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第二十二話 「心理戦」

二十二話目の投稿となります。

ここから主人公が異界の人間たる強さ。

 それがジワリジワリと出てきます。

 

  「いでぇ…」


あれからどれぐらい時間経ったのか。

 判らないが、唯一つ判る事。 何故かあの女に魔力でもこもってたかの様な、

  凄まじい威力の往復ビンタを食らって気絶したという事だ。

見ろこの威力。虫歯を長い事放置し、神経が腐る一歩手前のあの腫れ方の様だ。

 普通の女の力であんな強烈なビンタが打てるはずも無い。



羨ましいよ! 俺にも何か特殊設定無いのかよ!?

 手から炎とか! 勇者の子孫とか! 天空・・・ありえねぇよなぁ。

ほんとに、ただの人間なのかよ。せめて重力を地球の半分とかよ!?

 唯一あるとすりゃ、あのフェンリル。


然しメディが居ないと無いも同然。 

 

そして、仮に俺が勇者だったとしよう。

 然しLv1で、しかもMP全然足りない某最強雷撃呪文持ってる様なモンだぞ。

…なんでこんななのか。つかさっきから後頭部に当る柔らかい感触。 なんだこりゃ?

 まだ起きたてで視界がボヤけている中。手探りで取り合えず上の方を触れてみた。

 何かあるな。

  「…なっ…」

何か声が聞こえた様な…そのままそれを握ってみた。見事な柔らかさ。

 つい反射的に、その見事なソレを丹念にじっくりと楽しむ様に揉んでみたりしてみた。

  

  「なななななななな・・・・・っ」 


ん? 段々視界が戻って…。目の前に在ったソレは、肘。 紛れも無く肘。

 ソレが俺の顔面に向けて垂直落下してくる。 

 何を握ったのか理解する間も無く、ソレが俺の顔面に深くめり込み、俺にソレがなんだったのかを伝えた。


  「どっ…どこを握ってますのこのお馬鹿!!!!!!!!!!」


確定。握りたくも無いリセルのおっぱいだった。激しく打ち込まれた肘。

 まるでスローモーション。サッカーボールをつま先で蹴飛ばした瞬間のまさにソレ。

 陥没した顔面がもとに戻る反動を利用して空に舞う俺の鼻血。


  「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!!!」


慌てて飛びのいて、吹き出る鼻血を右手で押さえつつ、左手をリセルに向ける。

  「まっ待てっ!不可抗力だ! あのビックバンは撃つなよ!?」


慌てて弁解しようとする俺。 然し様子がおかしい。

 頬を赤らめて女座りし、右手でその見事なおっぱいを隠し、俺から目をそらしている。

 そこに居るのはツンツンリセルじゃない。 別の乙女っぽい何かだった。

 


   「・・・」

   「・・・」



サーセン。対応どうしましょ。てか何?デレ期はいったとか?

 それはそれで困るんだが! ツンツンじゃないとあのビックバン撃て無いだろお前!!

テメェの力の源失う様な事をさせるワケにゃいかな・・・あ。 

 取り合えず会話繋げる方法があった事を思い出した。


  「そ、そいや丁度いいな」

  「な…なんですのよ!」


やっぱりツンのままか? さっきのは錯覚だったのかいつものお嬢様だ。

 姿勢から察する所、相当育ちがいいんだろうな。街が破壊されて家柄の確認すら出来なかったが。

まぁ、んな事はどっちでも良い。それよりもあのトト…いやレトの言伝だな。

  

  「あ、ああさっきっつーか、昼過ぎ? まぁどっちでもいいが。

    レト?とかいうデカブツからの言伝あるぞ」


  「あ、あら。珍しい…レトにあったんですのね?

    で…なんですの?」


どことなくたどたどしいが、正常に戻った様だ。

  

