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第百二十二話 「氷華雪原」

      


           「暖かいのじゃ」

           「気楽だなおい!」

  イストに道案内され、最短で現在目的地まで向かっているんだが…。

   既にあたり一面銀世界というか、氷だらけ。 植物やら生物も全く見かけない。

  トドメに…余りの冷気で飛べないんだわこれが…で、耐寒性に秀でた前世探ってなったのがこれ。

   白い体毛に妙に愛くるしいようで怖い顔と容姿…白熊である。 ワーベアといった所だろうか。

  流石に極寒の地に住んでいるだけあって、耐寒性能がはんぱないらしく、言う程寒くない。

   が…イストはそうはいかないので、お腹の方に回したリュックと俺の毛皮に挟まれて顔を出している。

  服も勿論分厚い毛皮、毛皮の帽子のほれ、耳の部分が下に長いアレだ…名前しらんけど。

   それに目だけ出る様に毛皮を顔に巻き付けさせている。 耳と鼻と指が真っ先に凍傷になるからだ。

  それを防いでやらないと大事になるわけで…俺の腹のトコから顔だけだしている。

   これだけ分厚いリュックとの板ばさみだ、前の風はキッチリシャットアウトしてるだろう。

           「然し…いけどもいけども…うおっと」

  あぶねぇ。 途中で拾った棒で突付いてあるいているんだが…、クレパスみたいなものがたまにある。

   亀裂やら、氷が砕けて出来た自然のスロープ等々。 それも脅威だが…。

           「また潜るのかのこれは」

           「仕方ネェだろ…大声だすなよ」

  氷のトンネル、これが一番怖い。 一見寒さを凌げる安全地帯に見えるが…、天井がモロく崩れやすい。

   壁に手をつけつつ、ゆっくりと音を立てずになるべく早く抜け出る必要があるわけで…。

  そのまま慎重に音を立てずに進み、トンネルを抜けると目の前に広がったのは…。

           「うげぁー…」

           「自然の迷宮じゃのう…」

  器用に亀裂が一つの迷宮を作り出している。 ちなみに飛んでいくと凍死確実っつか、翼が耐えられんわけで。

   周囲を見回すと、いくつか降りる為にスロープになっている所はあるが…。

  そこを確認すると、もう一度全景を見直す。 ここで道筋確認して置く必要があるからだわな。

   暫くその亀裂の道を凝視して、…5kmちょいぐらいだろうか、その先にある氷山までの道を探る。

  途中で道が交わったりしている所を見ると、どれでも辿り付けるというのは分かる。

   が、なるべく最短ルートを選びたい。 水も食料も限りがあり同時に帰りの分も確保しておかないといけない。

  ここでは飛ぶという事が出来ないからだ。 

           「吹雪いてきたな」

           「天候危なくなってきたのう…」

  随分と日も暮れてきた、そろそろ夜になるか。 この辺りで野宿の準備しないといけないな。

   周囲を再び見回し、丁度良さそうな岩というか氷の塊を探し、それを見つけて歩み寄る。

           「何を致すのじゃ?」

           「夜は危な過ぎるので、寝床作る」

  そう言うと、腹に下げているリュックからピッケルらしいものを取り出し、氷を砕きだす。

   中だけ器用にくりぬく様に砕いていくが…、砕いた氷がイストにあたっているらしく文句を言って

   腹の中に潜り込んでしまった。 それから一時間程使って氷のカマクラを造ったワケで…。

  まるでエスキモーだなおい…。などと自分で自分に突っ込みを入れつつ、中に潜り込む。

   そして、今度は入ってきた入り口を砕いた氷で再び塞いでいく。 空気は入る様に少し隙間をつくりつつ。

           「真っ暗なんじゃが…」

  仕方ないだろ、と完全に暗闇になつている中でイストに声をかけつつ、手探りで毛皮を探しそれを地面に敷く。

   その上に乗ってリュックを枕代わりにして寝転んだ。

           「取り合えず、朝までこれで今日は動け無いな」

           「何で主、こういう事だけ知っておる?」

           「冒険は男のロマンだからだ」

  などと冗談交じりで、会話しつつ朝を待つ。正直ド素人が出来る筈も無い。が、白熊のリンカーフェイズ。

   それが可能にしている。 既に生身だと凍傷やら何やらで酷い事になっとるっつーの。

           「暗闇だからとて、おかしな真似するでないぞ?」

           「もうちょっと成長してから言えよ」

  いでぇ、腹蹴飛ばしてきやがった! つか男だろうが! …まぁそれはさておきとして。

