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プロローグ

 菊理の記憶を取り戻したのは幼い頃。貴族の家に生まれたが、家を出る日まで一度も誕生日を祝われなかったので、誕生日は忘れた。

 体が弱かった生みの女は五歳になった頃にこの世を去った。元々体が弱くて嫁ぎ先決めに困り、貸しを作ったとある侯爵家に『借金の清算』として送り出された。公爵家に生まれて育つも、生まれ付き体が弱いと言う一点だけで、好いていた男との縁を強制的に断たれ、無理矢理政略婚させられた。

 我が儘だった女は相当キレたらしい。何せその政略婚の相手は『平民の愛人』との間に子供を作っていた。女はお邪魔虫だった。

 好いた男と別れさせられて、愛人を囲う男に嫁がされ、社交界では不憫な女と笑われる。

 踏んだり蹴ったりな状況で子供を一人産んだが、産まれたのは女の子。男を産めば見返せると息巻いていたのに、まさかの事態に女は発狂し、産んだ子を何度も殺そうとした。

 この女の子が自分――オルトルートだ。まぁ、産みの女の殺人未遂で菊理としての記憶を取り戻したから、名前はどうでも良い。

 度重なる凶行の果てに、女は自らこの世を去った。

 残された自分は初めて会う父親を名乗る男の手で、王都から遠く離れた領地の館の一つに押し込められた。

 記憶を持つ自分にとって、隔離される程度はどうでも良い。寧ろ都合が良い。

 定期的にやって来る家庭教師から色々と学んだ。来ない日はこっそりと抜け出し、野山に生息している魔物(存在する世界だった)相手に修練を積む。

 一番ありがたかったのは、この世界が『誰もが魔法を使う世界』だった事か。

 これも家庭教師から教わった事。魔法に関する事は『魔力の暴走を防ぐ為』と言う名目で教わり、山のような教本を貰った。参考にならなかったけど。

 あと、古代語と言うものも存在する・・・・・・するんだけど。

 地球の知識がある自分としては、

『古代語=ドイツ語。でも文字は違う』

 この法則に気づいてしまったので、何とも言えない微妙な気分を味わった。人名もドイツ風。国名も殆どがドイツ語。歴史が在ると強調する為だ。

 でも、英語が現代新用語なのか魔物名や魔法名は全部英語。ごちゃ混ぜ過ぎないか? 調査結果、この疑問の回答は得られた。納得出来る理由が有った。

 厄介な事に、この世界では極まれに『転生者』と呼ばれる存在が生まれると『認識』されている。転生者は知識を国に献上して、国家繁栄に協力するのが使命とされていて、判明すると身分問わずに王城に連れて行かれる。下手をするとそのまま監禁生活だろうね。

 この過去の転生者達は男女問わずに魔法に特化したものが多く、魔法の殆どはこの転生者達の遺産。転生者でなければ使えない魔法(英語)も存在したと記録に残っている。魔物の名前はこの転生者達が『呼んでいた固有名称(英語)』をそのまま魔物の名として使用している。転生者の中には、魔物の図鑑を作った猛者もいたので名称は英語風で統一されている。転生者は現代にも数名いるので、未知の魔物は彼らが名付けている。この理由は英語を知る人間がこの世界にいないからだね。

 この転生者か否かを調べる儀式、平民は富裕層でもない限り調べないが、特定の歳になった貴族は全員転生者か調べるのが国法で決まっている。

 そんな決まりが存在するんだけどね、自分は十二歳の頃に『ギルドで仕事が出来る年だから』と、家を追い出された。

 なので、自分が転生者とは誰も知らない。

 ちなみに、罰則が存在するらしいが、問答無用で追い出した自称父親が悪い。

 荷物(教本込み)を纏めて、産みの女から唯一受け継いだペンダントを持って家を出た。このペンダントは白鳥が刻印されたアメジストに似た紫色の宝石で、どう言う訳か魔力が込められていた。これを持って出たのは売るに売れないから。売ったら絶対に窃盗品と間違えられる。

 その後は予定通りに、薬師ギルドや冒険者ギルドで講習を受けて冒険者になった。登録名はオルトルートのまま。万が一を考え、偽名登録とバレると面倒だから。それに本名ではない冒険者名の登録は受け付けていないと断られた。ビジネスネーム(偽名)持ちは間者扱いされるから諦めた。

 薬師ギルドで講習を受けたのは、ゲームや漫画で登場する『回復ポーションなどの回復薬品』の製作方法を知り、製作に関わるあれこれの登録類をする為だ。

 面倒な事に、薬師ギルドで登録したもの以外が医薬品を製作すると罰則を受ける羽目になる。個人使用も対象になる。罰則類が厳しいのは、過去に無登録でやらかした奴がいたから。何て面倒臭い事をしてくれたんだか。

 自分も登録と講習を受けるだけで面倒事が減るのならばと受けた。

 特典として、購入する材料費が安くなるし、作った医薬品の販売も出来るから、あれこれ作っても『試作品』と言えば怪しまれない。

 でも、武具を作ると怪しまれるのでは? と思ったが、この世界の冒険者は『剣の刃毀れ程度』なら『修繕魔法』と呼ばれる魔法を使い自力で直してしまう。凝り性な奴は自作もする。だから、自作で武具を作っても怪しまれない。

 都合良く自分に有利な条件が揃った世界だ。薬品については色々と研究がしたかったから、本当にありがたい。

 魔物の討伐で冒険者としてのランクを上げつつ、薬品の開発研究をしていると気づけば三年が経過していた。

 冒険者のランクは金銀黒白紫緑黄赤青の九階級存在する。最上位が金級。初心者は青級。

 冒険者も登録するだけで提携宿の宿泊代の割引や乗合馬車のタダ券や割引券が貰えたりする特典が存在する。自分の場合移動は魔力駆動のバイクがメインだから、主に利用するのは宿泊代の割引と、自由民の権利。

 自由民とは、黄級以上で得られる『国家間を自由に行き来が可能になる』パスポートとビザが一緒になったようなものだ。簡単に言うと『入国許可証を兼ねた旅券』と言えばいいか。

 冒険者のランクに関わらず黄級以上で割と遠くに行ける。

 自分は冒険者になってから半年程度で黄級にまで階級が上がったので、早々に故国シュヴァーン王国から立ち去った。

 そして、あっと言う間に三年が経過した。気にした事はない。何度かパーティを組まないかと誘われたが『研究がしたいから』と断った。

 何時も探している尋ね人もいないこの世界で、どんな風に生きて行けばいいのやら。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

一章分書き上がり、お蔵入りにするにはもったいないと判断し投稿しました。

このまま連続投稿して、完結状態にしようかと思っております。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小説における三点リーダーの使い方は『……』が正しいんですよ 中黒で代用は正直言ってオススメ出来ません 読みやすさに直結するので、小説の書き方の基本は押さえておいたほうがいいと思います
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