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第十一話「隠者の森 セアド」

十一話目の投稿となります。これから色々と撒いたモノを

一つのイベントの終了に向けて、回収に入ります。

  「ぅぉぉぉぉぉおおおおおおああああああああああああっ!!!!!


   クソ!こけそうだ!っ畜生…絶対こけてやらんぞうるぁぁぁぁああっ!!!」


 超重量を背負わされ、峠のてっぺんから蹴られて、強制的に坂を勢い良く駆け下りる。

  こけたら骨折じゃすまんぞ。マジな話!っつか考えてる余裕すらねぇぇぇっ!


 必死でバランスを取りつつ後ろに体重をかける為、絶叫・土煙を上げてやや仰け反り気味で走る俺。

  ハタから見たらさぞマヌケだろう。しかし絶対にコケてやらん!!!!




  「うるぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!」








  「おー!思ったよりバランス感覚いいねぇ。もうそろそろこけて骨の二・三本はバッキリいくかと思ってたけど」

どんどん遠くなるオオミ君を見つつ、顎に右手の人差し指と親指の間を当てて見ているアタシ。

 それに怒ったように文句をいってくるメディ。

  「義姉さん!? ケガさせるつもりだつたの!?」

  「つもりだったけどね。予想以上に粘るね!良いバランス感覚してるよ彼」

  「相変わらず強くなると見込んだ人には、遠慮の欠片もありませんわね。シアンさん」

  「本当ですね。古傷が痛みますよ」

  「ここまでハードな事するのは…見た事無いけど僕…」


全く…どいつもこいつも見る目が無いもんかねぇ。オオミ君の身体能力は結構なモノだというのに。

  「でも、義姉さん。なんでこんな事したの?」

  「あん?メディ。人間が一番成長出来る時は、いつかしってるかい?」

  「思い出したくありませんわ・・・」

  「同感で御座います」

  「危なすぎるよね…本当に」


  「え…と。成長出来る時。わ、わからないよ」

  「まぁそりゃそうだね。 死ぬ一歩手前が一番成長するのさ。肉体的にも精神的にもね。

   極限まで研ぎ澄まされた感覚が、自分の身体能力を通常より遥かに高く引き上げてくれるのさ。

   肉体の酷使。精神的苦痛。何より…死というモノを体感するぐらいの恐怖!

   いずれか一つでも限界まで追い込んでやれば、人間は不思議と通常以上の能力が出るもんさ。

   原理は全く知らないけどね!」

   

  「体験済みですわ…確かにその通りですわよメディ」

  「その通りで御座いますね。本当に一歩間違えれば死んでしまいますが」

  「う~…頭痛くなってきました僕」

本当にこの子達は。あれだけ鍛えたのにまだ足りないみたいだねぇ。

  「リセル君?」

  「な…なんですの?」

  「例のアレはちっとはマシになったのかい?

    さっきディエラと話をしている所を見ると、暫く会ってなかった。つまり・・・」

  「ひっ…だっ…大丈夫ちゃんとしっかりときっちり忘れずにやっておりますわよ!?ね、ねぇ!リカルド?」

  「・・・すみません。正直に申し上げます。ここ1年近くディエラさん達とはお会いすらしておりません」

  「リッ…リカルド!?」

  「宜しい。じゃあ帰ったらリセルだけ特別に鍛えてあげる」

  「いっ…いやですわ!?じっ自分でちゃんとやりま・・・」

  「…してないだろうに」

  「う…」

全く、アタシは、腕を組みつつリセルの方を見て言う。

  「アンタだけなんだよ。あんな事が可能なのはね」

  「判ってますわ」

  「なら宜しい。リカルド君も…リセル君を甘やかしたら駄目だよ世界で唯一限界の無い力なんだから」

  「承知致しました。会長」

本当に判ってるのか…まぁ。責任感の強さは人一倍だし。大丈夫だろうとは思うけどね」

 さて、再びアタシは森の方へと視線を移した。


  「あら!凄いわね」

  「どうかしましたの?」

  「オオミさんに何か?」

  「どうしたの?シアン義姉さん」

  「…何かいやな予感するのです」


  「いや、さっきより速度上げてるわね。ちょっとバランス危なくなってるけど」

  「ちょ…それって大変じゃないですの!?」

  「そうでもない。彼自身が速度上げてるみたいね」

  