  「ああ、リセル…様のあのビックバンみたいな力あるだろ。

    あの神吹っ飛ばしたり、魔法陣ぶっとばしたりの」

  「ええ。ありますわね…ビックバン?」


完全に通常のツンツンリセルに戻ったな。


  「ああそれは独り言。まぁその力。

    完全でも不完全でも使ったら駄目だとよ」


  「なんでですの?」


ん。魔王の話はしていいのか?つか…えらい簡単に身の上明けてでてくるな。

 この手の場合、なんかひっかけあるんだよなぁ。

頭のキレる敵がいたりすると、心理戦に持ち込んできやがるからな。

 それも限って一番ヘイト値の高い能力持ってる奴から。 …。

 何か腑に落ちない部分があるが…。

 まぁ、それをどう思うかはコイツの勝手だしな。


  「よくわかんねぇな。ただ使うなってよ。

   ただその代わり、リセル…様!には、別の力が共にあるとだけ言ってたぞ。

   魔王エヴァリアとかなんとか言う血族とかなんとか。 それ以上は何もわかんね」


  「魔王…?…興味無いですわね」


興味深々だなおい。目がそういってないぞ。


  「ま、それだけだ。つか羨ましいな!」

  「何がですのよ」


何がっておまえ・・・

  「俺何かただの一般人だぞ! メディがいなけりゃお前のビンタで気絶する様な奴だぞ。

    つかなんだよあの威力。 リンカーフェイズもしてないのに、こんな顔がハムスターみたいな」

  「あっ…あれは貴女がっ!」

  「俺が何かしたのかよ」

  「いえっ…それはその・・・」


お? 初めて主導権握ったっぽくね!?

  「その…なんだよ」

  「いやだから…あの」

うほっキモチイイ! これがSってやつ!?

 必死で視線をそらして考えてるリセルを見て調子に乗った俺。

  「どうなんだ?あ~ん? リ セ ル ちゃ~ん?」

  「っ!!! ど馬鹿!!!」


再び俺の顔にめり込む…肘じゃなくて膝。 

 その華麗さは、さながらシャイニングウィザードの様である。 お前もう武道家になれよ。

垂れ出ている鼻血が更に出血量を増し、俺は地面に倒れこむ。つか、ど馬鹿ってなんだよ。

 

  「全く…でもま、情報はありがとうですわ。

    私がそんな大層な者だとは思えませんけれど」

  「さいですか」


とどめとばかりに、俺の顔にストンピングの雨が降る。

 駄目だ。やっぱりコイツは・・・・ツンツン・・だ。

そして、俺の所から去ろうとして背中を向けて向こうへ行こうとするリセル。

 立ち止まり一言。


  「…そ、その。いい難ければ。呼び捨てでも構いませんわよ」

  「さいですか」


ん。 そいや忘れてたな。

  「そいや、もう一つ」

  「なんですの?」

  「聞いて知れば、それは成らず。

    気付いて知れば、それは成る。

   あのレトってのが言ってた言葉だが。

    やっぱ気になることがあるんでいっとくわ」


途端にこちらに振り向くリセル。

  「面白い事を言いますわね。

    自分で教えて、自分で言う事を否定してますわ」

  「そこだ。 どうも腑に落ちない。

    この場合、俺の世界だとこういうパターンがある」


興味深そうに俺に再び寄ってきて、目の前で育ちの良さそうな座り方をする。

  「どういうパターンですの…?」

  「そりゃ、仮としてだが。

   最終的に上位神。それも最上位の神がでてくるとしよう」


  「…どういうことですの?」

  「もし仮にその神を倒せる力ってのが、お前のソレだと仮定する」

  「対神空間圧縮魔法ダークマターですの? で、それとどういう…」

  「そいつの完成を恐れて、仮にだが…シアンさんを倒した奴の頭がキレる奴だったとしよう」

  「ここからは心理戦だ。 先ず先に倒すとしたらリセルなら誰から倒す?」

  「それは…勿論一番脅威になる敵からですわよ」

  「そう。その一番の脅威。封印が解かれる前まではシアンさんだったとしよう。

    で、一度戦って倒してしまい、大した脅威にならないと判断する」


段々飲み込めてきたのか、

誰にも聞かれたくないのか、近寄り小声で話しだすリセル。

  「つまり…次の標的が私ですの?」

  「そうだ。一番攻撃力の伸び代が高い。そう見られている筈。現状だとな」

  「それは判りましたけれど。…どうしてレトはそんな矛盾した、遠まわしな言い方を?」

俺は少々不快そうに眉をひそめて答える。

  「そこは単純明解。神が傲慢で無慈悲と伝えられてるな」

  「ですわね…」

  「おまけに頭のキレる奴ならやる事は一つ」

  「な…なんですの?」

興味深そうに、更に顔を近づける。こういう話好きなのか?

 ともあれ、とてもいい匂いのする息が掛かるほどに接近してきた。

いやっ。ドキドキ何かしてたまるか!! デレの無いツンツンなんかに。

  「レトの大事な何かを人質に取って、それを俺達に流した。

    流言という兵法…戦術の一つだよ」

  「たっ…たすけないとですわっ」

慌てて立ち上がろうとするリセル。それを慌てて右腕を掴み止めた…はずだが思ったより軽かったのか。

 そのまま抱き抱える形になってしまった。 …うげ。

  「・・・」


おい。 やめろ。そんな頬を赤らめて俺を見るな。 

 そんなモノ欲しげな顔して頬を赤らめるな! デレたらお前はあのツンツン砲撃て無いだろ!!

