第百十七 「吼竜の谷 Ⅳ」 文頭の選択肢の解説一部追記
文頭のリーシャの捻くれの説明&空気の移動の最初の説明の間違いを追記+修正
「むがふぐがが!」
「うるせぇっつの!」
押さえつけている中で暴れ狂うイストを無視して、三つの穴を見る。 カメレオンで降りて確認
する事は可能だが、つまらんだろ! 俺が。 縦穴で風の流れで判断しろってこた、下にある物の
熱量だろ、 勢い良く吹き上げてくる、地熱が高く深い。
弱いが吹き上げてくる、弱いが浅い…ってトコだ。 問題は残る一つ、吸い込みだつまり下には水がある。
地底湖で冷えた空気が吸い込まれているワケだわな…多分。
こっち系はイストの分野だろうな。
真ん中は駄目だろう。…が熱量で何を判断して正しい道とするのか、そこが問題なワケで。
1,水 2,浅い穴の二択。 互いにその穴をもう一度見直すが、底は見えない。
1の温い水だが、空気が入り込んでいる…つまり此処よりは暖かいモノがある。
2だと剣山で串刺しという可能性もある。
は~ん…そう言う事か。 正解は地熱だ。 さっきの地底湖の冷たさはとてもじゃないが入れない。
そして浅い所、途中までの狭い道の鋭い岩肌。間違い無く自然の剣山みたいになってる筈。
地熱で暖められた水がある所が正解って事だろうな、今までの道筋がヒントそのもの。
が、一見温い水が正解に見えるが…問題は熱源、溶岩の位置。 リーシャだぞ。
そこまで考えてくるのは判っている…そこからまたひっかけだ。
高さ。 熱源の位置。 つまり温い水だと落ちる先が高すぎる。
落ちる高さが高けりゃ温い水だかヤバい温度の水かも分からない。
トドメに高い位置から落ちるとコンクリと変わらない。 が、強く吹いている所。
コイツは比較的低いんだろう、それが答えだ。入っても平気な温度な筈。
まぁ、問題は他にあるが…コイツはどうしようもないしな。 手に入れてからなんとかすりゃいい。
「地熱だな」
「主、何故カメレオン使わぬ?」
ソッチ言いたかったのかよ!! ったくよ…覗き込んでくるイストの顔を押しのけて、温泉になっているだろう
其処に飛び降りると、暫くして角度がついて滑り降りる様になった。ここだけ岩肌が丁寧になっている。
明らかに何かが手を加えたんだろう、正解だとわかる。 帽子を片手で押さえマントをバタつかせて
勢い良く滑りおりる中、イストは肩で必死にしがみつき、ツインテが鯉のぼりみたいになっている。
…人間の姿だったら格好いいんだがなぁ、丸目で寸胴というか毛胴というか。首無しというか。
そんな中途半端なフクロウ怪人だからな。 見た目が凄い悲惨だ…人間の姿で滑りおりれば良かった。
そんな後悔と共に勢い良く滑り、明かりが見えそれがどんどん迫ってくる。
そのまま勢い良く明かりの中へ突き抜け宙に浮く。ちょっと高い位置に飛び出てきたので思わず下を向いて
驚いてしまう。 イストは相変わらずしがみついてあ~あ、マントのバタつきに弾き飛ばされしまった。
そのまま俺は足から、イストはマヌケにも頭から落ち水しぶきと共に着水音が周囲の壁に当たり木霊になった。
反響音が結構遠くまでいった所を察する所、かなり広い所…何してんだよ。 いきなり泳いで遊び出したぞ。
「温泉じゃ~」
呑気だなおい! ったく、後ろからイグナさんつけてきてるの分かってるだろうが。
イグナさんが気付いて無い筈ないぞ。 謎解きだけさせておいしい所を頂戴しますってパターンだろこりゃ。
…ま、逆にいえば手に入れるまでは姿を見せない。 暫く遊ばせておくか…俺はイストを摘み上げると服を脱がせ、
パンツ一丁にして再び温泉に落とすと、面白い程に水しぶきを上げてから湯を少しのんだんだろう。
口から水鉄砲みたいに湯を吐き出して怒鳴り散らしてくる。
「服、乾かしといてやるから遊んどけ」
そのまま、いくつか出ている岩の上に俺は乗り上げ、イストのミニマム化している服をひっかけて乾かす。
