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#66 レジスタンスとジェネシスの目論見

「オルキト……オルキト!」

「……はっ、アルさん?」


 アルの呼びかける声によりオルキトは意識を現実に戻された。

 オルキトはその実体を消されていたので足首まで来ていた水の感触が無く、それを夢か幻だと思い込んでいたのだ。


「これがオモテの四竜征剣……」


 さっきまで住宅だったものは木片とがれきになっていて、椅子やベッドなどの生活用品も無造作に散らばり、多少の知見があったアルに対し、オルキトにとっては目を背けてしまうような凄惨な光景であった。


「まだ立ってる……」


 ウェーブレイスをしまった少女は頭巾を解き、その顔が露わになった。


「……!? なっ、ジェネシス!?」


 アル達が目にしたのは、ジェネシス幹部であるカンナと同じ顔の、人造人間の少女であった。


「それは……バリアー・ソク。ああ、眼帯も。ニンナがヘマしたのね」

「ニンナの装備を知ってる……あいつが言ってた『中にいる』ってのはお前のことか」


 想定外の事態であったが、ウラの一式を探し求めていたジェネシスの1人が、オモテの一式で騒動を起こしていたのと同一人物であったのだ。


「四竜征剣の騒動を起こせばレジスタンスが出てくるはずだったけど、あなたは誰?」

「俺らはレジスタンスじゃない。それより、人造人間がなんで四竜征剣を体内に収納できてるんだ」

「ニンナと同じにしないで。私はオルタ・フィーネ」

「フィーネ……『最後』ってか?人造人間にも何かの段階があるってのか」

「聞いたからにはもちろん始末する。『ブリッツバーサー』」

「って、おいおい……」


 金色に輝く刀を腰に差したフィーネは、すっと肩の力を抜く。

 アルはそれが嵐の前の静けさだとわかっていた。


「『セイス・アーク』」


 少女の体をしたフィーネでは無理して走れば転びかねない水位だったが、そんなものは関係無しといったようにアルの目の前まで瞬時に距離を詰め、光の速さの居合を繰り出す。

 絶対に無事だとわかっていたがそれでもアルの足はすくむ。


「アルさんから離れろ!」

「仲間ね。『ジアースケイル』」


 フィーネは手首を振ってその勢いで握る拳に力を込めると、ブリッツバーサーから燻る煙を上げる黒い剣、ジアースケイルに持ち替える。


「『セイス・バーン』」


 オルキトが放った矢はジアースケイルを前に、瞬きをする間に一瞬で炭と化して崩れ去った。


「愚かね。バリアー・ソクを万能だと思い込んでいる。『セイス・グランド』」


 人の背丈の倍は隆起した地面がアルを前後左右、上方から覆う。


「アルさん、壁をすり抜ければ……」

「いや、とっくにそうしてる!」


 土の壁に伸ばしたアルの手は望む通りに動かず、透けるのではなく吹きつけられた煙のようにほろほろと崩れる。


「今のあなた達の体は厳密に言えば風船の状態。形は自由に変わって物理的な干渉を避けているけど、密閉されて力が加わればその逃げ場は無く、破裂する」

「風船……隙間が無いと壁抜けはできないのかよ!」

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