   自然の罠はあるが今回はリーシャの仕掛けは先ず無いだろう。 そもそもここの守護者と会う必要がある

   だけで、こんな危ない事をする必要性がわからん。 が…どうやらまだリーシャは何かを考えている。

  そう、思えて仕方が無い。 流石にそれは何か想像も付かないワケだ。

   二重・三重に張り巡らせた手口に更に何かを忍ばせている。 そう思えて仕方が無い。

  進化の先にある破滅。その警告と回避。 …他にもまだ何かがある様にしか思えない。

   まぁ、行く所まで行ったら分かるか。 そのまま俺はイストを抱え込んで丸まって寝る事にした。

  翌朝だろう、日の光が暗いカマクラの中に差し込んできている。 冷気の所為か日の光が少し歪んでいる。

   起き上がり、イストを起すと凍り付いている入り口を叩き割り、外気を入れる。

  そうするとイストが驚いた様に飛び上がって、俺の毛皮の中に潜り込んできた。

          「さささ…寒いっ」

          「おきろー。 時間は無駄にできないぞー」

  と、毛皮から引きずり出してリュックを腹に引っ掛けてイストをその間に頭から突っ込む。

          「ぷ…笑えるな」

  リュックと腹の合間から、オムツみたいなパンツをモロ出しにして、大根みたいな短い足をバタつかせて、

   何やら唸っている。その足を掴んで引っこ抜き、今度は足から突っ込んでやると怒鳴り散らしてくるわけで。

  まぁ、それを無視してカマクラの外に出て、再び亀裂の道を見直す。 イストにも大体覚えて貰ったので

   問題は無しと…紙と書くものもってくりゃよかったな。 後悔しつつも、スロープをゆっくりと滑り降り、

  亀裂の道へと入っていくと…。

          「ああ確かに氷華だな。雪原には見えないが」

          「ここではないぞ? 確かに氷の花はあるのじゃけれど」

  そうなのか? とイストの顔を見つつ、氷が花の様に咲いている亀裂で出来た道を進んでいく。

   いくつも分かれ道、曲がり道があり方向感覚を失いそうになるが…またしても風だ。

  どうもこの深奥部に暖かい所でもあるのか? そこは分からないが風が全て一つの方向へ向いていっている。

   然し…試練全て風が関わってきているな。 これも何か意味があるのか? …分からん。

  取り急ぎ、風が吸い込まれる方へとひたすら歩いていくと、昼少し前ぐらいだろうか。

   亀裂で出来た合間から見える空に太陽が覗いてきた。 そして、その先に見えてきたのが…。

         「氷山の入り口っぽいな」

         「うむ。あそこじゃな」

  ようやくか…、歩くと凄い距離だなおい。 ノシノシと熊歩きで近寄り、内部を見ると暗い。

   どうするか…氷山の洞窟なら松明を焚いても平気か? …分からんが見えないしな。

  リュックにいれてある薪に、布を巻きつけてなるべく小さい松明を作り、火をつけ中へと入っていく。

   氷というか水晶というか見事に綺麗な道が地下深くへと続いている。 一応用心して壁に手を当て、

  ゆっくりとその道を降りていくと、一つの大きい部屋へと出た。 

         「おー…ゴツい氷の水晶みたいなのが…」

         「触ると斬れそうじゃな」

  氷の剣みたいになっているソレが、至る所に突き出ている。 確かに触れると怪我しそうだ。

   ソレに気をつけつつ、先へと急ぐ。 気のせいか、段々暖かくなってきている…成る程。

  更にその先へ進む、また入り口が見えてきたので、そこへと松明を軽く先に掲げ中を確認すると、

   また深い所へと続いている。 どうにも地下へ地下へと行かせたい様だが…。

  引き続き、どんどんとおりて1時間ぐらい経っただろうか。 妙に明るい光が、道の先で漏れている。

   そこへと歩いていくと、…うごあ。

         「雪原だな…つかなん…ああ」

  遠くに反対側からも入ってこれるのだろう大きい道があった。 そこから吹雪きが入ってきている。

   恐らくは山のあちこちに吹き抜けの穴でも開いているのだろうか。

  このだだっ広い部屋だけ、やたら暖かくそして雪が積もっている。 

   良く見るとその片隅に氷で出来た家が一軒だけ立っている。

         「あそこだな。 が…既に起きてるだろ」

         「じゃの。 安らぎはとうに見つかっておる」

  だろうなぁ、まぁ。大方予想はついていたので、俺は達はソイツがいるだろうその家へと歩いて行く。

   コイツは確実に倒さないといけないだろう。本人も殺す気で来るからな…。 覚悟を決めてその家へ

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