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予想外の真実~エーベルハルト視点~

 オルトルートがテントに引き籠った頃、エーベルハルトは別の意味で頭を抱えていた。側近三人も難しい顔をしている。

「何ともまぁ、予想外な状況ですね」

「予想外にも程度があるだろう。トゥーナ侯爵は一体何を考えているのだ・・・・・・」

 エーベルハルトは自身が秘術の使い手と知られた事で頭を抱えているのではない。オルトルートが『秘術の使い手だった』と知ってしまった事に頭を抱えている。会話で判明した事だが、怖ろしい事に彼女は王家の秘術の存在そのものを知らなかった。

 強化の術が一般的な魔法ではないと理解して使用を控えていた事がせめてもの救いか。いや、回復魔法に関しては既にあちこちで使用していた。無知のお陰で、エーベルハルト自身もその恩恵に与っているので、今になって『何故治した?』などは言えない。

「それで、彼女をどうするつもりなんですか?」

 気分転換のお茶を全員に淹れたクルトに問われる。問われたエーベルハルトはお茶を一口飲んでから回答した。

「・・・・・・どうもこうも無い。父上に報告して、城で保護する以外の扱いは無い。シュヴァーン王国に保護し損ねた事で外交問題にされたくもない」

「知らなかった事には・・・・・・」

「出来んな。虚偽がバレたらシュヴァーン王国が何を起こすか分からん」

 クルトの思い付きをエーベルハルトは一刀両断した。

 シュヴァーン王国では国王以外に秘術の使い手がおらず、仮定になるが、孫の代で見つかったら次代の王に無理矢理でも据えられるだろう。

 その無理やりにでも次代の王に据えられかねない人物がこんなところに居る。

 外交問題にしたくないのならば、保護の名の許に王城に連れて行くしかない。仮の話、本人が嫌がっても。


 

「そうか・・・・・・」

 森から帰還して一夜明け。滞在している辺境伯邸の客室の一室で、クルトからの報告を聞いたエーベルハルトはため息交じりにそれだけ返した。

「それだけですか」

「他に何と言えと?」

 フリッツからの問いに、エーベルハルトは逆に問い返した。問われたフリッツは顎に右手を当て、少し考えてから回答した。

「・・・・・・それもそうですね」

「納得してどうするんだよっ!?」

「では、クルトは他に妙案が浮かんだのですか?」

「無い――あだっ!?」

 フリッツに突っ込みを入れたクルトだが、ブルーノに問われて即座に『否』を返す。直後、エーベルハルトの拳がクルトの頭に振り下ろされた。

 痛みでのたうち回るクルトから、三人が視線を外すと同時に机の上に置かれていたものが光った。光が治まると一通の封筒が出現した。三人を手で制して、エーベルハルトが封筒を手に取り裏面を見る。王家の、それも国王以外に使用出来ない国章入りの蝋封緘で封された封筒。

 エーベルハルトは封を切って、手紙を取り出す。手紙に目を通せば、やはり彼の父親である国王からのものだった。

「シュヴァーン王家は随分と必死だな。接触した事を教えただけで、訪問したいと連絡して来たそうだ」

 呆れ顔のエーベルハルトからシュヴァーン王家の反応を聞いた三人は、何とも言えない微妙な顔をした。

「必死過ぎですね」

「城にいる訳でも無いのに来たがるとか、どんだけ・・・・・・」

「先走り過ぎでしょう」

 ブルーノ、クルト、フリッツの順に感想が漏れた。

「時間的に十日以上の猶予が残っている。その間に考えれば良い」

 纏めるようなエーベルハルトの一声に反対は上がらなかった。

 

頭を抱える堅物王子と側近達の一幕になります。

クルトの言動が『側近』としてはおかしいと思った方、こいつはこれで良いのです。クルトはオルトルートと同じ事情を抱えているので。

次回、オルトルート視点で一章終わりとなります。

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