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第十話「鬼」

これで二桁入りました。

十話目の投稿となります。 お気に入り登録して下さる方も増え、評価点までいただいてありがとう御座います。大変励みになります。

…む。ん?動くな。少し回復したのか。

 俺は仰向けになり、大きな葉をつけた木々の隙間から見える空を見る。

 ほんのりと明るくなって来ている所を見ると、明け方か。…然し体中がきしむ様に痛い。

 酷い筋肉痛だ。まぁ、あんだけ走れば当然か。全身の力を使って走るなんて初めてだよ全く。

 疲労が過ぎると、空腹を訴えないモノのはずだけど、

 それすら超えると腹が減るのか…胃が痛いぐらい締め付けられて腹の虫が鳴る。

 しかし、目の前にあるのは、肉というか既に鉱石と化した元・肉。

 …これから帰るまで自分で全て採る必要があるわけで。その元肉を見て一つ思い出した。

 これをエルフィ族は武器にも使用している。 転がっているのは二つ。

 重い体を起こして、それを手に取り、眠い目をこすりつつ、

 その二つを強くこすり合わせてちょっとした刃物を作ろうと試みる。

 …なかなか砥げないってか、磨り減らないぞ?なんという頑固な元肉だよ。

 

  「そいつはな、縦になら比較的簡単に割れる性質がある。片方を地面に立てて埋めて、叩いてみな」


成る程…ってん?姐御おきてたのか?流石に早起きだな!まぁ、早速試しに立てて、ガンガン叩いてみた。

 おぉ!割れた。気持ちいい程真っ二つ。これなら直に砥げそうだ。


  「そうだ。そいつの両側やらまぁ好きに加工してみるといい」

慣れてんのなぁ、やっぱ。 ガシガシとやはり先の部分をひたすら砥ぐ事20分程。

 まるでリセルの様にツンツン尖った槍の穂先になったわけだ。

  とりあえずこれで削ったり切り取ったり可能になったわけで。

  

  「よく気が付いたな、教えようと起きてきたんだけどね」

  「いや~なんとなくっスけど」

  「アンタの世界にもこういう武器があるんだろうね」

ああ、日本刀やらまぁ色々あるな。

  「ええ、とてつもない切れ味を誇るカタナというモノとか色々あるっスよ?」

  「カタナ…?」

  「色んな鉱石を火で鍛えて…だったスかね?製法は俺も良く知らないっスけど。

   名刀とまで呼ばれるモノの中には、鉄…はあるっスねこの世界。

   それで作られた兜を割るぐらいの切れ味を持った武器っスわ」

  「鉄を斬る様な武器だって?惜しいな、その製法知っていたら、どれだけイグリスの武器が強化された事か」

  「すんませんっス。というかそんな武器を打てる職人も、俺の世界にもほんの数人なんスわ」

  「成る程。そういう事か。なら仕方ないね」

  「アンタの知識は色々と今後聞いた方がいいのかもしれないな。もしかしたら戦力になるかもしれない」

  「あ、はぁ。でも勉強嫌いっスからあんまり知らないっスよ?」

  「ん?あはは!アタシも机の上はてんで駄目さ!気持ちは判るよ」

・・・ああ確かにもろに体育会系って感じだしな。俺は出来上がった元肉の取っ手の無いナイフをまじまじと見ている。


  「よし、次はこっちだ。」

と言うと、傍にあった木。結構見かけるやたらデカい葉をつける本体もデカい気になる木。

  「こいつはな、削るとすぐに樹液が出てくる」

あ~…ゴムの原料だったり、糖質の高いモノだったり様々だよなぁ。

  「で、このフィリドって言う獣なんだがアレは、まぁそれから焼いて加工した物の用途は三つ」

ん?二つじゃなくてまだあるのか?

  「この樹液をそこらに落ちてる枝や枯れ枝につける。

    んで地面に集めて置く、そしてコイツを近くで叩き合わせると火花が出る」

・・・火打石かよ! どんだけ万能なんだあの動物!!

  「こいつで暖を取ったりする事が出来る。覚えておくといい。この木は結構生息範囲が広いからな」

  「成る程っス。てかシアンさん。妙にこういう事に詳しいっスね」

  「ん?ああ、普段鍛錬の為に近くの森に住んでるからさ」

うーわー…どうりで屋敷に居ない筈だよ。山篭りじゃなくて森篭りかよ!!

