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第十三話 「精霊セアド」

十三話目の投稿となります。 

 今回で色々と伝えられていた部分の別の解釈が出てきたりします。


月明かりが木々から零れ落ち、あたかも光のカーテンの様に、森の薄い霧が映し出す中。

 完全に硬直した俺と、無防備に寄りかかってくるメディの二人だけ。

次に起こる何かで俺が死ぬ様なフラグに見えなくも無い現状。

 …在り得る。何か主人公殺して進む展開になりそうな予感がするぞ!!!!

  絶対死んでやるもんかよ。知略の限りを尽くしてフラグを避けてやる。


  「…そろそろ戻ろうオーミ」

  「ん?あ、ああそうだな」


うわ~、不服そうな顔してる。やっぱあれか?抱きしめた方がよかったか? 

 いや、俺が動けなかったわけなんだが。どうしようもないよな。次の機会に回そう。そうしよう。

俺達は、ディエラの住む家へと戻り、ほんのり明るい光が、ディエラの家を暗闇から浮かばせている。

 どうやら完全に木造建築。日本に昔からあるようなタイプでは無く。

 板やらを重ねて建てた・・・ん。あれだ!アルプスの少女に出てくる様な家を連想させられる概観をしている。

 少し違うのは、妙に歪んでいる。設計とか無しに造ったという感じの家だ。

しかし!それだけに赴きがあるというか、味があるというか。まぁ住んでみたい家にランク入りしそうだ。

 その中に、入っていくと、リセルやリカルド・ゼメキス・ディエラ…姐御は?

 良く目を凝らして見ると、奥のベッドで既に寝ていた。 疲れているのか、それとも余分な体力を使わない性格なのか。

 まぁ、それよりも目が次にいったのが、これまた形の悪いテーブルに並べられてる料理。

 料理っつーか、材料まんま?に例のパン。スティック型で齧るとバキッと硬く、口の中で柔らかくなるアレだ。


  「ようやくきましたわね。早くきなさいな!もうお腹すいて倒れそうですわよ」

  「さ、夕食をいただきましょう」

  「はやく~…僕もう限界」


ああ、待ってたのか。そりゃスマン事したわな。

  !? 俺はその瞬間、後ろでは無く前に飛びのいた!


  「…あらぁ。勘が鋭くなったの・・・?」

  「一度見た技は通用しないっス!」

一度言ってみたかった某セリフ。

  「そうかしらぁ…?」

  「え?」


ディエラさんが、これまた妖艶な笑みを浮かべた瞬間、妙に硬い感触に抱きしめられた。

 しまった!もう一人いたのか!! しかし何か抱きしめられても嬉しく無いぞ!何故だ。

 

  「あ~ら!本当に可愛い子っ。押し倒してしまおうかしらんっ…もう か わ い いんっ!」

 妙に軽い。ディエラさんみたいなこう。例えるなら蛇。そう絡みつく蛇の様な声質では無く、

  軽いがこう。ゴリラ的な力強さを感じさせる声。

 何より、いきなり遠慮の欠片もなく俺の息子を触ってきやがった! 凄まじい嫌悪感に俺は絶叫した。

  「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああっ!!!!」

 場にいた全員、姐御を除いてこっちを見て笑っている。

 てめぇ等!!いやそれどころじゃない。とりあえずどいつだ!こんな事しやがるのは。

 と、首がねじ切れるぐらい後ろを向いた。

  

  「・・・・・・・・・・」


俺は、生まれてこの方、色々な漫画やアニメ等でモンスターを見てきた。勿論色物を含めてだ。

 これほど圧倒的な存在感を感じた事は無い。

 頼り甲斐のある筋骨隆々の漢汁溢れる鋼色の肉体。

 イラストだと、丸や楕円から顔を描くが、

 どうみても四角から描いた方が早い角ばった顔に、アゴにニコちゃん星人でも融合しているかの様なケツアゴ。

 ・・・そして博多産の辛子明太子が如き真っ赤な唇に潰れた鼻。無駄に長い睫に無駄に美形な目。

 くるくるパーマにクロワッサンの金髪。

素晴らしいアンバランスで形成された顔と、素晴らしい完成度で形成された肉体の一部を見た俺は。

 フリーズした顔で、ゼンマイ人形の様にキリキリキリとゆっくりと首を前に戻し、ディエラさんにアイコンタクトを送る。


  「依頼したもう一人の魔族…インキュバスのオーマよ…? どうしたのかしらぁ顔が脅えているわよぉ…?」

  「・・・・・・」


他の奴等は反応が楽しみらしく、俺を凝視している。

 「まっ!紹介ありがとねっディエラ。 キミの名前はなにかしらっ?」


キモいよ助けて!!!!

