第二十五話 「君の名前」
二十五話目となります。
恐ろしい事に、一日のトータルPVが1万近くになりました。
ありがとう御座います。
一時間の内にこられる方も、ほぼ二桁に埋まり始め。正直驚いております。
さて、前回までは、意思と言う名の別れ道。
今回からは行動に移ります。
何か色々あったが、長かった夜が明け、朝になる。
その間、結局寝るに寝れず貫徹してしまった。
見たくも無いモン見ながら食いたくも無いモンを食う。
ある程度収拾ついたとはいえ、それは中央付近。一番被害のあった部分のみ。
中心から外れれば、まだ無残に横たわる遺体が数え切れない程あるだろう。
本当は、俺も弔いの手伝い…戦時中もこんな火葬だったんだよな確か。あの地域だけだろうけど。
まぁ、手伝いたいが、そうもいっていられなくなった。
ケルド。仮定ラスボス。 一晩考えてみたらアレがラスボスとは思えなくなった。
何のゲームだったか忘れたが…。
ヒロインがラスボスになるのがあったな。アレは驚いた。折角育てたキャラが使用不能になった。
かなりムカついたのを思い出した。
…しかし本当にゲーム感覚でいるな俺は。
メディを連れ去った。メディを連れ去る理由を失念していた。
俺の中のフェンリルがヘイト値高いのか? …可能性はあるが。
それなら俺を直に殺しに来れば良い話。 なのに何故メディを?
この一連の騒動がメディを連れて行く目的だった。
その目的から次のイベントが発生してる筈なんだが…なんだ。
判らん。取り合えずは雷竜か。そこで神の事を詳しく聞くしかないな。
「おはよう。また、考え事ですの?」
うおっ。後ろからいきなり覗き込んできやがった。 頼むから乙女っぽい事やめてくれ。
似合わないぞ! 果てしなく似合わないぞ!!
「ああ、おはよう。ケルドの奴まだ何か企んでるなと」
「あら…どんな事を?」
そう言うと、俺の肩に触れるぐらの近距離でまた女座り。ええい! デレんでいい!!
デレたらお前力使えそうに無いだろ!!
俺達にHP MP二つあるとして、お前だけHP TPとかありそうだから!!!
「あ~、良く考えたらホレ。理由」
「理由・・・あ、メディをさらって何をするか。ですわね?」
「そそ。その理由が判らん。 フェンリルが怖いのなら俺を殺せば全て終わる」
「確かにそうですわね。 ・・・あなたを殺しても死にそうに無いと判断したのじゃなくて?」
「俺は一コマ後にはどんな傷も完全回復してるギャグキャラか?」
「なんですのよそれ」
ったく。 まぁいつものツンツンリセルの様だ。
「まぁ、それは今考えても無駄だ。情報が無い。 お前はこれからどうすんだ?リセル」
「それもそうですわね。 …私はセアドの森にいきますわ」
…成る程。あの二人にビックバン完成させて貰うのか。
リカルドと二人で行く事にゃなるが…。
あの二人も何か隠してる気がするしな。 あの術の使用方法も何かおかしい部分がある。
何によりセアドが居る森だ。ケルドも易々と手出ししにくいだろ。
これから俺の行くエルフィもそうだ。
「どう…しましたの? 体の具合でも悪いのかしら?」
「いや、あの魔族に教えてもらいに行くんだろ?」
「ええ。その通りですわ」
「合成術というものがある。 それが、あのビックバンなのか。
それとも別のものなのか」
また理解不能な言葉を喋ったらしく、そしてアイツの探究心に火をつけたらしく…。
あのいい匂いのする息がじかに判る至近距離までにじり寄ってくる。
「合成術? 術と術を組み合わせる。 確かにそんな感じですわね。
でも、何か違う様な気がしますわねぇ」
「ああ…、流石にちょっと判らんから。その辺りはディエラさんとオーマに聞くのが一番だろな」
ふむ。そういやあの二人に直接聞かせるのが一番か。
「ああ、レトの言ってた事。そのままあの二人に伝えてくんないか?」
「あら、まだ何かいってましたの?」
「魔王エヴァリアの血と黒よりも暗い色を持つあの娘に、君には君に相応しい力が共にある」
「黒よりも暗い色。 何色ですのかしら」
漆黒? いやもっと別の意味を感じる。 色は例えだろうな。
全部判りにくい様に伝えるのがあの手の展開だ。
「色は気にしない方が良い。 それは中身を隠す為の包みみたいなモンだと思うわ。
それがお前の本当の力であり、それが共にある…」
「リカルドに聞けってことかしら?」
「いや、違うな」
更に接近してくるリセルの整った顔。甘い吐息。 うほ、何かたまらん。
ディエラさんに無いこう…なんというか…うん、それはおいといて。
「おまえ、近いからちょっと離れろって。 謎とか解くの好きだろリセルおまえ」
「あら…ごめんなさい。 ええ、好きですわ」
だろうなぁ。 魔法使いタイプは総じて探求者だ。
「常におまえが持ってる。と、言いたかったんじゃないか? それ以上は判らんが」
「成る程…。いまいち判りませんけれど、覚えておきますわね」
「ああ」
暫く、肩を寄せ合った状態で沈黙が続く。
何か恋愛モノまで混ざってないか。
このまま行くと…メディをとるかリセルを取るか。
二者択一しないと世界崩壊エンドなタイプの展開に似てるぞこれは。
…そんなどちらかなんか選べるワケないだろ!!!!
