第二十一話 「冷たい雨 冷たい体」
二十一話目の投稿となります。
銀魂が好きだからでしょうか。
前回はそれっぽいノリが節々に。
ギャグの方が向いてるのか。シリアスに向いてるのか。
未だに良く判っておりません。
「うがーっ!」
降って来やがった!! しかもなんだこのスコールか!!
視界がほぼゼロといって良い。大量のそうめんが目の前を邪魔している。そんな感じだ。
畜生! 折角乾かしていた皮が使いモンにならんぞこれは!
恐ろしい程に降りしきる雨。 まるで世界が何かに向けて泣いている。
そうとれる凄まじい雨。 さっきまで雲も少ない宝石箱をひっくり返した様な星空だったのにな。
まぁそりゃいい。とりあえず…雨宿りする所がネェ!!!!!
屋根らしい屋根がほとんどぶっ飛んで無いんだよ!!
暢気に空見ながら寝るのもオツなモンだ。 なーんてカッコつけてたらイキナリ…ドバーッ!!!
世界が泣いてるんじゃなくて、俺に対して似合わない事すんじゃないと言いたいのかコラ!!!
ええいくそ、メディもどこにいったかすら判らん!!
取り合えず探して走った。
<ゴツッ>
何かに躓いてはげしくコケた。
駄目だ!そういや瓦礫だらけで走ったら転げる!!!
ええいくそ。 とりあえず適当に歩いて行く。
10分?20分?判らん。音の所為で時間の感覚すら狂う。
何かにぶつかった…? 柔らかい。人か?
誰だ!? メディか!? だめだ音の所為で声も届かない。
ここもどこか判らん。 すげぇ雨だな然し。
しかも痛い! 雨が強過ぎるのか素敵に痛い! もう早く晴れてくれ!!!
雨宿りする場所も無い。俺はどうにもならんと諦めて、俯いてその場で立ち尽くす。
「あら…酷い雨ですわね」
考える時間が出来た私は、…自分の両親のいえ。育ての親。
そもそも本当の親が誰かかも判らない。
その親に思いをはせている。 どんな親なのか。
判らない。 けど一つだけ確かな事。
血は繋がって無くても…貧しくても私を育ててくれた両親。
そう…子供。本当に子供の頃。
うっすらと覚えている。 どこから来たのか、何があったのかすら判らない。
ただこの街の入り口で泣いていた私。 その私に手を差し伸べてくれた両親。
私はそれに応える様に…誰にも負けない。
その一心で学園に入り、そしてリカルドと出会いましたわ。
私と同じくして裕福では無かったからか、気も合いましたし。
そして、互いに両親の為…若くして戦場に立つ事を望み、シアンさんにお願いしたわ。
勿論、あの性格。何度泣いた事かしら。 …懐かしいわね。
思うが様に行かず、重傷を負ったこともあり、その度に両親に心配かけた。
両親を守ろうとして…心配かけさせていたら意味ないわよねぇ…本当。
私は視界がなくなる程の強い雨を仰ぐ。
あの時もこんな雨降ってましたわねぇ。
「ほら、メディ。いってきなさいよ」
「あの…でも」
「もう! 怖がってたら駄目。
確かにあそこは暗くて怖い場所だけどね。
それでもそれを力にしないと駄目なのよ」
「そうよ、メディ。 あなたもリセルみたいに立派にならないと」
「もう、メディの義母さん。私はそんな立派じゃありませんわ。
本当に立派なのはシアンさんみたいな人を言うのですわよ」
遠くで、メディ初のリンカーフェイズを腕を組んで見守るシアンさん。
近くで心配しているメディの両親。
本人は知らないけれど、メディも子供の頃に遠くの地で拾われたのよね。
両親の遠征の時。不思議な大樹の下で泣くメディを拾った。そう聞いたわ。
結構この国多いのよね。 そういう境遇の子。
あのお馬鹿のガットもそう。 あの強気な所は寂しさを紛らわす為だという事は知っている。
けど、行き過ぎですわよねぇ。
「さぁ、メディ。」
「う…うん」
「よろしくおねがいします」
相手となった子、もう記憶から薄れてしまいましたけれど。
あの子も優秀なリンカーだったのよね。
・・・でも、オオミを見ていると、力の強い生物。
モンスターや魔族が必ずしも強いとは限らない。 そう思わされましたわね。
ただの動物の力で、森一つ吹き飛ばしたり。
・・・負けてられませんわねぇ。
「う…ガ…ァァ」
リンカーが耐え切れなくなり力の暴走・・・。
周囲の建造物が砕け散り、私ではどうしようもない力の暴走…。
それを取り押さえ様として、命を落としたメディの両親。
その様を目の前で成す術無く見るメディ。
再び降りしきる雨に意識を戻す。
あの時も…こんな雨が降りましたわね。
どこかで泣いているのかしら。あの子。
セオ様の行方が判らないから、寝ずに探していたし…もしかして見つかったのかしらね…。
私は…どこにいるとも知れないメディに視線を向ける。
「ここ、どこだろう」
お爺様を探して、街を歩いていた私。
学園に居るのかと思い、その跡を歩いていた。
目に入ったのは、瓦礫の下に少し見える地下への階段。
「ここにいるかな?」
私は淡い期待に階段を静かに下りる。 日が落ちて暗くなり、更に暗い階段を下りていく。
その時、激しい振動の様なモノがこの地下を揺らす。
「奥に誰かいるのかな…」
暗く怖い地下道を手探りに近い状態で進み、
少し、ほんのり明るい所が見えて安心したその直後。
聞きなれた声。でもとても悲痛な泣き声が聞こえた。…お父様と。
…誰か、また両親なくなられてたのかな。 胸が締め付けられる思いで私は、その部屋を覗いた。
すると…見たことのある後姿の人が地中から少し体が出ている・・・あれは、竜?
