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#72 長さと重さの次元

「……なんだかんだそっちも雑じゃないか」


 がらがらの店内をいいことに、人目も気にせず『シン』の四竜征剣、鉤爪を装着するヘキサスにアルは呆れていた。

 鉤爪にあった4本の刃は穴を通してねじで止められていて、しかも簡単に手で緩められた。


「武器としての強度は求められてないからいいんだよ」


 アルの視線を感じたヘキサスはそう説明してテーブルに取り外した刃をずらっと並べた。


「これを預けるにあたって、推したい点が2つある」

「まず預かる責任は俺にあるか?」

「1つ。この小ささだ」


 根本的なアルの質問は無視された。


「こうして鉤爪にしていたように、ペーパーナイフのようにすればポーチに入れて持ち運びもできる」

「それぐらいなら要される強度もそう高くないですね」


 いい具合に合いの手を入れていたオルキトに軽くアルの肘が入る。


「2つ。その知名度だ」

「だから俺に預ける理由は?」


 アルの質問は無視された。


「向こうは何でも屋が実体を消した時と違って、具体的な攻略はしていなかっただろ?」

「そういえば、単純な力で押してみて能力を引き出させようとしていました……って、いてて」


 さっきと同じ流れになって、今度はオルキトを小突くアルの肘にも力がこもっていた。


「もういい。お引き取り願おう」

「なあ頼むよ。能力は気になってるんだろ? せめて1本だけ持ってってくれよ」

「能力ねえ……」


 小石を隕石に変え、クレーター内の熱気を一気に冷却できる能力は確かに不明のままで、便利なものか最悪は害の無いものがあればそれを預かろうとアルは話だけ聞くことにした。


「まずは『次元』の話だな。長さが1(メートル)の竹と、重さが1000g(グラム)の鉄。どっちの温度が高い?」

「もう1回いい?」

「長さが1(メートル)の竹と、重さが1000g(グラム)の鉄。どっちの温度が高い?」

「何もかも無茶苦茶じゃないか」


 長さが明かされた竹に対し、重さが明かされた鉄とは何かを比較しようにも噛み合わない。

 もちろん温度もだ。


「長さと重さ、温度はその単位、つまり次元が違う」


 ヘキサスはつーっとテーブル上の刃の列に沿って指を滑らせた。


「これらはその次元を操作できる。その量がゼロでない限り、小石をまるで巨岩ほどに重くして、加速度も人に到底出せないほどまで大きくできる」

「……なにそれ」

「お……おお? さっきの子か?」


 ヘキサスの説明に食いついたのはコトハ。

 頭の上に疑問符が浮かんでいたアルとオルキトに対し、よそのテーブル席からいつの間にか近づいていた。


「聞き耳を立てるとは行儀悪いぞ」

「申し訳ない。けどどうしても気になった」

「謝罪は顔も見なさい」


 アルの言葉に反応はするものの、コトハの目はシンの一式にくぎ付けであった。


「『重さ』、『長さ』、『時間』、『温度』。複数の次元を組み合わせられるから2本以上持ってた方が応用は利くが……」

「なら全部引き取る」


 暴走するコトハを止めるため、アルはその頭を鷲掴みにした。

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