すまんリセル死んでくれ。
即カーソル合わせるだろうな俺。 何気に俺もツンなのか?
「アンタ等…急に仲良くなってまぁ。 メディが見たらなんて思うんだいそりゃ」
後ろから突然声をかけてきた姐御。 俺よりも早く、ヘタしたらフェンリルより早い。
そんな速度で体が跳ねる様に飛びのいたリセル。
「シッシシシ…シアンさん!? なっ…なななにをいってますの!?
こっ…こんな頼りないお馬鹿に頼って安心したいなんて思ってませんわよ!!!」
リセルお前…とことん。
「隠し事出来ないな」
「だねぇ」
顔を真っ赤にして両手を振って慌てているリセル。
それを見て呆れる俺と姐御。
「ケルドの奴には格好の餌だね。アンタ」
その通りだ。この手のタイプは落とされ易い。
だけにセアドに護って貰うのが一番だ。 何か姐御も様子おかしいったらおかしいしな。
「まぁいいさ。さ、ちょっとオオミ君に用事あるんで、
リセル君ちょっとリカルド君の方に行っててくれないかい?」
「え!? わ…わた」
「ぶん殴るよ」
「いっ…いってきますわ!!」
慌てて街の中心の方へと走っていったリセル。
それを確認した姐御が今度は寄ってくる。 俺の肩に肘をのっけて顔を近づけて小声で喋って来る。
「で…どこまで気付いたんだい? 異界の知識とやらで」
「シアンさん、何者なんスか?
どう考えても人間・魔人が鍛えてどうにかなるステータスしてないっスよ」
「…ステータス? 良く判らんがね。アタシの事はヴァランの奴にききな」
「う…うス」
「で、ケルドの奴のどこまで気付いたね? アイツの行動に一番早く気付いたアンタだ。
何か気付いてるだろう?」
異界の知識っつか、ゲーム知識なんだよな!!
まぁそれはいいとして。
「あーと…そうっスね。 取り合えず相当頭のキレる奴。
仮定っスけど。戦闘能力は低いが特殊能力が厄介な敵。
そして、メディを利用して何か企んでいる。
メディの力。それが判って無いっスから、これ以上は手詰まりっスな」
「そうかい。アンタも読心能力…いやもっと別か、まるで先を見る力でもあるみたいな感じだね」
も。ってことは、それがケルドの能力か。 死ぬほど厄介じゃないか!
読心術…無心で戦わないとたおせな…ガットか。
「先を知っているというか。 そういう似たような物語があって。それを知っている。
という感じっスな。ともすれば、今回の切り札はガットっスか」
「成る程。アンタんとこの世界で似たような敵が居たってことかい。
ああその通り。ガットが切り札だ。
それに…相手が利用してきたなら、それを逆手にとってやろうじゃないか」
…心を読む事を利用する。確かに倒し方の一つだが…恐ろしいなこの人も。
「何か、ケルドが可哀想に思えてきたっスな」
「ぶん殴るよ」
「サーセン! 雷竜の所いく間に考えておきたいんで、一つだけ教えて欲しいんスわ。
これが判らないと考え様が無いんで」
更に顔を近寄らせる姐御…かっ肩に姐御のたわわなおっぱいが!!!
