第二話「街へ」
どうも汐崎です。引き続きアルセリア幻想記、二話を投稿致します。
早速お気に入り登録をして下さった方、そして思っていた以上にアクセスが多く、驚いております。どうもありがとう御座います。
軽く読める範囲で一話一話をおさめて、続けていきたいと思います。
では、長い目で見てやって下さいませ。
今まで吸った事の無いような澄んだ空気。都会だとまず吸えないだろう。車の排気ガスやらに汚されてなさそうな空気。
生い茂った木々。そこから零れ落ちる幻想的な光のカーテン。なんとも美しい。
結構な田舎なのかそう思いつつ、俺はメディに腕を引っ張られつつ森の小道を進む。
その間何か喋っているようだが、全く判らない。意思の疎通が困難という事、これが一番問題だ。
俺は悩みつつも、連れられるがままついていく。新鮮さからか見飽きない森の小道。
ふと目に入った鳥。明らかに図鑑ですら見たことの無い鳥。妙にトサカが長いわりに尾が短い。
青と白の入り混じった綺麗な羽毛。不思議な事にこちらをジッと見ているどころか、近寄ってきたのだ。
そして、メディに何か話しかけ、メディもまた返事をしている…おい。鳥が言葉喋るのか。
明らかに意思の疎通が取れている。そしてその喋る鳥が俺の方を向いて、足元からじわりじわりと品定めをするように見ている。
鳥に品定めされる俺。何か凄い不快感を感じなくも無いが、取り合えずその鳥を鷲掴みにしてみたわけだ。
「ギャー!」
…叫び声は聞き取れたが、その後に何か怒った様に身を震わせて、ご立派なトサカを立てている。当然か。
軽く謝罪のジェスチャーをして、事を治めた。
そんなやり取りを見てメディは、小さい両手を口に当て笑っている。ふむ…。か わ い い じゃないか。
耳がちょっと人間じゃない所を除けばかなりの美少女。胸やらは今後の発育に期待という所だが。
しかし何て格好だ。襟だけしかない妙な首元のチョーカーのような服に青いネクタイ。 肩と胸元が露出した白い服装。
胸がおっきけりゃ見栄えもするだろうが…残念だ。スカートも丈は短くちょっとうこけばパンツ見えてしまうぞこれは。
それに…、なんか皮製の靴を履いている。明らかに日本で履く様な物でもなく、ファンタジーっぽい靴。
それはいいとして、その鳥に何言ってんだ。気になるな。会話が終わると、鳥が軽く右の羽を腹に当てて一礼し飛び去る。
一礼する鳥ってなんだよ?もうわけわかんねぇ。
そして再び腕を引っ張られ美しい森の小道を進んで暫くすると、道が開けた…というよりは崖っぷちになったようだ。
その崖っぷちに連れていかれ、俺はそこからの風景に驚愕した。
そこから見下ろすと割りと近い所に大きな街。星型に象った壁、その中にレンガか何かスペインの町並みに近いものを思わせる建物。
その中央に一際どでかい建物。城ってわけでもないが、妙にそれっぽくも見える。行って見ないと流石に判らないな。
しかし、凄いな田舎かと思ったら都会なのか、見た感じ機械というものが見当たらない。文明的に科学というものが無いのか?
