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妹^2生活〜どうやら知らない間に妹が増えていたそうです〜

作者: 陽宮 葵

「兄、兄ぃ!! 緊急事態!」


 妹の騒がしいモーニングコールで目を覚ます。


「んあ? 愛しき我が妹よ……俺を起こすのはニチアサのコシヘコ戦隊メスガキには負けないんジャーが始まる前とあれほど言っているだろ」

「起こしたけどその時『今日はいい』って言って二度寝したじゃん! 録画はしておいたけど、そんなことより早く来て!」


 確かにそんなことを言ったような気がしてきた。

 それに沙由(さゆ)がここまで慌てるということは何かとんでもないことがあったのだろう。

 流石にそんな沙由を放っておくのは本望ではないからさっさと着替えて沙由の向かった玄関に行く。


「一体何が緊急事態なん……」


 瞬間、俺は目を疑った。


 そこには妹と一部(主におっぱい)以外が瓜二つの少女が立っていた。

 目の錯覚だと信じて一度目を擦るが、妹がふたりいる光景は変わらない。


「沙由が……ふたり?」

「ほら緊急事態でしょ!? ……この子もしかして兄が丹精込めて作った妹型セクサロイドもしくはダッチワイフ?! そんなに欲求不満なのに気づいてあげれなくてごめんね。お詫びとして今から手でシてあげるからおパンツ脱ご」

「一旦黙れ変態妹。それで、これどう言うことだ?」

「わかんない! イダダダダッ」


 手をワキワキさせながらにじりよってくる妹の頭を抑える。

 このままふたりで騒いでいてもわからないままだろうし、国内を転々としている親父に連絡を入れる。


「親父、うちに沙由のそっくりがいるんだが、どういうことだ?」

『おぉもう着いてたのか。そいつは哉太(かなた)、お前の妹だ』

「……は? 妹?」


 意味がわからない。俺の妹は後にも先にも沙由だけだ。


『そうだ。しばらく一緒に居てくれ』

「絶対後でどういうことか聞いてやるからな」

『ありがとう。お前らと同じ学校に編入させたから世話を頼んだ』


 最後に「沙由と同い年だから仲良くな」と言って電話を切られた。

 親父が厄介なネタを投げてくるのは今に始まったことではないからもういいとして……


「それでこの子誰なの?」

「わたし……由沙(ゆさ)。おとーさんからここに行けと言われて来た」


 たどたどしく、言葉足らずな少女はそう言い切った。


「親父曰く俺たちの妹らしい」

「妹っ!? え、初耳なんだけど。確かに妹がいたらな〜と思ったことはあったけど本当にできるのとは話が違うよ!?」

「後でちゃんと教えるから今は……由沙ちゃん、とりあえず上がってくれ」


 そう促すと由沙は礼儀正しく靴を揃えてうちに上がる。


「とりあえず自己紹介でもしておこう。俺は哉太(かなた)。よろしくな」

「……由沙(ゆさ)。哉太、よろしく」

「兄の真の妹の沙由(さゆ)。兄を誘惑するのはめっ! だよ」

「沙由ちゃん、わたし哉太のこと好き。誘惑ダメ無理」

「聞いたか兄! ゆ、誘惑してくるみたいだよ? でも兄には最愛の妹である沙由ちゃんがいるから耐えてくれないといつか寂しさで夜の繁華街を彷徨って身体を売りに行くかも知れないから理性を保ってね?」