地熱の事もあり渇きは早いだろうが…湯気がちょっとアレだな。 まぁ…長居はできんぞ流石に、
今度はなんだほれ、サウナとかに長時間いると眩暈するアレだ。 原因は知らんが。
「いい湯じゃのう…」
こいつ…じじくせぇ事言って緩みきった顔と体を湯に浮かばせて流されてやがる。
ったく、まぁ…楽しませといてやるか。 …。 眩暈がしたのか、右手で顔を少し抑えつつ
イストを呼び、先へ行くと伝えるとやはりアイツもここに長居するのも良くないのは知っているからか、
こちらに来て服をきている。
「見るでないわ」
「寸胴人形オムツ付きの着替え見て発情するかアホ」
服を着てからご丁寧に殴りかかってきたが、まぁそれを無視して肩に乗せ、温泉の上を飛び続け次へと向かう。
5分もかからない内に、一つの入り口が見えたので、其処の中へと入る。 光ゴケでもあるんだろうか、
さっきの所もそうだが、明るいな。少々目にくるのでイストに鷹へと変えてもらい、先へと進む。
さて、次なる罠はなんだろうなと…思いつつ中腰で狭い横穴を進み続ける。
暫くして、傾斜になり更に深くへ続いている…傾斜といえば…嫌な思い出が。
必ず在るソレに警戒しつつ、壁と足元の違和感を探りゆっくりと歩く…出っ張りが多い。
つまりその出っ張りの何れかが…スイッチで。 今度は重量で落ちるとかそう言うものもなし。
どういう仕掛けかはすぐ読めた。 地熱。 さっきの地熱の原因が先にある。
その地熱に放り込む事を目的としたトラップなんだな。 しかも岩じゃない…真上にある地底湖の水だ。
踏まない様に気をつけて、ゆっくりと出っ張りの…まてよ。 少しこの入り口に戻り、
目立つ場所に一つ、足元にある石で大きく書き記す。『でっぱり注意』…と。
何でか? イグナさんなら踏まないと思うが…まぁ念のためだ。あの人は踏みかねない。
書き終えると、また足元に注意してでっぱりを踏まずに傾斜を降りていくと…案の定溶岩ですな。
真っ赤に煮え滾った赤いドロッとしたモンが流れている。 結構な高さではあるが…。
「熱いのじゃ…」
溶岩の発光といえばいいのか、赤いソレに照らされている俺と、肩で茹で上がっているイスト。
あの温泉の後にこれはキツいだろう。 で、と…ほっほーう! これはこれは。
溶岩の中からいくつもの柱が立っていてそれを飛び越えていけと…大きさは大中小。
頭の太いのと、頭から足まで平均的なもの、 足元が太いものそれが段々低くなり、
向こうに奥に進む穴がある。一応周囲を見回すと天井も高く、いくつか太い蔦が降りてきている。
近くの壁を見るとそれらしいヒントも無い。 …。どっちだ、どちらに…。
成る程、低くなるってのがミソか。 これ以上行くと溶岩の温度が更に近くなる。
地熱、それに暖められた温泉に長居すると酸欠かなんかだろう眩暈。
さっきの温泉が答え…てことは上だな。 …姐御とか地熱やらそういうの知らんだろうな。
再び目立つ所に『↑○ ↓×』の印をつけて、壁に釣り下がっている蔦に飛び移ると、大きく左右にブレる。
切れる!? とか思った瞬間ほらあれ、遊園地でフリーフォールやら、バイキング乗った時におこるアレ。
股間がスーッとする感覚のソレが襲ってきた。 揺れが収まるまでしがみつき、そのまま壁に足をつけて
腕と足の力で登っていく。
「主、なんでそう…地熱やらもそうじゃが、知っておる?
どう見ても学に秀でた人間…」
片腕を蔦から離して、肩に乗っかっているイストの頭を軽く殴って再び蔦を握り、登っていく。
そのまま登りつめ、大きくオーバーハングした所の隙間へと手をかけて・・・。
「ふぁいとー…」
一気に上半身をひきあ…。
「いっぱーつ。 じゃろ?」
…イワレタ。 おいしい所持っていかれた。 行き場の無くなった気合を怒りに変えて叫びつつ
上半身を引き上げ、その隙間へと這いずり込む。 …せめぇ!!!