  「というよりもですね会長。もう姿すら見えませんが、どうやって見てるのですか!?」

  「普通に見てるだけだよ」

  「その普通がおかしいのですわよ!!」


全く、ちょっと遠く見えるぐらいで何を血相かえる必要あるのかねぇ。

  「しかし早いねぇ。歩くとそうだね5~6時間って距離か。 それをもう20分もすれば届く所までいってるわ」

  「え…まだ1時間程しかたってませんわよ!?」

  「どんな速度で走ってるのですか!」

  「・・・とまれるの?」

  「さぁ?なんとかするしか無いわね? にしても予想以上に早いわね。

    先に森について赤竜に出会わなければいいけど」

  「そっそれですわ! 出会ってしまったら私達が来た意味が無いですわよ!」

  「大丈夫だよ。あれだけ広い森。そうそう出会うわけが無いじゃないか」

  「それもそうですけれど…」


ま、出会っても彼だけなら器用に逃げそうだけどね。









  「ぉおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

もう少しだっ!もう少しってか足が千切れる!!!

 どんどん近づく目的地。そして上がる速度。駄目だ足がもうもつれる!!!

 だがもう少し!!も う す こ し!!!

崩れそうになるバランスを必死で保ち続け、ついに森まできた!


  「けど…止まらねぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええっ!!!!」

勢いよくそのまま森へと突っ込んでいく。細かい木の枝が鋭利な刃物の様に衣服と皮膚を斬っていく。

 必死で目を隠しとにかくぶつからない事を祈りつつバランスを保って減速を待つ。

 然し…目の前に巨大な壁が立ちふさがるのが見えた。

終わった!今度ばかりは終わった!!!さよなら三角またこれま線!!


壁にぶつかった瞬間、ブヨンとした感覚が体を包んだ。見事に衝撃を吸収してくれたのか。怪我も無くとまれた。

 「お?…ぉぉおおお!? 何か助かった!しかし何にぶつかっ・・・・」






思考が停止した。髭を蓄えた赤黒い竜がこっちを睨んでいる。つか…でけぇっ!!

 こんなもんが吐いたブレスどうやつて避けるんだよ!歩幅も全然違うから逃げれねぇよ!!!!

一難さってまた一難!よりによって一人の時に赤竜だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!?

  「完全に終わった・・・あ~…短い人生だったな」

何かもう諦めモードはいったのか、意識が遠のきその場にぶっ倒れた。




何時間ぐらい経ったのか。アレ?というか何で生きている?食われたり溶かされたりしてないぞ?

 自分の四肢を確認して、手を開いたり閉じたり。顔を殴って痛みを確認してみた。…現実だ。

 はて、さっきの赤竜は夢だったのか?走りながら寝てたのか?俺は。

  「こんな所に人間の子供とは…何をしにきたのかな?」

ん?何か上から声がきこえ・・・ぶっふ! 

