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第1話 王弟殿下の研究室?

よろしくお願いします。

「いい加減、帰らなくて良いのか?」

 呆れたような口調だけど、部屋の片隅の机で資料から目を離さずに言っている。 


 薄暗い石造りのお部屋。

 魔法の光がぽつんと宙に浮かんでいるだけだもの。

「良いのよ。もう諦めているわ。私の家族も……」

 私は、ソファーに寝転がって、その辺にある本を読んでいた。


 だいたいこの部屋には、小さい窓が一つあるだけなのだ。

 生活魔法で掃除をしているおかげで、乱雑に物が置かれているのに埃一つない。


 この部屋の持ち主は、アルフレッド王弟殿下。

 王室独特の綺麗な琥珀色の髪の毛はボサボサ、シャツもヨレヨレしてるけど、ちゃんとすればイケメンの部類だと思う。


 現国王陛下の一番下の弟。

 7年前の15歳時に婚約者候補が集まったお茶会で、

「俺……いや私は、王位継承権を返上する。学園を卒業し、成人してしかるべき時が来たら、辺境に賜った領地を拠点に世界中の鉱山を見てまわるつもりだ」

 と宣言した。


 お茶会に集っていた、令嬢達やその家族。側近候補の子ども達まで驚き、王弟殿下の前だというのにざわついてしまっていた。

「だから、私の妻となるものは、ズボンを履いてそれに同行してもらう。ドレスを着るのは、身内の冠婚葬祭くらいだと思ってくれ」

 もう、婚約者候補にあがっている令嬢たちは泣きそうになっている。


 そりゃそうだ。選ばれてしまったら、彼女たちに拒否権は無いのだし。

 成人したら社交界には一切関わらないと宣言されてしまっているのだから。


「はい! はい! は~い! 私。わたくしを選んでくださいませ。王弟殿下」

 その中で、元気よく手を挙げた令嬢がいた。

 当時7歳の私、オリビア・カミン。カミン家独特の黒髪をした、可憐な侯爵令嬢よ。

 当たり前なのだけど、私はアルフレッド王弟殿下の婚約者候補では無かった。

 側近候補だった3歳年上の兄であるローレンス・カミンの家族として、社交界への顔見世として参加していただけ。



 まぁ、後で父から散々叱られたんだけどね。

 王族に対する不敬もさることながら、私のことは王太子候補アイザック殿下の婚約者候補に名乗りを挙げさせるつもりだったのだから。

 良かった。ここで、アホなことしておいて……。


 ちなみにアルフレッド殿下には、7年後の今も婚約者はいない。

 令嬢達の親族も、王位継承権どころか王都にも留まらない王弟殿下との婚姻は何のうまみも無いと判断されたからだ。

 婚約者候補や側近候補は全て取り下げになってしまった。


「そろそろ、俺も部屋に戻るが? オリビアも明日は学園があるだろう?」

 さっさと部屋を出るぞ。と言っている。

 この部屋のある場所は王宮内の外れ。女性が一人でいるには、物騒な場所だものね。護衛の近衛兵もアルフレッド殿下と一緒に、引き上げちゃうし。

「学園かぁ~」

 私は少しぼやくような感じでつい口に出してしまった。

「王侯貴族の義務だからな。あの学園を卒業するのは……」

 だよね~、王侯貴族の13歳から18歳までの子息令嬢は皆通わなければならない。

 これから貴族社会で暮らしていくための教養や知識を叩き込み、実践するための学園なのだから。


 読んでいた本を、もとの床に置き。勝手に片付けると何故か怒られるので。

 私はソファーから起き上がった。

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