  「いや、鍛錬はいいんスけど、あんな小さくなってしまうのに、意味あるんスか?」

  「あはは!小さくなつてもアタシはアタシだってことだよ」


どういう意味なんだ…。全く判らん。

  「まぁ、食い物は自分で何とかするんだよ。これを教えるのはアンタの為にはならない」

  「一番肝心な所じゃないっスかそれ!!」

  「何を言うんだい。一番肝心なのは火と道具だよ」

まぁ、・・・確かにそうか。

  「後はアンタがこれをどう使うか、生きる為にどういう選択をするか…だ。」

  「okっス」

  「アンタ、たまに意味不明な言葉使うな」

  「あ、すんません」

  「まぁいい、じゃあちっと食料調達にいくかね。 ちなみにアタシについてきたら…殴るよ」

  「ぐえ!やっぱりっスか」

  「当たり前だ!さっさと行け!!」

  「へいへいへいへい!」

半ばヤケをおこして、森の奥へと歩き出す俺。・・・取れるのか?






  「さて、ちゃんと出来るか見てやらないとね」

 アタシは、こっそりと後を付ける事にした。一応見ておかないと危ないったらありゃしないからね。

  早速彼が見つけて近寄っているのが、川というか小川。 川魚を採ろうとしているか、難しいぞそいつは。

  魚を舐めてると一生捕まえられない。


  「お~…魚がいるぞ! これは食えそうだ…が釣竿も無し餌もなし。銛を作ろうにも紐も無し。

   周りを見回しても蔓も無し」


 手で掴むのは至難だぞ。さぁどうするオオミ君。道具を作り変えようにも、ここにはそれの材料も無い。

  アタイなら、そのまま川から魚を弾き飛ばすが…流石に無理だろう。諦めて別の所に行った方が体力の…む?

 小川の川下に石を運んでいるな。…ああ、成る程流れをある程度せきとめて水量を減らして捕まえる…か?

 中々どうして大した選択をするじゃないか。だが、水量を減らしても魚は掴み難いぞ?


  「良し、これで後は掴み取りを…くそ! 早いな! つか昔にヤマメの掴み取りやったが、こんな早かったか!?

   養殖と天然の違いか!? くそ!」


 小川で転げまわるオオミ君を見て、必死で笑いを堪えるアタシ。あんな音立ててたら一生無理さ。

 

  「畜生。これじゃちっと無理だな。投網でもありゃ一網打尽なんだが・・・ああ」


 何だ、諦めたのか、小川から上がったな。って何を上着を脱いで。…?

  上着とシャツを結んで繋いでるな。それに大きめの石を巻きつけて…ああ、投網か!

  以外に賢いじゃないか。アタイは力技だが、場にある物を使うのが巧いねぇ。


  「こいつでどうだ!おりゃ!!! ・・・おっしゃ!うまいこと服の中に絡まったっつーかハマッたぞ!飯ゲット!!」


 ほ~。早速採ったじゃないか。アタシはまた、木の実とかそっちに走ると思ったんだがね。

 それを飛び越していきなり魚か。 もしかしたら動物も捕獲出来るんじゃないか?

 