 然し相手は腐ってても魔族。怒らせるとどうなるか判ったモンじゃない。冷静を装い返事する。

  「は…はははは、初めまして。俺は八坂大海やさかおおみといいいいいいいままますすす」

 

ゴリハッグで更に俺を締め付けてくる。かっ…体がっ骨がっきしむっ!!!

 「あらっ緊張しているのねっ。 ますますかわいいわーーーーーーーっ!!!!!」

更にパワーアップしゴリラ・ゴリラ・ゴリラからオーランウータン(森の聖人)へと成りやがった!!

  「ぎゃゃゃゃゃゃゃゃややあっ! 死ぬから放してくれっ!マジで死ぬ!!!」

  「あらっ!ごめんなさいねっ!ついつい…潰しちゃう所だったわ」


おい! つか…インキュ…バス? もっとこう色男じゃないのか?

 つか・・・。

  「うふふ…オーマはねぇ。可愛い男の子が・・・だ~い好きなのよぉ・・・?」


ひでぇ。色男が逆転して男色かよ!!!!

 ガチホモインキュバスってどんなだよ!!!!

  「じゃっ。改めて自己紹介するわねっ。ワタシはオーマ。インキュバスよ?

  好きなモノは美しい物と可愛い物っ。嫌いな物は醜い物っ」


…それ、アンタじゃないか。嫌いな物。

 「そ、そっスか!いや、うん。オーマさん?でいいっスかね。やっぱ美しい人は美しいのを好むんスね!」

リカルド、口調借りるぞ!対応の仕方がわからんから!わからんから!!

  「あらっ。嬉しい事いってくれるじゃない? わかる?この芸術的肉体美っ」


見たくも無い肉体を捩じらせてポージングしだすオーマ。

  「す、素晴らしいっスね。彫刻も裸足で逃げ出すっスわ」

  「もうっ本当の事いっちゃ… だ め よっ」


そのポーズでウインクするなっキモいわ!!!!!!!!!!

  「さっ。もつと見せてあげたいけど、早く食べて寝なさいねっ。明日早いんでしょ?」

  「そ、それもそっスね!いただきま・・・」


アーッ!!! 自分で採りにいかねばいけない。しかも自然の罠が張り巡らされたこの森を。

  つかもう皆食べてるぞ!

  「美味しいですわねぇ」

  「疲れましたから、格別で御座います」

  「おいしいねぇ」

  「うん…ようやく食べれるです」


こいつら、美味そうに食いやがって。 俺は美味そうに食うのを指を咥えてみている。

 そこに後ろから・・・とうっ!! ハグを素早く横に回避した俺はディエラさんに言う。

  「あらら…本当に感覚が鋭くなってるわねぇ…」


ん?そいやそうだな。気が付かなかったが、後ろに近づかれると反射的にっつーかまぁ、なんとなく。

  「まぁ…いいわぁ? 違う手で抱きしめて… あ げ る…」

いつでも来い! 俺はいついかなる時でも挑戦は受けるぞ!!

  「じゃ、ちょっと俺、食い物探してきます」

  「…? 用意してるじゃない…? お気に召さなかったかしらぁ?」

  「贅沢はいけないわよっ」

  「いやいやいや、シアンさんに鍛えられてまして、食料は今回の任務の間、全て自力調達しないといけないんス」

  「あらぁ…」

  「まっ!逞しいわねっ。いいわっじゃお姉さんが特別に教えて あ げ るっ」


キモいからやめてくれ。 つか何を教えてくれるんだよ。野生の雄叫びか?それ以前にお兄さんだろうが。

  「いいこと?よーっくお聞きなさいね。 先ず一つ目。華やかな色には気をつけて。

    二つ目。枯葉が溜まってる所は注意して。枯葉が不自然に動いていたら沼。 

    隙間が多ければ亀裂よ?