 余りのショックに顎が外れ目玉が飛び出し、開ききった鼻の穴から鼻水が汗マークの様に鼻からツルンと出そうになった。

  「聞こえなかったかね?何をしにここへきた? ここは隠者の森。

   主の様な若者が来るには…少々早過ぎると思うが」

…あれ?何か妙に知的だな。ま、まぁ喋るドラゴンなんかいくらでも漫画やゲームで見たが。

 傲慢でも無くなんというか、そうリカルドに近い雰囲気を感じさせる話し方をする。

  「あれ?俺食われないんスか?」

  「…主を食べたとて、腹の足しにもならないな。それよりも何をしにここへきた」

  「おっと!失礼!!俺は八坂大海やさかおおみ

 魔族のディエラさんともう一人誰か判りませんが、荷物を渡しにイグリスよりきましたっス」


じっくりと舐める様に俺を見た赤竜。少しの沈黙の後、口を開いた。

 覗いた口から、何か真っ赤なものが見えなくも無いが気にしないでおこう。

  「イグリスの使いの者か。うむ。最初は悪かったが中々礼儀は知っているようだな。

   ワシは、サザ。この森に最近身を寄せた見ての通り赤竜」

  「サザさんでいいっスかね?」

  「サザで良い」

  「わかりましたっス。じゃサザ。悪いっスけれどこれで。ちょっと仲間を外で待たないといけないので」

  「これこれ。若者はせっかちでいかんな。この森の地形には明るいのかね?」

  「いや全く!とりあえず外に出て待とうかと」

 そう言いながら、俺はサザを見つつ外の方なのか?知らないが歩いた。

  「…そこに沼があるぞ」

え? うぉぉぉぉぉおおおおおおっ!? 落ちた枯葉で判らなかったが確かに沼があり、見事にハマッてしまった」

  「ちなみに。底なし沼だ若者よ」

沈むっ!しかも臭いっ!!何か動物の死骸が沼の底にあるのか!?臭いっ死臭が底から泡を立てて上がってくる!

 風呂でオナラしたらその臭いでもがくが、アレの何十倍もキツいっぎゃぁぁぁぁあっ・・・あ?

 その瞬間俺は、赤竜に咥えられて、沼から助け出された。・・・何かすっげぇ親切なドラゴンなんだが・・・。

 今まで俺設定に対してのみ不都合ばっか巻き起こってたのに、なんつー都合の良さ。

  「若者よ。行く急ぐのも良いが、立ち止まり、周りを見る事も大事。

    目をこらし思考を張り巡らせれば、己よりも強い敵に打ち勝つ方法を見出す事もある」

  「う・・・うス!」

なんだ、何かドラゴンに教えられてるぞ?つか話し相手欲しいのか?・・・年寄りだけに。

  「でも、知り合いと合流しないとやばいかな~と」

  「ディエラ…よく知っている。住処もな。

   連れて行く交換条件として、少し老いぼれの知的好奇心を満たさせてはくれないか。

   主の匂い。この世界の何処でも嗅いだ事の無い匂いがある」

ん?ああ、つかやっぱ年寄りだから話し相手欲しいのか。 まぁそんぐらいならいくらでも。

 ドラゴンの護衛つきでいけるなら、安全だろうしな」

  「匂いでわかるんスか・・・。多分思われている通り。

   俺はこの世界とは違うとこから飛ばされて…いや落とされてきたっス」

  「やはりか…」

  「そうっスよ。ってかサザ。この世界のドラゴンつて皆あんたみたいに大人しいというか、知的なんですか?」

  「知識を求める者、力を求める者。その二つに分かれる。ワシは前者。争いはあまり好ましくない」

 成る程。非暴力主義な竜か。相当賢そうだな。

  「俺の知ってる竜とは全く違うんスね。」

  「主の世界の同胞は、戦うのを好む者ばかりなのかね」

  「いやいや、俺の世界では、竜は空想上。つまり存在しないんですわ。

   いや、遥か昔に恐竜という生物が栄えていたんスけど。氷河期だったすかね?隕石の衝突だったんスかね?

   忘れたっスけど、絶滅してしまっていて。こちらだと絶滅せずに進化し続けたのかも知れないっスね」

  「そうか。主の世界では既に同胞はおらぬのか。……進化!!」


おお?何かうっすら開けていた目を見開いたぞ?進化になんか欲しい知識でもあるのか?

  「そう進化。てか進化について何か知りたいことで・・・」

  「長い年月。気が遠くなるような年月を生きてきた。ワシは悩み続けた」

うおおっ人の話聞かずに語りだしたぞ!!?

  「その結果、行き着いたのが、全ての生物は、元々は一つのモノでは無いのかと。

    いつだったか。一本の木を見てそう悩み出した。しかし確証も無く、探し続けた」


あーダーウィンの進化論か・・。どうだっかな。授業寝てたからなぁ。やべぇ…迂闊な事答えられないな。

  「そして、ついに見つからず余命もあと僅か。…この世界の何処にも答えが無かった。

    同胞からも気が触れたとまで言われ出し。ワシはこの隠者の森へとやってきた」

・・・うがー。やべぇ!老い先短い爺さん、その人生の大半をかけた様な難題を答えるのかよ!!!!