くそ敵め! これすらも考えてやってるとしたら、相当頭のキレる奴だぞ。

  「お…おっぱい揉んでやろうか?」

言いたくなかった!!! 言いたくなかった!!!

 しかしツン度回復させるにはこれしかない!!!!

この女は誇りが高い。 そして汚い奴を嫌う傾向にあるだろうそういうタイプは。

 故にここは俺が灰被りになるしかないの だぶふっ!

案の定、平手打ちが飛んできた。

  「…見損ないましたわ。 頼れる方だと思ってましたのに」


  「さいですか。 一つだけ付け加えとく。レトはもう居ないぞ」

  「…」

  「仮想した敵がその通りなら、用済みになった奴は消す。

    そしてレトは…」

  「人前に滅多に現れない。ですわね」

  「そうだ。だからもう無駄」


暫し、沈黙が訪れる。それをリセルの方が破る。

  「貴女も…不器用ですのね」

  「お前程じゃないわ」

  「リカルドの方にはそれとなく伝えておいてくれ。

    メディの方には俺から伝える。

   …ガットが問題だな」

  「あ~…本当にお馬鹿ですからねぇ」

  「いや、あの手の奴は馬鹿を装ってるだけだよ」


そう。大抵あの手のキャラは、一見無茶苦茶な事をしてるが、

 確実に生き残って自分の力を高め続ける。そうタイプだ。

言ってみれば野生の本能。それが極端に表に出ている。

  「…ガットの事。えらく買っているのですわね?」

  「アイツは強くなるよ。どんな逆境にも負けない。

    いや、そうだな、いうなれば英雄」

  「英雄?…あのお馬鹿が?」

  「得てして英雄ってのはそんなのが多い。

   どんな死地からも生還してくる奴。

    誰かの為に死ぬ事が英雄じゃない。

  どんな死地からも誰かの為に必ず生きて帰ってくる奴が英雄なんだよ」


と、昔やったゲームであったな。

 ておい。離れるどころか、抱きしめられたぞ。

やべぇ! しまった見落としてた!!このタイプは頭の良い男に弱い!!

 馬鹿を演じなければコイツがあの馬鹿げた魔法使えなくなる。

ええい、パワーバランスが難しい攻略法だなこりゃ。

  「…本当貴女、お馬鹿なのか、頭がいいの・・・・っ!?」


エロ発動三度。 今度は意識的にリセルのおっぱいを揉んだ。

 しかもやりたくないが、エロオヤジ。それがしっくりくる顔をして。

  「やっ…ぱりあな…た…ただの・・ただのっ」

おしこい!仕方ない! 食らうしかない!!


  「お馬鹿ですわーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

  「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーつ!!!!」



そのまま怒って走りさっていくリセル。

 そのままぶっ倒れる俺。 更に腫れ上がる右頬。


  「は~…なんつーか。まだ知らない敵が凄まじく憎くなって来た」


敵。そうまだ姿形もわからん敵。

 あの姐御をして敵わなかった敵。

察する所、中級~上位神だろう。

 いや、案外それとは別。腹の中に虫は必ず居る。

その虫が最終的にラスボスで、神と魔と人間やらまぁ、

 何かしらの目的で世界の破滅を狙っているってのがベタだしな。

まぁ、そこはまだ判断もつかないからして置いておいて。

 問題はそこじゃない。

 ソイツが仮に神だったとして、どこで生き残ってたのかっつー話だ。

 神の封印が既に一つ解かれていた。 しかしここの神は優しい神で俺達と共に戦った?

 都合が良すぎる。これこそソイツの臭いがプンプンするわ。

それを確かめる為にも、雷竜か・・・。

 リンカーフェイズ。フェンリルの力なくして。

 神と戦える様な生物と、何の取り得も無い俺が?

 …絶対頭がドリフだ・・・よ?

ふと、目に入ったのは、怒りを露にするメディ。



  「馬鹿!!!!」




…しまった嫉妬フラグ見落としていた。

 おもっきりグーで地面とサンドイッチ状態のパンチを食らってしまった。

  また…この…オチか…よ。 再び気絶する俺。

  

二十二話 最後まで読んで頂いてありがとうございます。


でも結局この主人公は主人公である事に変わりは無く。

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