    三つ目。必ずなんでも良いわ、道標を付けておく事。以上よっ」

あ~…華やかさは捕食する対象を誘う為とか、そういう事か。

 二つ目は体験済み。もう踏まないぞ。 三つ目は迷わない様にか! 意外にマトモなのきたな!

  「うっス!ありがとうございます! じゃいってきます!」


というと、俺はディエラの家を濡れた服のまま飛び出した。


  「大丈夫ですの?一人でいって」

  「う~ん。どうでしょう。まぁ、大丈夫じゃないでしょうか」

  「心配だよ・・・」

  「うん」

  「大丈夫よぉ・・・世界が彼を必要としいるなら。必ず森が助けてくれるから」

  

  「どういう事ですの? 森が助けてくれるって」

  「うふふっいいわっワタシが教えてあげるわねっ

    この森、隠者の森セアド。この森は精霊セアドの森でもあるのよっ」

  「初耳ですわね」

  「同じくです。その精霊セアドとはどの様な・・・」

  「うんうん。精霊ってエルフィにしかいないのかと思ってた」

  

  「もうっ。精霊はどこにでもいるわよっ普段見えないだけでね。

   ワタシ達魔族・人間・竜族・魔人・神族にない能力を個々が備えた凄い種族なのよっ?

   その精霊セアドがいる限り、この森で争いは在り得ないわよっ」

  「…セアドさんって、女性?」

  「メディ、そっちの心配ですの!?」

  「ははは。まぁ良いじゃないですか」


  「女よっ。高齢だけどねんっ」

  「それなら安心ですわねメディ」

  「う…うん」






  「メーシメシメシっと」

俺は、長い棒ってか枝を拾い、木の葉のある場所は突付いて暗い森を歩いている。

 薄気味悪いが、巨大な木の根が地面から、津波の様に迫るかの如く突き出していたり、

 月の光が木々からこぼれて、薄い霧と重なり、風に揺らぐ光のカーテンの様になつている風景。

 そういった風景に感動を覚えつつ歩いている。

  「にしても、何かすげぇ綺麗だよな。こんな自然は尚更大事にしないといけないと思うな・・・」

独り言をぶつくさいいながら、食い物を探す。

  「ん?ありゃなんだ?」


小ぶりの木つてもデカいが、その根元に一際デカい花が咲いている。色も鮮やかで美しい。

 ・・・ラフレシアの色が綺麗版。 何かそんな感じのする花だ。然し華やかなのは気をつけろか。

 だが、知らないとどうする事も出来ない。食虫植物の可能性もあるが。どうするか。

・・・そうだ。 俺は、足元にあるサッカーボールぐらいの石を持ち上げて、その花に向かって、隠れてから投げてみた。


   「ギィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイッ!!!」


うおっ!? 俺は素早く木の陰に隠れ様子を見ている。

 奇声と共に花の根元の地面がめくれ上がると、茶黒い根っつか…手?が出てきた。

 そして地面から這い上がる様に飛び出し、根が人の形をした何かが周囲を見回してまた潜った。

・・・マンドレイクかよ。あぶねぇな。


こそこそと、その場を見つからない様に別方向に進む俺。

 次に目に入ったのは、・・・木に何か水晶の様な鉱石にも似た実をつけた木。

 落ちてきて当ったら痛そうだな。・・・ん? 何か木の幹が顔に見えなくも無いが・・・。

 まさかトレントか? ありえるな。こいつはいかにもだ。それに密集でもしてたら逃げられない。

 ここは触らずに避けていこう。 更に進路を変えて進む。

 

