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#95 あみだと根拠の無い理論

 レーネの誘いに乗ったオルフィアは、そこから素早い動きを見せる。

 まずは艦長権限で女子部屋があるフロアへアルを連れていってオルキトの追跡を撒く。

 そして寝ているコトハへの考慮ももちろんだったが、他の空き部屋を用意して女性乗組員を利用されても簡単に見つからないように工作した。


「『このゲームは2人1組同士で対戦する』」


 ルール説明をするサジンは、先端がかぎ状の細い棒を2本手に取る。


「『それぞれの棒を同じ組の2人で1本ずつ持ち、それを使って『指令札』の内容に挑戦して得点を競う』。全部を全部使うとも限らないんだな」

「ああ、まずはプレイができるスペースだけ確保しよう」


 考えなしに次から次に箱の中身を出した結果、ロープやキューブ、色とりどりの玉、輪っかなど、どれも小さくて細かなものがテーブル上に散乱していた。

 指令札を除いてアルがテーブルを片付けたところで、まずは組み合わせ決めに移る。


「チョークと黒板があるし、あみだで決めるか」

「……あみだ?」

「え? 知らないのか?」


 レーネほか全員が不思議そうにアルの顔を見ている。

 あみだはジフォンでしか通用していないようなので、アルが描いて示してみせた。


「人数分の線を縦に引いて、その間にこうして横線で橋を架ける」

「それでどうするの?」

「選んだくじから下っていく道中では橋にぶつかれば必ず渡って、例えばこれは……ここに辿り着く」

「ふんふん。でも時間かければ狙ったところを選べるんじゃ?」


 あみだの仕組みを理解したレーネがそう指摘するが、アルは承知の上であった。


「そういう欠陥はもちろん見つかってる。散々言われてきた。だから」


 アルはチョークをレーネに手渡して、代わりにボードゲームの空箱を手に取る。


「他の参加者が好きに橋を描き足す。そして結果もこうやって隠しておく」

「へー……サジンとオルフィアさんもいいの?」

「橋の数に限りは無いから全員参加できる。あみだはこういうのが楽しいんだ」


 レーネはアルから指示された通り、あみだの先に組分けの(まる)(ダイヤ)を2つずつ描き、それを空き箱で隠してから橋も描き足す。

 サジン、それからアルとオルフィアも同様に橋を描き足す。


「結果の場所を知ってるからレーネは最後で、逆回りでくじを選んで」

「なら私ですね」

「ええ」


 オルフィアがくじを選ぶ様子をアルは固唾を飲んで見守っている。


『あみだは俺の得意分野……結果から遡り、どのくじを選べばいいかはほぼ一瞬でわかる。そして……』


 レーネとサジンへの仕掛けも決まって上機嫌であった。


『さりげなく選ぶ順番は誘導した。設定させた結果もレーネならきっと()()のはずだ』


 オルフィアのすぐ後、その結果が4つのうちの左から2番目と知ると、アルは右隣になるくじを選ぶ。


『俺の経験上、○2つに◇2つの順列だと一般に『○◇○◇』か逆の『◇○◇○』になる傾向にある。つまりこれでお姉さんとは別の組に……!』


「ん。箱どかすね」

「あああああ!」

「うああ! なに!?」


『◇○○◇』。

 それがレーネの設定した結果で、よもやそれによりアルが絶叫しているなど知る由も無い。

 あみだの結果を読む能力こそあったが、なんの根拠も無い心理の分析では当然と言えば当然の結果であった。


「同じ組ね。よろしく」

「はい……」


 ゲーム前から既にやつれていたアルは、弱々しくオルフィアに返事をするのであった。

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