5.薬師との出会い
息を切らせながら町はずれまでやってきた。
木々が生い茂り、木の実がなっている。帰りに摘んで行こう。
隠れ家は川沿いにある。誰も使っていない小屋を、遊んでいたら偶然見つけたのだ。
それ以来子供たちの隠れ家になっているが、この場所のことは大人たちも知っている。
ガロンは川で魚を釣っているところだった。
「遅くなってごめんね。」
私が声を掛けると、手を挙げて答えた。
魚が1匹だけ釣れていた。
すでに火をおこしていたようで、釣った魚をさばいて焼いてくれた。
私の腰ほどの高さがある岩に座ってお昼ご飯を食べ始めた。
岩は固いけれど、太陽の光で温められて気持ちいい。
ガロンはカツサンド、私はレタスとトマトとチーズにかぶりついた。
こうして自然の中で食べるご飯はいつもよりも美味しく感じてしまう。
デザートのフルーツまでぺろりと平らげてまったりと過ごした。
「久しぶりに来たけど、落ち着く~」
ふとここに来るのが今日で最後だと気が付いてしまった。
前回と同じであればだけれど。
あれ?どうしてだっけ?
「なぁ、リリー折り入って話があるんだ。」
ガロンの表情は真剣そのもので、しかしこの表情を前回も見ていて次の言葉も覚えている。
「あのさ…、俺が一人前の大工になったら、、、」
ガサッ、ガサッ、ガサッ
誰かがこちらにやってくる気配がした。
振り向くと、白髪の長髪をひとつに結んだ男性が立っていた。
男性も私たちの存在に驚いた表情をしている。
「二人の邪魔をしてしまったかな?すまないね。」
「あっ、いいえ。あの、こんなところでどうしましたか?もしかして道に迷ったとか?」
旅の格好をしていたので、そう思ったのだった。
「私は旅をしながら薬師をしていてね。だいぶ前にここで研究をしていたときにこの小屋を使っていたんだよ。」
私とガロンは顔を見合わせた。
ずっと誰も使っていない小屋を勝手に隠れ家として使っていたけれど、持ち主が現れてしまった。
「そうだと知らずに勝手にここを使ってすみませんでした。」
ガロンがすぐに頭を下げる。
「いやいいんだよ。戻ってくるつもりはなかったんだ。
イグラクト王国に行くついでに薬草を摘んで行こうと思って寄っただけだったんだよ。」
「俺たち子供の頃から勝手に出入りしていて、中もいろいろ物を持ち込んだりしていて、あの、すみませんでした。」
「いやいや君たちが使ってくれていたおかげで朽ちることなく残っていたんだよ。誰からも使われなくなったものは死んだも同じだからね。
使ってくれてありがとう。今晩だけ泊って行こうと思っているのだが大丈夫かい?」
「もちろんです。毛布とかもあるんで使ってください。俺たちは帰りますんで。」
ガロンと私は隠れ家を後にして町に戻った。