10分か?それぐらい進むと、妙に白く明るい場所が見えてきた。

 昼どきに峠から見たときはわからなかったが、夜になると良く判るぐらいに強く発光している。

 ・・・どうする? こいつは判断しにくいな。光るコケかも知れないし、罠かもしれない。

 悩む俺の顔に、淡く光る鱗粉の様なモノが掠める様に横から。そして耳に小さい声。

  「わーっ人間だ珍しい」

お? 言葉喋ってるし敵意の無さそう。つか好奇心剥き出しと言っていい声。

 声の主の方へ振り向くと。予想はしてたがフェアリーか。多分そうだ。想像してたのとは容姿が違うが。

 こんなのもいるのか。俺はまじまじと見る。

  「なんだよっ」

おおっ。強気だ。

  「あ、いやごめんごめん。ちょっと食料探しにうろついてたんだ」

  「人間が?この森で食料を? 死ぬ気!?」


死ぬ気ってお前。掌サイズに蝶の羽。人間の容姿に近いがどちらかというと、蝶8割・人間2割といった感じの容姿。

 目なんかもうまんま蝶だ。そんなフェアリーらしき生物に俺は尋ねる。

  「いや、死ぬ気はさらさらないよ。 むしろ食べないと死ぬからな」

  「ふーん。結構モンスターとか自然の罠とか多いからやめときなって!」

  「ああ、デカい花とか、妙な石つけた木とかか?」

  「そ!あいつらに見つかると厄介だから!」

  「そりゃご親切に。でも見分けがついたから避けてきたしな」

  「へー!やるじゃん!? 気に入ったよ!仲間のとこにきなよ!」

  「お? そりゃどうも」


害は無さそうなんでとりあえず付いていく事にした。が…フェアリーは悪戯メインだからな。油断は出来ない。

 一応警戒はしつつもついていく。さっきの光ってる所だ・・・おぉぉぉっ!すげぇ数だ。

 物凄い数のフェアリーが遊んでいる。 

  「おーい!人間つれてきたぞー!!」

と、さっきのフェアリーが仲間のとこへ声を出して飛んでいった。

 取り合えず入り口で様子を・・・ぶわーっ! 物凄い数が飛んできた。

 最早聖徳太子でも聞き分け不能な程の質問ラッシュに俺は困惑した。 

 そんな中、好奇心溢れる声質とは違う、なんと言うかディエラさんみたいなおっとり口調だが蛇では無い。

 言うなら母親といえばいいのか。そんな優しい声がフェアリーの小さい声の上に重なった。

  「あら…本当に人間ですね」

 

う…美しい。さっき化物オーマ見たからか、尚更その美しさが際立つ。

 白い肌にややウェーブの掛かった白髪。白い服…というか古代ギリシャのあの衣服みたいな感じだな。

 そして線の細い体。胸は…大きくは無いが美しい形を拭くの上からでも判るっつーか透けてないかおい。

 白は明るいと透けるからな。まぁそれはおいといて挨拶挨拶。

  「あ、ども初めまして。八坂大海やさかおおみと言います。ちょっと食料調達にきてまして」


その言葉に薄らと微笑む。うわー…絵になるわ。淡く白い光がさながら後光の如く彼女の美しさを引き立たせている。

 思わず見とれてしまう。

  「礼儀正しい人間ですね」

ん?やっぱ人じゃないのか。

  「私はこの森を守護している精霊セアド。この森は来るものは如何なる者であれ拒みません。

   そして、その命が尽きるまで見守るのが私の役目。

   見た所、貴方はまだ希望に満ち溢れた目をしていますが…何用でここに?」


うわーっ精霊かよ!確かに精霊にフェアリーがついてるってのはあるが。ここもか!

  「あ、はい。魔族のディエラさんとオーマさんに、イグリスより届け物を」

  「判りました。ですが、何故食料を? あの二人に分け与えて貰えなかったのですか?」


あら?何かご機嫌損ねたか?

  「あれ?何か気分悪くさせる事いっちゃいましたスか?俺」

  「いえ、この森は来る者は拒みません。そして受け入れられた者は、また来た者を受け入れるのが決まりです」

あ~…成る程。そういう事か。

  「俺の言葉が足らなかった様っスわ。すみません。 実は俺・・・」

  「異界の方ですね」

 

まてや!!何でわかった! サザは匂いで嗅ぎ取ってたが。見かけによらず嗅覚発達してるのか!?

  「あれ? 確かにそうですけど、どうして?」

  「過去に、異界の方がただ一度訪れました。その時の魂魄の波長と似ていますから」

・・・魂レベルで見抜いたのか。何か次元違うぞ。

  「けれど、異界の者が現れたとなると。…これを持っていなさい」

お?お?何何。聖具とか何かすげぇ力もつたアイテムくれんのか!?