なんだ・・・何か、メディかリセルの二人かとおもつたが、姐御までフラグたってないかこれ。
「メディの力だね…。彼女の異才は他にある。いや正確には…」
「天性の何かっスか?」
「気付いてたかい」
「まぁ、ありがちっスから」
「なんだいそりゃ。 まぁ要約すると、ユクドラシルの子供。詳しい事は雷竜か、
もし会えたら精霊クァにでも聞いてみな」
ユクドラシルの子供? メディに両親いなかったか? いやいたな記憶にある。
途中で記憶つか映像が酷く荒れ…ん? あの記憶が荒れたのは思い出したくないから。
そうだと思ってたが…メディの何かが出た。と考えてもおかしくないな。
意識飛んだりして秘められた何か漏れるって展開もある。
「成る程。その何か判らん力を利用してケルドが何か企んでると」
「ああ、その通り」
ふーむ。ケルドがラスボスでもなく、ましてやメディでもなさそうだな。
すると頭上にあるあの二つの星か? …そいや夜にも同じ位置にあったな。
星の自転考えると物理的におかしいぞ。衛星で同じ速度を回ってる?
・・・ ここも何かありそうだな。
「どうかしたかい?」
「ああ、あの空の星二つっスわ」
「ああ、アレか。 それも聞いてくるんだ」
「へいへい。 とことん雷竜とやりあわせたいんスな」
「行けば判る」
「へいっス」
俺は立ち上がり、中央の方へと行こうとする。 ちょいと食料とか地図貰いにだ。
そんな俺の背中に、何か姐御が両手を、俺の背中に当てて引っ付いている。
「アンタも…死ぬんじゃないよ」
…駄目だ。姐御もフラグたってやがる。
気の強い子。 確かに姐御もそのキャラだが、強過ぎないか!!!!!!
「ギャグキャラは死なないモンっスよ」
「なんなんだい。そりゃ」
何かこう廃墟となった街から旅立つ者と、それを心配する女の子。
とてもいいシチュエーションを粉砕してしまった俺。
そんなこんな、街の中央へと足を運ぶ。
相変わらずの瓦礫の山。とりあえず遺体は…瓦礫の下にあるの以外は弔いが済んだ様だ。
「あら? 用事は済みまして?」
「おはよう御座います。 オオミさん」
この二人引っ付いてくれたら気分楽なんだけどな。
「おはようっス」
俺は、ちょい干し肉やらを皮袋に詰めだす。
「おや? どこかへ行かれるので?」
「ん?ああ、ちょいとエルフィまで雷竜と肉体言語で語り合いに」
「妙な言い回しをしますね。 …そうですね」
お? 何か雷竜攻略法でもくれるのか!?
「雷竜は二つの雷を使用すると聞いています。
巨大な槌。 巨大な檻。 お気をつけ下さい」
何気に詳しそうだな。そういやあった時から静か過ぎだよな。
ゼメキスさんみたいなのとは違うしな。
何かありそうだが…判らん。
「二種類スか。 名前から察するとサンダーとサンダーストームってとこスかね」
「オオミさんの世界にも居るのでしょうか? ともあれ、お気をつけ下さい」
「うース! どうも!」
肉を詰め終わると、次は地図だ。・・・あるのか?
「そいや地図ってのあるんスかね? 無いと流石にエルフィまでは…」
「オイラが連れてってやるよ!」
ん? 何かどっかで見た…なんだったか。 取り合えず喋るソレを掴んでみた。
「ギャーッ!」
ああ、思い出した。此処に来た時にみたあの青白い毛並みの…インコ? あれみたいな奴だ。
「オマエっなにする!! 初めて会ったときもそうだが失礼だナ!!!」
「いや、喋る鳥ってのが珍しくてつい。 すんません」
「全く! オイラをただの…うっぷ」
あん? 何か隠してるな。露骨にっつーか、・・・なるほど。
「で、案内してくれるんだよな?」
「い や ダ」
再び無言で握る俺。
「ギャーッ! 放セっ!! 突付き殺すゾ!!」
なんつーか、口の悪い鳥だな。
「つれてってくれますよね? 焼き鳥にして差し上げましょうか?