  「人間の寿命は短い。聞く必要もなかった。然し主は異界の者。 

   異界の知恵ならば…どうだろうか、ワシの悩みに答える知識は持っているだろうか。

   もし可能であれば、この老い先短い竜に冥土への土産を持たせてはくれぬか」


・・・ぐあーっ!重いっ!重過ぎる!!!思い出せ俺!!授業中の睡眠学習の成果を今見せる時だろう!!

  「ち…ちょっとまってっス。え~とどこから話せば・・・」

  「遥か太古の知識を得ているのか!」

うおぉぉっ!!!!爺さん竜はいきなり猛然と立ち上がり、俺を睨みつけた。 ・・・あ。やばい。

 余りの迫力にちょっとおしっこ漏れた。まぁ、沼に落ちて濡れてるから判らんよな!!!

  「ちょっ。落ち着いてっス。今思い出しているっスから。」

  「・・・! おおすまない。年甲斐も無く興奮してしまった。

   探しつづけて千と幾百年か。ついに…ついに」


そんなに長い事考えてたのかこの爺さん。すげぇな。ア~・・・然し答えられるのか?俺で。


  「え~と。先に言っておくことが…俺は見ての通り若いっスから、専門知識は持ち合わせていませんっス。

   ある程度知っている部分を摘んで話すぐらいしか」

  「構わない。少なくともワシよりも遥かに知っておるようだ」

 と、言うとズシンと地響きを立てて、再び座り込んだ。…が恐ろしく顔が近くなった。また漏れそうなんですが。

  「じゃあ、ちなみに、俺の居た世界でもまだ解明はされていませんよ。

   色々と学説が飛び交っているぐらいですから」

  「一番有力なものを頼む」

  「へい。じゃあ生物の起源っスね」

  「生物は如何様に生まれたのか。まさか無から生まれたとは考え難い」

  「っスな。元々アミノ酸とかまぁ、名称はおいといて、食べ物に含まれている栄養は知ってるっスかね?」

  「食物には、生物が活動するに必要な物がある。それは、ワシ自身にも主にも言える事。

   それを奪う為に相手を食らう」

  「っスな。その通りっス。お腹すいたら食べる。単純にそれで活動するために必要なモノを取る。

   それが栄養素というものだったと記憶してるっスね」

  「うむ。名称もしっかと覚えたぞ。で、そのエイヨウソとやらが、生物の起源とどう関係するのか」

  「その辺りが専門知識になつてしまつてサッパリなんスよね。

   平たく言うと、そういう栄養素、空気中に含まれている色々な成分。まぁ栄養素の親戚と思ってもらえれば」

  「ふむ。それらが、何らかの条件下で生物の始祖が生まれたと?」

  「恐ろしく飲み込み早いっスね。そんな感じだったと。んでまぁ、単細胞生物。ん~・・・。

   ああ、スライムっスわ。あれの親戚みたいなものが海で生まれた。

    そしてその単細胞生物が、進化して・・・」

  「そこだ。何故進化するのか。どういう原理をもって、枝分かれしていったのか。それが判らんのだ」

  「ダーウィンの進化論っスねぇ」

  「ダーウィン?」

  「あ、あっちの世界の偉大な学者っスね。有力な進化論を提唱した。これは答えるのは簡単っスわ」

  「か…簡単なのか」

  「うス。勿論記憶に残ってる程度なので細かい部分まではちょっとアレなんスがね。

   あんまりダラダラ言う必要無さそうなんで簡略に言うっスわ」

  「…うむ」


うお!?更に顔を近づけた!!鱗がっ数数えれる程に接近してこわっ!!!