隙間つか、亀裂。 しかも手入れは一応されているから痛くは無いが…ん? よく見ると、
蔦のある所に切れる様に仕組まれたモノがいくつかあった。…うげぁー。
「なんじゃ目を丸くして…見抜いて選んだんじゃなかったのかの?」
顔が青ざめた。一度、その亀裂から顔を出して確認してみると、岩肌に差があった。
下からだと溶岩の発光でちょい分かりにくかったが…確かに鋭利な岩肌と、
滑らかな岩肌の二つにわかれている…あぶねぇ…。 油断してしまったぞおい…。
危ないのでその鋭利な方の蔦を残らず石で叩き切り、そのまま這いずって方向転換して先へ進む。
「どこかヌケておるの主はやはり」
「るせぇ…!!」
そのまま這いずって先へと進むと、また広い場所だろう其処へと辿り着く。
隙間から這い出て立ち上がり周囲を見回すと、祭壇らしいモノがあり、周囲に目ぼしいモノも無い。
完全に周囲は鋭利な岩肌だ。 念の為周囲を歩いて壁を調べつつ見て回ると…。
うん、何の変哲も無いただの壁だ、叩いても空洞も無しと。 天井はどうかしらんが。
今までのを考えると飛行機能とかを考えた造りでは無い。 天井は調べる必要は無し。
仕掛けの穴があるかもしれんが、まぁ、そこだけ用心して祭壇へと近づく。
これまた古めかしい祭壇で蜘蛛型といえばそのままだ。四足の。
そして、それらは全て岩で作られており所々に亀裂が走ったりしている。
そこに上る為の階段が一箇所、15段続いているが…顔を近づけて仕掛けを探るがそれらしいのは無し。
足をかるくかけてゆっくりと体重をかけていく、その間背中と顔に冷たい汗が伝ったが…なんともなかった。
そのまま一応用心して、繰り返し繰り返しあがっていくと…祭壇の真ん中へと来た。
周囲を見回すとひし形になって四方を蜘蛛足の様なモノで支えられている。 …。
そういうタイプかよ。 そのままゆっくりと祭壇の中心へと近寄り、
一箇所だけ突き出た部分の前に来る。 …再度周囲を確認してみると、足元に文字が刻まれている。
支える者
「これはじゃの…」
「イストちゃん? 俺の楽しみとらないでくれるかな?」
おもっきり苦笑いして、イストを羽毛に押さえ込み黙らせる。 さて、周囲の再確認と。
見た感じ突き出た所に天石は無い。 …まぁ当然だわな…問題は支える者。
足を砕くか? いやんな事したら…絶対アレだ。 この洞窟自体支える者なんだよ。こいつは。
かといって周りに代わりになる様な岩も無し、取りに戻ってもあの細い亀裂。
その場で立ち止まり、腕を組んで考える俺の後ろで声が…イグナさんか。
「ようやくきたか? ま、もうちょい待ってな考え中だ」
さて…どう…いでぇっ!!! 殴られた。 頭を抑えつつ振り返ると怒った顔のイグナさんが、
何を考えてこんな事してんだ。 そう聞いてきた…いう事は出来ないんだよなこれが。
「いや~ちょい冒険ライフがっふっ!」
おもっきりみぞおちに一撃いれられ、その場に両膝を付くと、彼女は怒った顔をしながらも、
姐御が心配している事を告げるが、俺は俺のすべき事がある。
あの砂漠の一件より、シアンさんのする事、俺のする事は分かれた…が最終的には一つに落ち着く。
それだけを告げると…イグナさんが背を向けてその場を去ろうとしたのを見た俺は、
全ての答えは本に記してある。それだけを伝えてくれと。 まだ全て解読していないらしく、
本と睨めっこしているらしい事も分かった。 まぁ…難題だわなありゃ。
いかにセオ爺さんの娘でも解くのに時間がかかる。 リーシャの捻くれた難題真似たからな。
「あ、そうそう。 一応全員避難させておいてくれイグナさ…。いや、イグナ。
仕掛け次第では多分噴火みたいな事になる」
去り際に返答も無く、右手を軽く振って隙間へと潜り込んでいった…のはいいが、
イグナさんのあのデカい胸だと苦しくないか? あの亀裂…まぁいい。
さて、もう一度確認だ。
足四本、地面からは胴体が離れた蜘蛛的なひし形祭壇。 周りに代用する物は無し。
持ってこようにも、道はあそこ一つで狭すぎる。 突き出た部分にそれらしい天石も無く。
…。地面はどうなってんだ? 一度階段から降りて腹の下に潜り込んでみる。
同じく、ザラついた岩肌で…あの出っ張りが仕掛けだろうか。…うーむ。
一度、腹の下から這い出てきて、立ち上がり腕を組んで考える。
支える者…はて。
「じゃからそれはじゃのうぶっ」
「俺の楽しみ!」
さて…この仕掛けは二種類だ。 きっちり取らせてくれるか…いや、取らせてくれない仕掛けだろうな。
だが! それがいい…それぐらいド派手にいきたいモンだわ。
そっちを願いつつ、顔をニヤつかせて在り処を考える。