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第百二十六話 「失国の破術師 Ⅱ」

大陸スリグラの中央部に位置する大砂漠、サルメア。

かつてはバーレが栄えた場所だったかも知れない土地。

砂塵の霊宮という遺跡が迷路の様に地下に張り巡らされている。

 そんな土地柄か、今でも霊宮に挑む者は耐えない。

そして、深刻な食糧不足と人口増加に悩まされていたガイトス

 が、戦闘国家から所謂、人材派遣会社としての変貌を遂げた。

ま、俺も関わるには関わったが、青図を提示したに過ぎず、現在のガイトスは

エルフィに至るまでの国々の大きな助けとなり、その見返りとしてガイトス自体も

 食糧難から開放されている状態だ。色々と問題もあったようだが見事に機能している

 あたり、流石はシアンと言うべきか…。

 「貴方が興したのですわよねぇ。この白銀の道…」

…何故かフェンリルのリンカーフェイズ。その色が付けられてしまっている。

灰色の飛竜が飛び交うからとも思えなくも無いが、どうも元を正せば俺になるようだ。

 山を越え、谷を越え、海を渡り続く飛竜の貿易路。白銀の道。

今やセアザは世界でも指折りの強国ともなっている。

 「シアンや他の人達の苦労あってのことだろ」

 「…そこは、素直に誇ればいいと思うのですわ」

 「ソレを誇れば自信過剰でね?」

全く、ともあれ、そんなこんな俺達はサルメア砂漠へと。

相変わらずの熱気と太陽の光の強さである。文字通り身が焦げそうだ…。

早い所地下に行って涼みたいのか、大声でリーシャの名を呼ぶと、

 視界が急に狭まり、ひんやりとした空気が意識を繋ぐ。

 「ここが、砂塵の霊宮の深奥ですの?」

 「多分…な」

物珍しそうに壁にある壁画やらを見て回るアティア。

 いや…ん?何か珍しそうというか…興味? か、判らん。

そんなアティアの影に小さい子供。金色のどんぐり眼に足元まで延びたぼさぼさの白髪。

 リーシャだな。…お前。

 「きゃぁぁぁぁぁぁああああああああっ!?」

アティアを後ろから脅かしやがった…性格は相変わらずだな。

 いや、それよりもコイツの記憶が何処まで失われているか…だ。

 「リーシャ、時間が無いだろ簡潔に聞きたい」

 「…。スヴィア。うん、大丈夫覚えているヨ」

本当かよ、何か今、一瞬だが思い出そうとしてたぞ。明らかにギリギリくさかった

 気がするな。

 「でも、何を伝えたかったのかナ…」

 「そりゃねぇだろが!!! んじゃお前自身何者なのかそれぐらいは」

 「ボクはリーシャ。破術師リーシャ=スレイワード…だったと思う」

駄目だこりゃ。ん? 何だよ俺に歩みよってきて…。

 「でも、君が、此処に来た。ボクの破術は無事成功した。それは判ってるヨ。

  後は…」

 「あとは?」

暫しの沈黙、アティアはただ事の成り行きを黙って見ているしか無い模様。

 「…なんだっけ?」

 「いや、それは俺の台詞だろが!!! 聞かせろよ、何でこんなまだるっこしい

 段階踏ませた。俺に何かさせたかったのじゃないのかよ!!!」

 「うん。…んー…アルセリアに聞いて貰うしか…」

なんじゃそらーーーっ!!!ま、まぁ、あの双生神に会う必要ありだからいずれ判るが

 気持ちの準備ってものがな。それにお前に聞いてあの推論が正しかったのかも…。

あの推論が正しければ、お前は…。

 「ごめんね。ボクはもう答えられない、けれど、そこの君に残りの全てを伝える事は

 出来る。それは覚えているヨ」

 「私に…リーシャの術を…?」

 「うん。君がボクに代わりこの世界最強最多の術を操る者として生きていって欲しい。

  ボクもただ消えるのは怖い。何かを遺したいんだ。

 でも、破術と時消操術は伝えないヨ。あれは危険過ぎるしネ」

どんどんリセルが強くなっていきますな。俺は相変わらずですが不満なんて無いぞ。

 不満なんて…不満…ありすぎじゃくるぁぁぁあっ!!!

 「じゃ、えとスヴィアは外で待っててネ」

 「え、いやちょ!!!」

アーッ!! 問答無用で灼熱地獄の外に放り出された。クリーム色のサラサラした砂の上。

 見渡す限りの砂砂砂…と4m程の蠍。 サソリ!?