  「自然淘汰。これっスわ」

  「自然淘汰・・・成る程。その環境に適応する為に生物は様々な形を取っていった。で、良いのかな」

  「それだけでそこまで判るってすげぇ・・・。ちなみにそのダーウィンが格言を残しているっス。

   サザが好きそうな」

  「ほう!それは何かな」

  「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である」

  「・・・! 成る程。環境に適応し進化する者が生き残る…素晴らしい。ワシ等竜族は、知恵か力かの二択しかなかった。

   ありがとう若者よ。長い年月、曇り続けてきたワシの心が晴れた様だ」

  「いやいやいや!あっちの世界でも実際太古に行って見たとかそんなんじゃないっスから!

    ただ、地面の深い部分に昔の生物の残骸が石化していて、それを調べたり色々としてるんスわ」

  「主の世界には、賢者が多いのか。素晴らしい」

  「いやいや!俺どっちかってーとこっちのが好きっスわ。空気綺麗だし自然は美しい。食い物も美味い!」

  「・・・主の世界はそんなに汚れておるのか?」

  「汚れてるってモンじゃないっスよ。空気は汚い、海は油でどっろどろ。川は黒ずんで飲んだら病気になる。

   とどめに核なんて凶悪なもんまで履いて捨てる…棄てられないんスがね」

  「核?とは何かな?」

  「あ、この世界では想像すら出来ない代物っスな。そうっスね」

大体1mちょいだったよな。俺は腕を広げて見せた。

  「これぐらいのサイズで、一瞬で数百万の命を奪い。それどころか生きながらえた者もその毒性で時間をかけて殺す。

   そして使われた大地には当分草一本生えない様にする…まぁ魔法みたいなものっスわ」

  「恐ろしい力だ…主の世界はそんな強大な魔法があるのか。」

  「っスね。厳密には魔法じゃなくて数字と記号の集合体なんスけど。まぁ専門知識無いので追求しないでくださいっス」

  「む。判った。いや、想像以上に収穫があった。感謝する。さて…日も落ちてきたな。ディエラの元へ案内しよう

    ワシの背に乗ると良い」

  「マジっスか!竜の背に乗るとかどんだけドリーム!! 感謝っス!!」


俺は嬉々としてよじ登り首元まで来て、またがっ…れなかった。デカ過ぎだ。どこに乗ればいいんだこれは。

  「頭の上にくると良い」

  「いいんスか?」

  「構わん」

そして、俺は頭の上に移動した。おお、平たい部分があって座れるぞ! 首にまたがりたかったのが本音だが仕方ない!

  サザは俺が頭の上に来たのを確認すると、翼を広げて、数回羽ばたかせた。

  …うわ。羽ばたいただけであのデカい木がいくつもなぎ倒された。

  そしてズシッと重力が圧し掛かる。・・・きっつ!つか枝が痛い!!!斜め前に上昇してるらしく、枝がっ枝が!!!

  またしても傷を増やしてしまった・・・。

  数秒後、視界に入ったのは、既に日も落ちて、暗くなり月明かりに照らされて不気味さを醸し出した森。幽霊でそう。

  そういや、この世界月が二つ・・・俺はなんとなく空を見上げた。は!? なんで三つ!?増えてね!?

   「空の星が珍しいか? あの三つの内二つは、神々が封印された場所だ。場所というよりもそのものか」

   「マジスカ! 二つ分もいるって事になるっスか?」

   「古い話だ。人間・魔族が手を取り、神々と戦った。然し、神々の力は強く敗退が続く。

    そして、異界より現れた人間と、魔族の娘が出会い、子を授かった。

    その子供は繋ぐ力を有し、そして父親と…主等で言う所のリンカーフェイズを行い。そして母親と共に人間と魔族。

    そして、精霊・竜族をも纏め上げ、長い年月の果て。甚大な犠牲を払い神々を封印した」

   「そ…そうだったんスか。こっちの世界で知ってるのだと・・・」

   「人間の寿命は短い。伝え続けられる度に変わり続けた。それが今、主の知っている事になっている」

   「お、ぉぉおお。成る程! 助かりましたっス」

   「何。礼には及ばん。それに、主も異界の者。…神々の封印が近い内に解かれるのかも知れぬな」

   「いや、洒落になってないっス」

   「主がここに来た意味。何の意味も無く、世界を跨ぐとは考え難い。

    若者よ、エルフィ族を訪ね。雷竜ヴァランを探せ。奴もまた知を求めた竜。

    求めた物は、いずれ蘇るであろう神々の事。敵に勝つにはまず敵を知れ」

   「う…うス!必ず探して会いに行きます」

   「期待している」


何か、ドラゴンに期待されてしまったんですが。つか次は雷竜?…すっげぇ気性荒らそうだなおい!!!!

