ち姿。濡れた薄紫の髪が残念な事に肌に張り付いて、見たい部分が見え…ごほっ。
ま、まぁ。 意識が飛んでいると思われますね。私が居る事に気付いて無い所をみると。
そんなリセルさんが、ケルドをにらめつけ・・・いや。目の視点はあってますが見ていない。
そんな目でケルドの方を向いてますね。
「ゆ…るさな…い」
知りませんよ。 私もここまで我を失ったリセルさんは見たことがありません。
同時に私も巻き込まれない様に、少し距離を取る事に。
三十三話、最後まで読んでいただいてありがとう御座います。
少しまた明るくなりましたが、同時にまた暗い部分もでてきました。
そしてリカルドの過去もぼちぼち出てきて、更に話はこんがらがっていきます。
然し、距離と時間の都合上、まだ少し主人公とガットの出番無いですね。
誇りの話が終われば、ガットと主人公・ヒロインがでてきます。