第十七話「イグリス防衛戦Ⅳ 戦乙女の誇りと馬鹿の驕り」
十七話目の投稿となります。
ここから第一幕の終了へと向かいます。
「ぜっ…は…ぁっ…!」
「…やはり辛そうですね」
「それはそうよぉ…そもそも…」
「こんなもの考える事自体正気の沙汰じゃないわよねっ!!」
「気が…散るか…らっ」
相変わらず…きついですわ。
…外部連結接続…存在している魔族をリンカーフェイズしたリンカーに更にリンカーフェイズ…更に・・・
しかも…リカルドじゃ…耐え切れ…ないっなんてっ…もうっ。
「い…きますわ・・よーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
「しっ…心拍同期・・・外部連続…接…続!
主をリ…セルに・・・無限連鎖!!」
「くっそ!やっぱ通常じゃ歯が立たないな!!」
「オーミ!右から来てる!」
「にゃろめ!!」
俺は、倒し損ねた左の森、残り18人のリンカーを相手にしている。
流石に単純な力の差が激しい所為か、まともなダメージを与える事が出来ずに戦っていた。
そして今まさに多対一でフルボッコ寸前! 攻撃を右からマトモに食らい地面を削る様に10m近く吹き飛んだ。
「あちちちちちちちちちちちっ!!」
「ちょっ…煙でてるよっ煙っ」
どうやら余りの摩擦で羽毛に火がついた様だ。
俺は体を地面に擦り付けて取り合えず鎮火した。みっともない。
「なんなんだ一体このリンカーは」
「判らん。先程は途方も無い力をぶつけて来たかと思えば、攻撃力防御力の欠片も無い」
「その上、戦い方がまるでなってない」
「イグリスは一体何をやっているのだ?」
散々な言われ様だ。
然し!これこそが孔明の罠と言えよう。相手を油断させる事もまた兵法!
そして三十六計逃げるが勝ちだ!!!!
「アホーっ!バーッカ! おまえのかーちゃんデーベーソーっ!!!」
「オーミ!?」
俺は敵に尻を向けて叩き出した。
うっ…メディの視線が痛い。敵の視線も痛い。…しかし相手の冷静さを欠かせる事が大事なのだ。
経過ではなく、結果が大事なのだよチミィィィィィィィ!!!
「我等を侮辱しているのか?」
「取り合えず目障りだ」
「先程の力もある。早々に排除しておくか」
よしよしそうだ。それでいい。
俺はメディに小声で囁いた。
「メディ。俺が合図したらリンカーフェイズだけ解いてくれ、
そしてさっき見つけておいた二つの生物に立て続けに変わるぞ」
「え・・・?う…うん」
俺は、翼を羽ばたかせ、地面に風を叩きつけて飛び上がった。
「おーら!テメェ等の翼は飾りか? ん~?」
「早々に殺そうか目障りだ」
よーっし。取り合えず飛べそうなリンカーが10人。こいつら纏めてやっちまえば、後は俺が有利だしな。
つか右側がやけに静かだな。様子見てるのか? 俺の力が不明だからだろうか。
まぁ、いくらでも引き出しあるからな。探りいれても無駄無駄ぁっ!!!
俺は10人のリンカーを連れて高く飛んだ。
コッチのが機動力は上だったのか、追いついてこない。
まぁ、嬉しい誤算。こいつは良い。
「良し、この辺りでいいな! メディ解除だ!」
「え?あ、うん」
その瞬間、影に包まれて落ちているんだろうな!判らんけど。
取り合えず急いでアイツの所だ!!
メディを抱き抱えて俺は急いだ。
「ちょっ!! オーミ!?」
「ちょっと辛抱してくれ時間がやばい!つか思わず触っちゃってる小さいお尻柔らかくてきもちいいーっ!」
「ばっ馬鹿!!!」
ぎゃーっ!また殴られた。 っとこんな事をしてる暇では無い。 お、いたいた!