 ひょんな事から、過去が色々と鮮明にわかっちまったな。

 つかまともにリンカーフェイズ出来ないなんて言ったら怒られるだろうな・・・今。

   「若者、力は魔力や体力だけに在らず。知力もまた力である事を覚えておくといい。

    さぁ、ディエラの棲家に上空だ掴まっていろ」

   「お・・・うス!ってうぉぉぉぉぉぉぉぉオおっぎゃゃゃゃややぁっ!!!」

 物凄い勢いで急降下されて、空気が塊となって顔面に叩きつけられる。

 今多分、扇風機の前に顔晒した状態より酷い顔してんだろうな・・・。








  「どこにもいませんわね・・・」

  「ええ、これ以上の捜索は危険ですので、残念ですが、明け方まで待つしか」

  「・・・オーミ。どこなのよ」

  「こまりました・・・」


 あ~、こりゃ本当に赤竜にやられちまったかな?大した素質はあったんだが、残念だ。

 アタシは、ディエラの傍で落胆するメディ達を見てこういった。

  「あちゃ~。赤竜にやられちまったかな」

  「シアンさん、それは無責任ですわよ!」

  「同感です。会長、いくらなんでもそれは」

  「義姉さん!!」

  「酷いです・・・」

あーもう、ここで死んだらどの道この先、生き残れないってのに。

  「大丈夫だよ、ありゃ殺しても死ぬ様なタマじゃない」

  「…?それなら大丈夫ですねぇ・・・」

お?ディエラが何か知ってるのか?全員がディエラの方を向く。


  「ほっ…本当ですこと!?」

  「ですが赤竜の事もありますから・・・」

  「ディエラさん。どうして大丈夫ってわかるの?」

  「き・・・きになります僕」

確かに気になるな。何故大丈夫なのか。


  「もう…ここは隠者の森。…争いとは無縁の場所ですよ。

   世に飽きて、残りの余生を静かに暮らしたい者達が種族も関係無く…心静かに今際を待つ森」

む・・・そうだったのか。魔族が住んでいる森としか、アタシ達のとこでは知られていないぞ。

  「あら、そうだったんですの? 魔族が住んでいる森とだけしか、私達は認識していませんでしたわ」

 

そうだな。全員がリセルの言葉に頷いた。


  「もう・・・ちゃんと調べておかないと駄目ですよ・・・? 人間は言い伝えばかり気にして…。

   それが常に真実であるという確証も・・・無いのに。」


耳が痛い。


  「それに・・・ほらぁ」

ん?ディエラが空を指差した。アタシを含め全員が空を見・・・うおあっ!?

 空というよりも、かなり向こうの方から降下してくる竜。その頭に必死でしがみついてるのは…おいおい。

  「あー。驚いた。これは驚いた、赤竜の頭の上にオオミ君しがみついてるよ。結構な速度なのか凄い顔してるが」

  「本当ですの!?ねぇシアンさん!!」

  「会長の目は確かですからねぇ。間違い無いでしょう」

  「オーミ…よかったぁ」

  「竜に乗ってくるって・・・」


  「だからぁ…もう。彼はとても聡明で物静かな竜なのよ…?」



ん?近づいてくるのはいいが、衝撃がやばくないか。あの速度でここまでくると。

 と、思ったら結構向こうの方で、翼で空気の抵抗を受け始めたな。

 段々ゆっくりと、こっちに。 ふう。何はともあれ。ようやく任務の半分終了か。

  取り合えず、腹いっぱい飯食って寝るぞ!アタシは。

十一話最後まで読んでいただきありがとう御座います。

 次回は雰囲気を重視した作成となります。

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