 ・・・なんだよ。この汚い木の実。

  「ユグドラシルの実。いつかきたるべき時に必ず役に立つでしょう」

またぶっとんだモンきたーっ!!!世界樹ユグドラシルかよ!!つかこんな小汚い実だったのか。小さいし。

  「いや、それって生命の源みたいなすげぇ木じゃなかったっスか?」

  「私達精霊の生命の源。それがユグドラシルです。今は貴方には何の意味も無いでしょう。

    ですが、時がくれば必ずそれを必要とします」


なんつーか、先が視えてるって感じだなおい。

  「は、はぁ。わかりました。んじゃ遠慮なく」

  「それと…異界の者。貴方を見込んで依頼を受けて下さいませんか?」

おお?てまてイベント重複やばくね? が、精霊の頼み断るとロクな事ないしな。

  「あ、はぁ。俺でよければ。で、どんな事っスかね?」

  「ありがとう心広き異界の者。 …最近、私達精霊の力が何者かに吸われ続けています。

   エルフィに向かい、大精霊クァに尋ねてきて下さい。私はここから離れられませんから…」


発音しにくいなおい。つか大精霊。精霊の親玉かよ。

  「承知しましたっス。けど、吸われてるつてどんな風に?」

  「…判りません。然し確実に力が弱まってきているのです。年月が経てば森の維持すら困難になるでしょう」

  「そりゃ一大事つスね。判りました」


何かまた重いな。俺に持てるのかこれは!

  「ありがとう異界の者」

  「いえいえ、じゃ、俺は引き続き食料探して帰るっス」


軽く頭を下げてその場を去ろうとする。

  「えー!帰っちゃうの人間!!」


…すげぇブーイングの嵐が背中で巻き起こっている。

  「宜しければ、食物はこちらで用意しますのでこの子達の相手をして頂けませんか?異界の者」

  「いや…相手をするのは喜んでお受けしますが、戦闘訓練を兼ねての調達なので」

  「異界の者。力で治める事が全てでは無い。 調和を学びなさい。 

    力のみを求め続けると待つのは破滅。自然を見なさい。全てが何かの為に成り立っています。

    貴方もその一部である事を知りなさい」


・・・ん?自然つか自然の循環の事をいってるのか?

  「何かが生物の頂点では無く、全てが一本の幹に支えられているのです」

  「成る程っス。肝に銘じておきます」

  「訓練と申しましたね。誰かに鍛えられている様ですが、伝えなさい。

   いつかその考えが身を滅ぼすと」


言える訳が無い!言ったら姐御にフルボッコにされるじゃないか!!

  「判りました、ではご厚意を受け取らせてもらいます」


もう敬語がバラバラ! 

  「宜しい。中々…物分りが良いですね。異界の者」

  「いやぁ。なにぶん来たばっかなので。しかもまともにリンカーフェイズも扱え無いんスわ」


お?何か不思議そうにこちらを見たぞ。そんなに扱え無いのが珍しいのか?

  「貴方もですか」


どういう事だよ。…ああ!アスラもだったのか」

  「アスラもそうだった。と認識していいっスか?」

  「アスカです。あの時の異界の者の名は」


飛鳥かよ。おもっきり日本人だな。ああ 阿修羅が前に出すぎて飛鳥と混ざったのか途中で。納得。

  「強き力を宿す異界の者。その力…使う事は避けなさい。

    今の貴方の魂ではとても耐え切れる者では無い様です」

  「あ…すみません。一度使って暴走させてしまい、何人か味方を…」

  「その様ですね。貴方の魂に罪が刻まれています」


魂に罪が刻まれる?なんじゃそら。

  「ん、いまいち理解出来ないんスけど」

  「貴方達がリンカーフェイズと呼んでいる力。それは内に眠る魔物を具現化させる物ではありません」

なんだって。違うのかよ!!

  「生物は生涯を終えると、次なる生物へと生まれ変わります」

輪廻転生か。・・・でもそれとリンカーフェイズと何の関係が?

  「リンカーフェイズとは、貴方の生前を具現化させる物なのです」


…つまり何か、俺の生前がフェンリルだったと?いや、つか向こうに意識あったぞ?

  「少し脳内で破綻してるんスけど、質問いいっスか?」

  「構いません」

  「どうもっス。メディ…相方と深層に潜った時に会ったんスが。相手に意識があったんスが」

  「それはそうでしょう。それは深層に潜るのでは無く、生前へと遡っているのです。記憶が見えませんでしたか?」


…輪廻の鎖を遡って具現化させる力って事なのか?記憶の一部の共有もそれで納得いくな。成る程。

  んじゃあのフェンリルは俺であって俺じゃないから…何かややこしいな!