「良し、こいつと繋いでくれ!」
「いっいやぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!」
「ええい! 贅沢いわない!コイツは見た目も凄いが力も凄い!!」
「う…うん」
「心拍同期…接続確認…主をオーミに…魂連発現!!」
「・・・? リンカーフェイズを解いたぞ?」
「自殺する気か?」
「・・・っ!? 姿が!? どういう事だ!」
「複数のリンカーフェイズが使えるだと!?」
影が晴れて。というよりも、影から抜け出てきたのは、ヒーローとかそういうものとは程遠い。
ピッタシに言うなら怪人蜘蛛男。スパイダーマンみたいなのがいいんだけどな!
贅沢は言えない。見た目もヤバいので早い所解除したいがまぁいい!
「食らえ!」
口から蜘蛛の糸を吐き出して、着いてきたリンカー全員蜘蛛の糸で纏めてからめとった!
「なっ何!?」
「なんだこれは!?」
「切れんだと!?」
「よしゃ!メディ解除!」
「きもちわるいよ!! っと…う、うん!」
からめ取った奴等の上に乗り、再び影に包まれる。
「こいつっ…また姿がかわるのか!?」
「ちぃ…イグリスめ!こんな化物を作っているたのか!」
「く…絡まって身動きがとれん!」
そして再びリンカーフェイズして戻ってきた俺達。
「オーミ・・・ブサイク・・・」
「うるへぇっ!!! パワーならこいつが一番なんだよ!」
「でも…なんかオーマが毛むくじゃらになったみたい…」
「ゴリラ馬鹿にするとゴリラに泣くぞ!!」
「意味わからないよ!」
「貴様…何者だ!?」
「あん!? テメェに名乗る名などは無い!」
じぃぃぃぃぃんっ。一度言ってみたかったセリフが言えた喜び。しかしゴリラでこのセリフはどうなのかと。
まぁそれはいい。切れるはずも無い蜘蛛の糸を必死で切ろうと、絡まって力も入らないのに必死で足掻くリンカー達。
「よっしゃぁ!いくぜ俺式魔法!ゴリルーラ!!!!」
落下しながら蜘蛛の糸の先端を掴み、ゴリラの単純な腕力でぶん回す!
遠心力に耐え切れなくなったのか、絶叫しながらそのまま糸が切れて遠くにぶっ飛んでいった!
「よっしゃ!さっきの鷹にもどるぞ!」
「すごっ…あ、うん!」
三度影に包まれて、落下していく。地面まではまだ余裕あったはず!!
再び鷹とリンカーフェイズして、風を捕まえてホバリングする。
「ふう~…ぶっつけ本番だったが巧くいった!」
「な…何かオーミの世界の動物って凄いんだね」
「まだまだ面白い奴が沢山いるぞ。シアンさん達みたく姿を見えない様にする奴やら」
「え。そんなのも?っていうか…あれまさか!」
「ん? うげ…またあの魔法陣かよ!!!」
遠くに見えるのは忘れもしない、あの魔法陣。厄介なものがまた!! どうする。
動物の中であれを吹き飛ばす程の・・・
「大丈夫だよ、今回はリセル達が本気出せるから」
「ん?ああ、そいや限定的だが条件が揃えばこの国で最強とかいってたよな」
「うん」
「どんな風に最強なんだ?」
「えとね…ん・・・リンカーに更にリンカーフェイズするの。
そして更にまたリンカーフェイズ・・・」
「なんだよその無限コンボ!!!!」
「リセルはね、繋げる事の天才なの」
・・・力は並っていってたもんな。繋ぐ者として力は並。それを努力で補ってるかと思ったら。
成る程。常識、それを覆した。確かに覆してるっぽいな。
「それは判ったが…リンカーにリンカーフェイズするって具体的にどういう?」
「んとね。心臓の音っていえばいいの?あれを同じにするのだけど・・」
「ああ、心拍数を同じにする。言うのは簡単だが普通出来ないと思うが」
「うん。それを、複数同時に聞き分けて全て同調させるの」
「…アイツは聖徳太子か!?」
「しょうとく…たいし?」
「ああ、俺の世界の偉人だよ。何人だったか忘れたが、
大勢が同時に別のこと言ってきてそれを聞き分けて正確に答えた人間だよ」
「う…うわぁ」
「成る程な。そっち方面の天才って事か。
確かに理論的にはそれが可能なら、同時に複数の生物とリンカーフェイズできるな」
「うん。それで魔力をリンカーは使えないよね?」
