12.謎の病
戸を開けると宿の女将さんだった。
「お休みのところすみません。
あの、お泊りになるときに薬師の方だと聞いていたので訪ねたのですがお話を聞いていただけないでしょうか?」
師匠は笑顔で中に迎え入れた。
「実はちょっと相談したいことがありまして。
町の中で熱を出して寝込んでいる人が多くいるらしいんです。原因もわからず何日も熱が続いているようなんです。」
「熱の他に何か症状は?」
「私の友人の子供がかかったのですが、腹を下していると言っていました。」
「下痢と熱が続くと体の水分が失われて脱水症状が心配ですね。
まだ症状が続いているようでしたら、直接診たいのですが」
「はい、ご案内します。」
部屋はまだ散らかったままだが私たちは女将さんの友人の家に向かった。
ドアをたたいて声を掛けても中から返事はない。
もしかして聞こえないのだろうかと心の中でごめんなさいと言いながら窓から中を覗いてみた。
しかし誰かがいる様子は見当たらない。
「リリーそんなことをしてはダメですよ。」
と言いながら師匠もちゃっかり家の中を覗いているのを私は見逃さなかったわ。
「…あれは…靴でしょうか?」
指をさしている方を見ると戸のところに靴のようなものが見えるような気がする。
が、確実に「あれは靴に間違いありませんね」とは言えない。
「もしかして中で倒れているかもしれませんね。」
「何だって!?」
驚いた女将さんが扉のノブをガチャガチャと回したり体当たりをする。
「ちょっとおまちください。」
師匠がなにやら鍵穴に顔を近づけて作業をし始めた。
えっ、師匠って薬づくりだけじゃなくてそんな犯罪者まがいなことまで出来るなんて…
ガチャリと音が鳴って扉を開けた。
わーお…本当にこの人って何者なんでしょう?
「ナーサ!!!」
女将さんが叫びながら家の中に入って行った。
私たちも付いて行くとそこには女性が倒れていた。
師匠は脈を診たり診察を始めた。
「リリーはお子さんの様子を見てきてください。」
確かに女将さんは友人の子供がと言っていた。
私は奥の扉を開けるとまだ幼い子供がベットの下に落ちていた。
駆け寄ると意識はあるものの、高い熱で呼吸が荒い。
「私の声聞こえる?」
目は開いているものの焦点が合っておらず、私の問いにも返事がない。
少年を抱きかかえてベッドに移した。
体中が熱い。なのに顔が真っ青だ。
嘔吐のあともある。唇がカサカサで皮が剝けている。
「脱水症状を起こしているね、私が変わろう。」
診察をして、マジックバックを開くといくつかの薬を取り出した。
「塩と砂糖と水を持ってきてくれ。」
キッチンに行ってそれらを持ってきた。
師匠に言われるがまま溶液を作り少年の口の中に入れていく。
体を拭きながら何度も声を掛けたが、少年は何も反応を返してくれない。