澄み切った空気も相まってより一層その景色が美しく見える。あんな遠方まではっきり見えるなんて日本じゃそうそうない。
その景色に心を奪われている俺を見て、メディは何か自慢げに話しているが全く判らない。
住んでいる街を自慢したいのか、気持ちはわからんでもない。コレほど綺麗な所に住んでいるんだ。自慢の一つもしたくもなるだろう。
一人で納得している俺の腕を掴み、崖から少し外れた所に降りる道があり、そこへと俺を引っ張っていった。
段々と景色が下がるにつれ、街も近づき、その街の美しさと巨大さに驚く。
20分ほど降りるのに掛かった所をみると、あの崖自体も相当大きいものだったと理解した。
次に目に入ったのは、これまた澄み切った水が流れる川。幅は20mという所か、水深は底が見えているのでそこまで深くは無い様だ。
しかし水色。まさに水色といわんばかりに澄み切った透明度の高い川。魚も泳いでいる。釣りでもしたらさぞ楽しいだろうなこれ。
っておい魚、川魚の癖に飛び魚みたいに飛んでやがるだと!? 何かこの魚、絶対陸に突っ込んで戻れなくて死ぬように思えてきた。
そんな川に気を取られつつメディに腕を引っ張られ街へと進む。
ついに街へとついたわけだが、体感時間にして約1時間と少々だろう。空の太陽の移動を見て…ん?何か太陽の他にデカい星が二つあるな。
月か?月なのかわからんが取り合えず、月っぽいのが二つあるな。明らかに地球では無い事は判った。
そしてそのまま視線を下に移すと、街の壁が視界を塞ぐ。 これまたデカい。というか、こんなのどかな所になんでこんな城壁みたいな壁が。
そして、彼女と共に壁の入り口らしき所へと。どうやら向こう側にいるであろう門番に声をかけているんだろうな。
そう思った瞬間、ん?良く見たら倒れてくる様に見えない門。門というか紋?何かこう紋章みたいなものがあるだけっておお!?
俺とメディは気が付いたら壁の内側に移動していた。な、なんだ何があった!?さっきの鳥といい不可解な部分が多々ある様だ。
そんな驚く俺を見て笑いながら、腕を掴み街中へと連れて行かれた。うん。美しい。これしか言えない。
地面はレンガだろう赤茶けたブロックが敷き詰められ、建物もレンガらしきもので築かれている。
無駄に大きいパンが入った紙袋を抱えているオバサン。いわゆるチェインメイルだろうか。それを纏った騎士っぽい人。
行き違う人々を俺は物珍しく見入って歩き、一際大きい屋敷の前へと連れてこられた。
中に入ろうとする所から察すると、ここのお嬢様か。とりあえず寝泊りする所の心配はなさそうだと安心する俺。
腕を引っ張られ赤茶色のレンガで築かれた白い屋根の屋敷の中へと入る。
そうすると、メディの爺さんか?年老いた爺さんが待っていた。良く見ると、肩にさっきの鳥がいる。成る程。
「ただいま、お爺様」
「お帰りメディ」
私は、オーミを連れて家まで戻ってきた。お爺様にはアリオに先に伝えて貰っていたので、事情は伝わっている筈よね。
「その方が、メディのリンカー足り得る者…か」
「うん。魔神阿修羅に縁を繋いで貰えたんだから絶対にうまくいくよ!」
私は嬉しそうにお爺様に言い返した。アリオは少し茶化す様に私にこういってきた。
「あ~メディ。オイラにゃちょっ~っとそうは見えないんだけどねぇ。なんて~か、そう。頑丈そうだけど精神力なさげ?」
私はムッとしてアリオのトサカを摘んで引っ張った。
「あいだだだだだだだだだだだだっ!」
「これこれ。ともすれば、先ずは言語じゃな。どうしたものか…」
そう、悩み所は意思の疎通が出来ない所。どうしようもないのかしら…。
悩んでいる私とお爺様を見て、アリオがこう言った。
「早速こいつの深層意識と繋がってみれば、言葉が判るかもしれないじゃん?」
「ふむ。それも一理あるじゃろうな。術者が媒体となったリンカーと精神が繋がればある程度の記憶の共有も行われる。
ただ問題はこの方が耐えられるかどうか」
確かにそうね。でもちょっと不安かも。
「まぁ、急く事もあるまいて、今日はゆっくりとして頂きなさい」
「うん、そうだねお爺様」
私は、再びオーミの腕を掴み、空いている寝室へと案内する。
「お、おい今度はどこに連れてくってんだ」
何か相談が終わったらしく、またまた腕を捕まれ、俺は引っ張られていく。