まだリンカーフェイズ終了してないのか、
やたらデカい影の方を見ているメディ。見えて無いんだろうが視線と位置はあっている。
あ~、成る程。魔力を使えないから、外部から魔力を使える生物。魔族を取り込むってことか。
・・・ん?まてよ。
「いやまて、それが理論的に可能なのは判ったが。フェンリルみたいなモンだろもうそれ」
「うん。シアン義姉さんも使いこなせれば、神と互角にやりあえるかもっていってた」
「そりゃ繋げりゃ繋げるほど強くなるからな。いや問題はそこじゃなくて…」
「うん、わかってる。物凄い精神力が必要でリカルドさんじゃ耐えられないの」
「んじゃディエラさんかオーマか?」
・・・オーマは見たくないな。
「ううん。その二人でも無理だったの」
「んじゃまさか…リセルが? 繋ぎ止めつつ、あの力の狂気の渦に耐えるってのか?」
「うん。ほら、リセルもシアン義姉さんに鍛えられてるでしょ?」
…フェンリルの力に軽く飲み込まれたからな俺。
そこまでは及ばない力だったとしてもだ。 それでも相当な力の筈。
それを心拍数を聞き分けて同調させながら、アレに耐えて戦うのか?
・・・どんな鍛えられ方されたんだよ。つか、まぁ判らんくも無い。
あの無駄に高いプライド(ツン度)が支えてるのか。責任感も強そうだしな。
…デレたら使えなくなりそうだなおい。ツンデレじゃなくてツンのまま終わりそうだぞ。
「成る程。良く判った。…お。出てきたぞ…ってウホ!!」
「…見ちゃダメ!!!!」
いきなり俺の顔に被さる。というか張り付いてきたミニマムメディ。
だーっ邪魔! 今なんかすげぇイイモン見えた気がしたから!離れろって!!!
必死で張り付いているメディを剥がそうとするが、
カブトムシを指にひっつけるとたまに物凄い力で張り付いて離れない時がある。
あれを思い出す程の吸着力で…いや吸ってないが。まぁそんな感じで張り付いて離れない。
「ちょっとメディ邪魔っ今っ。青白いが見事な尻がっ裸がっ!?」
「オーミの変態バカスケベ!!!!!!」
がーっ見たいっ見れないっうがーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!
「ぐ…ぅ。 はぁっ…はぁっ…」
「早々に決着をつけないといけませんね」
「そう…ねぇ…。リセルがもたないしぃ…」
「ほんっと美しいわっ!」
…正直、一分と持ちそうに無いですわ。小さくなったリカルド・ディエラ・オーマを気にしている余裕も無いわ。
私は転移で遥か上空の魔法陣の真下まで移動した。
「対神空間圧縮魔法いきます…わよ…」
「相変わらず便利ですね。ってリセルさん?…アレはまだ!!」
「ふふ…便利でしょお? でも使いすぎると太っちゃうわよぉ? 運動不足で…。
あら? 使える様になったのかしら? いいわよぉ・・・?」
「うふんっ! いいわよっ!? そこまで必要無いと思うけどっ!」
魔法陣に右手をかざす。
ディエラの魔力が右の掌に収束し、空間が歪む。
歪んだ空間が渦を巻き二つの渦となり魔法陣を挟む様に囲む。
「いきます…わよ」
「ふふ…頑張りなさい…」
渦に挟まれた空間が更に激しく歪みだし、雷と風を伴い荒れ狂う。
荒れ狂う風が雷を伴い更に激しさを増す。
「ぐ…ぅぅぅぅっ」
「ほらぁ…もう少しちゃんと…優しく包みなさい?」
最早巨大な双竜とも竜巻とも呼べるソレは、更に激しさを増し巻き起こる。
ソレはあらゆるモノを捕らえ決して逃がさない風と雷の牢獄。
「・・・・・・・」
「いいわぁ…優しく…抱きこめたわねぇ…」
「さぁっ! 次はワタシの出番ねっ!?」
次に左手もかざし、オーマの魔力でその荒れ狂う竜巻の牢獄を空間ごと高密度に圧縮する。
「ぅうっ・・・」
「そうよっ!激しくっ!そして力強く抱きしめる様にっ!」
二つの巨大な魔力に押され耐え切れなくなったのか、高度が下がりはじめる。
「もうすこしよっ!?」
「ほらぁ…耐えてがんばりなさい・・・」
「相変わらず途方も無い力で御座いますね」
「当たり前よんっ! ワタシ達これでも上級魔族よっ!? 伊達に長生きしてないわっ!!」