  「よーし!全員分の食料捕まえて見返してやるぜ!姐御を!!!」


 …姐御ってだれだよ。アタシか? てか腹ン中でそんな呼び方してたのか?アイツは。

 まぁいいか呼び方は自由だ。ほう勢いよく採るねぇ。


  「12匹か。まぁこんなもんだろ。採り過ぎて食い残すのもアレだろうしな」


 お、満足したのか、上がってきたな。12匹。短時間で人数分集めるとはね・・・いや中々どうして。

  アタシは思わず彼の元へ行き、頭をガシッと掴んで撫でた。

  「中々やるじゃないか!川魚を捕らえるのは非常に難しいんだがな!」

  「シアンさん!?見てたんスか?」

  「たまたま通りがかっただけださ。にしても、その採り方は誰かから学んだものかい?」

  「あ、いや、子供の頃に虫を捕まえるのに、網が破けて、服を代わりに引っ付けたの思い出していけるかなと」

  「成る程!修繕をそのまま網に転用したのか。 いや、驚いたよ。小川があるところでは大丈夫そうだな」

  「う・・・確かに小川じゃなかったら無理っスね」

  「アハハ!まぁまたアンタなら、その場にあるものでなんとかするかもしれないな!」

  「が…がんばるっス」

  「ああ頑張れ! じゃ朝の食料はそれでいいな。戻ろうか」


そういうと、持っていた木を削った入れ物に水を汲み、ずぶ濡れのオオミ君を連れて、野宿していた所へ戻った。

 どうやら皆もう起きている様だな。中央にいる。

  「おはよう! さて、意外にもオオミ君が早速人数分の食料採れたよ」

全員が驚いて彼を見る。そりゃ当然か、経験の無さを知識でカバーして採ってきたんだからなぁ。見事なもんだよ。

  「オーミ凄いねぇ。魚取れたんだ」

  「な…中々やるじゃありませんこと?」


 アタシは軽くリセルの頭を掴んでこう言う。

  「ただの一度も魚を取れなかったリセル君が言う台詞かい?」

  「しっ…しりませんわそんな事!」

  「シアンさん・・。然し、本当に凄いですね。いきなり生き物を捕らえる…一体どうやったのでしょうか?」

  「本当だね。僕も無理だったのに」


  「あはは!アタシも驚いたよ。銛の材料が足りないと見るや、服で網をこさえてしまったからね!

   まぁ、服を蔓のかわりにも出来たが、銛の使い方も知らないだろうから正解を選んだと思うよアタシは」

  「ん?そういえばそうだった!服で固定すれば銛になってたっスね・・・」


  「…オオミ君。アンタは頭良いのかバカなのかどっちなんだい」


と、言うとオオミ君を除いた全員が笑う。そして、焚き火に、枝で串刺しにした魚を立てて焼き、朝食を取った。


  「さて、腹も膨れたことだし、今日中には森に着く様にするよ?オオミ君は引き続きその荷物を背負う事。いいね!」

  「うげぇ…」

  「問答無用だ!なんなら更に重い物詰めてやろうかい!!」

  「勘弁してくださいシアンさん!!!」


そしてアタシ達は、野宿した所を片付けてその場を後にし、目的地へと再び歩き出した。








  「そろそろ着く頃の筈です。」

  「ほう?そのドールとやらかね?」

  「はい。レガートでも優秀なリンカーを連れてきている様で御座います」

  「ふむ。然し気になっておったのだが、人為的に魔人を進化させるとは、具体的にどの様なものなのかね?