そして、その見たことのある後姿。見間違う事も無いシアン義姉さん。
私は理解した。ここに封印があったのだと。
そして、あの時シアンさんはここで誰かと、地中に埋もれる竜と共に戦って負けたのだと。
誰にも知られず…知られてはいけない事。だったのかは判らない。
けど…竜がお父さん…。シアンさんは魔人じゃないの?
それに、シアンさんの肉親は…まさか。
その時、私の脳裏にサザの言葉が思い出された。
双極竜セオ…セオは私とシアン義姉さんのお爺様の名前。
…私の記憶はここでなくなった。いえ、我を失った。
ただ覚えているのは、外に飛び出して泣いた事だけ…。
ただ何処とも知れない方を見て泣いていたことだけ。
「ふう。凄い雨ですね」
あの時を思い出しますね。 メディさんのご両親がお亡くなりになったあの日。
まるで泣いたメディさんが、自然を操ったかの様な、凄まじいという他ならない豪雨。
仮に、それが彼女の本当の異才だとしたら。
大樹の下で拾われた彼女。 精霊全ての祖となる大精樹ユグドラシルと関わりがある。そう思えますが・・・。
はは、何を馬鹿な事を私は。然し、彼女を実の子の様に可愛がっておられたご両親。
彼等も、何かしら彼女の力に気付いていた様子でしたしね。
あながちそれが…いやいや。それは無いでしょう。
ともあれ、私のやるべき事は一つ。彼女達を守る事だけ。
それが私に課せられた使命。既にこの地に無い。
この地に息吹いていた精霊アラードのご遺志。
私はポケットの中の小さい包みに入った、精霊アラードの印が結ばれていた砕けた実をそっと握る。
時がくれば、あの方達にもお話しなければいけないのでしょうが。
今はまだ…私も知らぬ者としてあり続けるべきでしょうね。
過ぎたる知識は身を滅ぼす。地の精霊アラードの教えのままに。
然し、珍しいというよりも、災害といっていいですね。この雨は。
…リセルさん大丈夫でしょうかね。 意外と体が弱い人ですから。
私は何処かにいるリセルさんに視線を送った。
「…やだわ。 もう泣かないって決めてましたのに」
今日。私の両親の亡骸も見つかりましたわ。 それも私自身が…。
「でも、立派な最後でしたわ
其処には居ない。けれど確かに…たしか…に、誰か…をたすけよう…と」
「ぅ…」
堪えきれない涙。幸いにもこの激しい雨。 泣き顔も声も全てかき消してくれる。
そう思ったのか。 私の手には子供を助けたのか、焼けて酷い状態の人形が強く握り締められている。
その時、誰かが私の体に当った。
何故か体を委ねたくなった…思わず泣きついてしまった誰かも判らないのに。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
泣く声は雨音で掻き消え、誰かも判らない誰かに泣きつく。
これで最後にしましょう。 私はもう…決して泣かない。
シアンさんの様な強さを手に入れてみせる。
こんな中でもどこかで鍛錬をしているでしょう。 遠くに思いをはせつつ私はただ泣いた。
「ちょっと!何馬鹿やってるの馬鹿ット!!!」
「うるせぇ!! ってか馬鹿ット言うな!!!!」
俺様は、この凄まじい雨で増水した街から少し離れた川にいる。
何故いるか!!!
「師匠の教えその5!! 自然こそ最大の師と思え!!!」
「無茶苦茶な事やってんじゃないわよ馬鹿!!!!」
そう! 増水した川に逆らって歩いているのだ!!
油断すると巻き込まれてあっというまに下流に流されるぜ…!!!
わりと雨がおさまってきたのか、視界が戻る中。俺様は腕を縛り脚力のみで激流を登る。
「なんで腕縛るのよ!!」
「あのニーチャンだ! あんなでっけぇドラゴン支えたんだぜ!?
俺様もアレをやってやるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええっ!!!」
「アンタほんっっっとに馬鹿!!!!!!!!!!!!!!!!」
馬鹿馬鹿うっせうっせうっせ!!!!
俺様だってちゃんと考えてるんだっつの!!!
離れた所で叫んでるアリセアと、何か知らんがひっついてきたあの子供!つかなんでついてきた!?
まぁいい…俺様こそ世界に必要とされている男!! 世界に応える為に生半可な鍛錬じゃいけねぇんだよ!!!
天才!? 異才!? クソくらえ!!!
そんなモン必要ネェ…俺様に必要なモンは唯一つ!!!!
「俺様だけだぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!!!」
「何わけ判らない事いってんのよ馬鹿ぁぁぁぁぁぁああああっ!!!」
「・・・ばか・・・っと・・・おぼえた」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁァあああああああああああああああっ!!!」
思わず叫んだ言葉でバランス崩したのか、激流に飲まれて下流に流されていく俺様!!
…手がつかえねぇぇぇぇぇえええええええっ!!!!?
やばった! 思わず居るはずも無いニーチャンに助け求めたくなったが居ない事に気付いた!!
そのまま岩か何かに激しくぶつかりまくり流されていく。 やばった。まじでやばった!!
「ん? 雨が晴れてきたな…ておい!?」
「あら…雨が…ってオオミ!?」
雨雲が晴れ渡ると同時に、俺の頬を激しく立て続けに打ち付ける音が街に鳴り響いた。
なんで? 何もしてないよね? そう思いつつ…余りの攻撃力に俺は気絶した。
二十一話。最後まで読んでいただいてありがとうございます。
シリアス一辺倒かとおもいきや…やはり作者は作者だったと。
今回は視点の切り替えの練習もかねております。