「その二つの魔力…空間を捻じ曲げて高密度に圧縮するとどうなるか…」
「全てのものを儚くっ!!そして美しく粉砕するわぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」
圧縮された空間が、黒い塊となり小石ぐらいのサイズまで小さくなり一変して静寂が訪れる。
「今よ!!! 解き放ちなさいっ!」
「う…うぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああっ!!!」
高密度に圧縮された空間。一気に魔力に押し飛ばされる私達。黒い塊が一瞬に圧縮から膨張へ。
その反動とエネルギーが、最早や衝撃波の様な轟音と共にいくつもの巨大な空気の円を描き、
空間を波立たせて上空の雲と魔法陣ごと地平の向こうへ吹き飛ばし、遥か下にある学園の一部をも吹き飛ばす。
その瞬間、リンカーフェイズは解け、私は気絶し、リカルド達と落ちる。
「あらあらっ! 気絶しちゃってるわねっ!」
「でもぉ…以前は使えなかった対神空間圧縮魔法…使える様になってるわねぇ…」
「ですが、これほどの力を使用する必要があったのでしょうか?」
「うんもうっ!リカルド? わからないのかしらっ!? 純な乙女のハートをっ!」
「と…申されますと?」
「あのボウヤにぃ…負けたくなかったのよぉ? 何年も先に戦い続けてきた戦乙女の誇り…かしらねぇ…?」
「成る程! 確かにオオミさんはまだ新米。然しながら新米の身にしてあの力。
負けず嫌いというべきでしょうかね」
「そうとも言うわねっ!」
「でも…その誇りが支えて…人間・魔人で…。今まで誰も成し得なかった…
神の魂を粉砕し得る力を手にするまでに至った…。
並み居る魔族…上級の者でも、振るえる者は一握り…そう、魔王と呼ばれし者。
…人間…それよりも体力の劣る魔人の身でね…」
「い~えっ!違うわディエラっ! 魔人だからこそっ耐えられたのよっ!
これは楽しみだわねんっ! 魔人誕生より長い年月が経ったけど、誰一人として成し得なかった大快挙よっ!?
まっ!まだ実践では使えないレヴェールっ!だけどねんっ!?」
魔王…、上級魔族の中で神と対等に渡り合える力を持つ者。その領域に魔人のリセルさんが届きつつあると。
全く…どこまでも無茶をする方で御座いますね。
私と、気絶したリセルさんは、二人に抱きとめられて、半ば半壊した学園の上部へと降り立つ。
「ありがとう御座います。以前より気になっていたのですが、神の身では無く、魂…で御座いますか?」
「これくらいお安い御用よっ!」
「そうよぉ…神は再生能力を超えた復元能力を備えているからぁ…」
「肉体的なダメージはほぼ無意味なのよっ!! まぁっその復元能力を超える物理的ダメージっ。
そんなモノが存在するなら別だけどねんっ!」
「そう…そして対魔法障壁もあるからぁ…」
「アレを空間にではなくっ! 直接攻撃と共に神の体内で瞬時に発動させるのよんっ!!」
「そうしないとぉ…復元能力に阻まれてぇ…魂には届かないのぉ…」
「だっかっらっ!まだ実践では使えないレッヴェールっ! なのよんっ!」
…再生能力を超える復元能力。理解の範疇を超えておりますね。
どんなものかすら想像出来ません。
然し、ついにリセルさんも自分の限界を超えた様で御座いますねぇ。
幼少の頃より見続けておりますが…天才。確かに天才。
然し、国の皆さんは繋げる力の才能や、発想能力の才能と申されておりますが…違います。
私は、彼女に才あるならば、こう言います。無茶をする才能と…。
そういえば、ガット君達が気になりますね…彼等はまだまだ戦闘経験も浅い。
彼の戦闘センスは会長も一目置いている様ですが…。 連携というモノを知らない。
いや、全く必要としませんからねぇ。言う事も聞きませんし、困った者です。
私は、視線をガット君の方へと向ける。
<ドォォォォォォオオオオオオオオオオオッ>
「なっ…何あれ!?」
「うわーっ!俺様より激しく目立つなっ! ってーか・・・・」
俺様は敵の真ん中で街の中心遥か上空。
雲が全て吹き飛んだ空へと向けて大きく仰け反った!
「かッけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええっ!!!!!!」
「もうバカ!! あそこにさっき魔法陣出てたけど、雲も何もかも一瞬で消し飛んだわよ!?」
「イグリス…一体どれ程の力を隠しているのだ」
「私達で攻め落とせるの…か?」
「情報が入った。北の半数がたった一人のリンカーによりほぼ壊滅!」
「なんだと!?」
あん!? ああ、あのニーチャンか!!
やるじゃネェか! 俺様より目立つとはっ!!!
伝令かなんか知らんリンカーが飛んできてそう言ったのを確認して、俺様は叫んだ。
「ハッハー!! テメェ等!良く聞け!!!」
「ちょっと!またバカな事言うんじゃないでしょうね!!」
「なんだ…またあの子供か」
「気をつけろ。見かけや振る舞いに騙されるな」
俺様は敵の攻撃を食らいつつ仰け反って叫んだ!
「北の半数を壊滅に追いやったのは! 戦闘経験の無いただのド素人のニーチャンだ!!!!」
「ちょっ! 何言い出すのよ!!!」
「知りたそうだから教えてやってんだよ! 俺様は敵が全力出せないと困る!!」
「ばっ…馬鹿!!!」
「素人が…北の本隊を…?」
「小僧!それはまことか!」
更に攻撃を受けつつ仰け反り下の方にいる連中に向いて叫ぶ!
「おうよ!! しかしただの素人じゃないぜぇっ!?
伝説の魔神阿修羅のニーチャンだ!!!!」
「ちょっちょっと違うんじゃないの!?」
「似た様なモンだ!!」
「ちっ違います!! 異世界からの来訪者のお兄さんなんです!!!」
「訂正すんなよっ! コッチのが格好良いんだぜ!!」
「バカもう!!!」
敵が驚いた様に北を向く!
「異世界の者だと!?」
「イグリスめ…そのような者を抱き込んだか!」
何か俺が空気になってきた!許せん!!!
「ハッハー! オラオラオラ! 悩みスッキリ解消しただろ!
アイツとやりたきゃとっとと俺様を倒すんだな!! 雑魚どもが!!」
「ばっバカ!そんな煽ったら!!!」
「小僧貴様…子供だと思い手加減していれば図に乗りおって」
「望みどおり全力で相手してやろう!」
血相を変えた周りの奴等。それも腕に自信のある奴等が着やがったぜ!
30ちょいってとこか。ここにいる奴等は。少ないな!
まぁいいか!! 師匠の教えその1!!!
被害を先ず己のみに集中させて、援護側に周囲を取り囲ませて陣形を作る!!!
「オラオラオラッッッ!!! どうしたどうしたぁぁっ!!」
俺様は火玉を相手に向けて吐き出した。
「ドラゴンのリンカーか! どうりで防御力の高い奴!」
「気をつけろ。 攻撃力も侮れないぞ」
「チッ…気をつけろ!あの火玉に防御は通じない。味方が何人か融解したぞ!」
「くそっ! 人数でも押されてい・・・何!?」
はっ!ようやく気付いたか!馬鹿が!
師匠の教えその2! 陣形で取り囲んだら更に敵を掻き乱す!!