   私には皆目検討もつかないのだがね」

黒髪を短く整え後ろに纏めた黒服の男。ケルドに尋ねた。

  「は。それはメディの様な者を人為的…というよりも後天的に生み出す事で御座います」

  「ほ!つまりあれ程巨大な力を引き出せる者を…人為的に生み出す事が出来たと?」

  「まだ実験段階らしく、不安定でございますが。その試作がこちらにそろそろ届く頃かと」

  「成る程…しかし如何にしてメディの様な異才を後天的に作り出すのか。興味があるな…」

  「はい。然しながら調べ上げることは現状困難で御座いまして」

  「ふむ。そうか、まぁ…仕方ないな」

  「は…」


暫く静まり返る私室に、ドアを叩く音が響く。

  「誰だね?」

  「・・・」

  「失礼、ケルド殿より招かれた者がイストル様に面会を求めておられますが…」

  「どうやら到着した様ですね。私が迎えにいって参りましょう」

  「うむ…」

足早に私室を出ていき、そのドールとやらを迎えに行ったケルド。

 さて、どれ程の者か見てくれようか。 

暫くして、再びドアをノックする音が聞こえ、私は入室許可を下した。

  「ただいま戻りました。この二人がそうで御座います」

  「ほう・・・」

リンカーの方は、まぁ…確かに優秀そうではあるが。

 肝心のドールの方はどうした事か。まるで生気が感じられない。それもまだ年端もいかぬ子供ではないか。

  「先方は舐めておるのか?」

  「いえ、既に第一試験で、数十名のリンカーフェイズした者達を軽く倒してみせたと聞いております」

  「ほう。…リセルの様な前例があるからな、良かろう。問題はいつ事を起こすか…だな。」

  「明日の朝にオリエとナグアが任務に向かいますので、その後で宜しいかと」

  「ふむ…三日目か。一日あれば十分か。よかろう。指示は一任する」

  「は…お任せ下さい」

  「では、下がってよいぞ」

  「は…失礼致しました」


三人が出て行くのを確認すると、私はゆっくりと皮製の椅子にもたれかかり、天井を仰ぐ。

 ふむ。厄介だな、アレが完成すれば。レガートが手に負えない強国となってしまうでは無いか。

 然し、あの技術は欲しい。さて…どうするか…。









  「ぐぇ~…重過ぎる」

ただでさえ重い荷物。

  「ほら!歩くペース落ちてるぞ!」

  「いや無理っス!潰れるっ圧死するっ!!」

  「口が聞けるならまだ大丈夫さ!」

  「いや…シアンさん? でもこれは・・・」

  「何がだい?男の子が情けない」

  「いや…!メディとリセル乗せるとか勘弁してくれ!おもすぎぶっ!!?」

重過ぎると言った瞬間、俺の頭部にカカトが降って来た。考える必要も無いリセルのだろう。

  「女性に対してなんて事仰りますの?このお馬鹿は」

  「リセル…総重量の問題じゃないの?」

  「どちらも一緒ですわよ」

てめぇ…。あろうことか、更に重しとは、メディとリセルを乗せる事だった。確かに砂鉄が敷き詰められたリュック。

 それもかなりの大きさ、人間が座れない事も無い。が・・・死ぬ。キツ過ぎる。

 俺は上半身を大きく前に倒し、必死で後ろに倒れない様に全力で耐えて歩いている。

 …総重量200kg近くいってねぇか…潰れるっ潰れちまうぅぅぅぅぅぅぅっ。

 さっきずぶ濡れだった服が、体温で完全に乾き、今度は汗でずぶ濡れになっている。

 搾ったら絶対濡れ雑巾の様にボタボタボタボタ汗が取れるぞこれは…っ!


  「何か汗臭くありませんこと?」

  「リセル…それは」

  「リセルさん。下でオオミさんが必死に耐えてるのですから…少しは気を使ってあげてはいかがでしょうか?」


お~その通りだぞリカルド…もっと言ってやってくれ!

  「知りませんわ。あ~風が気持ち良いですわねぇ」


この女…どこまでコイツ…ツンばっかでちっともデレやしねぇ。肉の無い焼肉なんぞ嫌過ぎるぞ。

  「ほら~さっさと歩きなさいな。ペースまた落ちてますわよ?」

  「うるせぇブス」


  <ドコッ>


鈍い音とともに、俺の頭の上にリセルだろう足がまた降って来た。今度は蹴るでは無く、踏んで捻ってやがる。

 こいつ…人の頭になんつう…。もう我慢の限界き・・・

  「限界きたかい?」

  「げ・・・」

表情で姐御に読まれてるっぽいな。くそう・・・。

 つうよりもだな。ペースが落ちてるというかだな。




    「峠登ってんだからそりゃ落ちるわ!!!!!!!!!!!!!」


思わず絶叫してしまった。

  「アハハ!そりゃそうだ!だがもう少しだほれ!あそこまで登りきれば、森まで跡はずっと下りだぞ頑張れ!」

  「いや、シアンさん…そういわれても。 もう…ゴールしてもいいよね?」

  「まだイグルスまで半分も着て無いじゃないか!何がゴールだい全く」


そうだった。世界が違うんだった。無意味なボケは無駄に体力を使うからやめておこう。無心で登るんだ俺。

  