 「だーっ! レッドシーカーかよ!!」

問答無用で尾の毒針を俺の腹部目掛けて突き下ろしてくるが、正直遅い。

 ヴァランやレガ達に比べればいささか物足りない速度であり、脅威も感じない。

ただその突き下ろされた尾に巻きついた風を掴み、尾を切り取った。

 自身の武器を失い、慌てて砂の中に潜り逃げようとするレッドシーカーを見て思う。

ここに来たての俺なら死んでたな…と。右手を二・三度握ったり開いたり、己の力を確かめる様に。

 「まぁ、強くなったといえばそうなんだろうな」

何か微妙、という気持ちが拭えなくも無いが、取りあえずアティアを待った。

 数刻程して、俺は突然空に舞う事になる。突然地面から落雷いや、昇雷というべきか、

 それと小型の竜巻が同時に起こり、理不尽に巻き込まれ地面に叩きつけられる。

 「スペルリンク。…どうかしらこれ」

 「どうかしら…じゃねぇよ!!!! 殺す気か!! そんなチートぶつけて何がしたい!!!」

リンク? 術の執行に別の術を一人で重ねあわしたとか言うんじゃないだろな。

 「リーシャのお得意らしいですわね。威力は貴方で試してみればいいって」

 「リーシャァぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!!!」

俺の怒りの絶叫も空しく響き渡り、今晩はラナおばさんの家に泊まる事にしたんだが。

 おばさんの家につくなり、冷たくあしらわれたが右腕の紋様を見せると掌を返した様に

 あの余り埋もれたくない巨乳に埋もれさせられた。

 「く、苦しい」

 「スヴィアの子かい。父親は、スヴィアはどうしたい? 消息はつかめたかい?

  シアンやタガラクを騙して消えて以来だから心配していたよ」

 「…信用を裏切った父を心配してくれていたのですか?」

暫しの沈黙の後、ラナが優しい目で俺とアティアを見つめ、家の中へと招いてくれた。

 間仕切りの無い大きな一室。その中央に囲炉裏があり、焚き火がおこされ、

 天井から吊るされた鎖に鍋がぶら下がりお湯を沸かしている。

なんとも和む光景に懐かしさを覚える。何よりラナの下ごしらえの音がとても懐かしい。

 「ねぇ…何か物凄いおばさんですわね」

 「お前も見てただろ。蛇神との戦い。ラナさんの戦いっぷり」

 「ええ、一線を退いた人にはとても思えなかったですわね」

 「なーにをコソコソ話しているんだい? ほら、ちょっとどきな」

おおっとと。俺とアティアの間を割って下ごしらえした材料を運んできた。

 あ、あの鍋料理だ。ちょい塩が強めだが旨いんだよな肉が柔らかいし。

 「さて、後は出来上がるのを待つだけだね。で、話を続けようかい。

 スヴィア、あの子はね。一見頼りなさそうではあったけど、意味無く人を裏切る子じゃ

 無い。このアタシの目がそう見たんだ間違い無い」

 「そうなのですか…」

 「セアの父の事、信用してらっしゃるのですね。火塵のラナ様…」

 「もう、火塵はあの馬鹿娘に譲ったよ。今はただの鍛冶師さ」

コトコトと煮詰まる鍋から鼻の奥まで届く清涼感と香辛料の入り混じった匂い。

 喉の奥からこみ上げてくる涎がとまらない。この味を知っていると尚更なのだ。

 「イグナさんでしたね。そんなに強い方なのですか?」

 「アタシからみりゃまだまだだけどねぇ。ま、それなりかねぇ?」

 「それで、イグナさんは今どこに?」

軽く首を振り、視線を遠くにやりポツリと一言。

 「シアンの為に今も世界を旅して探しているんだろうね」

 「父を…ですか」

 「そのセアの父の事ですけれど」

おおっと、アティアが俺の事をある程度掻い摘んで話す。

 そうすると、堪えきれずに大きく笑い出した。

 「あはは!!! そうかいそうかい、タガラクの祖先の地を守る為に…か。

 本当にあの子は、地位とかそう言った欲に興味無いのかねぇ…」

 「ラナおばさん、ありますよ。セアの父は…一見無茶苦茶な行動に見えます

 けど、ただ一人の人の為にしか動かない。そういう人です」

 「成る程ねぇ。ま、それがシアンで無いとすれば…少々気の毒だね」

 「それは聞かされてます。俺は対ケリアドの為に父スヴィアとシアンの間に生まれた。

 精霊術の弱点を克服する竜と人の…いや、クォーターという所だと」

ん?ラナに頭を静かに撫でられ、現実を受け入れて生きている。強い子だね…と。

 ぶっちゃけ判ってやってる事だしな。何か騙しているようで罪悪感が。

 「でも、だとすれば一体スヴィアは誰を愛して、誰のために生きていたんだい?」

 「…それは」

 「世界とも言える女性の為、ですね」

おま!! それヤバいしクサい!!! ま、まぁメディが大精樹だし世界といっても過言でも

 無いが、例え方がくさーい!!!

 「彼にとって、その女性が世界…かい。一途だねぇ」

 「え、いや。そうじゃなくて…」

 「あ、そうそう。そんな感じだと思うよ俺!」

鍋の様子を見て、俺達に食べ頃だと伝えると、俺は懐かしさか無我夢中で食べた。

 アティアも最初は余りの匂いの濃さに戸惑ったものの、一口食べてしまってからは

 一心不乱に食べている。食べやすく柔らかいラナさんの手料理を。

 「何にせよ…、アンタ達は若くして死ぬんじゃないよ?」


その日はラナの自宅で泊まり、夜が更けた。明日からは…そう、行動に移らないとな。

早くアルセリア達に会い、そして伝えよう。

 人は支えあうだけでは、決して生きては行けないと言う事を。

 そして、戦おう。誰のためでもない。


俺自身の欲――ただ、それだけの為に。



 


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