「今頃気付いたか!! ド素人どもめ!!」
「え…あ、あれ!? いつのまに! ガット…あなた見かけに寄らず…」
「ちぃ…ガキと思って周囲に気を配っていなかったわ」
「やばいな…仕方あるまい…」
「貴様、やるのか?」
「ああ、こうなれば…頼んだぞ」
「判った」
ふん!そうくると思ったぜ!!だが!それこそ俺様の手の内で踊っているのだ!
囲んだ20数名のリンカーの内、10名近くが禁じ手に入った。これで半分は暫く動けネェ!
師匠の教えその3! 相手の冷静さを奪い、大技を使わせてその隙を最大火力で叩く!!
「ちょっ!アレやりだしたよっ! どうするの!?」
「黙ってろ!! オラオラ援護に来た俺様の引き立て役どもぉぉぉおっ!!!」
「相変わらず傲慢というか自信過剰というか」
「だけどまぁ…、会長に従えといわれてるからなぁ」
「だな。確かに形勢も有利。 言い方は別として、あの防御力。リーダーをやるのには適している」
「性格だけなんとかならないのかな」
「無理だろ」
「おら! そこの奴等無駄話してんじゃねぇ!! とっとと囲んだ奴等やっちめえ!!!」
「ちょっとガット!! 先輩達なのよ!?」
「うるせぇ!!」
「バカ!!」
俺様は包囲網から外れ、地面に降りてリンカーフェイズ・アナザーを使い、変異し続けている奴等の前へきた。
「どうするのよ! この再生能力を上回るこうげきりょ・・・ちょっとまさか」
「おうよ!! 同質の力でぶっ飛ばす!!!」
「会長にダメっていわれてるじゃない!!」
「いいからやれブス!」
「ブッ…また言ったわねバカ!!」
「だれがバカだこのドブス!!」
「ドッ…もう…怒ったあんた何か死ねもう!!!」
「おう!景気良くやってくれ!!」
「もう知らないからね!!!! 後で会長に殺されても!!」
リンカーフェイズ解除…再解析 逆転開始!!
主を…ワイバーンに…」
「キタキタキタキタぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!!」
「魂連逆転!!」
「ここですか。 全く判りにくい所に。…おや先着が居る様ですね」
私は、学園の地下に隠された巨大な一室。 そして敷き詰められたタイルとその上に浮かぶ魔法陣。
そして、その中央にある石像。その前に立っている一人の老人。
白髪、そして胸まで届く長く蓄えた白い髭、薄緑のローブを着た老人に目がいく。
「これはこれはセオ様」
「やはり、ここに用事があったのだな。ケルド…いや、レガートの使い」
「おや、ご存知で御座いましたか。 早々に処分すればよかったものを…」
「無茶を言う。 お主を倒せる者なぞ今までおらなんだわ」
…今まで。 あの異界の青年の事ですか。
そこまで力をつけたと? ふ…馬鹿な。
「あの青年の事ですかな? セオ様」
「いかにも」
「寄る年波には勝てませんか…。モウロクしたモノで御座いますね」
「それは、ワシを倒してから言うと良い」
「…竜族の頂点。力と知を極めた竜。双極竜セオ。 一度戦ってみたいと思っておりましたな」
「極めてなぞおらぬ。求めているだけじゃ…。今もな」
少々厄介ですね。 じきにセオの娘まで来るでしょうし。そうなれば流石に手に余る。
早々に排除してしまいましょうか。
「ふ…老いたりとても竜。 その力。知恵。…油断や遠慮は致しませんよ?」
「舐めてくれるな若造が・・・」
「では、参りますよ!!」
「・・・ん? この感覚。あの馬鹿! 使いやがったわね・・・。
後でおしおきが必要のようね」
・・・! あの部屋から…! まさかオヤジ!!
オヤジが戦う程の…神族の生き残りか!!
アタシはあの部屋へと急いで走り出した。
全く! もうまともに戦える年齢じゃないってのに…。
ホントに手間のかかるのが多くて困るよ!!!
十七話、最後まで読んで頂いてありがとう御座います。
大体のキャラの設定が表に出て参りました。
次回から更に別のキャラ・アイテムの設定も顔を出してきます。
設定出すだけで話数どれだけ使うんでしょうかね!本当に。