  「確かに見えましたっス。良く判りました。ありがとうございます」

  「異界の者。魂を汚してはなりません。

    罪が刻まれれば刻まれる程、魂の質量が増します」

  「き…刻まれ過ぎると…どうなるんスか?」

  「先ほど言いましたね。破滅です」

・・・破滅。つまり地獄に落ちるとかそういう事か?

  「俺の世界の言い伝えで、良い事をすると、天国という素晴らしい世界に行ける。

   悪い事をし続けると地獄でその罪を償わなければいけない。そういう話があるんスが…」

  「面白い話ですね。ですが、こちらでは違います。

    生涯を終え、次なる命へと変わる時。その罪の重みに耐え切れず深い暗闇の底へと落ちていくのです。

    そこは何も無い。完全なる無。そこで永劫に落ち続けるだけ」


うわー…地獄より嫌過ぎる。ま、まぁこの精霊も死んだワケじゃないしな。この世界でのおとぎ話だろう。

  「私達精霊は、何故に神や魔・人が争うのか理解に苦しみます。

   自らの領分を越えた物を手に入れて一体何をしたいのか。手に入れた先に何を見たいのか」


あー…真理だな。完璧に仮になったとして、

 そこに何があるのか。支えあう必要の無くなった時、どうなるのか。確かにわからんわな。

  「深いっスね。それも肝に銘じておきます」

  「賢き異界の者。赤竜の苦悩の縛鎖を斬った者。彼はもう長くありません。

   そして私でも和らげる事すら出来なかった。 

    この森セアドは誓いましょう。貴方が助けを求めた時、その手を振り払う事は無いと」


うほ!間違ってるかも知れない知識だったんだが…タナボタきた。

 つか精霊術師とかいたら確実に、コマンド欄の術に精霊セアドって追加されそうだな。

  俺にそんな技能もなけりゃ、あいつ等にも無い。残念だ。

というか、赤竜との会話聞いてたのかよ! 気づかなかった。


  「ちょっとー!早くあそんでよー!!!!!」


うわっいてててててててて! 顔を引っ張るな!!ガキかこいつら!

  「…食べ物はすぐに用意しましょう」

  「あ、すみません…っていてぇって引っ張るな!蹴るな!  口にはいぶばばばばばっ…っ!!」



全く!非常に疲れる連中だこのチビどもは! 散々遊ぶというか遊び道具にされつつ、食い物貰って食べた。

 そして、酷く疲れたのか、そのまま寝てしまった。




森の木々から朝日が差し込み、その眩しさで目が覚める。

  「う・うん?あ、朝か。 つかあれ?ここは・・・」

気が付くと、ディエラさんの家のすぐ傍に居た。なんだ夢だったのか? そうだユグドラシルの。

 俺はポケットに手を突っ込んだ。…あるようだ。 つことは夢じゃない。頼まれごと忘れない様にしないとな。


  「あ、オーミ帰ってきてるよ!」

  「いつまで探しにいってるんですの!?」

  「迷いましたか? でもご無事で何よりですね」

  「おかえり…です」

  「おー!ちゃんと守ってる様だな。えらいぞ!」


いや、実は守って無いんだけど、いいよな!バレないよな!

 と、内心ヒヤリとしつつ、皆の方を向く。


  「…オーミ。なにそれ?」

  「一体何してましたの?」

  「くっ…」

  「面白い顔になってるです」

  「アンタ…フェアリーにあっただろ」

ん?なんだよ。確かにあったが…。俺は自分の顔を触ってみた。そして自分の掌を目で確認した。

 何か泥っつか墨? それっぽいものが付着している。



・・・やっぱりフェアリーはフェアリーかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!   

十三話。最後まで読んで頂いてありがとうございます。

 次回より、長い事溜め込んだ戦闘要素がめまぐるしく展開します。


リセル・リカルド組の天才たる所以、限定条件の真意。

シアン・ゼメキス組の反則的強さの真意。

ドールと呼ばれた少女。メディと同じくする異才の真意。


 頑張って盛り上げ要素として巧く使う様にします。

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