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8.別れ

町に戻るやいなや

「リリー!」

私を呼ぶ声がした。


「セレナさんが探していたよ、どこに行っていたんだい?」

八百屋のおばさんだ。


「すぐに戻るわ。ごめんなさい。」


走っていくとガロンが声を掛けてきた。

「リリー!はぁ、ようやく見つけた。はぁ、、はぁ、、、。

おばさんもすごく探してたんだぞ!すぐに帰ろう、おばさんには家で待つように言ってあるから。」


「そう、、、すぐに帰るわ。迷惑かけてごめんなさい。」


戻ろうとすると、ガロンも付いてきた。

あぁ、ガロン怒ってるな。

ガロンは何も言わない。

いつも明るいガロンは怒ると何も言わなくなるんだ。


家の近くに来ると母さんが私の名前を呼びながら走ってきた。

「リリー!どうして戻ってきたの?

いや、違う!あなた何をしているの?こんな手紙をおいて勝手に家を出てどういうことなの!」


「母さん、、、ごめんなさい。」

私は思わず涙が出てきた。


他に言うことがいろいろあるはずなのに、なんだか胸の中がぐちゃぐちゃしている。


「母さん本当にごめんなさい。私薬師様の弟子になりたいの!お願い。」

すると突然バシンッと大きな音と、両頬に痛みが走った。


「そういう大切なことはこんな手紙に残してこそこそするんじゃなくて、はっきり言いなさい。

私はリリーがやりたいことを反対するつもりはないわ。だから夢があるならちゃんと言ってちょうだい。」


「…はい」


母さんは私のことを強く抱きしめてくれた。ちょっと苦しい。

あぁ、涙が溢れて止まらないよ。


「それでギイ様に弟子入りを断られたの?」


あの薬師様の名前ってギイ様って言うんだ。知らなかったわ。

首を横に振る。

「ちゃんとお別れしてきなさいって。」


「そう。なら私もギイ様にちゃんと挨拶だけはさせてちょうだい。」


母さんは何やら準備のために一度家の中に入って行った。


私はガロンに向かった。


「突然でごめんね。何も言わずに行こうとしたのも謝る。ごめん。

それと、昨日のこともごめん。」


本当は昨日ガロンから何かを伝えられたわけではない。

しかし前回のことを思い出したのだ。


私は彼の気持ちに答えることはできない。


ガロンは辛そうな表情を一瞬見せた。しかし

「応援してるから。たまには帰ってくるんだぞ。」


「一人前になれたら戻ってくるわ。その頃にはガロンもパパになっているかもしれないわね。」


「っ。…どうしても行くのか?なんでだよ!薬師になりたいなんて一度も聞いたことないぞ!」


そりゃそうだ。薬師になりたいなんて昨日まで考えたこともないからね。

私は何も言葉にできずただ笑った。


「お待たせ!さぁ、ギイ様の所へ行きましょう。」

すぐに母さんが戻ってきてくれたので、この気まずい空気が払拭された。


「じゃあね、ガロン。私いつかまた帰ってくるから。」


「体に気を付けろよ。」


「ありがとう、それじゃあ。」


私たちはそれで別れた。


前回は結婚の約束をしてもその約束は果たされることはなかった。

でも今回は必ずその約束を果たすからね。私そう心に誓うと母さんと一緒に歩き出した。


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