  「そういえばシアンさん。森についたとして、赤竜はどちらが倒しますの?私とリカルドが頂いてよろしいのかしら?」

  「そうですね。滅多にお目にかかれませんからね。赤竜は、会長…特に体が疼いてらっしゃると思われますし」

  「ん?ああ、構わないさ。アンタ達がやりな。アタシはあのイストルの悔しがる顔が見れたらそれでいい」

  「そうですの…そこは私達も同じですわ。 では私達が赤竜を倒しますわね」


何か、なんつーか、そんな譲り合いする程、余裕ある相手なのかよ。俺達だと確実に死ぬとかいっといてよ。

 あれか?俺とリセルがLv1としたらそっちは50とかか?既にラスボス倒せるLvとかか?くそう。

 リンカーフェイズしただけで強くなって俺無双かと思ったら…精神力。MP足りませんと来たよ。

 しかもMP増やすのにこれか? リアル魔法使いはどんだけムッキムキのマッチョなんだよ。

 …ぜってぇ見返してやる。


  「おー。その目だその目。そんぐらいギラついた方がいいねぇアンタの場合。」

 つうか、気になったんだが姐御。微妙に言葉遣い荒くなってないか?最初に会った時と何か印象が…。

 まさか公私使い分けてるとか。そういうタイプなのか? …肉弾タイプに似合わない事を。

  「あ、大分見えてきましたわね。」

  「あ、ほんとだ。オーミもう少しだよ頑張ってね」

  「ほれほれ!もう一息で楽になるぞ?」


本当に楽になる…のか? 本当か? 実は登りよりも、下りの方が辛いんだぞ?登山は。

  「う…嘘つけ。下りの方が倍してキツいっスよ。重量が…前にかかって」

  「そりゃそうだ」

 さらりと言うな姐御!!

  「普通に行けばそれはしんどいさ。何も歩けとはいっていないぞ?」

  「走れと?」

  「ああそうだ。今度は森まで一気に走っていけ! 怪我するからメディとリセル君は下ろすけどね」

  「鬼…っ!アンタ鬼だよ!!!!」


  「あら?オオミ知らないのかしら?シアンさんは、学園では鬼のシアンと呼ばれているわよ?何を今更」

  「んな事早くいってくれよ!!!」

  「ははは、まぁ諦めて頑張って下さいねオオミさん」

リカルド…お前までか。

  「シアン義姉さん、言ったら事は曲げないからねぇ」

  「ですね…僕も長いこと傍にいるけど。一度も曲げた所見た事はないです」


死刑宣告きたこれ。

 何かこの峠。普通に歩いたら、周りの風景見つつ歩けば凄い良い所なんだろうが…。そんな余裕すらなく、目の前にあるのは地面のみ。

 最早峠が13階段に見えてきたぞ・・・!頂までいったら…あとは落ちて死ぬんだな俺は。

  

そんなこんな、周りの雑談無視して、登り続けた俺は、ついに頂までくる。ついに処刑台のてっぺんきちまったよ。

   「いつきても、綺麗ですわね。この眺め。」 

   「うわ~綺麗。」

   「素晴らしいですねぇ」

   「うん・・」

   「お…ま…え・・・ら」

何かもう涙出そう。然し、大分重量が減ったので、俺も遠くを見てみた。

   「うぉ・・・!」

これは確かに声が漏れる。360度見渡す限り、緑の大地の大パノラマ。

 恐ろしく遠い所まで良く見えるのも相まって、余計に大きくみえる。

 何やら、遺跡っぽいのもちらほらと見えていたり、大きめの川が目に付く。

 その川を目で追っていると、一際大きい森にまるで団子の様に串刺しになって貫通し、水平線の向こうまで続いている。

 まて!森とは聞いてたが、あの森なのか!? イグルドの街の何倍もデカいぞアレ!!富士の樹海かよ!!

 すっげぇ嫌な予感がしてきた。大体RPGで最初に出てくる森は、迷いの森なんだよな。

 てことは、アレもそうなのか? いやだ…いきたくねぇよ。


 「よーし、あと歩いて半日って所かな? じゃ景気良く…」

なんだよ姐御。

 

         「行ってこい!!!!!!」


      <ドカァァァァァァァァァァッ>


 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああっ!!!」

  「義姉さん!?」

  「うわ~…ご愁傷様ですわ」

  「やられてしまいましたね」

  「目も当てられないです…僕」


不意をつかれ、後ろからおもっきり蹴られ、その反動で峠の下りを強制的に走らされた。

 止まろうにも止まれない暴走特急。 ヘタに止まるとこけて重量が重量だ大怪我をする。

 ひたすら耐えて降りる所まで降りて自然に勢いがなくなるのを待つしかない。

 なんという遠慮の欠片というか安全性の欠片も無い鍛錬だよ!!!! 


 もう、・・・考えてる余裕ねぇぇぇぇぇぇぇえええええええええっ!!!!!

第十話 最後まで読んでくださりありがとうございます。

 三話続いた、森への旅路もこれで終了となります。

次回から、魔族や、赤竜・ドール等色々と展開が忙しくなってまいります。

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