 なんて最低最悪で俺にクリティカルヒットする脅しをするんだこの妹は。

 妹が非行に走るなんて想像しただけで吐き気がする。


「あ、でも付き合うにしても私の処女を先に奪って非童貞の状態でなら誰とどこでおっ始めてもいいよ」

「色々と台無しだよ」

「でもそんな残念な妹のことを〜〜」

「愛しているんだよなぁ」


 兄妹どうしの熱い抱擁を交わす。

 しかし沙由が一向に離れようとしない。

 それを由沙は羨ましそうに見ているという混沌ここに極まれりという状況だ。


「沙由、次わたしもハグする。変わって」

「兄が妹萌えを拗らせたへなちょこ童貞だから私の地位は安泰だと思っていたのにまさか末っ子系妹の登場で私が兄に蔑ろにされるかもと思うと離れたくないぃぃ!!」


 もちろん俺だって思考放棄でなんでも受け入れるのは違うことはわかっているが、真相がわかるまでは優しく受け入れると言うのが兄の仕事と言うものだろう。


「よしよし……おっぱいない沙由ちゃん可哀想。慰める」

「喧嘩売ってるのか? いくらおっぱいが大きくても絶対超えることのできないものがあることを思い知らせてやるんだから!」


 ああだこうだと言い合いながらもなにかと仲良さそうだから多分大丈夫だろう。


「由沙ちゃん、沙由は自分のおっぱいのことを言われると怒るから触れないようにしよぶべらっ」

「わかった。ないおっぱいのこと言わない」


 沙由が貧乳なことを気にしているからそれは言わないようにと教えただけなのにまさか思いっきりビンタされるとは思わなかった。


「今日は私の胸をいじらないと気が済まない日なの?」


 胸をいじるって言い方えっちじゃないかと思ったが、これを口に出した瞬間今度はパーではなくグーが飛んでくることが簡単に予想できるから黙っておこう。


「とりあえず由沙ちゃんは今日、沙由の部屋で寝てもらえれば」

「ちゃん要らない。由沙でいい」

「そうか。由沙は今日沙由の部屋で寝るってことでいいか?」

「確かに夜這いされて知らない間に兄が童貞じゃなくなったら私は生きる意味が消えるからしょうがない。由沙、私は負けないからね」


 なにに宣戦布告してるかわからないが、沙由が受け入れてくれてよかった。


「しばらくは自由時間だな。俺は部屋にいるからなにかあったら来い」

「「は〜い」」


 ◇ ◇ ◇


「兄ぃお腹すいたからご飯作ってぇ〜〜」

「哉太、お腹すいた。ごはん……」


 バンッと大きな音を立てて沙由達が部屋に突撃してくる。


「せめてノックくらいはしてくれよ!」

「確かに兄がひとりでナニガシしてたら傷物になって私と結婚するしかなくなっちゃうもんね」

「一応わたしもいる……」

「恥ずかしい思いをするだけでそこまでの大事にはならねぇよ」


 夕飯をねだりに来たはずなのになんてことを言うんだ我が妹よ。

 耳打ちして由沙に意味を教えるのもどうかと思うぞ。顔が赤くなってるからやめてあげなよ我が妹。


 それはともかくお腹を空かせた妹達のために夕飯を作る。

 もう日も暮れているからあまり凝ったものはできないが、それでも美味しいものを食べさせたい。

 そんな思いとふたりからのお願いで今日の夕飯は炒飯と簡単なスープに決まった。


 と言っても特別なことは何一つとしてしないシンプルイズベストな炒飯と何のひねりもない卵スープだ。

 中華鍋なんてものはウチには存在しないからいつも通りフライパンを使っていく。


「いつもどれくらいおいしい?」

「言語化できないくらい美味しいに決まってるでしょ。兄が愛情込めるだけで市販品ですら美味しくなるのに、手料理になったら意識が飛ぶ」

「意識飛ぶ……! おいしいのかわからない……」


 市販品は企業努力だから元から美味しいに決まってるが、和やかに喋っているふたりにそれを言うのはあまりにも野暮というものだろう。

 あと意識が飛ぶは褒め言葉ではないぞ我が妹よ。


 炒飯なんて油ドーン溶き卵ドーンご飯ドーンしばらく炒めて具材ドーン最後に味付けして盛り付ければ完成だ。

 スープだってお湯に鶏がらスープの素を入れて具を入れて溶き卵ドーンと入れて終わりだ。


「できたから座れ〜」

「「わ〜い」」


 ここだけ見ればただの双子なんだけどなぁ。

 別に腹が減っているわけでもない俺は、ふたりが美味しそうに飯を食べているのを見ているだけで満足だ。


「兄ぃ〜今日のご飯も美味しかったよ。特に振る舞うのが女子ということを気にしない男らしい味付けがよかったよ」

「おいしかった。ありがと」


 いつも通り鼻歌を歌いながら沙由が食器を洗い始める。 


 余った空白の時間を埋めるためにソファーでダラダラとSNSを確認していく。


「わたし哉太好き。恋人なって」


 いつの間にか目の前に来ていた由沙の言葉に目をパチクリとさせる。


「今日あったばかりの男にそういうことは言わない方がいい」

「一目惚れした。でも取られるの嫌だ」

「でも……っ」


 口籠った一瞬の間に口を塞がれる。

 脳が惚けてしまいそうになる優しいキスだ。


 しかし一丁前に持った倫理観が胸を締めつけてくる。

 だが、その思いに反するように唇が重なるたびに身体は火照っていく。


「あ、あわわわわ……兄の初チューが奪われたっ!?」


 突然目の前で起こったことに慌てる沙由を尻目に由沙は妖しく笑う。


「わたしは本気」


 初めてのキスの味は上手く表現できない。

 だけど、うるさいほど鳴る心臓の音と頬を赤らめる由沙の姿を忘れることはないだろう。



ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。


「由沙ちゃんとキスするとか羨ましいぞ」「沙由ちゃんみたいな妹が欲しい」と思った方は是非、ブックマークや広告下の【☆☆☆☆☆】から評価をお願いします!!



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