高そうな石像、壷が飾られ、赤いカーペットの敷かれた広く長い通路を歩く。
物珍しそうに、あちこちを見ていると、メディがこちらを向いて笑っている。
…何かおのぼりさんみたいに思われて無いか?俺。
メディの足が止まり、ジェスチャーで金縁の赤茶色の扉の前で、ここに入るようにと手振りをしている。
ああ、泊まる部屋をあてがってくれたのか。そう理解した俺は、さっそくその豪華な扉を開けてみた。
先ず目に入ったのは、キングサイズのベッドに豪華な天蓋までついている。こんなベットは初めてだが、
メディが寝ると絵になるんだろう。そんな感じのベッド。そして、洋服を仕舞うドレッサーらしきもの、テーブル・椅子。
おおよそ、普通に暮らす為にある物が大体揃っている。それも木製で外から覗く自然と合っていて素晴らしい。
自然を眺めつつ優雅にお茶すれば、さぞかし気分が良いだろう。俺は部屋に気を取られていたが、ふとメディに意識を戻した。
また何かジェスチャーをしている。ふむ?…右手を左から右に円を描く様にして、その後両手を重ねて頬に当てて、目を閉じた。
後半は判る。ここで寝泊りしろつてことだろうが、左から右に円…ああ、太陽。今日はここで寝泊りしてくれってことか。
理解したと、大きく頷きメディに伝え、それを理解したのか、メディは笑ってこっちを見ていた。
まぁ、なんつーかあれだよな。外人と言葉が判らないのに必死で意思疎通しようとする。そういう面白みを感じなくも無い。
が、やはり早い所言葉を覚えたい所ではある。早くこの世界の事も知っておきたい所だしな。
さっそく豪華極まりないベッドにダイブしてみた。
子供っぽいが、こんな馬鹿デカいベットを見るとやりたい衝動を押さえきれない様だ。
ばふっとベッドに飛び込んだ俺に、ふわりと羽毛か綿か判らないが、柔らかい感触が出迎えてくれる。
これはやばい、気持ちよすぎるベット。そんな俺を見てまた笑い出したメディ。そんなに珍しいのか。
そして、ベッドで子供みたいにゴロゴロしている俺の横に座ってきたメディ。
…なんだよ押し倒してしまうぞ無防備な!と、流石にそれはやばかろうと押さえてメディの方を見る。
「本当、色々と君の居た世界と違うみたいだね。何もかもが新鮮そう。
今はゆっくりしておいて、明日、人である君の深層に眠る魔を繋いでみよう。そうすれば上手くいけば言葉も判るかもしれない。
ようやく私にもリンカーが現れたし。それも異世界の客人…その深層に他には無い力がある事を祈っているわ。
私も、そう。異才故に相方が見つからず苦渋を舐めてきたし、それも明日までであって欲しい。」
オーミは私の言葉は判らないのか、私を見つつベッドの感触を子供みたいに楽しんでいる。
本当、楽しみ。私も…。
私は、部屋から出ようと、無邪気にベットで戯れるオーミに一礼して、部屋を出た。
そして、お爺様のいる先程の広間へと戻ってきた。
「案内はすんだかい?メディ」
「うん。子供みたいにはしゃいでたよ」
「ハハハ。それはメディ。お前も一緒じゃよ。お前のその笑顔。はてもう何年も見ておらなんだからな」
その言葉に私はハッとした、そういえば、相方が見つからず、学業も滞り焦りはあっても楽しむ余裕なんて無かった。
そっか、私も気付いてなかったけど、オーミの様にはしゃいでたのね。
「珍しいね!メディが笑うのは本当珍しい! 明日は魔物でも襲ってくるんじゃないか!?」
「縁起でも無い事いわないのアリオ」
アリオのトサカを再び摘んで引っ張る。
「ンギャーッ! 痛いっ千切れるっオイラのトサカーっ!」
ようやく、何年ごしかの願い事が叶いつつもあり、彼と同じく私も心が踊っていた。
大丈夫。今度はきっと上手く行く筈。魔神阿修羅が繋いでくれた縁だものね。
そして、今まで必要とされていなかった私の力。異才。数居る繋ぐ者の中で深層意識のさらに深い部分を目覚めさせる力。
それが世に必要とされた。そう思っていい筈。だとすればこれから何か良くない事が起こる。そう取ってもおかしくは無く。
その不安は、その夜に的中する事になる…。
第二話 最後まで読んで頂いて有難う御座います。
今回は街のある程度の風景等を出していきました。
作品の主人公とヒロインの力などに関しては、次話あたりからじわりじわりと出てきます。
では。