リカルド性格悪い版で軽く脅してみる。
「っ!! もう絶対つれてかなイっ!!」
「じゃあ…焼いてさしあげましょう。 丁度お腹もすいておりますし」
リカルドが俺の方を見ている。
「オオミさん? それは誰の真似でしょうか?」
あ、怒ってる。怒ってる。
「似てますわね。リカルドに」
「私はあのような野蛮な事は申しません」
その後ろからリセルが来た。
「ほらアリオ? オオミさん謀って無いで、ちゃんと案内するのですわよ?」
「えー!」
「…また毟られたいのですの?」
また!? 毟ったのか!!!
「イヤダー!! 良し行くゾ!!」
…良く判らんがアレか?
盲腸で入院して、看護婦さんにアソコの毛を剃られる屈辱からくる恐怖か?
何かそんな感じに思える慌て具合で街の東の方へと飛んでいったアリオ。
「相変わらずだなリセルは」
「あの子、我侭だからですわ」
「それで毟ったのか」
「頭の一部だけですわ」
「誰だって嫌じゃ!!!」
嫌がった理由納得。
「じゃ、いってくるわ! そっちもケルドに気をつけてな!」
「判ってますわ。 来ると判っていたら問題ありませんわ」
…来ると判っていてもどうにもならないんだよ。 その手の奴は。
精神力と知力で勝つしか無いかな。あの二人とセアド頼みか。
「いってらっしゃいませ」
「おいっス! リカルドさんも気をつけて」
「勿論。もう二度と失態は致しません」
ん? 失態? 何かあったのか?
そいやあの時の悔しがり方も異常だったな。
…そもそもただの人間が瓦礫を砕けるか?・・・判らん。
この人も何か隠してるな。
…なんつーか、まぁまだ知り合って浅い俺なら判るが。
全員自分の事、隠してる処があるな。気付いてないのも含めて。
この学園が、その為にあったのか。 まぁ…それもその内に判るか。
俺は二人を後にした。 途中でゼメキスさんが姐御と何かしてた気もするが、
読心術使う様な相手だ。 余り互いに連携はしない方がいいな。
再び視線を街の外に向けて歩く俺。
…ん? あの子は。
「遅いゾ!」
「…いく・・・」
何? 何この色物PT! 主人公 喋る鳥 不思議少女。
戦闘力ネェなおい!!!
ああでも、姐御の差し金か? サザとリンカーフェイズしたあたり、
どんな種族とでも可能ってことだろ…ん?
リセルも似たような力あるよな。 外部から更にリンカーフェイズしていく奴。
つことは、この子も…判らん。 何にせよまだ判らんが異才がある。
何より、フェンリルまではいけなくてもも鷹ぐらいは使えるだろうか。
なってみないと判らんが。
つか、名前無いと不便だな。
しかしそんな簡単に人の名前が…、02…02。
うーん。良し。
「んじゃいくぞー。 喋る鳥とオズ」
我ながら安直だな。02 OZ オズ。
「アリオだ! この鳥の巣頭!」
「オオミだ! 頭のてっぺんだけ毟るぞ!」
「ギャー!ヤメテクレー! 記憶が蘇るー!!」
相当嫌なのか、オズの頭から転げ落ち、地面でのたうちまわる鳥。
さながら、猟銃で撃たれた鳥が死ぬ寸前の様である。そこまで嫌なのか。
そして、俺のズボンの裾を掴むオズ。 相変わらず表情やら感情が無い。
「・・・おず・・」
お? 気に入ったか?
「おおさ。 名前無いと不便だからな。 安直ですまんっスが」
「・・・おず…」
言葉知らんのか? 判らん。 今度はこの子が色々と何か関わってくるんだろうな。
…メディの嫉妬更に増大しないか? そんな悪い予感しかしない気持ちで、俺達はエルフィへと旅立った。
「ア! まてー!! オイラを置いてくなーーーーーーっ!!!」
二十五話、最後まで読んで頂いてありがとうございます。
主人公は、オズとアリオと共にエルフィへ。
メディは、ケルドに連れられて何処かへ。
リセル・リカルドはセアドの森へ。
ガット・アリセアはレガートに。
シアン・ゼメキスはどうなるのか。
残りの一組は何をしているのか。
色々と一幕の残り種も顔を出しつつ、本筋がより明確になります。
レガートが如何なる国なのか。
エルフィがいかなる民族なのか。
空にある星が日夜動かずそこにあるのは何故か。
・・・種まき過ぎたかすら。