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1.過去に戻った日

目を覚ますと、外が晴れていることに気づいた。

昨夜は嵐で酷い雨風の音がずっと聞こえていた。

リリーは起き上がり窓を開けると気持ちの良い朝の澄んだ空気をいっぱいに吸い込んだ。


「おはよう母さん、私今日も頑張るね」

空に向かって呟いた。


顔を洗うために部屋から出ると何やらいい匂いがする。1人暮らしの彼女の部屋に誰かがいるわけがないのに。

不審に思いキッチンに向かうと「なんでっ?」死んだはずの母さんが料理をしている。


あぁ、私ったらまだ夢を見ているのね。

それでも「リリーおはよう、顔を洗って着替えていらっしゃい。」と声を掛けられたら、これが夢だとしても覚めないで欲しいと願わずにはいられない。


涙を堪えることができずに私は母さんに抱きついた。

「あらあら?ふふっ、甘えん坊さんね。」なんていいながら私のことを抱きしめて頭を撫でてくれた。


こんなにも幸せでリアルな夢を見られるなんて、もしかして気が付かないうちに私も死んでたのかしら?


王都からだんだん広がった流行病はあっという間に国中に広がった。私の大好きな人たちも、その流行病のせいで何人もお別れすることになってしまった。

薬もなく医者もお手上げの状態だった。唯一聖女様ならどうにかできるのでは?と聞いたことがあるが、なにもしてはもらえなかった。

神殿まで母さんを運ぶことも出来ず、ただ神に祈ることしかできなかった。


王都の方が早くから被害が出ており、何万人という人が死んだと聞いた。

それでも、もしかすると聖女様がなんとかしてもそんなに多くの犠牲者が出たのかもしれないし、聖女様の癒しの力でも治すことが出来なかったのかもしれない。


結局は私も流行病にかかってしまったのだ。


でも今の私は元気そのもの。

朝から涙が止まらず、ひどい顔をしているけれど私は笑顔で朝食を食べた。

支度をして母さんと一緒に出掛ける。母さんと一緒にやっている喫茶店に向かった。


そうそう、昔はこんな風に過ごしていたんだった。何気ないことが幸せだった。


「なんだか、今日は泣き虫で甘えん坊で、急にニヤついてどうしたのかしら?」

と、母さんに不思議がられてしまった。


私が覚めないでと願った夢は、有難いことに覚める気配はない。

夢じゃない?もしかして走馬灯?死後の世界って感じではないわよね。


昔の様に働いているとふと自分が若返っているように感じた。

「ねぇ、今日って何日だっけ?」


「3月28日よ」


…昨日までは12の月だったのに。


その日は1日忙しくてあっという間だった。

でお母さんと一緒に働けて楽しかったな。やっぱりこの頃が1番幸せだったわ。


寝てしまったらきっともう目は覚めないのでしょうね。

まだ寝たくないといいながらもうとうとしてしまった。

だめ!寝てはだめよ!あの辛い日に戻るのはもう嫌。。。


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